2019/12/16 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯/森」に白冥花さんが現れました。
白冥花 > ――…凛と、森の木々に降り注ぎ宵闇を照らす涼やかな月光。

歪んだ木々の絡み合う無名遺跡に近しい場所に存在する森と真逆に、その森の木々は生命力に真っ直ぐと夜空に向かい伸び、その枝葉は伸び伸びと広がり月光を程よく遮る。
大地はそんな木々に力を与えるように夜露で湿り、濃厚な土の香りで森を包み込み、小動物はその地を踏みしめ駆け巡る。

ここはメグメール(喜びヶ原)自然地帯の一角にある穏やかな小さな森である。
一歩踏み込めばその穏やかな空気と森の香りに誰しも安らぎを覚えるだろう。
それに闇夜に包まれているのに野生の獣の気配はあれど魔物の気配も瘴気もほとんど存在せず、狩りや採取も安全に行える、様々な条件が複雑に絡み合った結果生まれた土地であった。

しかしながら例外のない例外というものは存在しない。

その穏やかな空気を乱さない、瘴気や危険な気配を感じさせない、非常に危険な存在が静かに小さな森に蔓延り始めている。

それは森に存在していても何もおかしくない可憐な純白の花弁を持った花達、白冥花(ハクメイカ)と呼ばれる植物系のモンスターである。

その純白の花達は大地より生えるのではなく、この森では木々に絡みつく宿木に紛れ、真っ直ぐと伸びた木々に季節はずれの新緑色の蔦を絡ませて擬態しながら、ポツポツと真っ白い蕾や大小様々な花を咲かせている。

それよりも危険なのは月光を遮る枝葉より垂れ下がる蔦である。
月光をたっぷりと浴びて、その輝きを魔力へと変えてその身に魔力と力を宿した白冥花は上から垂れ下がりカーテンのような姿で森を歩くものを阻むことで、蔦を払ったものに絡みつこうとしている。

木々から蔦を伸ばすもの、上記のように木々から垂れ下がるもの、どちらにせよ何にせよ、近づくものがいれば純白の花は動き始める――…その者を苗床にして更なる大輪の花を咲かせ、この世界に広がっていくために。

白冥花 > 白冥花(ハクメイカ)

その繁殖方法は独特で雌しべが存在せず雄しべのみをもち、花粉をつかって受精するのではなく花の中に常に大量の種子を内包しており、苗床になりそうなニンゲンを見つけると蔦をつかい絡みついて捕縛し、雄しべを湿り気ある肉の中にもぐりこませ、そこで根を張らせ発芽させる。

場合によっては胸元や腹部にも種子を植えつけることがあるが、それは本当に極稀で大抵は……その先は被害者は身をもって知る事になる。

危険な植物である。
特にであるが狙われやすい、種子を植えられやすいのは
生命力、魔力、などを潤沢に内包した者、健康的な者や孕むほどに成熟した者で上記に該当するものは特に危険な眼にあいやすいだろう。

ここまでは冒険をしている者であればギルドを通じて既知である事が多いが稀に存在する白冥花の研究者であればもっと詳しく知っているだろう、特に白冥花に襲われたのに開放されたものがどれだけ危険か……などだ。

あとは白冥花がどれだけ莫大な財と有益な効果をもたらすかも知っているだろう。

月光を浴びてそれを生命力に変えて生きながらえる純白の花弁を持つ大輪の花。

今宵も森のあちらこちらで大輪の花を咲かせ、緑一色の穏やかな森を雪のように彩り、濃厚なる緑の香りにほんの僅かだけ甘い香を交えて、森に入り込むニンゲンを森の奥へ純白の花の傍へと誘っている。

危険ではない甘い香り。
だが危険な感じのしない香り、違和感を感じさせない香りこそ、何より危険であるのだ。

何故なら香りに引寄せられて気がついた時には手遅れになるのだから。