2017/10/17 のログ
アーシェ > 「あら....?」

小さく声を掛けられ振り返ると其処には自分より目線が少し下がる位の可愛らしい女性と目が合う。

「あらあら...こんな日暮れに一人でどうしたの?」

持っていた小枝を置くと自分の身体を包んでいたブランケットを女性にかける。

─迷子かしら....でも違うかもしれない...─

どうした物かと悩みながら灯りが届く家の前まで彼女を誘う。

アリエス > とても用件は簡単に口にできるものではなく、下を向いて押し黙っていれば肩に不意に温かい物がかかってきて。

「……あの。いきなり、こんなことを頼むのは失礼だと理解してはいるんですが…。
 ……一晩だけでいいので、私を家の隅に入れてもらえないでしょうか」

誘われるまま灯りが届く範囲まで進むと、やっとのことで口を開いた。
ダメだと言われたらそのときは諦めるしかない。

アーシェ > 彼女の口から不安の色を纏った声を聞き入れた。

ふふっと小さく笑うと頷き温かい光が漏れる家の中に招き入れた。

「外で話していても不安が募るだけでしょう?心配しないで大丈夫よ
この家には私一人しかいないから」

くすくす笑い付け足す様に、怖いおじさんなんか出て来ないわと言うと手頃なソファーに女性を座らせ温かいお茶の入ったカップを差し出す。

さてと....と言うと向かい合うよう椅子に腰を下ろすと、ゆったりとした口調で語りかける。

「宿を探しているのでしょう?良かったらここを使って頂戴」

そう伝えると優しく微笑む、彼女が不安に囚われぬ様にと

アリエス > 身なりがいいわけでも無ければ、対価も出せなくはないが多くは持っていない。
どう見ても怪しいだろう自分を入れてなどくれるのだろうか…?
そんな心配はあっという間に解消された。

「…あ……。…ありがとうございます…。
…お一人、なんですか?」

こんな所に、と言いかけて飲み込みつつ。
言われるままにソファに腰を沈め、温かいお茶を受け取った。

「…ありがとうございます。
 恥ずかしい話なのですが…持ち合わせがないので、対価は別の形で払わせていただければ助かるのですが…」

ただで泊めてくれとは言わない、という意思表示。
働けと言うなら働く心づもりはあると、真っ直ぐにこちらを見る目を見返していく。

アーシェ > 彼女の口から出た対価と言う言葉に小さく笑う。

「ふふっそんな事、気にしなくても良いのよ?
 困ったときはお互い様だもの、えぇ夫は....出兵しててね、まだ帰って来ないの」

どこか影が落ちたその表情、不安の色を悟られぬ様に微笑んで見せた。

「そうね、それじゃあ1つお仕事をお願いしようかしら
 明日の朝ごはんを食べてからで良いのだけど薪を調達してきてくれないかしら?」

この冬を乗り越えるには少し心もとない薪の量、それを少し増やしてくれるだけで良いと提案した。
勿論一宿一飯付でと微笑みかける。

アリエス > 「…それは、お寂しいですね。
…薪拾いですか、承知しました。……えぇと…」

頷いてから、そう言えば名乗ってもいなければ名前も聞いていないことを思い出した。
失礼なことばかりだと反省しながら、こちらから名乗ろうと口を開く。

「私のことは、アリエスとお呼びください。
 宜しければお名前を伺っても…?」

1晩だけの仲だとしても、名前もわからないのではお互い不便だろうと。
それと同時に、この人はなぜ大事な人が生きているかもわからないのにこんなに人に良くする余裕があるのかという尊敬に似た物もわき始めていて。

アーシェ > 「そうね....寂しい...わね」

寂しい、その単語が彼女の心に響く。
私は寂しいから、こうやって旅人を招き入れるのだろうか、性分だと言い聞かせていた、今まで曖昧にしていた部分、それに答えが見出せそうになった。

「アリエスね、私はアーシェよ
 自分の家だと思ってゆっくりして頂戴ね」

優しく微笑みかけると、ふと思い出したかの様に問いかける。

「もう夕飯は済ませたのかしら....残り物で良ければあるのだけど」

苦笑交じりに小さく首をかしげアリエスを見つめる目は母親の目にも似た温かさを感じるだろう。

アリエス > 「…申し訳ありません、決めつけるようなことを言いました。
私なら…寂しいと思うと思ったので、つい。」

今の自分と同じように、とは言えず。
でもきっと、目の前の女性も同じなんだろうと思いつつそう口にして。

「承知しました、アーシェさん。
…今まで、こんなに良い家に住んだことなど無いです」

最低限の家具と、質素な寝台があるだけの部屋。
それが、今までずっと暮らしてきた部屋だったから。

「…食事は…したことはしたのですが…」

年頃の、しかも空腹だった腹を満たすには先程取った食事では満足とはいえなかった。
恥ずかしそうにちらりと視線を上げて、言外に欲しいと言っていこうか。

アーシェ > 「ふふっ気にしないで頂戴、もう慣れたわ」

申し訳ないと言う彼女の言葉に小さく微笑むと側に寄りそっと黒髪を撫でた。
不安を募らせぬように、大丈夫と言いたいのか少しした後
もう一度微笑むとキッチンへと脚を向ける。

「良い家...ありがとう、何もない場所にある家だけど住み心地は良いわ」
くすくす笑い鍋に入った冷めかけたスープを温めなおす。
今朝焼いたパンも残っていたはず、と思い棚から取り出しスープ同様に温めると手際よくテーブルの上に並べていく。

「チーズは好きかしら?今朝出来たばかりの良いチーズよ」

そう告げるとアリエスに手招きをし椅子に座るよう促した。

アリエス > 側に寄られ、頭を撫でられれば不思議と嫌な気分はしなかった。
他人に触れられるのは、仕事柄もあってかあまり好きではないはずなのだが。
キッチンへと向かう背中を見ながら、脳裏には母の姿が浮かんでいたが…その背中は同じ後ろ姿のはずなのに、とても冷たく映っていた。

「…はい。それが一番だと思います」

寝るためだけでしか無い部屋と違って、ここはとても気分が安らぐ気がした。
女性が支度を整え始めれば、手伝おうと立ち上がって近づくのだがその時にはもう殆ど支度は終わってしまっているだろうか。

「自家製ですか…すごいですね。
 大好きです、チーズ」

初めて嬉しそうにほんの少し目を細めて、口元を緩めた。
促されればそのまま椅子へと腰掛けようか。

アーシェ > ─もし....私に子供が居たら....─

そんな胸中の思いなど、この子は知らなくていい。
一晩だけの出会い、これが男女であればロマンチックな物だろうと自嘲気味になる。

「良かった、お口に会うかわからないけれど召し上がれ」

目の前で黙々と食事を頬張り嬉しそうな顔を向ける彼女につい笑みが零れた。
彼女が食事を終える頃には良い時間になっているだろう、空いている寝室へ灯りを燈しに向かい誘うとベットへ座るように促す。

「今日はここで休んで頂戴、シーツは干したてだから気持ちいいわよ?」
そう告げると扉の前まで移動し小さく呟く。

「何かあれば呼びに来てね、それじゃあお休みなさい、良い夢を」

アリエス > 用意された食事は、どれも温かい味がして。
彼女には家ですらそんな料理を食べた記憶はなかった。
残すことなど全く無く、綺麗に食べ切ると食器は自分で下げただろう。

そのまま灯りのともった寝室へと通され、言われるままにベッドへと腰掛けて。
彼女はどこで寝るのだろうと思いつつも、安心からか一気に襲ってきた眠気に勝つことはできなかった。

「…はい…。お休みなさい…」

そのままぱたりと上体が倒れ。
すぐに寝息を立て始めた。

ご案内:「草原の家」からアリエスさんが去りました。
ご案内:「草原の家」からアーシェさんが去りました。