2019/11/26 のログ
ご案内:「設定自由部屋」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ご案内:「設定自由部屋」にクレマンスさんが現れました。
■クレマンス > 「変装の意味で購入されるのも良いかと思いますわ。こう申してはなんですが、
ギュンター様は執務に励んでいらっしゃるお時間が長く…たまには気晴らしをなさいませんと心配になってしまいます」
そこまで嫌がってはいないが、まだ不服そうな気配の残る恋人を納得させようともっともらしいことを言ってみる。
勿論それも本音のうちではあるものの、のほほんと見えて腹黒さも見え隠れしている彼女、
美しい中性的な少年を着飾らせるという楽しみに目覚め始めている…気も。
「それにお忘れではないと思いますが、私は一応……聖職者ですから。
なるべく質素に過ごさなくては様々な方面に顔向けできません。
あぁ、よろしいのです。彼女の体型にぴったりと作って頂けますか」
二人の会話を邪魔せぬように、だがしっかりと聞いていた店員が
このまま採寸していいのか気にしてこちらを向いたのを見て、聖女はにこやかに返答する。
挙句の果てにとうとう恋人を“彼女”と表現しておいた。
“彼”がこれを脱ぐまでは少女という体で接することにしたらしい。
そして案の定不穏な発言を察し、持ち掛ける前から拒み始めた恋人を振り返って目元に影を落とす。
「―――――せっかくお召しになったのに…お美しいのに…もう脱がれるのですか…?」
そう長時間ここに滞在しているわけにもいかない。
そろそろデートの続きをとなると、せっかくアクセサリーまで揃えた一式を脱がなくてはならない。
その寂しさを言葉にはせず、だが表情にありありとのせてみた。
「私は……平民地区の散策でも構いません。
ギュンター様はあまり馴染みのない地域かもしれませんけれど、二人で迷いながら楽しんでみるのも…いかがです?」
加えて提案してみるという徹底ぶり。
さすがに本当に知り合いに出会わせてしまっては(最悪の事態を予測しているわけではなくとも)可哀想だし。
平民地区こそ雑多な種族と立場の者が入り乱れ、気づかれることはないのではないかと。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「…態々変装する様な状況に陥る事は余り無いのだが。
気晴らしが必要なのは理解するが、ううむ…」
その気晴らしが所謂女装というのは如何なものなのだろうかと、と至極当然な疑問を抱きつつも、彼女の言葉を無碍にする訳にもいかず悩まし気に視線は彷徨い始める。
着慣れない女性物の衣装を纏った事によって些か冷静さを欠いている事もあって、結論の出ぬまま聖女が続ける言葉に耳を傾ける事になる。
「むう。まあ、施しを与える聖職者が派手に着飾っているという訳にもいかぬしな。お前の言い分も理解――
――待て。今聞き捨てならぬ事を言わなかったか?」
華美な衣装を拒む理由は確かに納得のいくもの。
だからこそ、無理強いは出来ぬかと頷きかけたその時。
"彼女の体型に"と告げた恋人の言葉に思わず真顔で聞き返す。誤解を解くどころか此れでは此の店の店員は己を少女だと勘違いしたままではないかと。
それが彼女の狙いだとは露知らぬまま、陰を纏った彼女の姿に詰め寄ろうとした勢いはたたらを踏む事になる。
「……元々試着だけと言っていたじゃないか。第一、此の姿で富裕地区を散策するなど――」
やんわりと元の服に戻す流れへと転換しようとした試みは、彼女が続けた言葉と浮かべていた寂し気な表情によって敢え無く失敗の憂き目を見る事となった。
「………ええい、分かった!着ていれば良いのだろう着ていれば!但し、富裕地区はもう歩かぬぞ!真直ぐ平民地区。適当に商店街を散策して、馬車で屋敷迄帰るのだ!」
根負けとやけっぱちが入り混じったかの様な勢いで彼女の提案を受諾する。
因みに、商店街と指定したのは迂闊にギルドだの商館等が立ち並ぶエリアに立ち寄れば知人に会う可能性が高くなるだろう、とこんな状況でも算盤を弾き続ける損得勘定が導き出したものであった。
■クレマンス > 「ギュンター様が貴族のお一人ではなく、何の責もない個人であったほうが気晴らしもしやすいと思いませんか。
たまには羽目を外して……なんて、きっと誰しも楽しんでいることなのでしょう」
甘い。実に己に甘い。
思わず笑ってしまいたくなるのを神妙な面持ちで我慢する。
恐らくは他の者であれば二の句が継がせぬまま振り払うのだろう提案に、
ある程度の理解と柔らかな態度を見せる恋人は“可愛い”という表現が最も似合っていた。
当然ながらそれは女装のおかげではなく、内面の話だ。
こんな状況であっても耳聡くツッコミ入れられた件については、私何か申しましたかといった表情でとぼけておくことにする。
その間も店員は採寸を手早く済ませ、10代と見られる少女としてスリーサイズがデータに残るのだろう。
あまりにも細く華奢で、胸や臀部の膨らみに乏しいデータが。
「まあ。本当ですか。嬉しいです」
―――紆余曲折あったが結局折れてくれた恋人に、聖女は表情を明るく一転させた。
いくら己も初対面で性別を間違えた容姿とはいえ、
本人の選ぶ物はどれも貴族の少年として相応しく、完全に付き合いでのこの姿なのだろう。
ぴしゃんと言い放つ彼を見ると少々やり過ぎて可哀想にもなってくるが、そう何度も使える手ではない。
今日だけは利用させてもらおう。
「この時期、すぐ日が暮れてしまいますもの。早速参りましょう。
それにしてもギュンター様、意外と平民地区にもお詳しそうですね…?」
購入した物の諸々の手続きについては、店員が後はすべて手を回してくれるだろうと、聖女は右手を差し出す。
謂わば―――エスコート。
己は言葉通り派手でない身なりをしているから、従者か何かのように見えるかもしれないが。
歩き慣れないであろう恋人が転んでは早々と機嫌を損ねそうだとの予測もあった。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「…何の責も無い個人?ホーレルヴァッハでは無く、唯のギュンターであれという事か。想像した事も無いな。私にとっては、名前ではなく家名が常に絶対のものだからな。
……だがまあ、羽目を外すという事の大切さは理解しているつもりだ。少なくとも、今のお前は十分楽しそうに見えるしな、クレマンス?」
最期の言葉は、軽いジト目と共に。
恋人が羽目を外しているとまでは謂わないが、己に着せる洋服を選んでいる時の彼女は実に楽しそうに見えた。偶にはこういう刺激が必要なのだろうと、半ば強引に自分を納得させる。
それでも、それが女装と言う結論に至った事実には未だ釈然としないものがあるが。
そんな会話の間に行われる採寸には、無意識に身体を動かしたり測りやすくする事によって捗らせてしまうのだろう。
これは日頃仕立ての服ばかり纏っているが故の癖の様なものであったが、はたと気が付いた時には全て終わってしまっていた。
己の生活環境を恨みつつ、それでも表情を明るくさせた彼女を見れば自然と此方の頬も緩むというもの。
「…まあ、流石に此の姿形で私だと気付くものはおるまい。
それに、こう見えて演技は得意な方…というより、見慣れていると言った方が正しいか」
伊達で王族の嫡男を務めている訳ではない。有象無象蠢く社交界で見聞きした淑女達の行動は、多少は見慣れたもの。
「詳しい、という程でも無いがな。官公庁やギルドには赴く事もあるから、其処を避けたいだけだ。
――そうだな。それじゃあ、宜しく頼むよ。精々、私を楽しませる様に」
彼女の疑問に答えつつ、差し出された右手にそっと手を重ねる。続ける言葉は未だ男口調ではあるものの、幾分我儘な令嬢、と言う様な素振りと雰囲気を纏うだろう。
そして、彼女の気遣いに応える様に。静々と嫋やかに、慣れぬ女性物の靴で足取りを乱さぬ様に。浮かべる表情は穏やかかつ物憂げな少女の雰囲気を纏うのだろう。
あんまり過剰に少女の様に振る舞うのはどうなんだろうか、と漸く落ち着きを取り戻した理性が首を傾げる。
しかし、恋人が楽しければ良かろう、と脳内会議は結構雑に締め括られる事になる。