2018/02/14 のログ
ご案内:「トゥルネソル商会 王都・マグメール店」にリスさんが現れました。
■リス > マグ・メールの富福地区と平民地区の境目の大通り、4階建てのレンガ造りの大きなお店、トゥルネソル商会。
雑貨屋武器防具、日常品、傭兵派遣、船旅に、馬車での荷物移動、色々な業務を行っているお店は今日も平常運転。
奴隷たちはてきぱきと自分を売るために店の掃除をしたり、明るくお客様に接客していたり。
店長である少女は事務室で引き継ぎの書類をいつものように書き記す。
売上や必要なモノの発注、今のトレンド、次に来るだろう流行への覚書。
お客様の要望、苦情、クレームなどなど。
一通り終わらせてから、ふう、と軽く息を吐き出して椅子に体を預ける。
心地よい疲れが少女を包み込み、恙無く終わったことに感謝を一つ。
「さて、と。」
このあとはどうしようかしら、温泉でも行こうかしら、このあとの予定をのんびりと天井見ながら考えているさまは、ほうけているようにも見えるだろう。
ご案内:「トゥルネソル商会 王都・マグメール店」にセレーナさんが現れました。
■セレーナ > 知る人ぞ知るどころか、かなりの有名店。トゥルネソル商会。
その店舗に、一人の少女が現われる。
磨き上げられたミスリル装備は、明らかに少女の実力に不釣合いな逸品だ。
少女は店舗内へと入ると、店内にいたスタッフへと声をかける。
「あ、あの。どうも。セレーナです。
……その、リスさん、いらっしゃいますか?」
若干おどおどしたような様子で話しかける少女に、店内で仕事をしていたスタッフは頷き、事務室へと向かう。
残された少女は、一人、店内できょろきょろと視線をさ迷わせる。
少女の身を包む装備は、この店から提供されたものだ。
それだけではない。支度金や、回復薬など。
少女の実力を考えれば、過度ともいえるほどの支援を、この店舗の責任者である人はしてくれたのだ。
(……どうしよう。なんてお礼しよう。
リスさんは、気にしないで、宣伝のお仕事頑張ってくれればいい、なんて言ってたけど……)
少女は、雇われて以来その仕事を頑張っている。
冒険で出向いた場所で、街中で、いろいろな人にトゥルネソル商会の宣伝をしている。
でも。その仕事だって、少女は雇ってもらっている側。
もっともっと、お礼がしたい。相手の厚意に報いたい。そう思ってしまうのだ。
■リス > こんこん、と、事務室の扉がノックされる。
どうぞ、と少女が許可を出せば、受付を担当していた奴隷が来ていた。
要件を聞けば、セレーナが来店したとのことである。
足りないものでもあったかしら、と思いながらも奴隷の少女に事務室まで案内するように、あと、一人手の空いているものを呼ぶように指示した。
奴隷の少女がセレーナを呼びに行っている間に、来た奴隷の子に、紅茶とお茶菓子を用意するように言って、少女は書類を金庫にしまうことにする。
「んー……あ。もしかして、使用感の説明かしら。
それとも、なにか足りないものでもあったかしら……?」
それがあれば、鎧とかももっと売れるかも知れないわねぇ。
事務室のソファーに移動して腰をかけ、セレーナの来店の理由をあれやこれやと推測。
■セレーナ > 店内で、まるで迷子の様に不安そうな顔をしていた少女。
事務室から戻ってきたスタッフに、案内します、と言われれば。
まるで雷に撃たれたかのように、背筋をピンッ、と伸ばし。
「は、ハイッ!!」
と、やたら元気な声を上げてしまう。こみ上げる恥ずかしさに赤面していれば、周りの客にクスクスと笑われてしまい。
顔を見事、真っ赤にしながら、事務室へと案内されていく。
程なく、事務室へと案内されれば。再度襲い来る緊張に、身体をガチガチに固めてしまい。
スタッフが先導し、トビラをノック。室内へ入り、お連れしました、なんて言われれば。
緊張のあまり、右手と右足。左手と左足を同時に動かしながら部屋の中へ。
「どどどどど、どう、もっ。リスさん、じゃなくて、リス様!
ほ、本日もご機嫌麗しゅう……!」
緊張が限界を超え、どもるわやけに堅苦しい挨拶だわな少女。
ぎぎぎぎぎ、とぎこちなく一礼。
■リス > 「いらっしゃい、セレーナ。
堅苦しい挨拶なんていいから、本日のご用事なあに?」
扉を開けて入ってくる少女は、やはり先日雇用契約を交わした相手である。
装備やアイテムの支援を行う代わりに、トゥルネソル商会を宣伝するという契約を結んだ相手。
そういう意味では、別に彼女がここまで緊張する理由などはないはずだ。
何をそこまでかしこまっているのかしらと笑い飛ばしてしまおう。
「なにか不備でもあったかしら?
ごめんなさいね、冒険者というのは知識でしか知らないものだから、足りないものとかあるならすぐ用意するわ?」
真っ赤な相手、その身にまとうミスリルの装具はちゃんと彼女の体格に合っているようだ。
契約の時にちゃんと採寸したし問題はないはずである。
ドワーフの人にちゃんと伝えて設えてあるし。
さて、では、送った荷物の方かしらん?
じぃぃ、と彼女の様子を観察するように見て待つ。
■セレーナ > 「ははは、はいっ! え、えっと。その。
用事、と言いますか……!」
室内に入り、声かけられれば。少女はやっぱり緊張したまま。
なんとか平常どおりの振る舞いをしよう、と考えるのだが。
どうしても少女は、目の前の恩人を見れば緊張してしまう。
出会った時は、自信満々な冒険者を演じたが。
この女性は、何の実績も無い少女に、素晴らしい援助をしてくれた。
……そして、とても美人で、素敵な人な訳で。緊張もしようというものだ。
「いえっ! 不備なんて!!
この装備……軽くて扱いやすいですし、防御力も凄いです!
その、これ! 受け取ってください!」
申し訳なさそうにする相手に、少女は首を振り、装備の素晴らしさを伝え、感謝する。
そうして、懐から丸めた羊皮紙を取り出すと、相手へと差し出した。
可愛らしいリボンで封をされたそれは、頂いたミスリル装備の感想、気付いた点、そして改善案などを纏めた書類である。
「その。お手紙にも書いたんですけど。
リス様、私にとても良くしてくださっているから。
やっぱり、お礼がしたいんです! 仕事は当然頑張ります!
でも、他にも何か、何かお礼が……!」
その書類を差し出し、少女は一気に早口で捲くし立て、相手へと近づいていく。
その様子からは、強い感謝と親愛、信頼と尊敬が窺えることだろう。
■リス > 「あ、ありがとう、今後の商品の参考にさせてもらうわ。
……少し確認しても?」
彼女の出された羊皮紙を手にして、少女は目を落とす。
中身を確認して文章とともに彼女の口頭での解説も欲しいところかしら、と考えて。
文字で見るのは楽だが、実際に体験した人の口頭の補助もあれば、さらに理解が深められるだろう。
それに、冒険者というものの目線には興味があるのも確かだ。
違う視点からの考えは商品開発にはとてもいいのだし。
「お礼……?」
お礼がしたいという相手に首を傾ぐ。
契約上の義務を果たしているのみの状態であるゆえに、お礼という言葉には結びつかなくて。
「お礼には及ばないわよ?
だって、私は貴女を支援する契約を結んだわ。
それで、何もしなければ私が契約を反故していることになるもの。
それに、契約結んだのならセレーナも立派な商会の店員よ。
店員を身の危険から守るのは店長の義務なの。
危険な所に赴くのであれば、最大限危険を減らす必要あるわ。」
それに、と少女は笑を深くしてみせる。
「恩を売っておいたほうが、何かと後々まで使えるでしょう?」
■セレーナ > 「は、はいっ! その……。
軽さ、堅さは流石にミスリルだな、って思いました。
防御力は高いのに、動きを阻害しないっていうか。
ただ……若干、ブレストプレートとチェインシャツの稼動域が。
銃を取り回すときに気になったのが、肩回りの動きがキツい時と。
とっさの回避運動時、腰周りに違和感があったように感じました」
それまで、緊張し、ガチガチになっていたはずの少女が。
使用感、感想を語る時。その表情が一変した。
まるで歴戦の冒険者のように。凛とした表情と声で語る少女。
月並みな表現ではあるが。別人の様な変わりようであった。
「……はい、お礼が。
……いえ、だって。私は、リス様も知ってるはずです。
駆け出しで、未熟で。何の実績も無い冒険者なんです。
支援と言っても、明らかに豪華過ぎます。
……義務と言って下さって。気にかけてくださるのは、とても嬉しいし光栄です。
……その、でしたら。契約外のお仕事でも、使ってくださいませんか!?」
相手の冷静な言葉に、少女はいよいよ困ったような表情に戻ってしまう。
敏腕店長であるところの相手の言葉は、実に素晴らしく、実に正しいとも言える。
だが……人に良くしてもらった経験の少ない少女としては、あまりに待遇が良すぎて不安になってしまうのだ。
■リス > 「チェインシャツ、ブレストプレートの可動域。
銃を取り出す時の肩周り、回避時の腰周り……か。
……良く判らないわ。
とりあえず、その部分に問題があるということなのね。
とはいえ、銃を使う人専門の悩みというところなのかしら。」
さらり、と彼女の言葉を聞く。
冒険者でもなく、荒事には、全く向いていない少女はその違和感というものが良く分からない。
一般的な作りの鎧は、むしろ剣や盾などを装備する軽鎧である。
剣士ではないセレーナにはその差違が気になるのだろう。
少女は羊皮紙の裏を出し、さらり、地図を書いて、さらにサインを行う。
「じゃあ、時間ある時で良いからこのレポートともに、平民地区のこの区画の武器屋に訪ねて貰っていい?
ドワーフのダ・ゴンガさん、その鎧の製作者の工房よ。
話は付けておくから、調整してもらって。
代金はいつもの様に商会で払うと伝えてくれればいいから。」
表情が変わる。
どんな人間でも自分の専門のことに関しては表情は引き締まるものである。
彼女のハキハキとした情報に少女は満足そうに笑ってみせながら、はい、と先ほどの羊皮紙(地図付き)を返す。
「駆け出しだからこそ、そういうことに気を回さずに走り抜けられるものじゃなくて?
今は、がむしゃらに必死に、食らいついていくべき時よ。
お礼なんて些事にかまけてる場合じゃないわ、契約の時にも言ったけど、貴女が大成してくれれば、それがお礼替わりなのだから。
支援してすぐ死なれたのでは、寝覚めも悪いし、お店の評判にも関わるわ。」
困っている様子の相手に、少女はくつくつと笑ってみせる。
そして、奴隷が作った紅茶がふたりの前に出され、お茶菓子も並べられた。
どうぞ、と手で指し示し,少女は自分の分の紅茶を一口。
「契約外のお仕事こそ、論外ね。
それは公私混同よ、それをすると、わざわざ決めた決まりごとさえ無くなってしまう。
善意の行為だとしても、のちの禍根になるものよ。」
そう言ってから、少女はじぃ、と彼女を見据える。
ことり、と紅茶を置いて、ふぅ、と。大きく吐息。
「それとも、恋人になりたくて、口説いて欲しくて言っているのかしら?」
じ、と少女は彼女の目を見て静かに問いかけた。
■セレーナ > 「……そうですね。感覚的な問題かもしれないんですが。
おそらくは、もうほんの少し。関節周辺に遊びが欲しいんだと思います。
リス様が以前採寸してくださったこともあり、この装備は私の身体にしっかりとフィットしているんですが。
逆に、フィットしすぎているのではないかな、と」
まだまだ経験不足な冒険者が何を。と思われるかもしれない。
だが、少女は自身が使用した感覚を、少女なりに言語化していく。
相手の予想通り。これは、少女が銃使いであり、剣士などの職業とは、身体の動かし方が違うのが違和感になっている。
少女は、地図を受け取り、小さく頷く。
「はい。判りました。何から何までありがとうございます。
……。本当に、ありがとうございます」
目の前の自分の上司からの言葉を受け、少女はそれを仕事として認識する。
そのまま受け取った地図を懐へとしまうと、深い一礼を。
ミスリル装備をドワーフの職人に調整しなおしてもらう。
本来ならどれだけの金額がかかるかわからないほどのことだ。
「……っ! それ、は。……それは、はい。そうです。
……リス様の、おっしゃるとおりです」
笑いながらとはいえ、ズバッ、と切れ味鋭い意見を口にされれば。
もはや少女如き経験不足の小娘冒険者では、反論することは叶わない。
少女は、目の前に置かれた紅茶を見ると、相手の仕草に頷き、こちらも一口味わう。
「……~~~~っっ」
さらに、追い討ちのように仕事人として見事な一言。
自分の考えが、行いが。いかに未熟で浅はかかというのを突きつけられた気分。
もうどうしたらいいのかわからない、という様に。
少女は涙目になるが。
「……え゛っ?」
突然の一言。少女がへんな声を上げてしまった。
瞬間、ぼひゅっ、と音出そうな勢いで赤面する少女。
恋人? 自分が? この人の? そんなことは、考えたことがなかった。
だって、目の前の人は恩人で、上司で。素敵な、美人の。素晴らしい女性で。
……でも。それは実に甘美な誘惑で。もしもそんな立ち位置に成れたのなら。それはどんなに誇らしいだろうか。
そう思うものの。少女は、俯いてしまう。自分には夫がいる。でも、あぁでも。
この人は。素晴らしい人で。だから。深く関わりたくなってしまうのだ、と。
■リス > 「うん、サッパリ判らないわ。」
彼女の言いたいことが解らない、何度も言うが、商人は冒険したこともなく、防具を着たこともない。
彼女の感覚を理解できなくて、にこやかに返答するしかない。
だからこそ、それは専門家の人にお願いするべきである、という事でここと契約しているドワーフの職人に回すことにした。
ただそれだけのおはなしだったりもする。
「どう致しまして。
ああ、そうそう、もし、この近くではないところでのお仕事の補給の時は、トゥルネソル商会に寄りなさいな。
ダイラス本店、ヤルダバオート支店、バフート支店、何処でも補給を受けられるようにしてあるから。」
お礼の言葉に関してはそれで終わりにしておく。
のんびりと紅茶を飲みながら、彼女の黙る姿を眺める視線は、寧ろそんなに行き急がなくてもいいじゃないと言わんばかり。
「でも、ダメね。
貴方には男の匂いがするもの。
恋人、いるんでしょ?」
困惑している相手に、くつくつと喉の奥で笑ってみせる。
紅茶を飲んで、口を湿らせて再度。
「冗談だから気にしなくてもいいわ。
とりあえずは、今のあなたは、お礼とか何も気にしないで、名声を、お金を稼ぐことを、第一にね。
お金がたまっていろいろ余裕が出来たら、その時はお礼とやらの相談を受け付けてあげる。」
その場合は、高くつくけどね?商人を喜ばせるお礼は、さていくらでしょう?
少女は冗談交じりにウインク一つ。
■セレーナ > 「……えっと。すみません」
少女は相手の言葉に、頭を下げる。こればかりは、どう伝えようとも完全に伝えきることはできないだろう。
冒険者それぞれ。装備に対しての感覚というものは個人差というか、個人的好みなどもある。
しかし、そんな中職人への連絡方法を手配する辺り、やはりこの女性は抜け目が無い。
「……え、っと。……あぁ、本当に。
もう、なんて言っていいか……」
繰り返す礼の言葉に、更に支援体制を上乗せされれば。
少女は俯き、言葉を失ってしまう。本当に、この女性はどこまで優しいのかと思ってしまう。
「……っ。わ、かるんですか?」
思わず、少女はそう尋ねてしまう。笑う相手を見ながら、無意識に自分の腹部へと手を伸ばしてしまい。
「冗談、です、か。……。
その……ハイ……。……。…………あ、あのっ!!」
冗談だから、と。そう言う相手。その言葉を聞いて、少女は俯いたまま紅茶を飲む。
お金が溜まったら。そう言われれば黙り、考え込むようにするが。
少女は、突然声をあげ、相手を見る。
「そのっ! こ、恋人はムリかもしれませんけど!
……わた、わたっ、私の、身体でご奉仕させていただくことはできませんか!?」
上擦る声で、そんなことを口にする少女。覚えている。初めて会った時のことを。
目の前の女性の、体のことを。もはや少女は、この女性になにかしらお礼をしたいという思いが強すぎて、自分で何を言っているかも判らない。
■リス > 「いいえ?だって、私が判ることではないもの。
むしろ、その情報があるから、お客様へのおすすめもしやすくなるし、むしろ願ったりなことよ。
これも、売上に貢献してるとも言えるわ」
売るにしても、おすすめを聞かれる時がある、その時に知識があるかないかで違いが出てくる。
彼女の情報も、十分自分にとって価値のあるものだと伝えておこう。
「そりゃね。
これでも、嫁に愛人に娘がいるもの。
そういう鼻は利くのよ」
商人は人を見て商売するし、それに、女として恋人が居る相手はピンとくるものよと笑ってみせる。
産休は早めに申請してね、と腹部に手を伸ばす相手にしれっと。
「ダメね。
私がベッドの上で求めるのは、愛と性欲、生殖だもの。
借りた金を返さない貴族の奥さんとかを借金の抵当に抱くならともかく。
ご奉仕替わりというのは、気分も乗らないわ。
それとも、恋人を裏切りたいの?」
自分を大事にしなさいな。
少女はニッコリと切り捨てる。そういう縺れは面倒くさいから嫌よと。
■セレーナ > 「そう言っていただけると……。
その、ハイ。もっともっと頑張って、より良い情報を提供できるようにします」
フォローするような相手の言葉に、少女が頭を下げる。
こんな自分でも少しは役に立つことができたんだ、と。嬉しく思う。
「……えええええっ!? よ、嫁っ!? 愛人っ!? 娘っ!?」
いきなりの告白に、少女は叫び、確認するように言う。
愛人は判る。娘も。ただ、嫁とはさすがに驚いた。
産休について申請してくれ、と言われれば。少女は赤面するが。
「……。そう、ですか。スミマセン。変なことを言ってしまって。
……。やっぱり、リスさんは優しいですね」
諭すように言う相手に、少女は消え入りそうな声で言う。
恋人は。夫は、裏切れないという思い。それはとても強い。
だけれども。少女の中で一つの感情が芽生える。
だったら。この人に借金をして、それを踏み倒せば。そういう関係になれるのかな、などという。
当然、すぐさま頭を振り、その考えはかき消そうとする。
そんな失礼なことは、できるわけも無い。