2020/10/12 のログ
タン・フィール > 「―――~~~…だれか、いる?」

ひたひたと裸足が石畳を叩く独特な少年の足音。
歩きながら耳を澄ませても、自分のものしか聞こえない筈だが、
どうにも人の気配、人の視線、他の足音を感じた気がして、忙しなく振り返ってはまた歩みだす。

徐々にそのペースは上がってきて、背筋に薄ら寒いものを感じた頃、
だっ…と路地の出口へ通じる筈の曲がり角へと駆け出した。

少しでも、人の気配のあるところへ、表通りの光の方へと歩みだしたくて。

しかし、丁度のその曲がり角を曲がってきた誰かの人影にぶつかってしまい、
体重の軽さからぽん、後ろへ飛び、尻餅をついてしまう幼い体躯。

「ぅあっ…うっ! ごめん、なさ…―――っ…」

お尻をさすりながら、ぶつかってしまった相手の方を見上げて…。

タン・フィール > 「―――えっ… わ、 ああっ… やめっ…」

少年に激突されても微動だにしない何者かの影。
そこからぬっと腕が伸び、細い手首を掴む。
ぎりぎりと締め上げられ、手首の関節がきしみ、痛みで目を細めた瞬間、
それらの魔手は側面・背後と様々な方向から無数に伸びてきて…

幼子の首、足、髪、様々な部位を恐ろしい力で掴み、喉を締め上げ、呼吸と意識を断ち、路地奥の闇の中へと無理やり引きずり込む。

その後、無残に石畳に飛び散ったバスケットの中身だけを残して、影も薬師も姿を消し、
表通りのにぎやかな喧騒だけが路地に響いていた。

ご案内:「賑わう市場の裏通り」からタン・フィールさんが去りました。