2019/04/22 のログ
ご案内:「魔物の巣の跡」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 数十年前までは、近隣の村々からは恐れられた洞窟。

様々な目撃例や被害届の出ていた、魔物の巣とされる郊外の洞窟…。
けれども、ここ数年はぱったりと、それらの情報は途絶えていて、
近々、冒険者ギルドか王都の軍が調査隊を組んで派遣されるのではと噂されていた。

薬師の少年は、そうした集団にあれこれあらされる前に、
薬の原料となる、魔物の抜けた体毛や牙、食べかすなど、
魔物の残滓と痕跡を求めて、先んじて単独潜入に乗り出し…見事に迷った。

「うぅ…魔物が出ないのは助かるけど… 出口、見失っちゃった…」

情けない独り言を漏らしながら、頼りなげな瞳を照らすのは、
これまた心もとなく揺れる松明の光。

こつ…こつ…と慎重な足音が、洞窟に響き渡る。

ご案内:「魔物の巣の跡」にネコさんが現れました。
ネコ > 『……調査記録。魔物の生存の様子なし、と』

洞窟の中、一人の少女が記録用水晶にそう囁き、辺りを見る。
薄暗い闇も、少女が目を凝らせば明かりなど必要無いくらいに鮮明に見える。

『さて、もう少し探索したら帰ろうかな』

一人呟く少女は、ゆっくりと洞窟の中を歩く。
何故かメイド服姿の少女、こう見えても冒険者であり。
本格的調査チームの編成前に、危険の有無について軽く調査を依頼されたのである。

『……ただ、なんだろ。
 なんか、いる気はするんだよな……』

細巻を咥えながら周囲を警戒する少女。
魔物の気配は無いが。風の流れや臭いから、なんらかの生物の気配を感じ取ってはいる。
しかし、いまだにそれに遭遇しないまま、調査はそろそろ終り、という感じ。

タン・フィール > そう入り組んだ仕組みの洞窟ではないが、闇に不慣れな少年が、
「もし、あの曲がり角から何か飛び出してきたら嫌だ」と、
さほど優れても居ない直観にまかせて進めば、自ずと迷い込む。

その規則性の無いまったくの無駄足や、理屈に合わない足取りが、
生身の人間よりも数段優れた近くと、冒険者のキャリアを持つメイド服の少女と、
薬師の少年の遭遇を間延びさせていた。

大まかに洞窟の内部を確認し終えた少女が、元来た出口へと戻る最中、
まさに、曲がり角の先から徐々に近づいてくる少年の松明の明かりが見える。

その足取りや、開けっぴろげな明かりはどう考えても悪意を持って潜んでいるとか、
何かを襲うために待ち構えているようなものではなく…
そのままもし少女が歩みを進めるなら、曲がり角でばったりと出くわすだろう。

「うー、ここもさっき曲がったような気がするんだけ―――ッ……!」

小柄といえる少女よりもさらに一回り小柄な体躯が、
松明に映し出された相手を見上げる。

驚きのあまり、悲鳴だとか声を上げることも出来ず、
野良猫や小動物が、ばったりと人間と目があってしまった時のように、
真正面に相手に向き直って目をまんまるに見開き、硬直…。

ネコ > 以前は相当に魔物がいたらしいのだが。
ここ最近はまったくもって気配なし、平和な洞窟。
そう聞いていた通り、罠もなければ、敵もいない。
これは調査が後回しになって放置されるのも納得だな、と少女は考えるが。

『……?』

そうして奥に向かって進んでいけば、前方から明かりの光が見えた。
同業者か、あるいは。そう考え、武器を構え身を潜める少女だったのだが。
明かりの揺れ方。つまり歩き方が、明らかにおかしい。
魔物だとしても、冒険者だとしても。素人臭すぎるのである。
毒気を抜かれ、体を乗り出す少女。
それと同時に、相手の姿を見ることになれば。

『……あん? んだよ、タダのガキかよ……。
 おいボウズ。この洞窟にゃあ魔物はいないって噂だけどな。
 それでもお前みたいな子供一人だとあぶねぇぞ』

目の前に飛び出してきたのは、自分よりなお小柄な少年。
これはどう考えても魔物、冒険者、何らかの術者でこの洞窟を根城にしていた、なんてこと。どの可能性もないな、と少女は息を吐く。

『一応、アタシは依頼でここの調査に来た冒険者だ。
 ここには魔物は残ってない、って報告するつもりだけど。
 その後の本格的な調査団が来るのに、お前さんみたいな迷子がいたら困るわけだ。分かるか?』

左手で相手を指差しながら言う少女。完全に相手をタダの子供と見下している。

タン・フィール > 「―――んなっ…!」

出くわした少女が、息を吐きながら告げる、子供相手の言葉。
それが聴覚から脳に届いて我に返るまでの数秒。
数秒、野生の世界や冒険者にとってみれば、致命的な一瞬が何度あっただろうかという間と隙を経て、漸く少年は憤慨した様子の声をあげる。

「ぼ、ボクは冒険者…じゃっ、ないけど…薬師のお仕事で来てるんだから!
ズサンな冒険者とか調査隊の人に荒らされちゃう前に、大事な魔物の痕跡をとってたの。」

【ズサンな】という部分をわざわざ強調して、声変わりのない声で告げる。
シャツの内側から、小さなガラス瓶に入った魔物の体毛や牙などの戦利品……
それに交えて、ちらちらと、ほらほらと見せつけるのは、
薬師として各地の遺跡等への出入りを任された、自由業のライセンスの紙切れ。

「ただの子供扱い、しないでよね! 一応これでも戦える方法だって、用意してたんだから。」

と、それらに交えて、便を割れば発火する油や、毒霧を発生させる丸薬など、
冒険者が逃げの一手を打つ時に御用達の護身グッズを…
相手の力量も測れぬまま、どこか誇らしげに見せびらかして。

少女の予見通りの、素人で、子供で、迷子であったことを指摘されるほどに、意固地になってつっぱねたくなる。
頬を膨らませて、ふいっとそっぽを向く小さな体から、薬草や毒消し、
様々なクスリの香気が滲むのだけが、
ライセンス以上にこの子供が、薬と触れ合って生きてきた証で。

ネコ > 少女の失礼な言葉に、見る見る内に怒りを湧き上がらせるその様子。
更に、続いて溢れてきた言葉に、少女は少し驚いたような様子を見せる。
冒険者相手に気を吐ければ、まぁなかなか立派なものだ、と。

『あ~そうかい。そりゃあ悪かったな。
 ……ん。そのライセンス、本物か。
 そりゃあ重ね重ね悪かったな、ボ~ヤ』

相手の主張を認め、更にちら、と見えたライセンスから。
相手が薬師であるということを確認し、少女はまた殊更にバカにしたように言う。
相手の回収した戦利品から考えるに、どうやら奥にも危険は無いようだな、と判断。
記録水晶を取り出す少女。

『調査記録。洞窟内で自由業の薬売りと遭遇。
 洞窟深部より戦利品を回収していたことから、やはり脅威としての数値は低く。
 調査団の派遣は、急を要するものではないと思われる』

そう記録しながら、相手を見る少女。なるほど。
丸腰の素人よりは幾分準備も整っているようだが。
少女から見れば、それはあくまでも護身というか。
戦闘用の装備とも思えない。

『はいはい、立派立派。立派でちゅね~。
 それで、奥には魔物。いないんだろ?
 だとしたらアタシの仕事は終りになるんだけどよ』

相手の拗ねるような、怒るような様子を更にからかいつつ。
相手にケガなどがないことから、最終確認を口頭で。
その間に、相手が自身の見立て以上に薬師としての経験を積んでいるようだ、と察すれば。

『もしよければだけど、アンタの手伝いしてやってもいい。
 あんた一人じゃ、目ぼしい戦利品も少ししか持ち帰れないだろ?』

そんな提案を、唐突にする少女。
さて、相手は気付くか。少女の目が、爛々と怪しく輝いていることに。
そして、少女の右手が存在しないことに。

タン・フィール > 「ほんもの、ほんもの! …お姉ちゃんこそ、本物の冒険者さん?」

と、冒険者らしからぬ出で立ちを、大きな目を半分に開き、少し疑わしそうな目と声色で語る。

―――が、薬師の店に訪れる冒険者たちを見て、誰も彼も皮や鉄の鎧や、
冒険者然とした容姿ではないことも重々承知している。
声色ほどは疑っておらず、それは記録水晶に簡潔に経過報告を残す様子からも察した様子ではいて…。
要するに、あまりにもささやかな反抗心で、言ってみただけだろう。

「~~~うー… んんッ、こほん、 そりゃ、どうもーっ…」

子供相手にあやすような物言いに、おそらく喉元まで、さらなる反抗の類の言葉が出かかる。

なんなら火炎瓶の1つでも目の前にぶちまけておどかしてやろうか…とも考えたが、
相手がプロの冒険者だとして、さして効果も無いだろう。
それこそ稚気の癇癪意外のなにものでもない、と飲み込んで、
僅かでもオトナな態度を見せようと意地を張って

「うん、迷っちゃったからこのあたりの階層ならぐるぐる何度も回ったし、
少なくとも襲ってくるような魔物はゼンゼンだったよ。

洞窟ぜんぶを把握できてるわけじゃないから、もしかすると最深部とかに何かあるかも…だけど。」

と、無意識に迷子になってしまっていたことを認めつつ、
これは近隣の村のためにも、冒険者と薬師の現在の安心のためにも、
素直に答えなければと確り応える。


「う……その…それは正直、すっごい助かる、かも。
おっきな牙とか、骨とか、持ちきれないものもいくつかあったし…
…ヘンに奥まで行っちゃうと、もっとまいごになりそうだったし…

――でも、重いものとか、へいき?」

く、と悔しそうに目をそらしたことで、
対する少女の貌が思いの外整ったミレーと見受けられることは承知していたが、
その目に宿る妖しさを近くするまえに、恥ずかしげに視線を切ってしまった。

その紅い瞳が次いで向けられたのは隻腕の方で…
荷を運ぶ手伝いに支障はないかと、自身と…ちょっとの心配を相手に向けて

ネコ > 『相手にそうやって聞く程度には知識あんのね。
 ホラ、冒険者免許』

相手に失礼な物言いをしていたので、斬り返しには素直に応じ。
相手に取られないようにしながら、冒険者免許と、その登録番号を見せる。
相手がもしも知識があるなら、それは間違いなく本物の冒険者としての証だと分かるだろう。

『お、癇癪我慢できてなおえらいでちゅね~』

相手が喉元まででかかった怒りを飲み込んだのを見て、からかいつつも。
やはりある程度商売をしている以上、内面をコントロールできる部分はあるか、と相手の評価を改める。
こうなってくると、あまりからかってしまうのも悪いな、と思い。
そういう思いが手伝いの提案をさせたのにも繋がってはいるのだが。

『そっかそっか。……って言っても。
 この洞窟の地図自体はギルドにもあるからな。
 奥に何かあるなら、魔物や罠が配置されてるさ』

つまり、このダンジョンはいよいよ本格的に危険が無いということになり。
だったら、わざわざそんな場所まで来たのだから。
一つ、美味しい目でも見ていないとやってられないよなぁ、と少女悪巧み。

『じゃあ決まりかな。って言っても。
 アタシも冒険者だから、タダ働きはしない。
 アンタの手伝いをした分、報酬はしっかりもらうからな?
 あぁ、気にすんな。もう慣れた。片手だろうがなんだろうが、仕事はできるさ。
 ……それとも、腕ェ無くしたみすぼらしいミレーなんて信用できない?』

気遣うような言葉に、少女は微笑みながら相手の顔を覗き込み、そう言う。
もしかすると、その瞬間、相手には少女の(決して豊満とは言えないいやむしろ薄いのではあるが。やはり膨らみはしっかり女性なのでかろうじて存在している)胸の谷間などが、メイド服の胸元から見えてしまうかもしれない。
相手が視線をそらしたのに気付けば、少女は逆に相手の体を眺める。
主に、首とか。腰とか。尻とか。……股間とかを。

タン・フィール > 「―――むー…くやしいけど、ほんもの。
…なんで、メイド服?」

と、首を傾げつつ凝視した冒険者免許と、確りと記載された番号に頷いて。
次いでからかいの言葉を投げかけられれば、ふすーっと鼻で息を吐く音をたてながらも…

まさに、【冒険者に対する薬師】としての面を顕にすれば、
自分の感情や、子供扱いしてくる相手も多少御しやすくなるのだろうかと思いを巡らせた矢先、
ギルドにはこの洞窟の地図があると耳にすれば
「え、うそ、そんなのあったの、ほんとっ!?」と、間の抜けたリアクションをとってしまった。


「こ、こほん…。  も、もちろん、ちゃんと仕事をしてくれたら、
ちゃんと報酬ははらうし…もし、ちゃんとしてくれなかったら、
『腕ェなくした、みすぼらしい、つっかえないミレー』って、
ボクのお店に来た人に触れ回っちゃうんだから。」

ふふ、と悪戯っぽく笑いながら

「…くやしいけど、きっと、ちがうんでしょ?」

と、振り返った先に、メイド服から僅かに覗く、薄くとも確かにある柔らかそうな膨らみや、
少女…女性のもの、と気づく、メイド服の可憐さ、声…
なんだか妙に意識してしまってもじもじしてしまう。

彼女の視線が、小柄な細首や鎖骨、大きいサイズのシャツ越しでも判る細い腰、
まだ成長期前で丸みのあるお尻…素足の先にあるであろう股間と、
たっぷり見つめられていた事には気づかない。

「―――それで…前払い? 今、そんなに持ってないけれど…。」

ネコ > 『本物の冒険者じゃなきゃ、こんな洞窟来ねーだろ。
 ……本職はメイドなんだよ。冒険者は副業』

相手の質問に答えつつ、少女は懐からダガーを取り出し、メイド服の布地に当ててみせる。
刃を引っ掛け、ぐいぐいと引っ張っても破れぬそれは、少女が雇用主の冒険者から貰った特別なメイド服の証であり。
一見タダのメイド服ではあるが、防刃耐火対衝撃対電撃対氷結仕様の一級品なのである。

『そりゃあ、ダンジョンを管理してる国営迷宮管理課とかには、地図とかはあるだろ。
 基本外部の人間の閲覧不可。情報の更新も10年に一度、とかの。
 お飾りの迷宮管理だけど』

相手の食いつきに少女はしれ、っと答える。
国内のダンジョンの数は大小合わせれば数百を優に超える。
そんなもの、まっとうに管理はできないし、しても意味は無い。
あぁ悲しき箱物行政、ということで。たまーにダンジョンの状況の確認が依頼されたりするのである。

『安心しろって。仕事はきっちりやるさ。プロだからな』

相手の笑みと声を受け止めながら、少女も不敵に笑うが。
相手がなにやらもじもじと身じろぎし始めるのを見れば。
微かに、ちろり、と舌で唇をなめ。少女、いよいよ行動開始であった。

『ん~。そうさなぁ。まぁ、まずはお前さんが回収したい物のある場所へ行くか。
 量とか。重さとか。そういうの確認しないと報酬額も決められないしな。
 あぁ、そういえば。アタシはネコ。本名は捨てた』

にたぁぁぁ、という笑みを一瞬浮かべた後、それっぽいことを言いながら、相手を奥へと連れ戻そうと画策する少女。
そこで名乗っていないことに気付き、少女は改めて自己紹介し、相手に握手を求める。
もしも相手が応じたのなら、ゆっくりと洞窟の奥へと向かうだろう。
完全にジャマの入らない、二人きりになる為に。

タン・フィール > 「へぇ! ぜったいシュミで着てるんだと思ってた!
…本職メイドで副業で冒険者……どんなヒトが、ごしゅじんなんだか…」

おまけにそのメイドの衣類ときたら、上質な生地に上品な装い…どころか、
それにキズも染みも焦げ目も付けられなさそうな冒険者仕様。
ますますこのメイドにも、ご主人も、得体が知れないと思いつつ…

一方で把握できてきた、薬師の自分では把握しきれないでいた、
冒険者としての場数が教えるダンジョンの探索の仕組み、その一端に、
興味深そうにフンフンと頷き、見上げる様子は、勉強熱心な子供特有の熱い眼差しであった。

「オーケー、じゃあ…ええと、どっちからボク、来たんだったっけ…?
た、多分、こっち!」

と、自分が先程通ってきた、遭遇した曲がり角の方を指指す。
そこは、洞窟の更に深部へと至る道で…

少女の思惑や動向に、「からかい好きの冒険者」以外のものを未だ見出していない少年は、
無警戒に差し出された手に小さな手を重ねて、握手。

「…ボクは、タン。 タン・フィール。
王都とかでちょくちょく、薬師のテントで、お店してる。
―――よろしく、ネコさん。

…、ちょっと怖いから…手、つないだままでも、い?」

握手から一転、暗闇ではぐれないように手をきゅっと握って、
出口へと向かい始めていた少年は再び、光の届かぬ深部へといざなわれる。

ネコ > 『趣味でメイド服着るヤツとか変人だろ。
 ……そうさなぁ。胡散臭いオッサン冒険者で、器がデカすぎる大バカ野郎、って感じかな』

相手の言葉に、少女は苦笑しながらそう言う。
少女の雇用主は、ある界隈では有名かもしれないが。
悪名の方が轟いているので、名は出さないことにしておいた。
あとあと面倒になるかもしれないからだ。

『多分、と来たか。……まぁ、迷うことはないだろ。
 よし、じゃあちゃっちゃと行くとするか』

自分が来た道を覚えていないのか、と呆れる少女であったが。
この洞窟はそこまで複雑な構造でもない。
ある程度は適当に歩いても迷うまい、と。少女は相手の言葉に従い、洞窟の奥へと向かっていく。

『不思議な響きの名前だな。まぁいいや。
 とりあえずよろしくな、タンちゃん。
 ……構わないけど、何かあったときはジャマしないでな?』

相手のお願いに少し驚きつつ、しっかりと手を握ってやる少女。
そのまま、一応は壁や床、天井などを警戒しつつ、奥へ奥へ。
やはり罠も魔物も出くわさない。これは、調査の必要すらないかもな、などと思いつつ。
少女は、握った相手の手を、指で撫でるようにし。その肌の感触を楽しんでいく。
いつしか、自然と手のつなぎ方が。恋人同士がするような、指を絡ませるものになるように。
その間に、少女は相手の体に密着するように立ち位置を変え。
ぴと、と腕などを触れさせてみたりする。

タン・フィール > 「あはは、確かに、それもそっか…
―――って、そこだけ聞いてると、
ご主人様チョット、変人っぽいかも」

クスクス笑いながら、どんな人物かと想像を巡らせつつ…
不思議な名前、と言われれば

「うん、もーっとちっちゃい時、魔女に拾ってもらって、名付けてもらったんだけど…
良い出逢いに恵まれる、加護たっぷりの名前なんだって。」

トラブルだったり、ハプニングだったり、女難だったりも含まれるが、
概ね人間嫌いにはならず、のらくらと薬師として人々と関わるのが好きな少年。
初対面でぼろくそにからかわれても、既に一定、少女に心をひらいているのが判る、
生来の人懐っこさは、生まれついてのものか、名前の加護か。

「ふふ、よろしく、ネコさん。
ネコさんも…なんだか見るからに、ネコーってかんじ。
お耳の形とか抜きにしても、イヌさんとか、トリさんって感じじゃなし。
…っ? …ーーーっ…。」

と、本名について深く言及しないでおきつつ、
冒険者の少女に警戒の類は任せようと、邪魔はしないよと頷いて、
先程よりは比較的安心して歩んでいく。

手を握ったまま歩みを進めるうちに、
指の腹が、手のひらにこすれる。
指と指の間(―――生物学的には、性感帯)に、指が絡む。
ただ手を引くというには明らかにおかしな繋がり方に、
大きな目をパチクリさせて首をかしげて。

「あ、あは…ちょっと、このつなぎ方、恥ずかし……ひぁ…っ?」

細首に触れたメイド服から覗く腕
突然のその柔らかさや…一瞬、冷たいと感じた女性の肌。
次いでじんわりと拡がる温もりに戸惑って

「あ、あの、…ねこ、さん?」

恐る恐る振り返って彼女に、なんのつもりか訪ねようと、
首と体を後ろにできるかぎりよじって紅い目で見上げる。
そのときにも、密着した体同士が…胸と背中が、
お腹と腰が、脚と肢が擦れあって、ヒクヒクと震え、
頬の紅潮と、緊張の汗をうっすらと浮かべてしまっていて

ネコ > 『変わり者なのには違いない。まぁ、悪い男でもないけど』

自身の雇用主に対して、雇われる身でありながら、褒めちぎるようなまねはしない少女。
かといって、尊敬やら感謝やらをしていないわけでもないので。その辺りは面倒くさい話だ。

『へぇ、魔女の知り合い、か。
 随分と奇抜な知り合いがいるんだな』

相手の言葉に、少女はほほぅ、と興味深そうに相手を見る。
よくよく考えれば、かなり若い、まだ子供、と言ってもいい年齢なのに。
薬師として働いている、というのだから。なかなかに色々な経験が豊富なのかもしれないな、と。

『ウチのご主人は、完全にネコのミレーだからネコ、って付けてきたんだけどな。
 あぁ、イヌってのも同僚にいるよ』

自分としては、名前にこだわりなどはないが。流石に雑すぎないか、と。
あまり明るい表情にはならない少女。
そうして、一緒に奥に進む間に、少女はイタズラ、というか。
相手をずばり、パックリいただいてしまおうという計画の第一弾を開始する。
指で軽く、愛撫というほどにも満たぬふれあいを。
そのまま、肌を触れさせ、相手の反応を窺うが。
拒むでもなく、意図の理解をしていないでもない。
なるほど、ある程度は知識があるのかな? と当たりをつけつつ。

『うん? あぁ、ごめんごめん。迂闊に壁とかに触っちゃまずいからさ。
 くっつきすぎた? だったらゴメンね。
 ……っと、もしかして、アレとかそう?』

触れ合う体から、相手の緊張など伝わっているにもかかわらず。
少女は、もっともらしい理由をつけて誤魔化していく。
その内、ちょっと開けた場所にたどり着き、床に転がる様々な物を見つければ。
少女はそれを指差し、あの中に目ぼしいものはあるか、と尋ねてみる。
その間も、次にどういたずらしてやろうかと考えるのも忘れない。

タン・フィール > 「ふぅーん… うん、ネコさんの言い方や、ネコさん見てると判るよ。
副業OKだし。」

悪い人じゃないって、と、比較的自由そうな物言いや態度、
さらには、イヌと呼ばれる、十中八九、犬のミレーの存在も示されて、
口には出さないが『…おもしろい人たち』という印象が刻まれた。

「うん、ボクのも話すと長いんだけど… 
その魔女のヒトに、薬とか魔術とか教えてもらって…
あと最近、生き別れになってたおかーさんにも会えて…
ふふ、薬師やってると、いろんな人とお知り合いになれて、面白いよー。

…ヘンな薬、作ってって迫られる時もあって、時々困るけど。」

と、口にした時に密着する身体に、どきどきと高鳴る鼓動が相手に伝わってしまうのではと
内心やきもきしながら、暴れたり、思い切り突き放すような拒絶は無い。

けれど、天真爛漫にお姉さんに抱きつけるほど幼い精神性でもない少年の戸惑いは、
明らかに少女を「女性」として認識し、意識してのものだった。

それを証拠に、肢と肢が触れ合ってしまう時、まかり間違っても…
少年の下半身と少女の下腹部が触れ合ったりしないよう、
少し前かがみに半身を捩ったのが良い証拠。
少なくとも、全くの初心であるということはない。

「な、なるほど…なるほど…ね。
うぅん、ここは、プロにおまかせして――― あっ ここ!」


握った手だけではなく、ここからは…はずかしいけれど、
彼女に引き寄せられたり、身体を動かされるあれこれにも、従おうと。
これは彼女に任せた、危険管理や一種の護衛なのだからと、
一生懸命に自分を納得させているのが、乱れた息遣いから感じる。

そうして示された先の、素材。
輝きは放ったりしないが、薬師や錬金術師からすれば、
なかなかの珍品揃いの収集場。

主に、鉄バットほどの長さと重さの、魔獣の肋骨や、
大ぶりのダガーのような犬歯、包丁のような鱗など、
かさばる上に、刃物の取扱になれてないと持ち歩くのも危険そうなものを指示して

「持ち帰れたら、報酬のお代のほかに…
この素材で何か、ネコさんの欲しい効果のお薬とか、つくるよ。」

と、まだ紅い顔で見上げながら、一方では薬師らしい、
素材への興奮も見せて

ネコ > 『まぁ、この国じゃあそうそう会うような縁の重なり方もしないだろうけど。
 一応、気をつけておきな。セイン、って名前の胡散くさいオッサンにはさ』

主人の名を出さぬつもりではあったが、最近主人の周りに集う人間を思い出し、一応忠告をしておく少女。
もしもこの相手と出会った場合、どんなことをするか全く予想が付かなかったのだ。

『へぇ……そりゃあ。イイことじゃん。
 まぁ、この国じゃあそういうことを楽してしたいってやつは多いからな。
 そういう依頼も、ある内が華だと思うぜ?』

相手の言葉。生き別れの母、と聞いた瞬間。若干少女の表情が暗くなる。
だが、すぐに元通りの笑顔に戻り、相手の仕事に関しての話へと流れを戻す。
スラム出身の少女の母は、少女を産んですぐに亡くなっている。だが、それをここで明らかにして不幸自慢などしたくはなかった。

『タンのことだから、天井や床や壁のトラップまでは、チェックしてないだろ?
 まぁ、ほぼ無いとは思うけど。仕掛けが残ってても面倒だからな』

と、これは一応本当にそう思っている事だが。
そんなことを言いつつも、相手が前かがみになるのを目ざとく見つけ。
にやり、と笑みを浮かべる少女。
更に、呼吸にやや乱れが生じているのに気付けば。少女は急速に計画を立てていく。

『……なるほどね。こりゃあ確かにちょっと骨だなぁ。
 でもまぁ、アタシにかかれば……』

少女は、その素材を目にして。なるほど、と納得したような様子を見せるが。
それらに軽く触れると、目を細め、ブツブツと詠唱を開始する。
たっぷり1分。呪文を唱え終われば、素材は姿を消してしまう。

『……これでアタシの所属してる冒険者ギルドに転送できた。
 後は、アタシがギルドの職員に頼んで、タンの仕事場とかに運んでもらえばいい』

額の汗を拭い、そう笑う少女。物質転送に関しては、習得はしているが習熟しきれていない。
詠唱には時間がかかるし、今の所は『送る』ことしかできないのだが。
それでも、相手のほしがっていた物を回収する程度のことはなんとかできた。

『さて、それじゃあ報酬なんだけど。……結構疲れたから、ある程度高くつくよ?』

そう言いながら、少女は相手の背後に回りこみ。
器用に、左腕一本で相手の体を抱きしめようとする。
相手が抵抗しないのならば、見事に抱擁は成功し。
相手の背中には、薄いなりに女性らしい胸が強く押し付けられることだろう。

ご案内:「魔物の巣の跡」からネコさんが去りました。
タン・フィール > ――継続予定――
ご案内:「魔物の巣の跡」からタン・フィールさんが去りました。