2020/04/03 のログ
リス > 少女は困った、眼を回してたと思わしき彼女が、意識がはっきりしたと思った矢先に、此方を見て怯えているのだ、泣きたいのは此方でもあるのに。お肉。
 とは言え、動けない様子からは、足をひねったと思われる、自分を見る目がとても、とても怖いものを見ているように見える。
 この状態では、お話も何もあったものでは無い、さて、どうしたものか、と考える少女はふと思い出す。
 最初彼女は何をしようとしたのか、自分の手から亡くなった一本目の串焼肉、美味しそうなそれ。今もいい匂いが少女の鼻腔を擽る。
 ふむ、と軽く少女は考えて。

「落ち着いて?大丈夫だから、はい。」

 足を痛めている少女に串焼肉を差し出すという状況は、中々に凄いものがあるだろう。とは言え、だ。少女は、まず彼女を落ち着かせなければお話はできないだろうと考える。
 そして、落ち着いてからゆっくり話せばいいと思うのでまずはお肉を差し出して、食べて落ち着いてもらおう。
 きっと落ち着けば会話もできるはずなので。

「ささ、冷めぬうちにどうぞ?」

 敵意はありませんよ、と、にっこり笑って、少女は彼女の目の前に串焼肉。
 甘辛いたれが良い匂いをぷんぷんさせてます、美味しそうな串焼肉、それを差し出して、怯えるミレーの少女にどうぞ、と。

ラフィティ > (捕まる、檻に入れられる、今度はどこに連れていかれる?
逃げ出した先では酷いことをされている人もたくさんいた、そして今度は自分が。
頭を抱えて、恐怖に固まりぎゅっと目を閉じる。

やっぱり盗みなんてするんじゃなかったと、今更後悔しても遅い。
でも、この美味しそうな匂いにはとても勝てそうになかった。
もう何日も食べていなかったから、我慢できなかった。
ほら、今もまだ美味しそうな匂いがここまで———————。)

——————え……?

(だが、予想だにしていなかった事態に、余計に目を丸くしていた。
差し出されている美味しそうなお肉、それを見て、リスを見る。

それをくれるという選択肢を、少女は考えていなかった。
どうしたらいいのかわからないと、表情が何度も何度も変わる。
もらっていいのかどうかわからないけど、くれるのなら———。)

…………。

(右手で、そっとそれをとった。
取った、というよりも攫ったというほうが正しいかもしれない、先ほどと同じように。

そのまま食欲に負けて、がつがつと食べ始めた。
甘辛いたれと、程よく焼けているお肉が空腹にはあまりにも堪えた。)

…う……———ううぅ……————っ。

リス > 「……あらあら。」

 肉を差し出した、戸惑うように見ていたのだけれども、彼女のお腹がくぅくう鳴っていたのは知っている、だから、少女は微笑みながら差し出していた。
 だから、少女はそれを受け取るまで待っていた。恐る恐る伸びてくる掌、そして、それを手にして、勢いよく食べ始めるのであった。
 凄くお腹が空いているのでしょうね、と少女は思ったので、立ち上がり、串肉やに視線を向ける。

「すみません、10本ほど追加で。」

 串肉屋に、肉の追加注文をしてから、少女はクルリ、と見まわす、冒険者らしき人を見つけたので、その人に手を振って呼んだ。
 そして、傷治療のためのポーションを分けてもらう、ついでに、少女に飲んでもらうための飲み物―――牛乳を買ってきてもらった。
 緊急事態だしと、相場よりも高くお駄賃を渡したのだ。ギルドを通さずに依頼は出来ないので、飽く迄善意のお手伝いという形。
 そんなことをしていれば、串焼肉が10本届くので皿にのっけた状態で差し出そう。

「さあ、さあ。逃げませんから、ほら、これも。」

 取りあえず、更に乗った串焼き肉を差し出して、ついでにミルクの入った壺を脇に置こう。
 先ずは彼女がおなか一杯になるまでは待って、その後に、お話をしよう。
 ポーションはまだ使わないで、藤籠の中に。

ラフィティ > (美味しかった、久しぶりのまともなごはん。
甘辛いたれがかかっているだけで、お肉はこんなにもおいしくなることを初めて知った。
少女は目を輝かせながら、1本をあっという間に平らげた。

でも、まだ腹の虫が生っている。もっと寄越せとねだってくる。
でも、これ以上もらうのはあまりにも悪い、さっき盗もうとまでしたのだから。
でも、目の前の優しい人はお代わりをくれた、それもたくさん。
ミルクの入ったツボが、ちゃぷんと音を立てておかれるのも。

あれ、人間って怖いんじゃなかったの?
と、少女は不思議に思うものの…肉の誘惑に勝てるはずもなく。)

………っ———————あぐっ! あぐあぐっ!!

(がっついた、肉の塊に。
見た目は薄汚れているけれども、よく見たら容姿は悪くない、耳と尻尾が生えている程度で、見た目も民減にそっくり。
破れた襤褸の隙間から見える素肌で、下着すらつけていないのが丸見え。

肉をほおばり、ミルクで流し込んで、せき込んで。
久しぶりの食事に、空腹が満たされるのはすぐ後のことだろう。)

リス > 矢張り、かなりお腹が空いているのが見て取れる、お腹の音以上に、彼女の食べ方が何よりの証拠なのである、串焼肉がどんどん減っていくのを眺めながら少女は彼女に関して思いを馳せた。
 この子は何者なのだろう、スラムの人間なのだろうか、それとも、逃亡奴隷なのだろうか。それによってどうするべきなのかなど、色々と考えるべきことがある。
 服装はみすぼらしいが、それがスラムの人間か逃亡奴隷化を判別する為のモノにはなりえないどちらもみすぼらしい服装をしていておかしくないからである。
 しかし。だ。彼女はミレー族であることを考えれば、奴隷の方がしっくりくる。
 この国では、ミレー族は奴隷階級が多いのだし、少女の店でも、商会でも扱って居るのだ。
 少女の所で扱う奴隷は、このような酷い仕打ちはしないから自分の所ではないとは思うのだけれども。

「うーん……。」

 彼女が食事を平らげている間に、うんうん唸って、少女はふう、と疲れたように吐息を零す。
 どこかに視線を向けて、軽く頷いて見せる、少女とつながっているドラゴンが、家令長が少女の意図を理解し動き出した。
 これから、国中の奴隷商に照会をかけて、彼女の身元を得るように。

「……ね、落ち着いたかしら?」

 食事が終わりそうな頃に、少女は声をかけてみることにした。
 先ずは、彼女をどうするか。会話してから考えてみよう、と。

ラフィティ > (食べることに夢中で、少女はリスが意図したことに全く気付いていなかった。
そもそも、早く食べているのはただ単にお腹がすいていただけじゃない。
大通りに面した、しかもこんな広場にいるのだからいつ見つかるか。
その証拠に、食べているさなかでも周りを気にするようにmきょろきょろと目配せしている。
その怯えている瞳は、いまだにその色を隠しきれていなかった。)

——————……あ、あの………ありが、とうです……。
人間さんは、怖い人ばかりだと思ってて……あの————…。

(すっかりと平らげた少女は、深々と頭を下げた。
ひねってしまった脚はまだ動かない、けれども立ち上がることくらいはできるはず。
よろよろと立ち上がり、足の痛みが我慢できなくて顔をしかめ、しりもちをつく。

周りを見渡して、どこか隠れる場所はないかと探しているようにも見えた。)

リス > 彼女が懸念している事、それに関しては直ぐに把握できた、やはりと言って良いのだろう、奴隷市場都市バフートの中に有る一つの店で、彼女が逃げたという奴隷商人がいるようだ。
 ただ、奴隷商人が奴隷に逃げられるのは外聞が悪いのか隠してはいる模様、下手につつく事は無く、その情報を手に入れるだけ手に入れて少女は、彼女を眺めるのであった。

「ふふ、貴女の考えている感覚は、間違いではないわ、正しいと肯定もできないけれど、ね。
 人には色々いるわ、だからこそ、付き合うべき人はしっかりと見極めないとだめ、よ。」

 頭を下げる彼女、お礼を言えるぐらいには落ち着いたのだろう、周囲を見回しているのは恐らくかの奴隷商を気にしているのであろう。
 動けない様子の彼女、さて、どうするのが良いのだろう。

「さて、貴女が、何者なのか。
 ちゃんと説明してくださいますわね?私の串焼肉を奪おうとしたのですし。
 先程、助けたのはちゃんと会話をするため。
 貴女の態度次第では、私は貴女を警邏の兵士に突き出すことも、選択肢としてありますわ。」

 隠れようと、逃げようとしている彼女に、釘を刺しながら問いかける。
 酷い事はしないが、彼女が自分でしたことをちゃんとわかっているのか、反省しているのか。
 それを、知る為に、少女は、問いかけた。

ラフィティ > ……あ……えと………。

(くぎを刺されたことで、今現在逃げ場を亡くしていることに、少女はようやく気付いた。
足は動かない、このまま逃げても捕まるのは目に見えている。
しょぼんとしながらおとなしくなった少女は、さながら借りてきた猫といったところだろう。

何者なのかといわれて、どう答えたものか。
この町で、ミレー族がどう扱われているのかはよくわかっている。
だからどうこたえようか、非常に迷っていた。
でも、やさしいこの人ならたぶん大丈夫、だと思う。
優しい人には甘えてしまう、その性格があだになるか、それとも———。)

…………その、ごめんなさい……お腹がすいてて…もう、ずっと食べてなくて…つい…。
あ、あんまり美味しそうな匂いがして……—————。
私は、ラフィティって言います……。その……お、檻に入れられてて…それで、逃げてきて……ずっと、ここで隠れてて‥。

(盗むことに関しては、悪いことだとわかっている様子。
しょぼくれながら、少女はぽつりぽつりと、自分のことを語りだした。

情報通り、この少女は逃亡奴隷である。
首輪がされていないのは、そのすきを見て逃げ出したからというところか。)

リス > 「―――――。」

 まごまごしている様子を、少女は静かに眺める、圧迫感を与えないために。ちゃんと少女もしゃがみこんで視線を合わせているので、多分怯えすぎるという事は無いはずだと思う。
 しょんぼりとしているのは、恐らく自分のした事に気が付いたから、と思いたい。
 何がどうあれ、窃盗は犯罪であり、そのまま警邏に突き出されても仕方がない事であるのだから。
 そういう意味では少女は甘い行動をしている、それは解っている、しかし、奴隷階級のミレー族であれば、それで突きだしたら、ろくな審査もなく縛り首もあり得ると思う。
 だから、少女は静かに彼女の事を見守るのだった。

「そう―――褒められたことではないけれど、確かに、死んでしまうかもしれないという緊急避難と考えれば。まだ情状の借料はありますわね。
 とは言え、あれだけ元気に走れたのですし。無罪とは言い切れないでしょう。

 ラフィティ、其れなら、一つ突っ込んで聞きますわ。


  何故 貴女は 奴隷に?」


 ミレー族だから、という理由が大きいだろう、其れならば問題は無いのだ。
 彼女が何かしらの犯罪をして、捕まった奴隷なのか、それとも、違法な手段で―――奴隷にされたのか。
 其の辺りを聞いておこう、この後を決めるのに、大事な質問なので、直球で尋ねる。

ラフィティ > ……———うぐぅ………。

(空腹に耐えかねたとはいえ、分かっているつもりだった。
だから最初の第一声が、ごめんなさい、だった。
赦してくれるとは思わなかったから、捕まらないためには逃げるしかなかった。

でも、今はその足は負傷してて逃げられる状態ではない。
観念するしかない少女は、そのまま縮こまっておとなしくなっていた。)

………なぜ………?え、えと……どういう、意味なんでしょうか?
私は…村で過ごしてたんですけど、そこに突然人間さんが来て……それで…。

(奴隷にされた。

この国ではよくある話だ、奴隷狩りでミレー族を無理矢理引っ張ってくる。
何しろミレー族は高値で取引される、しかもこの少女——見てわかるとおりだ。
そういう目的で捕まったところを逃げ出して、隠れたということもしっかりと話しつつ。)

あ、あの……————その…あ、厚かましいかもしれませんけど……どうか、見逃してくれませんか…?
お、お肉のお礼は必ずします、代金もちゃんと払います……だから……———。

リス > 「ふむふむ。」

 彼女は足を怪我しており、逃げる事が出来ない状態、故にしっかりと自分の事を、聞かれたことを正しく話すしかできないのである。
 故に、正直に話してくれているのだろう、彼女の性質は悪と言う訳ではなさそうなのも、見て取れるのだ。
 そして、彼女が奴隷だとして、逃亡奴隷だとしても、犯罪をして奴隷になったわけでは無くいのだ、と。見つかればつかまり、奴隷となる、それがミレー族の今現状であり。
 そして、そこから逃げていても、見つかれば、捕まって―――。

「それは、どのようにして、かしら?」

 彼女はミレー族である、そして、国がミレー族を奴隷として扱って居るので、まともな職業にありつくことは難しかろう。
 彼女の容姿は整っており、彼女の奴隷としての扱いは性奴隷に相違なかろう、この国では一般的ともいえる扱いで。
 そんな彼女が、『普通』に職にありつけるかどうか―――否と言って良いだろう。

「25万ゴルト。……聞き覚えは?」

 恐らくあるだろう、彼女の……奴隷商でのラフィティの値段である。容姿が整っていて、男好きのする肉体、そして、彼女の肉棒。
 高いか安いかは、判断に分かれるであろう、しかし。だ。

「名乗り遅れましたわ。私は、リス。リス・トゥルネソルと申しますわ。
 回りくどく言うのは好みではありません。
 私の奴隷におなりなさいな、私の庇護に入れば、怯えて逃げることはなくなります、仕事も与えますわ?
 トゥルネソル商会……私の店での売り子などのお仕事も。」

 そうでなくとも、もっと別の手段もある、最近はどうなっているだろう、と思いつつも。
 彼女に声を掛ければ、きっと受け入れてくれるだろう場所に心当たりもある。なので、少女は問う。

ラフィティ > ——————…そ、それは………。

(正直に言うしかない現状の少女は、今は嘘を付けない。
いや、もともと嘘をつける性格ではないからこそ、正直な答えが顔に出た。
どうやってお金を稼ぐという方法は、まったくといっていいほど考え憑かなかった。
この、リスという人物からしてみれば自分をどうこうすることなんて、簡単だ。
そのあたりにいる憲兵に声をかければ、きっと——————。

それだけは避けたい、避けなくてはならない。
いつか帰るために、少女は生きなけばならないのだ。)

………ご、ごるど………?にじゅう、ごまん………?
そ、その…それが何なのかよくわからないんです………。

(ただ、聞き覚えは確かにあった。
連れ去られたときに、商人が舌なめずりをしながら少女の身体を見て、その言葉を告げていた。
何のことかさっぱりわからなかったけれども。

だが、その次に紡がれた言葉に、ヒッと小さな悲鳴を上げた。
奴隷になればまた檻に入れられるのではないかと、再び恐怖する…が、雰囲気が全く違う。
それに、こうして選択肢を与えられていない状態では、少女の選ぶ道は一つしかなくて。)

…………わ、分かりました……。私、リスさんの奴隷になります…。

(承諾した。ほかの道が見つからなかったから。)

リス > 「―――……、今の言い方はフェアではありませんね。
 少々、その宣言はお待ちなさいな。」

 彼女が怯えた、そして、奴隷になるという宣言を貰ったが、少女はふむ、と腕を組んで考える。気弱な彼女だ、少女の言葉でも十分な脅しと捉えられてしまった可能性が高い。
 それならば、と少女はもう一度言いなおすことにしよう。

「ラフィティ、貴女に選択肢を明示しますわ。そして、推測できるその先も含めて。
 一つ。このまま、警邏を呼んで、犯罪者として捕まる。 これは、貴女が犯罪奴隷として今まで以上にひどい目にあうことは確実ですわね。
 一つ。元々、貴女を捕まえた奴隷商人に引き渡す。之もまた、ろくな目には合わないでしょうね、きっと逃げられないように様々な仕打ちを受けたうえで、働かされるのでしょうから。貴女ならば一番どうなるかが推測しやすいのではなくて?
 一つ、私の元で、奴隷として働く。これに関しては先ほど言った通りの仕事ですわ、あと、25万ゴルド、払い終わったならば、奴隷から解放してもいいですわただ、その後は保証できませんけれどね。
 一つ、先程、奴隷として言いましたが、性奴隷として、私の元に下るというのも、手段としてはありますわ、これも、25万分働けば開放いたします。
 一つ、全てを蹴り、逃げ去る。
 一つ、貴女が出来る事、したいこと、それをお聞かせ願う、それは、私にメリットが有るならば、検討致しましょう。」

 一つ、一つ、彼女に選択肢を与えて見せる。最後のそれもまた、選択なのだ、と。
 さあ、どうしますか?少女は笑って問いかけた。
 別の道が考え付くならば、それでもいいですよ、と。

ラフィティ > (その宣言、どのみち選択肢なんてあってないようなものじゃないかという突込みは、今の少女には思い浮かばなかった。
犯罪者奴隷となっても、奴隷商人に引き渡されてもどうなるかなんてわかったものじゃない。
わかりたくもないその選択肢に、思わず頭の上に生えている猫耳を伏せて聞かないようにした。

そして考える、できるだけ働かない頭でも考える。
おそらく残り二つの選択肢のほうが、生き残れる可能性は高くなる。
それに、自分にかかった料金25万を稼げば、開放してくれるらしい。
つまり、帰れるということになる。村に帰れる可能性がぐっと近づく。
そんな選択肢をぶら下げられるのは、たとえて言うなら美味しいご飯を目の前にぶら下げられているのと同じ。
少女の考えはただ一つ、帰りたいのだ———…。)

わ、分かりました……え、えっと………、私……リスさんの奴隷になります……。
どうせ、逃げても…また捕まりそうですし……ほかの考えも、思い浮かばないし…。

(少女にとって一番魅力、それは開放だった。
村に帰れる可能性が上がるなら、どんなことだってしよう。
だから、25万ゴルドを稼ぐために、少女は奴隷になる道を選んだ。)

で、でも……お仕事って何をすればいいんですか…?
性奴隷……っていうのは怖いし……あ、あの…私、したことなくて…。

リス > 「畏まりましたわ、それでは……。」

 自分の奴隷になるという少女の選択に、少女はうん、と頷いて見せ。パチンと指を弾く。そして、意識を家令長へと向ける。先ほど彼女に言ったお金を、少女の財産から支払い、ラフィティを買い取った。
 売り渋ろうとしていたが、逃げられている等の様々な瑕疵をつついて認めさせたのだった。
 正式な権利書を受け取って、やって来る。
 ラフィティの目には、少女が指を弾いたら、人込みの中から執事姿の蒼髪の青年……少女の家の家令長がやって来て、書類を少女に渡したように見えただろう、青年は一瞥することなく、去っていく。

「今、正式に私が貴女を買い取りました、貴女は私の物になりますわ。
 さて、そうなると―――。そのままにはしておけませんわね。」

 そう言って、少女は藤籠の中から、先程冒険者から買い取ったポーションを取り出す。
 ポーションを振りかけて、彼女の足を直すのである。

「それでは、行きましょうか。お仕事に関しては、今は、気にしなくてもいいです、先ずは貴女の家となる場所に、案内します。
 そこで、他のミレーの奴隷たちと一緒に一通りの読み書き、マナーの学習、常識の勉強など、してもらいますわ。
 一緒に、お仕事に関してのお勉強もしてもらいますから。
 三食、休息付き、休日あり。お仕事の日でなければ自由行動も許してますわ、給金も月々お渡ししますわ。
 性奴隷は、簡単に言えば、交尾してればお金あげますってやつですわ。」

 別に奴隷だからと虐げるつもりはない、少女にとって、奴隷は大切な商品である。
 彼女に関しては商品ではないがだからと言って、差別するつもりはない、大事に育てる積りで。
 ポーションで足のケガが治ったならば、彼女の家になる集合住宅へ、連れて行こう。

ラフィティ > ………え、あれ…?——————…??

(突然、人ごみの中から現れた蒼髪の青年に、ただただ不思議そうに首をかしげるだけだった。
この人、もしかして人間さんじゃないのあかん、などと思ったけれども、それはまだいうべきじゃないだろう。

おそらく、この人は自分の主人になったのだということだけはわかる。
だから粗相がないように、しっかりと立ち回らなくては。
隙を見て逃げ出すという選択肢を自分から蹴ったために、もうそんな考えは消え去っていて。)

………ほっ、他のミレー族もいるんですか!?
あ、あの……もしかして、この町にもミレー族のコロニーがあったりするんですか……?

(もしそうなら、まずそこを目指すべきだったかと少し後悔。
だが、いまさら言っても仕方がないし、もしかしたらこの人が作ったコロニーなのかもしれないから。
何も言わず、ただその集合住宅に連れて行ってもらうことにした。

不思議な液体のおかげだろう、足の痛みももうない。
歩く分にも全く問題がなくなったために、少女はリスの後ろを歩く。)

こっ………。————あ、あのっ……え、……そ、それは…っ…は、恥ずかしい…です……。

(生娘は、顔を真っ赤にしてうつむいたのは言うまでもない…。
暫くはリスのところで、しっかりと勉強させてもらうことになるだろうが、それはまたあとの話…。)

リス > 「家の家令長の、ヴァールです、気にしなくても大丈夫です。」

 基本的に家から出る事はあまりありませんから、と、少女は笑って見せる。彼女が彼を見るのは。きっと珍しいを通り越すだろうし。
 自分の事を珍しそうにしている彼女には、少女はふふ、と、意味ありげに唇を釣り上げるだけで。

「私の店の従業員は、皆ミレー族ですわ、ええ。商会の奴隷としての商品ですが。
 でも、ちゃんと真面目にしていれば、解放もありますしね。
 別の主人に売られるのもありますし、お金を溜めて自由を買い取る者も居ますし、其の辺りは自由にしてますわ。
 町の中に有るかどうかは解りませんが、私の……トゥルネソル商会の奴隷であればある程度は安全ですわ?
 なぜなら、他の奴隷商に無理やりさらわれたりは無いのですから。」

 自分の知るコロニーは、この町にはない、が、もし落ち着いて、大丈夫であれば、案内するのも良いだろう。
 取りあえずは、今は彼女を案内し、新しく奴隷として登録する。
 実は、商品ではない個人所有の奴隷としては、初めてでもあったのだが。それを知るのは、もう少し先であろう―――

ご案内:「平民地区 大通り」からラフィティさんが去りました。
ご案内:「平民地区 大通り」からリスさんが去りました。
ご案内:「薬屋のテント」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 住宅地や雑貨屋が並ぶ平民地区の一角に、
許可を得て空き地に建てられたテントからは、美味しそうな甘い匂い…とすら言える方向が漂っている。

「ふふーっ♪ いいにおい… これなら、どんな美味しくないお薬も、
あまーく…おいしく飲めるんじゃないかな?」

王都の各地にテントで店を開いている少年薬師の、住居 兼 店舗。
そのテントで、弱めた焚き火のとろ火で煮込まれている鍋の中身は、
チョコや飴菓子、果物にクリーム… 様々なニュアンスを感じる、
お菓子作りの最中のような甘い香りが漂って、とても薬作りの最中とは思えない。

その鍋の前でちょこんと座りながら鍋の中の煮詰まる薬の面倒を見ている少年薬師。
あたたかそうに焚き火の火にもあたりながら、穏やかな時間と香りにうっとりとまどろむ

なんらかの、そのままでは苦くて飲むのが困難な薬を、
甘く、おいしく摂取できるようにする研究中のようで、「開店中」の札の下がった
店の入口…テントの天幕の外側まで、お菓子屋さんのような甘い匂いと湯気は立ち込めていく。

タン・フィール > やがて、鍋の中身はどろりとしたはちみつ状に、液状からトロミを帯びた紫色の汁となって…
それを湯気が立つ暖かさのまま、鍋を傾けて煮沸消毒した瓶にゆっくりと垂らしていく。

「さーっ、新しい元気になるお薬…♪ あした早速、おためしで売ってみよっと!
―――いや、そのまえに、ちょっとお試ししといたほうがいいかな?」

と、ぺろりと舌をのぞかせて、むしろその実験こそ自分がしたかったかのように、
瓶の中身が冷めたら、新作の甘味の薬を自ら試そうと、
楽しみな様子で瓶を手に、ぽんぽんと宙に投げてはキャッチして冷めるのを待ち…。

頃合いになると、きゅっぽん!と蓋を開いて、ほんの1~2適味見しようと、
ゆっくりと瓶を傾け、薄紫のトロトロをゆっくり口内に垂らしていく。

「んっ…っく、んく。
―――ぅん! おいし! なんか身体もポカポカあったまって…元気になってきたかも!」

と、味わいに満足、疲労回復の効果は即効性…と、ひとまずは少年の想定した通りの効き目の様子。
問題は、さして疲れていなかったのにそれを摂取してしまったことで…。

「…ん、…んんっ…なんか、ちょっと…ぽかぽかっていうか…ドキドキ。してきちゃった、かも。」

じわり、と汗ばみ始める肌。
ふ、ふ、と息が熱く、身体を動かしくてしょうがないような、もどかしい衝動が燻り始める。