2019/03/15 のログ
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「……急に引っ張られたから驚いただけだ。それに、人間は水中で活動する様には出来ていない」

確かに、少女に自信ありげに強さを誇ったのは己自身だ。
とはいえ、弱味を露わにした様な有様に仏頂面を浮かべる事になる。
因みに、万全の状態だとしても水棲の魔獣を召喚して背に乗るのくらいが関の山なのではあるが。

「……成程。流石は水妖、というわけか。貴様の声は、いやに耳触りが良い」

この騒ぎですっかり吹き飛んでしまっていたが、少女は水妖。所謂セイレーン等の類であろう。
となれば、その歌声には、その声には、人間を海へと誘う魔力が込められているという。耳を打つ少女の呟きが聞き惚れる様な音色であることも。その声をもっと聴きたいと思うのも、少女の力によるものなのだろう。

少女によって無事に元の場所へと辿り着いた後、半ば無意識に少女を陸へと引っ張る様に己の腕を伸ばしたのは、少女の声にあてられた己の欲望故だろうか。
尤も、水を吸って重い衣服を纏った状態では、少女の手を引く動きも簡単に避けられる様な緩慢なものだろうが。

なまえはない > 「そんな……にんげんって大変ね?」

それでは泳ぎたくなった時や海の奥深くに潜る時、どうするのだろう。不便極まりないに違いない。
分かりやすく、なんてこと、だとか言わんばかりの表情である。
自身が本来の音で呟いていた事には気付かぬまま。然し、相手の言葉には嬉しそうに表情が緩んで。

「ほめてる? うれしい。」

4、5割理解出来れば良い方な人間の言葉の難しい言い回し。
さすが、とか、いい、とか聞こえたから多分褒め言葉だろう、そんな思考で機嫌良さげに嘯いて。
体が冷え切ってしまわないように、とまずは相手を岩場に押し上げる手助けを。
それから差し伸べられた腕にきょとり、と瞳を瞬かせた後、相手の腕を取った。
岩場に手を突けば、引かれる力を借りて岩場へと黒く輝く下肢ごと登り上げ。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「貴様たちとて、陸上で十全に活動するのは難しかろう?それと同じ事だ。向き不向き、というものがあるだけの事」

何というか、子供の様に分かりやすい表情を浮かべる少女に、さながら教師の様な、子供を諭す様な口調で言葉を返す。
傍から見れば、自分も十二分に子供ではあるのだが。
尤も、己の言い回しでは人間に不慣れな少女に不親切か、と暫し考え込む様な表情を浮かべた後――

「……ああ、褒めているとも。お前の声はとても綺麗だ。聞いていて、気持ちが良い」

分かりやすい言葉の方が良いだろうか、と思案した後、少女に伝わりやすい言葉を選ぶ様に賛辞の言葉を告げた。

しかしそれは、その耳触りの良い声を。精神を蝕む様な甘い声を持つ異種族の少女を我が物にしたいと思う己の昏い獣欲を僅かに灯していた。
引き上げた少女の黒曜石の様な黒髪と、煌めく金色の瞳を眺めた後、その頬に触れようとそっと手を伸ばし――

ご案内:「セレネルの海(岩場)」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海(岩場)」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > ――後日継続にて――
ご案内:「セレネルの海(岩場)」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海(岩場)」からなまえはないさんが去りました。
ご案内:「空き家」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 王都から離れた人の気配の無い小屋。
壁にかけられた錆びた斧や、獲物と思われる毛皮から以前は猟師小屋として使われていたのだろうか。

軋むドアを開けて入ってきた薬師の少年は、注意深く中を覗き込んで、
賊や獣…蟲の気配が無いことを察すると、ようやく安心して後手にドアを閉め、ベッドに腰掛ける。

「ふぅ…休める場所があって、よかった…」

薬の材料を探しに出た山中で、道を見失った少年。
どっさりと積まれた薬草やキノコや希少な鉱石も、
無事に持ち帰れなければ宝の持ち腐れで…。

「…かまどとか、お鍋とか、つかってもいいのかな?」

ベッドやテーブル、かまどや食器類は、あまり埃をかぶっていない様子。
定期的には、誰かが使用しているようす。
心細い山中に比べれば、無人といえどもヒトの気配が残っていることの、なんとありがたく心強いことか。

いそいそと、火をおこし、鍋をかけ、湯を沸かし…
小屋の中がぼんやりと火に照らされてあたたかみを増していく。
それに小さな両手をかざして、夜風に冷えた体を少しでも温めようと、
安心しきった大きな瞳が、うとうとする小型犬のように細まる。

「……あったかい……」