2018/07/03 のログ
ご案内:「どこかの温泉旅館」にフラヴィアさんが現れました。
ご案内:「どこかの温泉旅館」にヴィンセント・ミラーさんが現れました。
フラヴィア >  山や渓谷を越えたわけではないが、時に屋根を駆け壁を飛び越え、学院の寮を出てから走り続け――
 漸く一軒の旅館を前にしては、膝に手を付いて少女は肩で呼吸を繰り返していた。
 身体能力だけでなく回復力も増し増しにしていたものの、流石に追いつかなかったようで。

「ぜぇ、はぁ……い、急ぎすぎた……かも」

 荒い呼吸を続けていたものの、すぐにそれも落ち着いて少女は一度深呼吸。
 玄関へと入り、事情を説明してからフロント脇のソファへと座った。
 ――そこでふと、壁にかけられていた鏡が、己の姿が目に入る。

「……」

 髪も衣服も乱れきっており、特に前髪はぼさぼさで目も隠れ、ホラーなことになりかけていた。

ヴィンセント・ミラー > 仕事終わりで汗ばんでいた。
年頃の若い娘さんと会うのには少し憚られる状態であったが、整えているだけの時間もなく。

男は現地に到着してからどうにかする手はずで宿へとやってきた。
異国風の木製の建物に近づくと、煙突から温泉の香りが漂ってくる。

目当ての彼女はまだだろうと扉を潜ると、ソファへと座っている制服姿の少女。

「今日の授業は体育だったのか?」

男は髪もばさばさにして寛いでいる彼女へと声をかける。
目の前に近づくと、顔を隠している前髪の前で手を振ってみせる。

フラヴィア > 「こ、こんな格好じゃ会えないー!」

 慌てて立ち上がり、鏡の前で整えようとする。ものの――待ち人の声が耳へと届いた。
 ぴしり、と動きが止まる。喜びと焦りが入り混じった笑顔を、彼へとぎこちなく向けた。

「ど、どうも……です、ミラー様。ち、違うんです。あの、急いできたもので……」

 あたふたと慌てふためく心情そのままに、首を左右へと振ったものの、すぐに頬を真っ赤にして。
 ソファの上で膝を抱えながら、彼へと背を向けた。

「ちょ、ちょっとだけ見ないでくださいぃ……」

 せめて髪ぐらいは、と能力と細い指先で多少なりとも整える。
 鏡を見れないので不十分かもしれないが、ある程度はと判断しては顔を上げ、彼へと向き直るのだった。

ヴィンセント・ミラー > 「そういう時もあるだろう。 そんなに俺と会うのが嬉しかったのか?」

己よりも先にやってきてくれたことに男は表情が綻ぶ。
喜びの混じったドヤ顔といった所か。

見るなと言われると、背を向けている間に受付で部屋の鍵を受け取る。

「もう終わったか? 可愛いお嬢さん。」

男は鍵を手の中で弄びつつ、少女の頭に手を載せる。
そして、セットしたばかりの髪の上に指を滑らせては感触を楽しんでいた。

「お互い汗を掻いているし、風呂に入るか。
ここは良い温泉だし、おまけに邪魔が入らないから気持ちいいぞ。」

フラヴィア > (多分これで大丈夫。うん、問題は無い。もう変じゃないはず。……多分)

 そんな不安でいっぱいだったが、彼の楽しそうな表情を見られて漸く一安心。
 笑顔を浮かべて立ち上がった。

「お待たせしちゃいました……えへへ、わたしのが先に来ましたのに」

 鍵が鳴らした音に少し視線を向けたものの、彼の提案には二つ返事で頷いた。
 ここへ来るまでに多少なりとも汗をかいていたし、そもそも着替える間もなく慌てて寮を出たのだから。

「はいっ。ふふ……楽しみです」

 彼のすぐ後ろを付いて歩き、やがて脱衣所の前でいったん別れることになるのだろう。

ご案内:「どこかの温泉旅館」からヴィンセント・ミラーさんが去りました。
ご案内:「どこかの温泉旅館」からフラヴィアさんが去りました。