2018/05/24 のログ
ご案内:「森小屋」にグスタフさんが現れました。
グスタフ > 獣の雄叫び染みた、空気が引き裂かれる音が森に響いた。
その数、一度ではない。複数回。

夜風を引き裂いたのは音だけではない。
森の中、何度か光が瞬いた。その中心に一人の男が立っている。
煙が細く夜に伸びて、むせた。

「粗悪品だ」

押収した拳銃をぶっぱなして、男は吐き捨てる。
息を整えて、別の銃を手に取る。獣の雄叫び染みた音と閃光が瞬く。

「模造を繰り返して粗悪品しか作れねぇのか。
 王都の政策も捨てたもんじゃねえみたいだなぁ?」

政治取引まがいの拳銃制作を独占しようとしている王都のロビー活動を皮肉る。
民のためにと謳って利権争いかと。

グスタフ > 手元の銃は射撃後に高熱を発している。よくよく見ると銃身が歪んでいるように見える。
軽く地面に放り投げて、近場の木陰に隠れる。
破裂音が閃いて、近くに銃弾がめり込むような音がした。

「いつ暴発してもおかしくねぇな……」

木の根元に座り込んで、煙草に火をつけた。
風が紫煙を揺らす中、目を閉じる。深く息を吸い込んで。
苦くて甘い香りを吐き出して。

カチリと脳裏で音がするように。意識が覚醒する。
夜の森、遠くの影が見える気がする。
夜の森に蠢くものが肌で感じられる感覚と、息苦しい全能感。

腰の自前の施錠銃を引くように抜いて、狙いをつける。
獣の咆哮が轟いて、影を貫いた。
その距離、百メートル以上。

「悪魔や天使を相手にしなきゃ、まだやれるかねぇ……」

人生の大半を捧げても届かないものがある。
妥協と諦観に浸るのが大人の顔だと笑みを浮かべる自分がいる。
まだまだこんなもんじゃねぇだろと嘯く俺がいる。

グスタフ > 「とはいえ、今じゃ職人が少なすぎるか……」

量産には向かない武器だ。
グスタフが持っているものも、百丁に一つか二つの完成度で、
イカレた場合修理できる担い手が片手も知らない。

巷にあふれるものは暴発がつきまとう粗悪品で、政治の駆け引き位にしか使えない。
それでも、そんなもので世間は回っていく。

「こいつだって、薬物打たなきゃ安定なんかしねぇ代物だしな……」

今日もまた寿命のいくつかを犠牲にしているのだろう。
命の使い切り方なんて人それぞれだろうが。
明日の見も知れぬから、男の性欲も滾るのだろうか。
無関係ではない気がする。渇きを覚えるように今宵も雌を探しに行くかと。

グスタフ > さっき打ち抜いた獲物のあたりをごそごそと探し回る。
点々と血が地面を彩っていたが、どうやら仕留めそこなったようだ。
頭をかく。空を仰いで。

「まあ、そんなもんだよな」

影を狙っただけで、何のどこを打ち抜いたのかもわからない。
それが限界だ。それ以上は望んではいけない。
自分のできることを見定めて。

「運命の正しきかな」

手を伸ばした先にいた手負いの獣の首をナイフで掻き切った。

「死の聖なるかな」

ご案内:「森小屋」からグスタフさんが去りました。