2018/06/14 のログ
リス > 「はい、世間は狭いもの、ですね。
 確か東方では、縁……でしたかしら、そう、言うもの……とお聞きします。
 ああ、良かったです。あの子はまだ生まれたてで幼い子なので。
 なにかお困りの時はいつでも行ってくださいまし。」

 娘に関しては、迷惑をかけてないということなので、安堵のと息を吐き出す。
 ツッコミがなければ、少女は特に自分から言うことはない。
 両性というのもあれば、人間だったものとなっている事は、言うに言えないところもある。

「あら。
 不動産でもしていればおすすめの一つも出来ましたが。」

 家がないという相手に、残念ですと冗談交じりに言葉にして笑ってみせた。
 別に、不動産をしていても売るかどうかはまた別の話であるし、とりあえず冗談の域から出ない話にしておこう。
 椅子に座る相手が確認をしてきたので、軽く微笑む。

「ええ、どうぞ、お気の済むまで、確認をお願いいたします。」

 品物は納得のいくまで調べて欲しい。
 そして、満足してくれるならそれに勝る喜びはない。
 インゴットを確認し始める間、一歩離れて気を散らさないように。
 静かに待つ事にする。

影時 > 「つくづく、なァ。――やはり縁なのだろうよ、思うに。
 分かった。 あの子の気質を思うに手前の不始末をつけなきゃならん事ァ、ないと思うが、な。
 そうならんよう俺も手はかけさせてもらう故、其処は心得てくれると助かる」

迷惑という程はない。然るべき時に取り返しのつかないことをしでかさない限りは、それは迷惑という程ではない。
押さえるべきは、一つ仕損じて大きく為すべきことを瓦解させてしまうことがないようにする。それだけだ。
しかし、夫か。そうなると、付いているのかもしれない。ナニカが。
些細なことだ。言うに言えないことを何か、気がかりとしていない限り、問い質すには至らず。

「いや、な。今はいい。俺なんぞが根付くにゃ、まだまだ、由縁が足りん」

今はそう、定住云々は冗談程度に考える位でいい。逆に大きな家などを持てば、間違いなく持て余す。
重みを抱えていないからこそ、気楽に死地に赴ける。何処にでも行けるという思いもある。
仮に仕えるに値するものでも居れば、良いのだろうか? 今はまだ、己も想像もすらしないが、小さく笑って肩を竦めよう。

「……――では、こいつを包んでくれ。こちらの鋼線も頼む」

そして、検分が済めばインゴットに吹きかからないように、取り出す手巾で口元を覆って息を吐く。
使い馴染みのある通りの質、重さだ。入手経路等から割高になるのは否めないが、其れに余りあるものがある。
使い捨てにし辛い道具類であれば、扱いを心得た材質から鍛える方が信にたる。
併せて検分したワイヤーも納得のいく品質、細さのものを選んで購入の意思を示そう。

リス > 「それであれば。
 あの子をよろしくお願いしますね?」

 彼の言葉に、母親として少女は返答を返す、彼が迷惑ではないというのであればこれ以上心配しても仕方がない。
 娘の出会いにただただ感謝を、と。

「この国は、良いところとも、悪いところ、とも言えませんからね。
 ただ……なにかお困りの際は、当店を頼って頂ければ。と。」

 根付くかどうかは、彼次第、それなら、商売人としてできるのはしっかりとした商売をすること。
 にこやかに微笑み、軽くお辞儀を。

「畏まりました。」

 彼が買う意思を見せれば、店員を呼んで油紙を持ってきて、インゴットと鋼線を包ませる。
 それから、彼を眺めて値段を伝えよう。
 特別な販路があるから、市場価格よりも格安の提供。

「まあ、本来はドワーフさんに加工をお願いしてもらってのお値段となりますので。
 素材だけであれば、そこまで高くはできません。」

 軽く笑いをこぼしながら、少女は彼を見やる。
 次は、お酒。
 こちらでございます、と彼を案内しよう、同じ階そうなので、すぐに到着する。
 瓶に入れてある、東洋の米酒。

「お気に召すものかどうかの試飲も行っておりますわ?」

 と、並べられている米酒のビンの数々。
 流石に、お酒の方は販路があってもそれなりの値段。
 これでも、ほかの店に比べて格安なのである。
 簡単に言えば1桁から2桁程度。
 いかがしますか?と首を傾ぐ。

影時 > 「俺のような無頼で良けりゃァ、信に足る振る舞いをさせてもらう」

師匠然とした態度を笠に着るつもりはないが、だからといって軽んじるつもりもない。
万一、己の教えで仕損じて死するようなことあれば其れは忍の名折れであり、自死にも値する無様だ。
故にこそ、手は抜かないし抜けない。締めるべきは締める。片親からの言葉にその認識を新たにする。

「見ていて面白ぇコトもあるが、如何ともし難いのもあるな。……何から何まで、痛み入る限りだ」

人族と魔族との果てぬ闘争もあれば、腐敗した貴族の放埓はつい要らぬ手を突っ込みそうにもなる。
自分を食客として抱える貴族の依頼で動くこともあれば、その清濁混沌と混じった様は幾らでも目につく。
頼るならば勿論、商売人である以上相応の代価等を求められることだろう。
それに見合うものが己にあればいいが、と。思う事は多い。だが、それも支援される価格に思考は途切れる。

――思っていたよりも、安い。

そこだ。それは何よりも重要である。鋼材に拘れば、万一武器を奪われた際に材質を特定される恐れもある。
妥協も含めて、使い分けが求められる。しかし、それに増してこの価格はほっとできる。
故に取り出す財布から、迷うことなく支払を行おう。

「扱い方は己も知ってるンでな。手に負えん金属があれば、その時は紹介してくれ。

 と、……では、これをお願いできるか?」

そして、次は酒だ。あるある。実にある。馴染みのある芳香に困る位の風情で口元を緩ませ、瓶を眺めてゆく。
これらはやはり相応の値段がある。だが、故郷より離れた地であっても知った字面が並ぶ光景は、送還の一言だ。
試飲できるならば、と直感のままに示してみるのは「六道古道」なる銘が振られたもの。

リス > 「ブライ……?
 ええ、あの子は幼い分直感には優れてますし、信じられる相手かどうかは、彼女は敏いと思いますので。」

 彼の言葉は、解らないところもあるが、娘がなついたならそれを信じるだけである。
 悪い影響が出たなら、それはその時話し合えばいいだろう。
 今、彼と話をして思ったのは、娘にとって、悪い人間ではないのであろう。
 それが、法を守る意味での善悪の意味ではなく。

「まあ、それはどこの国でもというところですわね。
 ここは、戦乱がまだ収まっていない国なので其処だけは、私としては何とかして欲しいところです。
 商売人ですから、お客様は簡単には手放しませんわ?」

 痛み入る、といっても、それは対等な契約みたいなもの。
 彼が欲して、こちらが適正にその価格で提供する、金と信頼で培われるもの。
 いいお客様は逃がしませんので、と冗談みたいに笑ってみせる。
 彼の考えている通りの返答でもあろう。

「はい。とはいえ、こちらも定期的に手に入るのは、ミスリル銀が一番最高ですね。
 それ以上は掘り出し物か……というところになってしまいます。」

 玉鋼は、契約しているドワーフさんが作ることが出来るので格安で手に入るので、その値段を反映できるのだ。
 いい物を安く、商売は薄利多売というが、ものにあった値段と、需要と供給を見て、その中で決めないといけない。
 そこが難しく、楽しいものだと生まれつきの商人は思う。

「はい、六道古道ですね。……少々お待ちを。」

 冷蔵室から、試飲用の瓶を持ってくるように指示をして。
 キンキンに冷えた酒瓶、持ってくる。
 目の前で口を開き、升に注いで差し出そう。
 さあ、どうぞ。
 自分で注いで差し出すのはせめてものサービス。

影時 > 「……あー、分かりづらいか。後ろ盾も何もない無法者、とでも思ってくれりャいい」

この国でいう冒険者等も、いわば無頼の徒というくくり方もできるだろう。
信用に足る後ろ盾もないならず者。勿論、冒険者も何もかも、一概には云えないものだが。

「まァな。俺の故郷も少しばかり収まったが、だからと言って何も楽しいコトが失せちまうのも考えもんだ。
 だが少なくとも、内の小競り合いでも多少は収まってくれたら、店主としても気は楽になるだろう?」

確かに、と。良い顧客であればリピーターになってくれることを望むのは経営者として、望むところだろう。
互いに信が置くことと欲することが重なり合い、天秤が釣り合ってこそ初めて取引は成り立つ。
思っていた通りの答えに、無精髭が目立つ顎を摩りながら己も笑って見せよう。

「そこまでいくと、手には負えんなァ。ひょいと投げるにも躊躇う。」

腰裏の鞘に仕込んだ苦無に使っている素材も、現在の雇い主の伝手で紹介された鍛冶師の腕を頼って鍛えたものだ。
名匠ならざる己だと、気軽に扱えるのはやはり鋼鉄までが限界だ。
だからこそ、弁えているとなれば自身で無為に解決の手を探るのではなく、誰かに手を借りることに躊躇いはない。
調達しうる範囲で自身の納得いく道具を揃え、必要に応じて使い分ける。手段は幾らあっても困ることは無い。

「おぉ、これはこれは。有難ぇ」

そして、お待ちかねの酒だ。手ずから注いでくれる様に忝いと目礼し、升を受け取る。
色と匂いを角度を変えて確かめ、吟味し、うむ、と頷いて一口。そしてまた一口と味わおう。
其処に至福がある。最早呑めるまいと割り切っていながら、故郷でもあるか否かという風味が――ここにある。

リス > 「冒険者みたいなもの、と。」

 彼の想像とだいたい同じような感想を覚える。とはいえ、後ろ盾がないというと、成り立てとかそういうものを連想する。
 基本は高名な冒険者はたいていパトロンや後ろ盾が付くものだし、そういうものだという認識を。

「ええ、せめて内憂がなくなればもう少しとは思いますが……。
 政までは、商人の分を超えますので、これ以上は言えませんね。」

 思うところはなくもないが、分はわきまえる。人差し指を唇の前に立てて、軽くウインクを。
 男性の笑い顔は、野性味に溢れていて、すっきりとしたそれは好感が持てる。
 今後もよろしくお願いしますね、とこちらも笑いかける。

「ふふ、確かに、魔法銀とも言えますし、ね。」

 彼ならば、防具の素材としてなら使いそうねと思う。
 投げるには高いものだという言は納得できるからで。
 必要な時は声をかけてくださいましね、とだけ。
 何度もいった気がした、これ以上はやめておこう。

「どうぞ一献。」

 一献というにはちょっと多いだろうか、まあ今後の付き合いも考えてのサービス。
 にこやかに笑いながら蓋をして、冷酒を冷蔵室へと戻すように、奴隷に渡す。
 自分も飲んだことがあるが、爽やかで美味しいと思う。
 彼の……本場の人間の返答を待つ。

影時 > 「まぁ、その見立ても間違いじゃあないな」

冒険者と同様の事もやり、それ以上の事もやる。間者としてのこともやれば、凶手を退治することもやる。
いわば、戦場の何でも屋だ。後ろ暗いことも平気でやれる。
最も己の気質はただ心を殺して振舞うばかりに飽き足らず、手段を目的とする事もあり得る位だが。

「かといって、外憂もままならんってのがこの国の嗤えなさか。……そうだな、俺も余分な口は挟めねぇな」

思うがままに振舞えば、業の帳尻合わせが難しい。やれやれだとばかりに息を吐き、天井を仰ごう。
度が過ぎる振る舞いとは時に、その代償を求められるものだ。戦うのは好きでも、好んで敵を作りたいものではない。
話易く、色々と弁えてくれている者とは得難いものだ。此方こそ宜しく頼む、と素直に頷いて。

「使い出ははあるんだろうが、な」

かの魔法銀は薄くしなやかに打ち鍛えて、編み込んで服のようにする加工もできると聞く。
使いやすい第一の手段となれば、やはり防具が一番いいのだろう。
この先、頼らざるを得ない機会が皆無とは言えない。
その時になれば、伝手とさせてもらおう。力になれうる手段が向こうにあるならば、気遣いは十分に足る。

「……旨い。美酒の類は味わった事がないと言っちゃァ嘘になるが、此れなら値段にも納得がいく」

もっと然るべき場所があれば、とも思うけれども、其れは流石に贅沢が過ぎる。
己なんぞには勿体無いくらいだ。納得できる出来栄えが此処にある。升を干し終えて、忝いと卓に置こう。

リス > 「有難うございます、ブライ、覚えておきますわ。」

 笠木さんは、無頼。そう覚えておきますね、とにこやかに。
 世の中は綺麗ごとでは回らない、少女は学んでいるし、その後暗いところにも手を伸ばしている。
 直接ではなくとも、間接的とは言えども。だ。

「魔族との戦争なんて、和解もできそうもない相手、ですしね。」

 外憂の最も足る所……しかも、魔族の一部は国に入り込んでいるとさえ。
 まだ、この場所が戦場にはなっていないが、いつ、戦場になってもおかしくはない。
 その時は、どうしたものでしょうね、と。溜息。

「ええ、どのように使うか、そもそも使うかどうかは、笠木様に委ねられますが。」

 趣味に合わないから、使わないという冒険者もいる。
 そのあたりは先程も言ったが需要になるので、彼次第だとしか言えない。
 なので、これ以上は言うことはない。

「有難うございます。
 ほかの店では、同じ酒でも販路の関係上値段が跳ね上がりますから。
 米酒に馴染みのない私にも凄く飲みやすくていいお酒だと思いました。」

 ええ、魔族の国から命懸けで運ぶとなると、その分跳ね上がる。
 特別なルート、酒造の責任者との婚姻。
 それらが組み合わさっての値段ですよ、と、セールスは忘れない。

 然るべき場所に関しては残念ながら少女には心当たりがない。
 返された升を眺めてから。
 ほかも試飲されますか?特と首を傾ぐ

影時 > ああ、と。覚えるには功徳のある字面ではないが、と。苦笑交じりに頷こう。
気取っているだけと言えども、貴族の食客であることが己が後ろ盾であるということには繋がらない。
互いに利用し合うことを前提とした繋がりだ。
良いように使い合う。己が求める最低限の食住と、心躍るに足る荒事のために。

「……さて、なァ。そこはどうだか分からんぞ?」

此の近場まで存外、魔族は潜んでいるかもしれない。
ただ、害を成さなければそれでいいという風に割り切れるのは、己が余所者だからかもしれない。
一概に言えないことに望みを見出すのか、それとも暗澹となるかはこれもまた多様か。

「心得てるともさ。扱ってくれているのが分かってりゃ、今の俺には十分よ。
 ――酒だってそうだ。こっちの、えぇるだか、何だかにも慣れたが、在ると分かっていれば金をかける理由に足る」

美女を侍らせて呑むとなると、相応の料亭やら妓楼であろう。
試飲でも近しい風情を愉しませてくれるのは、店主の見目麗しさとサービスの賜物だ。そう思う。
醸造元が魔族領内にあるというのは、過日にも聞いた話である。
口外無用でもあろう内容に、ますます心は踊る。一通り試してみても。いい、そんな気さえする位に。

「心が揺れちまう心地だが、そうしたら朝日を拝んじまいそうだ。
 今の奴を一瓶、併せて頼めるか? 後は持ち帰っての楽しみにしたい」

だが、今は敢えてそうせずに、後の楽しみとしよう。酒気を纏う忍びというのも、締まらない。

リス > 「怖いことをおっしゃらないでくださいまし。」

 彼の言葉に、少女は苦い笑い。
 人間をやめたとは言え、彼が見ればわかるだろう、戦どころか、荒事さえ一切手を染めたことのない少女。
 襲われる恐怖は、人一倍なのであるのだ。
 例外は例外であり、通常ではないのだし、と。

「ふふ、では、またのご来店をお待ちしておりますわ。」

 流石に、和風の料亭や妓楼には覚えがないので、そこは案内できないので我慢してもらうしかない。
 あ、内緒ですよ、と今さらの嬢に、冗談めかして一言言おう。
 魔族の国の領内と交友関係あるというのは外聞にいいところではないだろうし。
 そこが治外法権であったとしても。

「あら、残念です。
 畏まりました、では一瓶ですね。」

 少女は店員に伝えて、真新しい瓶を一本持ってこさせる。
 先ほど飲んでいたし、改めての忠告は必要がないだろう。
 瓶は割れやすいので、緩衝材に入れて割れにくいように包んで、差し出そう。

影時 > 「悪い悪ぃ。だが、この件にも――あるンだろうな。憂いが」

隣人が若しかしたら、害意を持った異物であるかもしれないという憂い。
人間と魔族は見た目は似通っているのに、精神性も能力も違うという現実。怖れを抱くにも十分だろう。
荒事に直に関わるものらしい振る舞いは見えないが、故にこそ恐怖を抱けるか。
見える笑みより、そう見立てて思う。

「ああ、また世話になるぜ。――それと云うに及ばず、だ。」

魔族領内との物資の遣り取り云々は他言して信じる者の有無もそうだが、折角の伝手を無くすのは非常に痛い。
故に心配するなと己の口元に指を一本立て、当てて見せて他言しないという意を示してみせよう。
故郷ではない国に、何から何まで求め過ぎるのは贅沢が過ぎる。
もしかすると如何にもらしい雰囲気の店はあるのかもしれないが、今はそこまでは願うまい。

「愉しみは、じっくりと味わいたい性分なんだよ。他の酒も愉しそうだ」

安酒は直ぐに飲み終えるが、良い酒と時間をかけて飲み干したい。
何より、普通に買うよりも値は抑えられていたとしても、持ち合わせの問題もある。
代金を用意し、差し出されるものを受け取った後に、引き換えに支払おう。

リス > 「――否定しきれませんわ。」

 人間同士でさえ、恨み辛み、そして諍うのに、異種族となど。
 憂いなど、どこにでもあるのだ、彼の言葉に否定の言葉が出せないので、それを言葉として。
 怖れ。商売人としてではなく、一個人として。
 そういう意味では、嫁や、娘たちと比べて、はるかに弱い。
 ただ、人間をやめてしまっただけの人間。
 苦い笑いは。消えることがなくて。

「はい、お待ちしております。」

 彼の仕草に、苦い笑みを微笑みにかえて、またの邂逅を願う。
 お客様がい付くのは大歓迎であるから、と。
 商人とお客様、その関係はとても、大事なものであるのだ。

「では、ごゆるりとお楽しみ下さいませ。
 お酒もたっぷりご用意させていただいてますから。
 もし、お手間があかないようでしたら宅配も承りますのでその時はよろしくお願いします。」

 確かに、値段はそれなりにする。
 彼の言いたいこともわかるので、また別の機会を待とう。
 支払いを受け取り、確認をして、ありがとうございます、と。
 ほかに、まだご入用はありますか?と首を傾ぐ

影時 > 「だが、悪いコトばかりじゃあないだろう。ン?」

じっ、と。暗赤色の片目を眇め、相手を見る。
身の上等をとやかく聞く気は毛頭ないにしても、気になるところはある。
女同士の婚姻で、子が生まれはするまい。生まれるとなると其処に尋常ならざる由縁があることだろう。
まして、魔族領との物資の遣り取りもあれば、思考のピースはそろう。
隣人が人間ではないということは、思った以上に大したコトではないのかもしれない。
隔意、害意、敵意――等々。そんな感情でもない限り。

「ああ、頼む。あー、そうだ。ついでに山野以外であの元気娘が居つきそうな処が知っていれば、次にでもいい。教えてくれ」

自分が為すべき務めの傍らに、教練等もやはりらしいことはしておくべきだろう。
懐から取り出す二枚の風呂敷を使い、玉鋼のインゴットとワイヤー、並びに酒瓶をさらに包んで持ちやすくする。
いずれも重量のある荷物だ。纏めて持ち運ぶとなると、瓶を割ってしまいかねない。

「否、今のところは此れで十分だ。次は――油の類も頼むかもしれねぇな。
 つくづく、致せりつくせりだ。使う事になれば、その時は頼ませてもらうぜ」

今、入用となっている懸念は此れで一通り解決できる。
十分だ。その判断を以て立ち上がろう。備えと詰まらぬ日々を満たす愉しみと。それらがあれば、今は満ち足りる。

リス > 「……。」

 自分を見る相手、悪いことばかりではないという言葉、伴侶を思い出せば頬は染まる。
 それが何よりも雄弁な証拠となろう。
 照れた視線はさまよい、もう一度彼のもとに戻るのは……彼の言葉を来たからで。

「あの子は基本食事所と、私の家にいますわ。
 お仕置きされてからは毎日戻りますから、手紙をいただければ大体は捕まります。」

 居所、今度というわけでもなく心当たりがあるので伝え。
 自分の自宅の住所を。
 商人らしく富裕地区に居を構えており、そこを書き記しておく。
 連絡はすぐに付けられるだろう。と

「はい、事前に伝えおいてくれれば、どのような油でも探してみせますわ。
 今宵は、毎度ありがとうございます。
 またのご来店をお待ちしております。」

 立ち上がる相手に、お辞儀をして。
 玄関まで見送ろう。
 彼が去れば、改めて日報を記して、帰るのであろう―――

影時 > 「は、ッ」

自ずと頬に色が灯る様を見遣っては、くつくつと低い笑い声を零して肩や背を震わせる。
こうまでくれば、余分な言葉は必要あるまい。
満ち足りているからこそ、憂いはないのだ。
幸福の定義は多様だが、少なくとも人外云々の憂いは彼女らにはないと。そう感じる。

「成る程、な。助かる。
 いやな、好物でも訊いて狼煙でも焚かなきゃならん気もしたが、それならばどうにかなるか」

続ける言葉は冗句混じりだが、帰る処が定まっていれば手紙を託しに行くのも不自由はない。
住所を書き示して貰えれば、改めて有難いと小さく頭を下げ、荷物を取ろう。

「ものの本で読んだがよく燃えて、消しづらい奴を探している。
 確か、鉱油の類だったろうな。――世話になった。また、来させてもらう」

見送りされながら、一先ずの塒への帰路につこう。
手が空けば、冒険者向けの鍛冶場を借りて幾つか道具を用立てよう。次の、まだ見ぬ鉄火場のために――。

ご案内:「トゥルネソル商会 王都・マグメール店」から影時さんが去りました。
ご案内:「トゥルネソル商会 王都・マグメール店」からリスさんが去りました。