2017/08/25 のログ
シュカ > 頭上高くから降り注ぐ眩しい陽光が、小川を照らしてきらきらと輝かせている。

メグメールの街道が行きつく先、王都へと入る道の途中に、自然地帯と王都を隔てるように小川が流れていた。
そこに掛かる橋は立派な石造りで、見事なアーチが2つかかっている。
長さは人間が歩けば30歩ほどではあったが、2頭立ての馬車が1台通るには十分な幅もあり、行きかう人々は多い。

その端の中央に、小川を向いて立つ赤毛の男。
背後から聞こえる賑やかさとは一線を画したように沈黙し、ただじっと………釣り竿を垂らしていた。
水深は浅いのか深いのかはよくわからないが、透明度は高く、魚影もある。…ように思われたのだが。

「………ぅおらっ!お前らっ、いーーー加減、そこで遊ぶんじゃねえっ!!!」

釣竿を垂らして暫くして。
何の嫌がらせか、それとも意図しないのか、熱い日差しに負けたみたいに、土手を越え、平民地区の子どもたちが下りてきて、
わちゃわちゃ水遊び開始だから、初めこそ穏便に、向こう行け、と手で示していたが、
さすがに大人げない一声を浴びせ、ついつい竿を持つ手が震えてしまえば、魚などつれようはずもなく。

シュカ > ぱしゃぱしゃと水音を上げて遊ぶ無邪気な子供たち。
きもちいーからこっちおいでよー、なーんて言われても、イライラが募るだけ。
お蔭で先ほどまで見えていた…はずの、魚影は今は見えず、ぽちゃりと落した釣竿の先が空しく揺れている。

「くそ…っ、武士は食わねど高楊………ぅ」
ぐーーー。

最後まで言わせてくれない腹の虫。
思わずがっくりと肩を落とし、深いため息をつく。
ここのところ、散財しすぎて、先立つものが一つもない、のである。
とりあえず、自然調達、元手ゼロ!を期待して、小川での釣り。

てっとり早く、ギルドで依頼をこなそうにも、そもそも依頼を受けるためのデポジットが払えない状況であった。

無邪気に遊ぶ子供たちに、がっくりと肩を落とし、ゆるりと身体を反転させ、橋の欄干に背を預ける。
時折豪奢な飾りのある馬車が通り過ぎるのをなんとなしに目で追う。

「ここでスリに遭う貴族サマを助けて、その財布の中身の3割を礼として俺にくれれば………」

それで一発解決である。
が、そもそも貴族サマは、その豪奢な馬車に乗って通り過ぎるのだから、スリに遭いようもないのだが、
そんな不謹慎な期待を込めた視線と思考で、辺りを見渡して。

シュカ > 「お?」

王都の方からこちらへやってくる人物が見えた。連れがいるようだが、図体がデカい男は見知った顔に違いない。
向こうもこちらに気付いたのか、やってくるから、思わず表情も綻んで。

「いーところに来た!なあ、あんたら、今からアレだろ、これ」

普段の無愛想面が嘘のように愛想のいい表情を浮かべ、己の刀の鞘に手を掛け、親指の腹で、くい、と鍔を持ち上げる。
見知った連中の来た方向といい、向かう方向といい、何をするかは想像に難くない。

「だろ!つーことで、ハイ、俺も参加ね、参加!いいだろ、1人ぐらい増えたって!なーっ!」

案の定行く先は、どこぞのダンジョンでのアイテム蒐集の依頼らしい。
すでに彼らはギルドからの依頼を受けているのだから、新規に引き受ける必要もないし、デポジットも要らない。
となれば、半ば無理やり後をついていくつもり。
真面目に働くか、は別にしても、彼らと共に王都へ背を向け、街道を進んで………。

で、忘れていた釣竿の先には、小さな川魚が引っかかっていたとか。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシュカさんが去りました。