2019/10/09 のログ
■クレマンス > 「あら。まあ」
てっきりドレスだけを適当に着てお終いかと思っていた聖女は、感嘆の声をあげる。
このままダンスパーティーへ行けそうな雰囲気だ。
細身なこともあり、いくら10代であってもこの年頃の少女にしてはありえない胸の薄さ以外は貴族の令嬢そのものだった。
お似合いですよ、と言った言葉がスタッフと聖女のものと重なる。
「私の選んだ物は普段着ですから。代わり映えしないと思いますわ。
それより私、あまり浪費しては…と申しましたが、ギュンター様のお召し物に関してはセットで購入したほうがよさそうですね」
女物の靴を彼が持っているとは思えないし、己はほとんどアクセサリーを使用しないため、貸すこともできない。
二人の会話を聞いていたスタッフが少女(少年)に近づき、失礼します、との断りとともに採寸を始めた。
華奢な体型に合わせて詰めたほうがよい箇所は多々ありそうだが、
胸は特にきちんとサイズを測らねばならず、メジャーが膨らみのないそこを回る。
思わず聖女が笑ってしまったが、声を出さなかったためスタッフには気づかれなかった。
少年には―――その顔が見えてしまっただろうが。
「私ではそのサイズは入りません」
胸だけでなく、腰なども少年の華奢さと女性のふくよかさでは全然違う。
さすがにこれを彼の私室に置くわけにはいかないだろうから、己の部屋に保管するのだとしても。
「……やはりこの地区では、お知り合いに会われる可能性が高いですか?」
聖女がおもむろに窓へと視線を移しながら、不穏なことを口にする。
不穏だと気づくのは彼だけだろうが。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「……その、何だ。もう少し笑ってくれないか。似合っていると困るんだが」
綺麗に声を重ねた店員と彼女に恨めし気な視線を送る。
とはいえ、声を荒げたり不機嫌になる事は無い。単純に衣服のデザインが良いからだろうと自分を納得させつつ。
「ふむ、そうか?どんなものであれ、普段と違う衣服を纏うお前を見てみたいものだが。
……何となく察してはいたが、やはり是は私のものになるのか。と言うよりも。自分の物を選ぶより楽しそうだな、クレマンス?」
店員が採寸を始めた辺りで、その表情は深い諦観を帯びた物に変わる。流石に胸囲を測られた時には、この店員はまだ気づかぬのかと言わんばかりの表情をしていたのかも知れないが。
そして、店員に気付かれぬ様に笑みを零した恋人にジト目を向ければ、その言葉にもそんな色が含まれた物になってしまうだろう。
「…サイズは変えれば良いでは無いか。お前にも、こういう華やかな衣服は似合うと思うのだが…。何より、私に似合っても仕方がないというか…」
とはいえ、店員の手前その不満を明け透けに曝け出す訳にもいかず。彼女にも似合うだろうと告げながら、改めて己の姿に視線を落として溜息一つ。
「……高いどころの話では無いな。そしてクレマンス。念の為言っておくが、試着だけだぞ。出ないぞ。外には出ないからな」
此の姿を知人に見られたら、己の召喚術を最大限に開放してしまうかもしれない。具体的に言えば、魔力が尽きるまで巨人の群れで王都を蹂躙しかねない。羞恥心だけで。
そんな未来を防ぐために、採寸されながらむすっとした洋上で彼女に告げるだろう。
まるで駄々を捏ねる少女の様になってしまったのは、既に本人の意識には無い。
ご案内:「王都 富裕地区」からクレマンスさんが去りました。
ご案内:「王都 富裕地区」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
ご案内:「薬屋のテント」にタン・フィールさんが現れました。
■タン・フィール > 住宅地や雑貨屋が並ぶ平民地区の一角に、
許可を得て空き地に建てられたテントからは、美味しそうな甘い匂い…とすら言える芳香が漂っている。
「ふふーっ♪ いいにおい… これなら、どんな美味しくないお薬も、
あまーく…おいしく飲めるんじゃないかな?」
王都の各地にテントで店を開いている少年薬師の、住居 兼 店舗。
そのテントで、弱めた焚き火のとろ火で煮込まれている鍋の中身は、
チョコや飴菓子、果物にクリーム… 様々なニュアンスを感じる、
お菓子作りの最中のような甘い香りが漂って、とても薬作りの最中とは思えない。
その鍋の前でちょこんと座りながら鍋の中の煮詰まる薬の面倒を見ている少年薬師。
あたたかそうに焚き火の火にもあたりながら、穏やかな時間と香りにうっとりとまどろむ
なんらかの、そのままでは苦くて飲むのが困難な薬を、
甘く、おいしく摂取できるようにする研究中のようだ。
ご案内:「薬屋のテント」にセイン=ディバンさんが現れました。
■セイン=ディバン > 「……フフッ」
そんなテントの近くで、微笑む女が一人いた。
なにやら、悪巧みしているのが見え見えな笑顔。
口元を押さえつつ、肩を揺らし。
女は、テントへと近づいていく。
そのテントの中にいる人物への用事を片付ける為に。
……用事、と言っても。言ってしまえば、ちょっかいをかける、というのが用事なのだが……。
ご案内:「薬屋のテント」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「薬屋のテント」からタン・フィールさんが去りました。
ご案内:「市街地」にメリュジーヌさんが現れました。
■メリュジーヌ > 本来であれば街が眠りに落ちるには、まだ早い時刻──
しかし、その界隈はしん…と静まり返っており、一足先に眠ってしまったかのようだった。
特に裏路地ともなると、人とすれ違うのは珍しいくらいである。
ただ、この界隈を経由して移動する者などが、たまに見かけられはした。
■メリュジーヌ > そんな場所で、何の目当ても無さそうにぶらついている女の様子は、異端だった。
先ほどすれ違った酔っ払いなど、「おおっ」と驚きの声を漏らしたほどである。
さて、女が何をしているのかと言えば──
人漁り、である。
欲望の捌け口を探して、ふらりふらりと彷徨う姿は不規則に飛ぶ蝶の如く。
ご案内:「市街地」にバルジリスさんが現れました。
ご案内:「市街地」からメリュジーヌさんが去りました。
ご案内:「市街地」からバルジリスさんが去りました。