2018/06/18 のログ
アルド > 「………げほっ」

噎せた拍子に吐いてしまいそうになるのを、何とか堪えて最後の一口を喉に流し込む。
味なんてしない。無駄に喉が渇くだけ。
水くらい何処でもあるだろう。
何処でも良い、眠る場所だって何処だって良い。
生きてさえいられるなら泥水だって啜ってやる。

ふらり、覚束ない足取りで立ち上がると、少女はこの場を去って往き―――。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区/路地裏」からアルドさんが去りました。
ご案内:「赤いリボンと黒ひげ亭」にタピオカさんが現れました。
タピオカ > 港湾都市には海の荒くれ者にカジノフロアの荒くれ者と酒精を求める人が多い。自然と酒場の数もジャンルも多く。ダイラス滞在中の褐色遊牧民は、ふと足の向いた風変わりな酒場で夕食を摂る事にした。

「――こんばんは!
えっと……。それじゃあ、これください!」

海賊船の船内をイメージしたらしい、妙に低い天井と奥行きの広く柱の多い店内。ハンモックやカンテラがあちこち吊るされている。カウンターに座り迎えてくれたのは店主らしい、元々女海賊でもしてたんじゃないかと思わせるよな大柄の女性だ。いらっしゃいといかつく笑う彼女へ、渡されたメニューの一番上を適当に指差た。肉と魚とサラダを大皿に盛り付けた料理らしい。

「船の中に居るみたい……。
それに……。
――、すっごく、開放的……」

もともと、そういう酒場でもあるらしい。
ハンモックの上や、簡素な木のベッド。大きな木箱の上で。
堂々と男女の睦み合いをしている客たちも居た。食事をしている客も、店主も店員も何も気にした様子もなく。
自分といえば、時々気になってちらちらと見てしまう。
料理が来るのをカウンターで待ち。

タピオカ > そして開放的なのは、睦み合う性が必ずしもつがいではないというところもだった。
男の人同士でも、女の子同士でも。皆、好きな格好で好きな人と身体や唇を重ね合わせ。
気持ちよさそうに鳴き声をあげていく。それはだみ声同士であったり甲高い雌同士であったり様々だけれど、どのペアも幸せそうだ。
引退した船乗りじみた、巨躯の両腕に入れ墨のある老人の客がそんな様子に口笛を吹き。
チェロを構えた痩せぎすの男の人が陽気な海の賛美歌を歌っている。
テーブルに刻まれているらしい双六ゲームをダイス片手に興じているグループは、いちいち大げさな反応をしながら楽しんでいる。

荒々しくも勝手気ままな賑わいを横目に。次第に目が慣れてきてしまったらしく
気づいたらミレー族同士のカップルの微笑ましい交尾にふっと笑顔が浮かんでいた。

「――いただきまーす!
……って、これ!?こんなに?こんな量!?」

やがてたーんっ、と勢いよく運ばれてきた銀の大皿。
両手合わせたその表情が驚きに変わる。鶏肉豚肉牛肉ハム、魚にキャベツにニシン、たまねぎオリーブ。見た目も豪快な色とりどりの食材がもられたそれは、一抱えあるほど。
海賊稼業ならこれほどないと胃袋が満足できないんだろうか、と思えば今日一日だけ海賊になってみよう。ナイフとフォークを両手剣のように使って、ぱくぱくと美味しそうに夕食を摂る遊牧民の姿があった――。

ご案内:「赤いリボンと黒ひげ亭」からタピオカさんが去りました。