2017/04/25 のログ
ご案内:「魔法具店『ビルスキルニル』」にトールさんが現れました。
■トール > 王都の片隅、メインストリートから外れた寂れた裏路地に看板を出す小さな魔法具店。
少し傾いた看板には『ビルスキルニル』の店号と共に『魔法具捜索、薬品作成等』『何でも承ります』の文字。
『魔法具捜索、薬品作成等』の部分は狭いスペースに書き込んだ無理矢理感ありありの後入れ仕様。
日も傾きかけ、そろそろ西の空が赤く染まろうかという時間、『開店中』の札が提げられたドアの傍の小さな窓から覗き見える店内では金色の髪の少女がカウンターに備え付けた椅子に座り両手を頬に当て頬杖を付き、足をぷらぷらと揺らしていた。
「暇だ。暇だな。うむ、暇だ。店を閉めて出掛けてもよい気がするが……よいだろうか。いや、しかし、うむぅ……。」
何やら難しい顔で唸りつつ、一つ大きく息を吐く。
妙にそわそわしている様子はどう見ても落ち着きがない幼女そのもの。
見た者は十中八九、親に無理矢理店番を押し付けられた子供だと思うだろう。
ご案内:「魔法具店『ビルスキルニル』」にリンさんが現れました。
■リン > かちゃり、とドアを引いて楽器ケースを背負った、藍色の長い髪を持つ少年が現れる。
「やあ、退屈そうだね。
まあこんな場所じゃ、売り子がどんなに美少女でも賑わいそうにないな。
風水が悪い。ちょっと迷ったし」
アルカイックスマイルで適当なことを口にする少年の顔を、
店を預かる少女は先日見たところだろう。
慎ましやかな広さの店内を、あれこれ物色して回る。
■トール > ドアに提げた鈴が軽やかな音を奏で来客を告げる。
扉のほうへと視線を向けぬままため息一つ、足の動きを止めてカウンターへと気怠げに寝そべる。
「すまないね、今日はもう店を閉めようかと……ん?」
やる気がない、そんな態度を隠そうともしない少女は聞こえてきた声に違和感を感じ、顎をカウンターへと預けたまま視線だけを向ける。
「………こほん、よく来たね。何かご入り用かな?」
ゆっくりと上半身を起こすとぴんと背筋を伸ばし、ボンネット帽を両手で軽く直して深窓の美少女姿を主張する。
「品揃えにはそれなりに自信があるのだが、もしお探しの物がなければ調達や調合の依頼も受けるよ?」
頬が緩みそうになるのを必死に抑え、両手をちょこんと膝の上に置いて視線だけを客へと向ける。
ダメだ、浮かれては……ここは店主として凛とした姿を見せなければ……。
だが、どうしても頬が緩む。何せサボって探しに行こうと思っていた相手がやってきたのだから。
■リン > 「…………」
当て所なく彷徨わせていた足を翻してカウンターへ。
音を立てて肘を付き、暗色のシャツから伸びた白い手の指が緩む頬を突く。
「ご入用はまあなくはないんだけど、主目的はきみだよ。
会いに来てくれ、って言ったのはそっちだろ?
わざわざ足を運んだんだ、感謝してほしいもんだ」
頬の柔らかさを味わいながら、物憂げに目を伏せる。
■トール > 「うむ、そうだな。だが、こんなに早く来てくれるとは思っていなかった。」
柔らかな頬を突かれるとほにゃっと表情が緩んでしまう。
澄まし顔――は、もう諦めた。嬉しそうな笑みを浮かべ、背筋をぴんと伸ばし、少年の手の甲へと掌を重ねる。
「正直言って嬉しい。うむ、嬉しいぞ。何かその、面映いな。」
今、目の前に恋する相手がいて、頬に触れてくれている……その実感がじわじわと湧き上がり、みるみる顔が真っ赤に染まっていき唇が震え、耐えきれずに視線がカウンターの上へと落ちる。
■リン > 頬に触れていた手を、カウンターの上に置く。ちゃりと袖口のカフスボタンが鳴った。
重ねられた掌は、お子様らしく柔らかく温かいものだ。
浮かれた様子の少女とは対照に、リンの表情は醒めている。
しばらく好きに触れさせたあと、背負っていた《アクリス》をカウンターの上に乗せる。
「まったく、勝手に盛り上がってくれちゃって。
ちなみに用向きというのは、例のこれをどうにか無害化できないかってことなんだけど」
熱のこもらない言葉は、少女の腕前にそれほど期待などしていないのが伺える。
ケースには呪文などで封じ込めをしたような形跡が伺えるが、完全なものではないようだ。
■トール > 「む、つれないな。ベッドの中ではあんなに可愛かったのにな。所謂ツンデレという奴かね?」
醒めた様子の少年を不満げな半眼で見上げ、口元に右手を当ててくすっと笑みを零して見せる。
からかうような挑発するような…その青い瞳は悪戯っ子のように輝いていた。
「おやおや、彼女の前で他の女の話題かね?まあ、冗談はさておき、無害化と言うと縮まないようにしたいということで良いかね?壊してしまいたいわけではないだろう?」
カウンターの上に置かれたケースを眺め、その表面を軽く撫でる。
封印を施されているようだが…なるほど、とひとつ呟き、カウンターの引き出しから黒縁の眼鏡を取り出し小さな鼻の上へと載せる。
■リン > 「安売りはしたくなくてね。愛想っていうのは有限の資源さ。
普段可愛げがないから、せめて褥じゃそうなろうってわけだよ」
愉快げな眼差しから逃れるように、顔を背ける。
質問については、小さく頷く。
「ま、そういうことになるね。どう、わかりそう?
でもきみとしては縮んでくれたほうがいいんだっけか? ……ん?」
呪物を真剣な様子で検分し始めるトールを見守っていたが、何か気がついたように視線を上に向ける。
「そういえばそっちが子供の姿になってるのはどうしてなの?
ロリコンの客を釣るためとか?」
この店の調度品といい、十八歳の姿が本来のものであることは間違いないだろう。
リンとは逆に、自ら小さくなることを選んでいるのだ、この少女は。
■トール > 「はっはっは。愛想は投資だよ。にこにこしていれば色々良くしてもらえるのだよ。もっとも可愛い子限定だがね。」
レンズで少し大きく見える瞳を少年へと向け、にっこりと満面の笑顔を見せる。
少年が顔をそむけると右手を伸ばし、その柔らかな頬を指先で軽く突き、にひっと笑い声を漏らす。
「うむうむ、これがいちゃいちゃと言うやつだな。なるほど、世の少年少女が恋に夢中になるのもわかるというものだ。」
仕事も忘れ、少年の横顔を愉しそうに眺めつつ、その可愛らしさに堪らず口付けしたくなって顔を近づけていき。
「む、ああ、そうだな。少し調べてみないと何とも言えないな。正直、解呪は専門外なのでね。魔改造は割と得意なのだが。」
少年の視線が戻るとこほんと咳払いひとつ。
背筋を正すと眼鏡越しに視線をケースへと向け、それに施された封印に指先を這わせ魔力を辿る。
「まあ、それもあるが……むぅ、正直あまり……リン君は自分だけの奴隷を持ちたいと思うかね?」
少し逡巡した後、表情を消してまっすぐに少年を見つめる。