2019/11/27 のログ
■クレマンス > 「うふふ…そうですね。あまり記憶のない少女時代を謳歌しているのやもしれません。
特別で唯一な着せ替え人形を手に入れてしまった気分です。……失礼しました」
同性の衣服を着用しているからか、恋人でありながら友人のような気分にもなってくる。
楽しそうという点については正直に肯き、あまりにはしゃいでしまったことに唇を結んだ。
まだその口元に微笑みが残ってはいるが。
「それは…期待してしまいますね。私はほとんど上流社会を存じ上げませんもの。
きっと慣れれば私とは比べ物にならない優美な女性となるのでしょう」
誰も気づかないのならば富裕地区でもよかった気がするが、そこは本人が耐えられないということなのだろう。
重ねられた手は恋人のそれではなく、完全に男女逆転しているか、もしくは息女と従者。
二人の姿は店から出ると足元に注意しながら階段を下り、通りに戻る。
地理には詳しくないが、ここから平民地区に出るとなると少しばかり富裕地区も歩かねばならない。
公園から歩いて来た現在、今更馬車を呼ぶというのも手間と時間の無駄に思えるし、
とりあえずは人の流れに沿うように歩を進めてみよう。
「私の道案内でよろしいのですね?
……えぇ、富裕地区はほとんど調べていないのですが、平民地区は以前興味のあるお店を調べたばかりです。
場所がわかればご案内しますわ」
いつの間にか己が恋人を楽しませる役に変わったらしい。
ならばと何事か考えるように視線を逸らし、微笑んだ。
目的の場所へ。そう思ったのだが、不意に聖女の手が“少女”の手から離れる。
「あ……申し訳ございません。先程のお店にハンカチを忘れてきました」
予想以上に今の姿が似合っていたため、うっかりしていた。
まだそんなに離れていない店に戻るべく、聖女はスカートを靡かせながら慌てて戻っていく。
必要な時間はほんの数分のはずだ。
その数分の間に、とある長身の男性が“少女”に近づくように歩いて来た。
“彼女”よりやや年上の10代後半といった容貌の男性は、ホーレルヴァッハ家ほどではないものの、それなりに名家出身の貴族だった。
――――つまりは、早速遭遇した顔見知りである。
見目も態度も社交界の人間にしては爽やかな類いの彼が、気の強そうな美しい少女に気づくと薄く微笑みながらさらに近づく。
こんな道端で、どうやら運命の出会いと言うべきか。好みのタイプだったようだ。
『こんにちは』などと当たり障りない言葉を選び、“少女”に声をかけようとした。
ご案内:「設定自由部屋」からクレマンスさんが去りました。
ご案内:「設定自由部屋」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。