2018/04/26 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」にリーゼロッテさんが現れました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」にタマモさんが現れました。
■リーゼロッテ > 地面を踏みしめた瞬間、更に浮かび上がる魂たち。
それならばと言わんばかりに増やしてくるならば、鴉達は更に数を増やして魂に突撃していく。
魂と鴉がぶつかりあえば、同じ様に青い炎が魂を安らかに葬ろうと、月光を思わせる青白い煌めきを見せた。
小さな魂は迸る火の粉に触れるだけでも、大きな作用となって魂を浄化しようとする。
しかし、爆ぜれば、その炎が散っていってしまう。
それ自体にダメージを受ける様子はないが、鴉達の怒りは頂点に達す。
そして、彼女が勘違いしている部分に気付くだろう。
『化け狐如きが我等を嘲笑うか、塵芥残らず焼き殺してやろう!』
「っ……!」
ガスタンクが爆発するかのように、小さな体からは想像着かぬ様な魔力が一気に溢れ出す。
その余波に心臓が強く圧迫されれば、瞳を見開きながら片膝を着いた。
それでも、鴉達の動きは止まらず、寧ろ悪化といったところか。
小さな嘴が開き、そこに炎が圧縮されるように生み出されると、青白い閃光となって吐き出される。
無数の光の線が針山の様に、彼女の周囲に生え揃うだろう。
自身の魔力を消費するのは、あくまで彼等の力を自身で扱うときだけ。
彼等が勝手に放つ時は、彼等が自分で魔力の代価を払うが、消費に伴う反動は現世との門となる自身へ叩き込まれる。
苦悶の表情を浮かべながら心臓を抑えるも、圧迫される鼓動はどんどん弱まっていた。
『くたばるな! あの悪童を消し去るまではな…!』
「ぐぅ……っ!? 痛っ、あ、ぐ……っ」
体に強制的に流し込まれる魔力によって、強引に心臓を動かされる。
激痛が二重となって瞳を白黒させながら、鴉達は暴れまわっていた。
妄執といっていいレベルで、次から次へと光の筋が振り回されていく。
魂が触れた瞬間、爆ぜるよりも早く、焼かれたことすら気付かせないほどの力を以って浄化させてしまう。
人為らざるモノを宿した身は、崩れかけながら人の垣根を強引に超えさせられようとしていく。
■タマモ > 周囲で爆ぜていく魂と鴉達を眺めながら、軽く思案する。
正直に言えば、真面目に相手をする気は更々無い。
いかに己に対し、大した効果も上げられぬ事を思い知らせれば良い、それだけなのだ。
無尽蔵に近い魂、それを必死に浄化する鴉達の様子を楽しむ。
「言うだけならば、どれだけでも言えようものじゃろうな?
ほれ、いつになったら妾は焼き殺されるのじゃ?」
更に力を増す浄化の力だが、それに合わせるように魂の数も増やす。
冷静に見る事が出来ていたならば、堂々巡りになっているだけと気付けるのだが…
合間合間に、このような言葉を挟み、鴉達への挑発も忘れない。
軽く肩を竦めてみせ、ふぅ、とわざとらしい溜息も混ぜる。
…と、ふと、急に起こる少女の変化に気付く。
はて、鴉共が暴走でも始めて悪影響でも出始めたか?
そんな事を考えながら、後から後から湧き出るように現れる魂、それの一部を集めさせ、とん、と軽く地を蹴り、その上に乗った。
今の己には、残念だが魔力の流れは分かるのだ、有限とはいえ膨大な量の魂と言う盾はまだまだある。
吐き出された閃光をも、魂達が庇い消えていってしまう。
「ふふ…悪童か…はて、果たしてどちらが童なのやら?
………?…さて、少々拙い事になったのぅ…」
少女の変化は、鴉達の影響でのものだろう。
己からすれば、少女がどうなろうと知った事ではない。
だが…己の内にあるものは別のようだ。
挑発の言葉を不意に止めるのと同時に、地から湧き出ていた魂の増加量が一気に減少してしまう。
「苦しませるなとでも…こんな時に、まったく鬱陶しいものじゃ…」
軽く舌打ちし、ぽつりと呟いた。
■リーゼロッテ > 『貴様が存在し続ける限りだ、魂を冒涜する輩を決して許さん。この娘が壊れようと、例え門が閉ざされようと、全ての垣根を超え、貴様が死ぬまで我等は止まらぬ!』
狂気ともいえる執念は、眷属の端くれとは言え、常軌を逸している。
自身を現世へ引き戻してくれた宿主である娘が壊れることも厭わない。
神のために魔を焼き、安らかな死を与えるためならば、全てを失おうと遂行する。
それが自身の主であろうと、それは主も望むべきことと、理屈では一切考えていない。
殺す、消す、消滅させる。
その言葉が達成されるまで、彼等はもう止まらない。
「っ……ぁ……いぎっ!? あ、あがぁっ!?」
炎の勢いは増していき、分裂して増える鴉も、まるで空を覆うかのように広がっていく。
最早光の筋が帯となるように空間を埋め尽くし、それだけの力が執行される。
普段の数倍以上の負荷が体にのしかかり、体の循環機能を強引に加速させられ、維持させられれば、そのダメージはあっという間に体へ蓄積するのだ。
とうとう地面に倒れ込むと、心臓になにか取り憑かれたかのように胸を抑えて悶え苦しみ、地面を両足がひっかき、土をえぐる。
「ひ……ぁが…っ、う、ぐ…ぐぁぁぁぁっ!?」
胸元の布地を握り込み、掌に爪が布越しに食い込んで皮膚を貫く。
血が滲み、青い瞳はギュッと閉ざされていたが、大きな激痛の波に瞳孔を震わせながら見開く。
のけぞりながら絶叫を紡ぐ合間も、彼等は一切止まることはない。
だが、魂の量が一気に減った瞬間、鴉達は攻撃へ転じようとする。
『二度と輪廻に戻れぬ無へ帰れ! そして、永遠の闇の中で悔い続けるがいい!』
少なくなった一瞬の隙をついて、痛みを齎す炎を宿した鴉達が、魂を焼き払った道を突破していく。
激突しようと迫るカラスたちだが、彼等の希望は後数秒早ければ……叶ったのだろう。
地面をのたうっていた体が痙攣するようになり、その幅が狭くなっていくのが終わりの訪れ。
「ぁ……」
か細い声がこぼれた後、ぴたっと体の動きが止まった。
そして四肢は地面に投げ出され、転げ落ちたような格好で横たわったまま動かなくなった。
鴉達は門を失い、再び蒼月の森へと戻されていくことで、景色に溶け込むように消えていく。
青い瞳からは光が消え、時折不規則に体を震わせるだけ。
義兄とは異なり、心の清らかさはあれども、人を超えるだけの体は持ち合わせていなかった。
それを踏み越えた瞬間、言葉通り壊れてしまった。
■タマモ > その言葉を耳にすれば、向けていた瞳がすぅっと細められた。
「ふん、同じくして依代の必要な存在が、大きな事を言う。
そんな台詞は、己自身で出来るようになってから言うが良い」
そんな執念を目の前にしながらも、鼻で笑う。
言葉を一旦そこで止め、手を声の方向へと伸ばし指し示す。
「お主がどんな存在かなんぞ、知った事ではない。
じゃがな、これだけは分かるぞ?
お主がそこまでしようとする妾と、お主は大差がない、とな。
魂を冒涜する輩を決して許さん、そう言うたな?
他の存在を利用するだけ利用して、平気で壊そうとする輩が、それと何が違う?」
鴉達が力を使う程に、少女の状況は悪くなる一方だ。
もっとも、だから少女を助けるような義理は、己にはないが。
少女には一瞥向けるだけで、意識自体は鴉達に。
「無か…ふふ…そんな鈍さでは、永遠に叶えられぬわ」
隙を付き、己へと突っ込んでくる鴉達。
が、そんなものが読めぬ訳がない。
激突する寸前でも回避は可能、その見極めの途中で…それは消えた。
何が起こったのか…まぁ、少女が限界を迎えたのだろう、そう思う。
残ったのは己が乗っていた魂、それも、ゆっくりと消えていき…
とん、と地面に降り立つ。
「………ふん、壊れたか」
降り立った足元、そこに転がっている少女。
それを見下す瞳は、変わらず何の感情も無いものだが…
「………このままにすれば、また…か…」
いつもの己なら、このまま放置する状況だ。
なのだが、そうすれば何か拙い事になる、それが感じ取れた。
軽く溜息を付けば、その倒れた少女に腕を伸ばし、抱き上げる。
■リーゼロッテ > 『悠久を経て降り立てたのと同じだ、貴様に言われずともいずれそうなる! この娘は貴様の様な輩を憎み、そして自ら我を受け入れた。志を共にして朽ちることに何の屈辱があろうか!』
彼等の暴走を止められず、そして彼等の力を受け止めきれる器も持たない体。
それでも門となり得たのは、憎しみの深さあればこそ。
それに殉ずる事を冒涜とは言わない、彼等にとってそれは殉死であり、尊いことなのだろう。
事実、自ら接続を切り離そうと思えば切り離せる彼女も、彼等を切り離そうとはしなかった。
そして、とうとう力尽きた体は動かなくなる。
息はあるものの、鼓動はわずかに感じられる程度と浅く、体温は失われていく。
(やっぱこうなるんだ)
音にエコーが掛かり、横渡っているはずなのに、船の上に居るように体が揺れて感じる。
月並みの日の時よりも強烈な寒気が背筋を包み、息をする度に胸が痛みを発した。
性格が分かれるほど苦しんで、本来の自分が憎しみを知り、一つになったあの日から感づいていた。
多分、彼等を御する事はできないと。
自分の感情を抑えることも出来ないと、知っていたから王都にも、集落にも現れなくなった。
自らを青白い森という檻に封じ込めたのは、間違っていなかったのだと思う。
そんな思考を巡らせる中、体が起き上がると三半規管が狂った影響で、胃液が逆流しそうになる。
青白い顔と、青い瞳。
瞳に光が戻ってくると、抱き上げられたところで残った力を振り絞って腕を振り払う。
転げた魔法銃を掴むと、生まれたての子鹿のように膝を震わせながら、銃を杖にして立ち上がった。
同時に喪服の様な黒いドレスが解けていき、本来の戦闘衣が顕になっていく。
「……皆に…もう、触らないで……私みたいな……怪物は、いらない場所なんだから……。悪い…タマモちゃんも……触らないで……」
息絶え絶えに、虚ろな瞳で彼女を見つめながら思いの丈を吐き出す。
自分が銃を教えた娘は皆、傷を抱えて再起した娘ばかりだ。
それを踏みにじったもう一人の彼女を許せない気持ちは、消えることはない。
童顔に浮かぶ憤怒の表情は、弱々しくともハッキリしている。
警告の様な言葉を発すると、意識を保つことすら難しくなり、膝が折れていく。
両膝立ちの格好になった瞬間、二人の頭上を猛烈な速度と風を纏い、何かが翔け抜ける。
普通のサイズよりも何倍も大きな隼、それが自身の両肩を鷲掴みにして飛び去ったのだ。
ほんの数秒で鳥は彼女の前から主を連れ去り、森には再び静寂が戻るのだろうか。
深淵を覗いた少女が戻るのは森か、それともまた別の場所かは今は分からない。
■タマモ > 「扱う側の者の意見は、いついかなる時も変わらんものじゃ。
己の都合の良い言葉ばかりを並べ、正当化をする。
どう取り繕おうが、やっておる事は結局同じだというのにのぅ?」
理由はどうあれ、結論は変わらない。
辿り着く結末が同じであるならば…そんなものだ。
この場合、力なき者が力を得る為に、流れ的にはそんな感じだろう…まぁ、予想ではあるが。
こういった結末を迎えた存在は、いくらでも見た事がある。
その内のいくつかは、己が手引きしたものもあるのだから。
さて、このまま…いや、どこに連れて行くべきなのか?
己の行動に対し、疑問が浮かんだところで、少女は意識を取り戻したのだろう…己の腕を払った。
実際に、この先どうするか考えようとしたところだったのだ、特に難なく離れられるだろう。
掛けられる言葉を受け、向けられる瞳を見詰め返す。
「その言葉が、妾にとっては無駄なもの…分かっておるじゃろうに。
………?…む…?」
何を分かり切った事を…そんな含みを持つ表情。
再び揺らぐ体に、ならばどうすれば良いのやら…と、考えたところで、何かが抜けた。
同時に、目の前に居たはずの少女の姿も消えていた。
まぁ、何が起こったのかはすぐに分かったのか、視線は少女が消えていった方向へと向けられる。
「………これだから、見知っておる者を前にするのは面倒なのじゃ。
まぁ、妾の事を知ったのじゃ、もはや自ら妾の前に現れる事もないじゃろう」
ふぅ…軽く溜息を一つ。
もし仮に、そんな事があるならば…まぁ、状況次第ではあるが…
「一度ならず二度も調子に乗るのであれば、次は容赦はせん。
人間如きを相手では何じゃが、久々に妾が秘術を見せてくれよう」
静寂を取り戻した森の中、ぽつりと呟き…次の瞬間、その姿は消えていた。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」からリーゼロッテさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」からタマモさんが去りました。