2019/03/14 のログ
タン・フィール > 目をこすりながら半身を起こして、うん…と伸びをする。

示し合わせたかのように、ぶわっ と、渦を巻いて舞い踊る白い花びら。
なにか、風か花の精霊のようなものにからかわれているような錯覚をうけながら、
艷やかな黒髪に何弁かの白が乗る。

薬の材料としてではなく、純粋に花そのものが綺麗だ、だとか、
花そのものを愛でるということに関心が無かった少年。

「お昼にココ来たら…また、違って見えるのかな…?」

月明かりを受けて、舞い散ってくる花びらはさながら発光する雪か何かのようで、
体育座りでそれらを浴びながら膝に頬を載せ、目を瞑る。

耳には、木々や花が風に揺らされてる音だけが聞こえて、
そこに違う音が混じればすぐさま気がつくことだろう。

タン・フィール > ふたたび半身を花の中に埋もれさせ、瞳を閉じた少年はすぅすぅと穏やかな寝息をたてはじめる。
ご案内:「夜の花畑」からタン・フィールさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海(岩場)」になまえはないさんが現れました。
なまえはない > ら、ら、ら、と歌詞のない歌を口ずさむ姿がひとつ。
もうすぐ陽が沈み、夜が来る。周囲に誰もいない事を確認している少女――の姿をした水妖は気兼ねなく音を響かせる。

「――――……」

海に浸していた人の足を時折揺らして遊び。

なまえはない > 人型を取れるようになったのはつい最近の事。
陸で生活をする生き物達に必要な足を作れるようになったのは良いものの、他の魔物から聞いた話では自分達の様な生き物が陸で生活するには『イフク』と言うものが必要らしい。
当然ながら、水の中で生きる自分の様な水妖には必要のないものだから持っているはずもない
心成しか、しょんぼりとした表情で海へと視線を落として。

ご案内:「セレネルの海(岩場)」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 新しい造船所を造りたい、との要望を受けて現地を視察した帰り道。
偶には気晴らしに、と海沿いの道を選んだのが運の尽き。海辺の景色を眺めながら歩くには足場も悪く、何か召喚して帰ろうかとすら思う始末。

「…こんな場所では、工事も碌に進められんな。投資額に見合った利益が得られるとは――」

革靴で歩くには大層不便な岩場に辟易していれば、僅かに耳を打つ歌声。
誰かいるのかと視線を彷徨わせれば、視界に映るのは黒髪の少女。いや、少女と言うよりは――

「……よもやとは思うが、水妖の類か。貴様らは群れで生活するものだと思って居たが」

特に忍び寄る訳でもなく、のんびりと彼女に歩み寄りながら声をかける。
珍しいものを見た、と言う様な表情で、彼女を眺めているだろう。

なまえはない > 同族達の棲家に戻れないのだから、新たな棲家を見つけなければ。
そう思って海を揺蕩い長い間放浪を続け、時折賢い魔物と会話をし、漸く手に入れた2本の脚だったのに。
思えば思う程がっかりだ。
奏でる音がいじけた様な調子を紡ぎ始めた頃、耳に届いたひとの声。

「―――…!」

慌てて歌を止め、水妖の下肢へと身体を変えながら岩場を滑り落ちた。
ばしゃんっ、と大きな水音を発てて海へと身体を沈めつつ、そろり、と岩場から顔を覗かせて。

「…だあれ?」

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 水音と共に視界から姿を消す少女。
これで人間だったら大変だな、等と考えている間に、恐々といった様子で此方に顔を覗かせる。
夜が来る前の黄昏れの闇の中に、少女の金色の瞳が煌めいていた。

「…其処まで怯えなくとも、別に取って食ったりはせぬ。通りがかっただけの人間だ。そう警戒するな」

小さく苦笑いを浮かべつつ、穏やかな口調で声をかける。
一人で行動している水妖というのが珍しくて声をかけたが、此処迄怯えられると流石に罪悪感が芽生える。
少女が怯えない様に、幾分ゆっくりとした足取りで少女の元へと足を進めるだろう。

なまえはない > 相手の声の高低差で性別や年齢をはっきりと判断出来る程、人間と言う種族と接した事が無い。
ただ、大人より子供の方が弱い、と言うことは生き物であれば大体が当てはまる。はずだ。
椅子にしていた岩場から、鼻より上だけを覗かせて近付いてくる人間を窺って。

「……ほんとう? 食べない?」

遠目に見た事のある『フネ』と言う箱に乗っていた人間よりも、どこか柔らかい印象を受けた人間の言葉に、ゆるりと頭が傾いた。
いざとなれば海の中に逃げればこちらのものだ、なんて事を考えながら、初めて間近で見る人間をじい、と見詰め。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「本当だ。大体、貴様を食ったところで何になる。水妖の肉を食って得る永遠の命など興味は無い。売り飛ばして得られる金も私からすればたかが知れている」

少女を襲う理由が無い、と僅かに首を傾げている少女に答える。尤も、人に慣れていない様子の少女に語るには幾分堅苦しい言葉遣いかもしれないが。

「私が貴様に声をかけたのは、ただ単独で行動する水妖というものが珍しかったからだ。それ以上でも、それ以下でもない。……だから、そこまで怯えなくても良い」

少女まであと2歩、といったところで足を止めてしゃがみ込む。
なるべく少女と目線を合わせようとしながら、高慢な言葉と困った様な表情で、ゆるりと笑みを浮かべてみせる。

なまえはない > 難しい言い回しが多くて人間の言葉は半分程しか理解出来なかった。
が、如何やら自分の肉には興味がないらしい事は分かった。ほ、っと一息吐き。

「わかった。」

確かに、群れの外で生きている同種は今までに出会った事が無い。
大概が同じ鱗持ちと群れて暮らしている。人間の言う物珍しさは分かる。
相手が浮かべた笑みを見れば、釣られたように表情を緩めて鼻より下も晒し。

「ここでなにをしているの? 人間には、あぶない。」

尾も鰭も鰓もない人間では、海に落ちてしては死ぬしかないだろう。
そんな水棲としての思考で問いかけて。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 取り合えず敵意が無い事は理解してくれた様子。
小さく吐息を吐き出して、表情を緩めた少女と視線を合わせる。

「……そうだな。ただの散歩だ。確かに普通の人間には危ないかも知れないが、私は強いからな。大丈夫だ」

建築現場の視察だの、小難しい事が通用しなさそうなのは雰囲気で理解した。
少し悩んだ末にただの散歩だと答えた後、危ないと言われれば幾分自信ありげな笑みを浮かべるだろう。

因みに泳ぎは得意ではない。

なまえはない > 散歩にこんな場所を選ぶとは…相手の言う通り、きっと強いのだろう。
柔らかそうな見た目なのに、人間は思っていたよりも強靭な生き物らしい。
納得したように幾度か頭が上下に揺れる。

「強いことはいいこと。たくさん、色んなことができる。」

こんなに自身たっぷりなのだ。小さな生き物では耐えられなかったが、きっと海の中も大丈夫。
まさか泳ぎが得意ではないとは思いもしない水妖は、しゃがみ込む人間の足をがっしりと掴んだ。
いざゆかん海の世界。そんな気持ちで相手を海の方へと引っ張り――なお、全て善意である。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > がしりと掴まれる足。何事かと首を傾げる前に、その身体は海に引き込まれた。
慌てる間も無い。豪奢なコートも、華美な礼服も、水を吸って重量を増すばかり。

「……ぷはっ…!いき、なり、引きずり込む奴が……ある、かっ…!」

咄嗟に召喚の魔術を発動して水棲の魔獣でも召喚しようかと思ったが、直ぐ側に少女が居ては流石に躊躇われる。
取り合えず肉体強化の魔術を行使して得た体力で何とか水面に顔を出した。
とはいえ、取り合えず力任せにバタ足して浮いているという有様。縋るものを求めて、半ば無意識に少女の身体に腕を伸ばすが――

なまえはない > 岩に頭を打ち付けなかったのがまず一番の幸運だったのだろう。
更にと深く潜り込もうとしたものの、近くで届いた人間の声に驚いて動きを止めた。
引きずり込んだ張本人の癖に、何よりも驚愕している。

「あ、…わ、わ、ごめん。ごめんね。」

とても強い人間とは思えない泳ぎに目を白黒させながらも謝って。
伸ばされる腕を拒みはせず、脇下へと自身の両腕を差し込み。

「しっかり、つかまって。」

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 増大した体力と、少女の身体に掴まって得た安定感でどうにか落ち着いた。
ぜいぜいと息を荒げながら、水に濡れて張り付いた己の髪をうっとおしそうに首を振る事で払いのけようとしていた。

「……あやまる、ことは、ない。だが、危ないことを、するな。流石に驚いた、ぞ……」

謝罪の言葉を告げる少女に首を振りながら応えつつ、脇下に差し込まれた腕に持ち上げられる様に少女の首元に腕を回し一息ついた。
そして冷静な思考がゆっくりと回復すれば、今の己が実に情けない有様である事実を突きつけられ、何とも言い難い複雑な表情を浮かべるだろう。

「…その、だな。取り合えず、陸に戻りたいんだが。貴様も、私を抱えていては大変だろう」

此方を助けてくれたのだし、悪意や敵意は無いのだろう。
呼吸を整え、水の冷たさに今更身を震わせながら少女に問いかけた。
首元に腕を回した様な体勢なので、少女の耳元で囁く様な姿勢になってしまったが。

なまえはない > 「おどろかせてごめんね。強いっていってたから、大丈夫だとおもって…。」

反省である。人間の言う強いはそれ程強くないかもしれない。
自分が不意打ちをした、と言う自覚はないままそんな事をしょんぼり顔で告げた。
それから人間をどうするべきか、と暫しの思考。海へと潜るのはこのままでは少しばかり難しそうだ――そんな事を考えていれば、耳のすぐそばで空気が揺れる感覚。

「…ふふ、くすぐったい。わたしは大丈夫。だけど――『人間は身体が冷えると良くないものね。』」

ふるりと楽し気に肩を揺らしたものの、腕に抱いている人間の小さな震えが伝われば、思わずと言った調子で呟いた音。
水妖としての自信の声は小鳥の甘やかな囀りにも似た音で。
波に揺られて岩場から少し離れてしまった身体をすい、と器用な動きで元の位置へと泳ぎ戻り。