2018/10/19 のログ
ご案内:「トゥルネソル家自宅」にリスさんが現れました。
ご案内:「トゥルネソル家自宅」に影時さんが現れました。
リス > そこは、トゥルネソル商会が持つ土地のうち一つ、マグメール店の店主であり、商会の娘であるリスの自宅である。
 下手な貴族よりも金のかけられている家はしかし、装飾よりも機能を重視した質実剛健を絵にしたような家である。
 素材は一流、大工も一流で、その場所はしっかりと丹精を込めた作りとなっている。
 部屋も20は超えていて、その気になれば夜会なども開くことは可能であろう、庭も走り回って遊ぶことが出来る上に下品にならない程度には整えられている。
 今日は、珍しく来客があり、その方を応接間に通している。
 応接間も綺麗に整えられ、最低限の調度品はあるが金に明かした豪華さは求めなかった。
 重要なのはそこでリラックスと緊張を良いバランスで保つことである。
 ふかふかのソファも、大きめの交渉用のテーブルも、全てはそのためで。
 そこに座り、来客を待つ少女の姿はやはり、商店を持つ店主というところであろう。
 メイドのうち一人に緑茶とお菓子……東洋のそれを準備するように命じて置くことも忘れない。
 玄関に来れば、家令がここに連れてきてくれるであろう。
 以前も招いた客であるし、顔も覚えてもらっているので、彼は迷うことなく来れるであろう。

影時 > 商店の方には補給のために訪れる機会が多いが、此方に足を向けるというのは久方ぶりか。
この辺りの風情を思えば、薄汚れた風体は余り褒められたものではない。
故に多少なりとも身なりには気を配る。
故郷の装いそのものではないが、この地の様式に異邦の地である故郷のものを組み合わせた風情のものだ。
ゆったりとした長衣とその下の外衣、裾広の同じく余裕を持った仕立てのズボン、腰の刀等の組み合わせとなれば、侍の如く見えるだろうか。

だが、己の経験の上で言えば――侍も忍も似たようなものだ。
それらを区別するのはその有り方、信条の違いだろう。

さて、程なく目的地に至れば、訪問の旨を待ち受けていた家令に告げて案内してもらおう。
二度目の来訪となれば、その足取りに迷いはない。

「……おっと」

そして、思い出したように袖から取り出す細紐で腰の刀の鞘を鍔に設けた通し穴を使って結び、直ぐに抜けぬようにする。
此れには意味がある。ここにて戦う意志等はないという意志表明と、携える太刀の特性を弁えた上だ。
その後、通される応接間にて待ち受けているこの屋敷の主に目礼をしよう。

「待たせてしまったかね?」

――と。そう声をかけつつ、待ち受けていた姿を見遣る。

リス > 人が歩いてくる音がする……それは、少女の耳には届くもの、二つの足音はつまり、家令が客を連れて歩いているということが分かる。
 ノックの音、そして入ってくるのは客人のみで、家令はひとつ礼をしてしてから、扉を静かに締めていく。
 今日は商談であるから、家令やメイドもあまり寄らないように指示をしてある。
 来客の姿は、それなりに整えてある、商談をするにあたり彼も気を使ってくれている様子で。
 視線は落ちる、彼の腰に、先日無かったその物品。
 刀というものであろう、今は居ない嫁が好んで作り使っていたので形やどういった武器かという知識は、ある。

 しかし、なんだろう、その威圧感というべきそれは。
 背筋が凍りそう、恐怖を感じる。
 息が詰まり、少女はぶる、と身を震わせる。

「――っ、あ………っ。」

 声をかけられる。
 しかし、視線はその刀に吸い付けられる、彼の意図、東方のマナーに詳しいわけではない。
 恐怖が全身を覆う、顔が青くなっていくのが分かるであろう。
 彼は失念しているはずだ、少女は人ではない。

 ―――が、荒事の一切したことのない、ただの町娘である。

 覚悟も、何もない存在に、刀を封じたとして、殺しの概念が耐えられるはずもなく。
 唯々、怯えの瞳が彼を見る。

影時 > 人間とはまず内面よりも、外面に目が行くものである。
一目で中身を見定め、見極めることができるというのはそうそうない。基本的にないと言ってもいい。
特に交渉事に臨むとなれば、場所によっては貸衣装屋に入ってしっかりと身なりを整えなければならない。

故に軽視できない。己が力を示すために直接先方の住処に侵入してみせればいい? 論外だ。
故郷の風習や考え方が他所で同じく通じるとは、限らない。

「――? ……嗚呼、なァるほど。すまんなぁ、少なからず気を配ったつもりだが」

そして、だ。己の現在携える太刀を一目して、向こうが見せる反応に真逆と目を見開く。
此れは龍/竜殺しだ。その概念を刃金に打ち込んで鍛えられた大業物である。
龍が斬れるならば、人も斬るに不足なし。故に己にとっての普段遣いにも困らぬが、彼らにとっては違うのだろう。
少し考えて懐を漁り、取り出す呪符を鞘に貼り付ける。魔封じの札だ。
これによって少なからず、この太刀の白眉にして脅威たる特性の気配の発露は抑えられるだろうか。

リス > 少女は、竜である。
 元は人間であったが、とある竜と番となり、その竜に加護と……竜の肉体を与えられた。
 故に、彼の腰にある刀に視線が向く。少女の目は宝物を見抜く、商人としての学習と、竜としての習性で。
 価値のあるものを見据え、理解してしまう、『それ』は自分を容易く殺しうる……否自分達を滅ぼすための概念だということに。
 存在そのものが天敵のようなものであり、それをただの町娘につきつければどうなるか。
 言ってしまえば、周囲に荒くれ者共に囲まれて威圧されているような、犯される一歩手前のような、そんな感じである。
 声も出ず、ただただ震えてその刀を見ているだけしか、できなかった。

 それに気がついた彼が、懐から何かを取り出し、それに貼り付ける。

 部屋の中の空気が、落ち着いてきたように感じられる。
 安堵のため息、それでも、まだ完全に落ち着いたとは言い切れず、少女はふるふる、と頭を振る。
 今は、交渉の場だ、彼にその気がないのは分かっている……けれども怖い。
 とは言え、いつまでも震えているわけにも行かずに。

「ようこそお越しいただきました、ミスタ、笠木。
 お見苦しいところをお見せしました。
 申し訳ありませんが、次回からはその刀ではなく、別の刀でお願いしたく思います。」

 でないと、話ができなくなりそうで。
 彼にとっては大事なものなのだろう、娘に話を聞いて鍛冶師を手配したが、それがこれなのだろう。
 実物を見るのが初めてであるから、理解してなかった。
 今だって、声が震えてしまっている、必死に取り繕っているのだ。

影時 > 手に入れた刀が妖刀、神刀の類であったろう――と思ったが、まさかここまで覿面とは思わなかった。
否、これはこの太刀を見た側の在り方にもよるだろう。
戦士ではないのだ。生き馬の目を抜くような商人たちの社会に慣れていれば、血腥い風景も大丈夫とは限らない。
最低限用意していた装備で対策はどうやら、出来たらしい。

「……最悪、こりゃ下緒を魔封じの索に作り替えた方が良いやもしれンか」

この辺の反応については、どれだけ聡いか、気配の機微を感じ取れるかにもよるだろう。
脳裏に学び覚えた幾つかの呪法を思い起こす。
使えそうなものに心当たりはあるが、材料は帰りに商店に寄れば仕入れられるだろうか? あとで聞いておくことにしよう。

「いいや、この位気にするな、と言いてェが――生憎持ち合わせの刀は此れしかなくてな。
 次に来るときは、家令殿に預け置かせてもらうとするか。それで良いかね?」

大事というよりは、希少性故に宿に置いておくのも悩ましいが故だ。
調合した薬種や火薬類については生成と保存の手間を除けば、毎度毎度珍しい代物は仮の住処に置いていない。
一先ず、家令に預けておけば察して安全な場所に置いてくれることだろう。それを期待したい。
とりあえず、鞘ごと外した太刀を入り口近くの壁に立てかけて、ソファの方に歩む。先方の許可を得られれば、座ろう。

リス > 正直、争い、に関しては素人も素人、心構えもあったものではない。
 人間のままの時は、外に出歩くときは終始護衛を四人雇って身を守っていたぐらいなのだ。
 商人としてお金を使った戦いは得意でも、殴ったり蹴ったりのバイオレンスに耐性は一切ないのだ。
 それが、竜としての体を持った今でもである、嫁に、娘に、家令やメイドに守られているからこその、状態で。

「ええ、預からせていただけるのであれば、構いませんわ……。
 
 どうぞ、お座りくださいまし。」

 其れしか無いというのであれば、値打ちものなのは見てわかるし、武器だ。
 冒険者や、彼のような職種は持ち歩くのは必定な事も判っている。
 彼の提案は、破格といっていいだろう、妥協すべきと考えて預かることに同意。
 そして、立ったままの彼に座るように促し、呼び鈴を鳴らす。
 すぐにメイドが、饅頭とお茶を運んでくる。

「まずはお疲れでしょうし、どうぞ。
 それで、ご用向き……を詳しく教えていただいても?」

 娘の家庭教師をしてくれている彼。
 その教えることに関して、の相談があると聞いていた。
 詳しくはしっかり話をしてからと思っていたので、改めて問いかけることにした。

影時 > 害意をありありと見せるのであれば、この太刀と己の組み合わせは向こうにとっての脅威であろう。
竜殺しと手練れの組み合わせとは、並の護衛を容易く食い破れるかもしれない。
己の弟子でもある娘たちとの戦いとなれば、どうだろうか。
――否、考えるもないだろう。そもそも、相互の信用の問題がある。契約がある。そして情もある。
其れを破り、犯さぬ限りこの刃を向け遣る理由は己の中のどこにもない。

「故国でも値千金になりそうな代物を、傍から離しておくのは此れが盗まれて野放しなるのと同じ位に危ないだろう?

 ……では、と」

使いどころを間違いなければ、本来の竜相手以外でも並の刀より有用であることは実戦で証明済みだ。
名刀の類は贈答品としても扱われる。この国でも武門の家等に贈るとなれば、同様であろう。
許可を得られれば、一先ず腰を下ろそう。運ばれてくる湯呑みを取り上げ、一杯口に含む。
此の手の風味はやはり、久方ぶりだ。最近呑みなれた赤色の茶とは違った郷愁を醸し出す風味に、ほっと一息。

「かたじけない。

 ――嗚呼、報告だ。現在の時点での教練内容の通知、結果の報告に時間を割かせて頂いた次第よ。
 その上でな。今後の方針を考えておきたい」

さて、本題だ。懐を漁り、折り畳んだ紙を取り出す。
意外に整った筆致でこの地の文字で、今まで修練した内容、伝授した内容を記し、己から見ての習熟振りを書き添えている。
基本訓練を兼ねた体技、武技の訓練、拠点防衛のための知識の伝授、罠作成、攪乱用の煙玉、閃光弾の運用等々。
振り返るまでもなく、色々と教えてきた感慨がある。

知っているものがあれば、その再確認。
知らなければ、基本理念からの教授と用法の具体例の提示。天候が合わなければ、屋内で道具の製造の実習も含めて。

リス > おそらく、彼一人でこの家を駆逐するのは不可能ではないのだろう。
 何故ならば、彼にあるのは竜殺しの概念の武器であり、この家に住まう者の多くは竜である。
 彼の弟子である娘がどちらに付くにせよ、彼がその気になればこの家は全員倒されてしまうのであろう。
 彼が味方でいて良かったと思える瞬間であった。

「ええ、判ります、良い武器や名のある剣、魔法の剣はそれだけでも美術品としても高い価値があります。
 それに、その刀、どこの誰とも知れぬものに奪われるぐらいなら、持って歩いていただいた方が。」

 そう、誰か知らぬ者の手に渡り、向けられるよりは知り合いが持っている方が安心できるのだ。
 敵意がない、見方がもつ分なら、怖いで済む。
 彼が腰を下ろし、お茶を飲む。東洋のそれは、今は無き嫁の趣味ゆえに、今でも取引はしている。
 最近は東洋からの旅人も増えているし、来客の備えとして、あとは売りものとしても使えるから。

「はい。
 では、失礼します、ね。」

 懐から取り出した紙を受け取り、その文字を目で追う。
 異国からきたにしては正しく綴られた文字は読みやすく、その情報を目で追う。
 こちらが依頼した事に関しては、不足なく。
 というよりも、人であれば早すぎると言っていいレベルでの習熟であろう。
 竜だから、なのかしらと思いながらも少女は視線を報告書から彼へと戻す。

「報告書を見た限りでは、問題がないと思いますわ。
 教官から見た今後の方針、課題をお聞かせ願えれば。」

 知識や体術の伝授は問題はなさそうで。
 煙幕や閃光弾などの道具に関しては……そういう道具を覚えたと認識する。
 これだけの量を、三ヶ月でというのは教え方もいいのであろうと。

影時 > 「そういうこったなァ。
 覚えのない遣い手が振るって折られる位なら、いっそ俺の手で使い倒す方がまだ納得できるというものよ」

仮に弟子に与えたこの太刀の片割れである小太刀を己が携えた場合、より一層脅威となったことだろう。
龍/竜の能力に由来する攻撃、干渉の類への耐性を向上させる特性をどうやら秘めている。
竜の爪や尾等の物理攻撃をうまく捌く必要はあるが、竜の咆哮や吐息等への防御、対策に寄与できる代物だ。

――二つ揃えば、一層の脅威が向こうにとって増す。

故にこそ、よくよくこの太刀の扱いは考えなければならない。

「ああ。確認をお願いしたい」

この時ばかりは、平時の戯れ交じりの発音は引っ込めて向こうの依頼者を見る。
横柄な態度というのは、それだけでも信用を損なう。努々忘れる事なく努めなければ、今後にも関わる。

「……――率直に言えば、習熟が早すぎるのが心配だな。

 基本、応用、派生の一例の提示までは一通りさせてもらったつもりだが、今後の経験の蓄積が気がかりだ。
 覚えたものを損なわぬ程度の日々の鍛錬は重要だが、出来る事ならばより実技を活かせる場を設けたい。
 件の里の護りについては、使わずに済むことが理想だが、前に其方の御息女から聞いた通りの布陣のままで宜しいか?」

出来が良すぎることが、心配と言えば心配だ。
覚えたものをたたただ詰め込んで、頭でっかちにならないことを何よりも危惧する。
知識を活用するには、実践を踏まえた経験だ。そうすれば知識の羅列も目次と紐づけられて、一冊の本の如くになる。
故に、冒険者としての活動等を出来れば多く機会として設け、目的達成を通じてより磨きたいと考える。

その上で再度確認しておきたいのは、元々の依頼の目的である防衛の布陣だ。
過去に聞いたものと変化はないか否か。現状維持であるかどうか等を確かめたい。

リス > 「ええ、バックアップは致しますのでどうか、無くされぬよう。」

 商人である、その刀に携わったものとして、驚異を覚えるものとして、信頼できるものが持つなら、そのままにしておきたい。
 故に研ぎに出したりするなら、受け持つのでそのままなくされないように、と。
 娘の刀と対になっていると知ってもいるからで。

「そう、ですね。
 人ではないから、と言われてしまえば其れまでなんですけれど。
 あの子、あの年でストライダーを名乗るぐらいには、体術や技術を覚えるレベルにありますし。
 足りないのは経験というところ、ですか。
 実際に教え、見守っている笠木様が言うのであれば、そうなのでしょう。
 では、その実践の場をお願いしたく思います。

 ―――里については、布陣がかわりました。
 篝と、竜雪、あの二人が天に昇ってしまい、ラファル前衛、竜胆後衛という布陣に。
 願わくば、それを見越した教育もお願いします。」

 見て、覚えて、使ってこその技術、使ってみないとどういう時に、というのは覚えられないだろう。
 それに、状況は毎回違うので、その時その時に併せた行動も取れない。
 彼の言うことは確かなもので、専門家の意見である、ならば門外漢の自分ことはないので任せることにする。

 もともとの依頼の確認に関しては重大な変更。
 三姉妹最強が、居なくなったということ、残りの二人も弱いとは言わないが……軍に対して二人はきついところがあるのだ。
 問いかけられてなくても、伝えようと思っていたところなので、少女はうなづいてみせる。
 現状は、維持では難しいだろうと。

影時 > 「おう、承った。整備については、今後も其方を頼らせてもらうか」

熟達者となれば、可能な限り刃を損なわないように剣を振るうことができよう。
如何にすれば楽に斬れるかが分かるからだ。この場合の楽とは、如何に事を易くなせるかどうかの楽である。
この楽とは、自身に余分な労なく、なおかつ、得物に負担を可能な限り廃したうえで斬るための楽だ。
故に此れを弁えたものであれば、心すべきは後は外装の損傷や修繕である。
自分でどうしようもないとなれば、然るべき箇所に依頼が出来るルートがあるのは心強い。
それに――、向こうにも現在の管理状況がどうなっているか、把握できる意味でも重要だろう。

「それよなァ。実年齢もそうだが、ヒトの目で考えても早熟すぎる。……故に時に危うく思えてならん。
 
 承知した。
 弁えておくべき範囲としては、商会の名に傷つくような関与は可能な限り排除したうえで、揃って帰還を果たすこと。
 此れで良いか? もっとも一冒険者として振舞うなら、宣伝以外で口にする機会はないと思うが……ぁ?」

詰め込み教育にならないように気を付けていても、どうしても限界はある。
不測の事態はいつでも起こりうる。それは長く生きている分だけ、痛い位に覚えがある。
危険要素を排するための最低ラインを確認のために口を開きつつ、続く言葉に一瞬、己の言葉を忘れる。

「……――あー、ンだって? 昇天した? ……参ったなこりゃ」

思わず湯呑みを取り落としかけて、慌てて卓に置いて思考を回す。死んだ、という意味ではあるまい。
天に昇る龍とは故国で幾つかの意味を持つ図案等で見るものだが、この場合はどうだろうか。
死した意味ではないと思えば、より現実的に鑑みるに動員できる戦力が減った、とまずは捉える他ないだろう。
長く、慨嘆するように重く。肺腑から息を吐き出して、心得た、と。頷こう。

リス > 「はい、格安で承らせてもらいますわ。」

 無料とは言わない、それは商人としての矜持もあるが、ドワーフ酸など頼むものに対しての報酬もある。もともと、安めにしてもらう代わりに確実に仕事が尽きぬようにしてある。
 彼らの生活も掛かっている故に、軽々しく無料という言葉は使わないのだ。
 それを吝嗇と取るなら、とってもらって構わない、少女はそう思っている。

「私は、元は人ですし、笠木様の懸念はわかります。
 彼女らは生まれつき竜ですから、そのあたりの感覚は違うのでしょう、特にラファルは、私が竜になってから成した子の上篝に付いてその技術と常識を学んでますから。
 思考も竜に寄っているのだと思われますわ。
 なので、多少荒くても構いませんわ、よろしくお願いいたします。

 あら。そこまでしてくださるのですね、それで構いません。
 私としては、生きて帰ってきてくれればそれで良い、と思っておりました。
 ええ、冒険者としてであれば。商会の名前別に出していただいても構いませんわ。
 この国の各地にある商会で、優先で補給うけられましょう。」

 冒険者として活動する。
 娘は活発だしそれはそれでいいのかもしれない、広い世界を見ることも、自分で稼ぐことも彼女の助になるだろう。
 それに、頼りになる師がいるのであれば、問題はなかろう、と。

「ええ。竜神となり、天へと。
 ふふ、置いてかれてしまいました。

 ……最悪、竜を動員することも、考えないといけませんね。」

 別に死んだわけではない、しかし、もう会えぬ。
 それは、死んだとどう違うのかと言われると困ってしまうが、悲観しても仕方があるまい。
 ふたりの娘も、加護もあるのだ、泣いていられない。
 それよりも重要なのは、彼処の防衛。
 娘たちの危険も鑑みて、練り直さねばならないのだ。
 彼の溜息が、驚愕が、事の重大さを認識してもらえているもの、と判断する。

 ただし、手がないわけでもない。
 自分が出向いて、竜を指揮する。彼女のおかげで様々な竜が手下にいるのだ。
 それを使えば、もう少し、楽にもなるだろうと。

影時 > 頼む、と。改めて頷くように黙礼しよう。
無料というのは、流石に烏滸がましい限りである。
依頼によって雇われている上で、手配と共に安く請け負ってくれるのであれば、願ったり叶ったりだ。
元より、故郷の外で遜色ない武器の整備、修繕が出来るとあれば、何の問題があろう。

「人は人の、竜は竜のものの考え方と時間の移ろいがあるというコトよなァ。
 では、そのようにさせてもらう。

 ――なァに、先に言ったとおりだ。
 俺が仮に死ねばあの太刀が野放しになりかねんし、御息女を預かっている身としても申し訳が立たん。
 補給についても、助かる。ついてはそうだなぁ。名前と物品を示せば証明と出来るように計らってくれると有難い」

一番、このご時世で実技訓練の機会を得られるとすればそれだろう。
現状としてまだまだ、機兵とやらの脅威が終息したという報せはないとなれば、まずはこの辺りからも良いだろうか。
やれ、この装具はあの商会で買ったのさ、という位の宣伝活動だが、役に立つならばこしたことはない。
後は支援を受けられる際の算段を詰めておくとすれば、旅先での憂いは減ることになるか。

「……――そうかァ。何とも言い難い気持ちだな。
 その手段は最後の手段がいい。如何に足が速くとも、目立つぞ」

向こうの伴侶について顔を合わす機会はなかったが、娘の一人については覚えがある。
色々と思うところはあるが、ソファの背凭れに背を預けて空を仰ぐ。
現実的な問題がいくつも生じる。練り直し、万一の対策の策定等々、影響は何かと大き過ぎる。

リス > 「はい。
 残念ながら、私はまだ竜の感覚には慣れていませんが、時というのは竜にとっては然程気にするものではないのかと。
 前に、ラファルが生まれてすぐに出かけて一週間以上戻ってこなくて、その一週間は、私たちで言う半刻のような感じみたいです。

 畏まりました、では、笠木様のお名前と。後でプレートを発行しましょう。
 それで証明としますわ。」

 プレートに関しては以前から使ってる手法でもあるし、問題はないだろう、周知徹底は問題ない。
 そして、口コミというのは馬鹿にならない、無料でできる広報活動なのだ。
 冒険者を抱えて口コミでというのもいい手段だと思うし、既に一人頑張ってもらっている。
 それが増えるのはいいことである、と。

「私も、戦場には行きたくありませんし、本当に最終手段です。
 でも、何かしらの手段は、講じたいところですが。
 向こうでもいろいろしているようです。
 そもそも、守護竜もいるらしいですし、娘以外に常駐の。」

 破綻にはいたっていないはずだ。
 防衛戦は娘だけではない、里の長も自分で動いているとのこと。
 だから、そこまで気負わずに、と。
 撤退したあとのことは変わらずにこちらで受け持っているのだから。

 むしろ、防衛戦力よりも重きを置くのは、撤退してきたあとのこと。
 こちらの本文はそこにあるのだと伝えおこう。

影時 > 「で、あろうなァ。
 ……多分あれよ。神というのは言い過ぎだが、石や岩、長くカタチが残るものにとっての時の経過にも近いンだろう。

 助かる。失くさぬよう、気を付けなければな」

使い方を分かっていなければ、使途不明のプレートだろう。
既に確立している手法となれば、各店舗にも周知されている内容に相違ない。後は気を付けるべきは適切な管理だ。
弟子と一緒に行動しながら、となれば現地の冒険者ギルド等で他者と話す機会も増えることだろう。
その時にでも、他者との交流があれば、商会の名を話題に出した口コミもできるか。
知り合いが増えれば、より一層機会には困るまい。竜の時間感覚に困ったように笑いつつ、そう思う。

「やはり、位置づけとしてはそうなろうなぁ。
 ――常駐の何かがあるとなれば最悪の場合、此方側の負担を向こうに受け持ってもらえるやもしれん。

 そうなると……否、どうにかなるか。
 最低限為さなきゃならんコトを忘れなければ、戦線の進行の遅滞にさえ注力すれば良い」

戦力の逐次投入は悪手と言える一つだ。
しかし、それがリスクはあるとはいえ即時展開が出来るものであれば話は違う。
そのリスクを弁えた上で、いつぞや教練したとおりに攻め手の行動を阻害し、時間を稼ぐことが出来れば事は叶うだろう。
故に、どうにかなるか。そう内心で算段が付けば、ほっと息を零そう。

リス > 「彼らの寿命は……それこそ、ずっと生きていますから、私から見ても悠久といって良いぐらいに。
 だからこそ、あの人は私を竜に変えたのでしょうね、ずっと一緒に居たいから、と。

 はい、無くされたらすぐに言ってくださいね。」

 プレートに関してはまあ、拾われてもただの鉄の板だ。
 合言葉と一緒で、初めて効力のあるものだし、落としたのなら、再発行はすぐできる。
 それに、紋章をほっておけば落としても回収は容易であろう。
 彼の弟子となっている娘の時間間隔に対しての苦笑に少女も軽く笑って。

「重要なのは、戦力よりも、物資と。
 あとは、避難経路としての場所、ですから。
 彼女らは、できる限り己の力で居て貰いたいというのはありますし。
 私たちの戦力は強力ですが、蛇足程度でいいのかもしれません。」

 少女は、ふと、視線を向けて言葉を放つ。
 やるからには、全力は基本であるが、彼女たちも色々と自分で行っているのだ。
 きっと、最終的には戦力も揃うのだろう。
 それまでの間の繋ぎか、それともその後も続くのか。
 それは、彼女にしか……里の長にしかわからないこと。
 今は、様子を見ていてもいいだろうと思っているのだ。

影時 > 「心得た。
 ……そのものの考え方は有難いのか、どうなのか。幾ら悩んでも答えが出そうにないな」

落とし物の類に気を付けなければならない理由は、もう一つある。
再発行は容易くとも、隠密行動を必要とされる場合で間抜けな遺留物は残したくない。
時間感覚もそうだが、同族に変じさせるものの考え方は分からなくなくとも、人間であることの思考を引きずることにもなる。
有難きことなのか、それとも悲劇とも云うべきなのか。当事者ならぬ己には答えは出しようがない。

「ああ、その点については弁えているともさ。
 ――でありゃァ、現状維持でも然程支障はないか。後はもう少し凝らす仕掛けを考える位だな」

あくまで主体が何処にあるか、というのも忘れてはいけないだろう。
どうにかしたい側は里である。商会側はその支援だ。
此方からああだこうだ、となるのは反発を生みかねない干渉になりかねない、と。

頷き、合間に饅頭を齧っては茶で飲み下す。
早期察知が出来る布陣と遅延のトラップの見直し程度で事足りるならば、この事態の変化に対する苦労は少ない。

リス > 「どう、なのでしょうね。
 まあ、あの人と交わっていたら体液で変質仕掛けていたから、とも言っていましたが。
 知り合いや、両親……彼らと同じ時ではなくなりましたし。
 答えを出すには、私はまだ、不勉強ですから。」

 竜の体液を全身に浴び続け、人でなくなりかけたから、彼女は自分を竜にしたと言っていた。
 それが本当なのか、嘘なのか、それすらも今は闇の中。
 そもそも、そんなにホイホイ変えられるものなのだろうか、魔法すら使えぬ身としては、判ることでもない。
 ただ、今はそれを気にしても答えがでないので、気にしない方向で考えるのみ、である。

「はい。
 向こうにも、竜雪のことは伝えてありますし。
 出来ればもう少しだけ、ラファルに前衛の技術を覚えてもらえれば、ですか。
 彼女の負担が増えてしまうところですが。」

 主体をおいて、こちらが考えすぎても意味はない。
 こちらとしては依頼されたことを全力で行う、それゆえの訓練ではあるけれど。
 一応、向こうにも伝えてはあるから、その防備に関しては何かあるだろう。
 そして、要請が来た時に、改めて向こうの長と考えればいいわと。

 自分の分のお茶を一口すする。
 紅茶と違い苦味が強く、砂糖などを入れるものではないので、まんじゅうを一つ。
 あとは、彼に任せればいいのだろう、お茶をすする姿を見て考える。

影時 > 「……隠さずに云うが、俺は何度か交わったがそういう兆候は無ェな。

 そういう素質か、他の奴らからの変化を遮断できる訓練を積んでいるか否かで変わるのかねェ。
 一番辛いのは其処よな。同じ場所で同じ時間を共に過ごせないコト程、辛いものはない」

半ばバレているかもしれないが、あー、とくしゃくしゃと髪を掻いてぼそりと、嘯く。
誰と、というのは察せるだろう。遠からず知られてしまってもおかしくない要件だ。

何を捨てて、何を拾うかにこの命題は似る。
生命に関わるコトの緊急対策なら納得もあるかもしれないが、本来は十分な思慮が必要だろう。
代価となるものに対して、考えが及ばないというのは押しつけがましい変化でもある。

「その場に踏み止まる盾より、注意を集め続けて攻撃を躱し続ける盾ならば、出来るだろうよ。
 使える得物は渡しているンだ。あとは、慣れだな。此ればかりは経験を積むほかあるまい。

 ……第一、机上、盤上の兵棋でもやってもいいがな。退屈ーと眠っちまいそうだぞ?」

適性として思うなら、注意を集め続けて囮となる方の在り方が近いだろう。
地形を弄る忍術の類を教えても良いのだが、元々御しうるかというそもそも適性が引っかかってしまう。
退屈な座学や遊びよりも、実技を交えた興味を引くコトのほうが教える方も愉しくていい。

饅頭を食べ終えて、茶を飲み干す。
もう一杯頼んで、飲み干せば後は幾つか話して、調整等を済ませれば今日の来訪の用件は一通り完了だろう。

リス > 「ええ、匂い、しますから。
 別に、そのことに関しては私は何も言いませんわ。

 もしくは、あの娘がその積もりだったというのかもしれませんし。
 寿命がどうなっているのか、すごく不安といえば不安ですが、気にしても仕方ありませんわ。」

 髪の毛を掻く相手に、それは貴方たちの問題ですし、望んでの行為なのでしょう、と。
 そもそも、娘にそういう行為をすぐにできるようにと篝が仕込んでいたのは知っている。
 子をなし共に生きることを選ぶのであれば、その時はもう一度ちゃんと来てくださいね、と。

 彼女と共に生きることを望み、そして、置いてかれた。
 それは結果論だ、それならば、今を必死に生きていくしかあるまい。
 あとは、そのときに考えるべきことであり、悲しくとも時間はとても長くある。
 人としての寿命で言っても、竜としての寿命で言っても。 
 ゆるゆる、考えるしかないでしょう、と少女は笑う。

「あの子は、足を止めるよりも、走り回る方ですから、ね。
 それに関しては、お願いできれば、と思います。

 そう、ですね、眠ってしまいそうですわ。」

 娘の気質を考えると、確かにとは思う。
 別の書物の時はいろいろ楽しげにしてたので興味を引いていたが。
 興味がないものに関しては、誰だってそうなろう。

 自分よりもよく見ている相手の言葉だし、無理に詰め込んでも意味がないのもわかる。
 むしろ、そのへんは自分か、竜胆が知ったほうがいいのでは、とか。

「と、色々と済みません。
 お願いも多くなりましたし、対価は50上げておきますね。」

 そう、忘れるところであった。
 方針も決まり、新たなこともするとなれば、対価は上げる必要がある。
 伝え忘れては商人としては名折れだ。
 彼の行動にしての価値を認め、それを金額にするから対価だ。
 実践的なことをするとなるとさらに金子も必要となろう。
 よろしくお願いしますね、と軽く調整の後話をして、今日の対話は終わるのだろう―――。

ご案内:「トゥルネソル家自宅」から影時さんが去りました。
ご案内:「トゥルネソル家自宅」からリスさんが去りました。
ご案内:「洞穴」にフローディアさんが現れました。
フローディア > (山中で狩りをしていたときの事だ。獲物を捉え、その処理をしている最中、何者かに襲われて意識を失ってしまった。そうして連れ去られたのがここ、この洞穴であった。装備していた武装も奪われ、所持していた道具もすべて奪われていた。与えられていたのは恐らく布団代わりに、ということなのだろう襤褸布一枚である。

幸いなことに、放り込まれていた牢の鍵は老朽化していたようで比較的安易に解錠することができた。むしろ、見張りの一人もいなかったことに不信感を抱くが・・・脱出するなら今しかない。すべての装備を奪われてしまった以上、誰かに見つかってしまえば抵抗は難しいだろう。ひっそりと息を殺し、出口を目指す。 ひた・・・ひた・・・、と硬い岩肌を裸足で歩き、きょろきょろと周囲を見渡し、耳をぴくぴくと揺らし、最大限警戒しながら先へ、先へ・・・)