2020/03/18 のログ
ご案内:「マグメール 戦士ギルド」にシロナさんが現れました。
シロナ > 戦士ギルドとは、傭兵や、戦士系の職業の者たちが集まり、自己研鑽や、働き口を探すためにあるギルドである。
 兵士と違うのは、国に士官するつもりが無い戦士が多い―――詰まるところ、一匹狼気質や、脛に傷のあるタイプなどが多いとも言える。
 あとは、貴族にへいこらしたくない―――自由が欲しい、冒険者としてもいたい、というのが多い。
 そんな荒くれ者の中に一人少女が混じっていた、まだ幼いと言って良い子供の姿ではあるが、その手にはハルバートを握り、訓練所で戦士と対峙しているのだ。

「あはは、愉しいね?」

 訓練なのか、それとも因縁をつけたうえでの喧嘩なのかは、今は議論する意味は無いだろう、ハルバート構える少女と対面するのは、苧殻で強面の戦士であり、体格も3m近い。その手には、体格に見合った大剣を持っているのだ。
 対する少女は、武器こそ大きさとしては互角であろう重量武器のハルバート、しかし、その体格は彼の半分以下の身長で、華奢ともいえる肉体、女として成熟し始めているが、女性と言うにはまだまだ若い、青い果実と言った処。
 そして、防具に至っては、男は全身を鎧に身を包んでいる純色の戦士であれども、少女の方は冒険者でも駆け出しが着るようなレザージャケットであり、盗賊系の技能者が、音を出るのを厭うから着るようなもだった。
 その場に居合わせる戦士たちから見れば、少女に勝ち目などは、無いと言える状況。

 だというのに、少女は、戦士に向かって笑みを浮かべて見せていた。
 挑発だと取られても仕方ないこと、判っているのかいないのか。にまっと口を引いて浮かべる笑みに、邪気は無かった。

シロナ > 強面の男は、その巨体に似合わずに素早く少女に向かって間合いを詰めてくる、己の膂力で、武器で、少女など一ひねりにできると考えているのは自明の理であり、周囲で様子を見ている戦士たちも、思いとしては同じと見られている。
 体格、武装、それらを考えてしまえば、見た目だけで判断をするのならば、彼らの思考や見立ては正しい、技術をというには、彼も、少女も武器は力任せに振るう物であり、技術と言うには大雑把すぎるのだ。
 接近してくる男の大剣、大上段に振りかぶってからの、唐竹、それは並の人間であれば真っ二つになるだろう、武器があったとしてもその武器を吹き飛ばして打撃を与えるに十分な威力。
 対する少女は、ニマニマと笑っているだけ、男が接近してくるのを眺めているだけとなれば、男の気迫に動けなくなっているとみる者も居るのだった。

 ―――しかし、大多数の戦士の、特に目の前で武器を振るう戦士の意図とは、かけ離れた事が起きた。

 耳障りな迄の金属音が響き渡り、大剣が動かなくなっている、少女の細い腕が持ち上げられていて、右手に握ったハルバートの柄が男の剣を受け止めていたのだ。
 どう見ても、華奢な少女―――まあ、裸になれば年相応には肉が付き始めていて、特殊な性癖なお友達であれば、ムラムラする程度ではあるかもしれないが―――身長を倍にする男の慣性の着いた大剣の一撃をまともに受け止められるような筋力には見えない。
 そんな細腕で受け止める姿は、魔法を使っているのか、と疑う者も出る位には、異質な状態である。
 驚きにあ然としている男に、少女は声をかけた。

「次は、あたしのばん、だよね?」

 可憐ともいえるローズピンクの唇が言葉を紡ぐのは、幼さの残るソプラノの声で、少女はにっこりと、可愛らしく微笑んで見せる。
 なおも力を入れようとする男の剣を受け止めたままで、せいやっ、と足を持ち上げて、足の裏で男の腹部を蹴り飛ばす。
 全身の鎧の男が弾丸のように跳ね跳んで、訓練所の壁にぶち当たる。
 そんな様子をハルバートを回転させて握りなおし、少女は、深紅の目で、見やるのだ。

シロナ > 暫しの時間が経つ、壁から出てきて反撃が来るものと思っていた少女は油断なく待っていたのだけれども、どぉやら、そんな気配がない。
 モクモクと広がっていた土埃が収まってきたところ、眼を回して気絶をしている男が見えてきた。完全に動く気配はないし油断を誘うという様子でもなさそうだ。

「……あ、れ?」

 嘘でしょ?と少女は目を丸くしながら構えを解くと同時に、係員だろう人が近づいていく。何やら治療魔法を使って居るのが見える。
 まじかー。と、少女は呟いた、あれだけ色々言って豪語していた男が、蹴り一発であんなふうになるとは。
 一応自分が人間ではないし、手加減をしていた、というか……竜としてのパワーもまだ使ってないのだ、それであれですか、と。

「見せかけの筋肉かぁ……やっぱ、鎧を着てるのは駄目かぁ……。」

 少女は、しょんもりとするのだ、家の麗しいお母様冒険者の人間の方は、もっと筋肉露出してるし、もっと強い。
 あんなにがちがちに守るのはやはり自分に自信が無くて弱い奴なんだなぁ、と誤解。
 少女はドラゴンなので、身を護るのは、基本的に鱗とかそっちの方での指向が強いのである。
 他に、こう、訓練相手になってくれるような筋肉は居ないのかなぁ、とくるぅり、と周囲を見回すと―――。

 みんな一斉に視線を外した、関わり合いになりたくないという雰囲気。

シロナ > 誰も名乗りを上げないし、視線を逸らす。それでいいのか戦士ギルド、因みに少女は戦士ギルドに出入りしてるが、戦士ギルドには所属してはいないのだ。
 何時も見学の名目で入り込んでは、男たちの筋肉を眺めてほぅ、と感嘆の溜息を吐き出しているだけだった
 たまたま今回は腕自慢の荒くれ者に見つかり、なんで小娘がというので、売り言葉に買い言葉そして、最初の状況だ。
 結果、今は見習いですらない少女にやられていいんですかー?と挑発しても誰も返答もしないし、視ようともしない。

「ちぇー。」

 ここに居ても、もう、筋肉見れないや。
 少女はそう判断したので、詰まらなそうに―――実際詰まらないのだが、舌を打ち、武器をしまう。
 そして、此処にはもう用は無いや、と、出て行くことにする。
 次は何処で筋肉を観察することにしようか、むしろ、此処が一番筋肉率多かったのになぁ、と。
 
「あーあ。ざんねん。」

 そんな風に、少女は、闇の中に溶け込んでいくのだった

ご案内:「マグメール 戦士ギルド」からシロナさんが去りました。