2017/06/30 のログ
ご案内:「娼館の窓辺」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > その小さなシルエットの持ち主は、娼館の一室に居た。
そこが、王都の何処の地区に建っているかは瑣末な問題で、妖仙は気にも留めていない。
外を出歩く為の着物は衣紋掛けに吊るされて部屋の隅。
下に着ていた長襦袢一枚という寛いだ格好で、窓の縁に腰掛けている。
右手には煙が細く立ち上っている煙管、傍らには陶器製の灰皿。
ふっくらとした唇から、ほぅっと紫煙を吐き出す。
「嗚呼、然し、何というか…少しはしゃぎ過ぎてしもうたかのぅ。」
斯様な店であるにも係わらず、部屋の中に娼婦の姿はない。
つい先刻までは仕事に勤しんでいた女が居たのだけれど、好色な妖仙が”はしゃいだ”結果、悦楽の坩堝に落ち込み、現世へ戻れなくなったのだ。
…イかされ過ぎて、気絶してしまったともいう。
そのまま夜明けまで大人しくしているのも一つの選択肢であるが、今一つスッキリしていなかった強欲な人外は、店に交代要員を求め、今に至る。
■ホウセン > 如何に金払いの良い上客といえども、週末の晩である。
娼館は繁盛しており、部屋は凡そ埋まった満員御礼状態。
俄かに娼婦を融通しろといっても、簡単には見つからないようで。
無聊を慰める為に窓辺に腰掛け、店の前の通りを見下ろす。
「呵々!誰も彼も欲を眼に宿らせおって。
善い善い、妙に取り澄ました顔で上っ面を糊塗するより、余程鑑賞に耐えられるというものじゃ。」
三階建ての王国風の造りをしており、妖仙が半身を覗かせているのは最上階たる三階の窓。
ぬるりと湿り気を多分に含んだ夜風に吹かれながら、右手に持っていた黒漆と銀で装飾された煙管を咥える。
肺腑の奥まで吸い込み、ゆるりと吐き出す。
子供が格好をつけようとする猿真似ではない、酷く馴染んだ仕草。
急ぎの用件もなければ、店に待たされるのもさして苦に感じないようで、表情は穏やかなものだ。
窓辺はそう高過ぎず、通りを歩く者がふと見上げれば妖仙の姿も目視できる程度。
薄着で気だるげな退廃の色を纏っており、その店で働いている男娼と誤認されても致し方のなさそうな艶姿を。
ぼうっと惚けている時間が中断されるとすれば、代打の娼婦が姿を現すか、眼下の通りで愉快な何事かが生じた時だろう。