2019/04/28 のログ
ご案内:「薬師のテント」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 王都の中の空き地に、許可を得て設置されているテント…。
其処は、知る人ぞ知る少年薬師が住居として、或いは店舗として構えた小さな一国一城。

「へくちょ…くちゅ!  へーーーっちょ! 
うぅー…急に寒くなるなんて、ズルイよ、おてんき。」

其処の主の筈の少年は、盛大なくしゃみと微熱に悩まされていた。
春先の気温の変化に、露出の高めな服装の上に外套を羽織るのをうっかり怠りながら、
朝も夜も薬の研究に没頭してしまった。
医者…もとい、薬師の不養生、不覚。

さて、薬師が自慢のはずの、即効で病魔を蹴散らす薬を何故飲まないのかというと…。
作ったはいいけど、猛烈に、かつ長時間、苦くて不味いのである。

舌先に無効1~2時間、子供自他の少年には耐え難い苦味が残り、
咥内と喉を殺菌し続け、鼻、喉、熱に効く有効成分を送り続ける。

作っておいてなんだが、それがどうにも耐えられず…
かといって、薬師が体調を崩しているのを誰かに見られでもしたらと思うと、
どう考えてもさっさと治してしまうべきで。

テントの前で、暖を取るための焚き火の前で…
薬包と、ぬるま湯を目の前に、うーんと子供っぽく膝を抱えて悩んでいた。

タン・フィール > 「…でも、もしこれを美味しいアメみたいな味にできたら、とっても幸せだよね……
う~~ん、なんか、やる気出てきちゃった…っ!」

と、子供らしい発想か、才覚か天禀か。
圧倒的な苦さの地獄を克服するための研究に精を出すことを誓う。
…あまり根を詰めると、それはそれで熱が上がってきてしまいそうではあるのだが。

味覚に作用する薬は知っていても、優れた味覚や料理に造詣が深い訳ではない。
料理本の1つでも買ってみようか、誰かから料理やお菓子作りを学んでみようかとも、
焚き火の前でうとうとしながら思案して。

タン・フィール > 「―――…よし!」

懐から、熱や火気をまたたく間に奪う、消火に適した粉薬を取り出して、
ほんの僅かに指先に粉が付着する程度乗せると、焚き火に向けてフッと息を吹きかける。

その途端、そこそこの火力と大きさの焚き火が、ロウソクの火を吹き消すように
呆気なく、完全に、安全にかき消えた。

それと同時に、いそいそとテントの中に戻って、
温かいお茶をお供に、ごろごろとベッドに寝転びながら薬の研究を始める。

ご案内:「薬師のテント」からタン・フィールさんが去りました。