2016/09/04 のログ
ご案内:「バフート 奴隷市場の裏」にジョセフィーヌさんが現れました。
ジョセフィーヌ > 日暮れ時を迎えてなお、賑わう奴隷市場の裏手。
商人たちが入れ代わり立ち代わり、天幕で覆われた狭い空間に机や椅子が
雑然と置かれた、そこはさしずめ、運営事務所、といったところか。

いま、その椅子のひとつに座った、というより、無理矢理肩を押さえつけて
座らされた己の両手には、頑丈そうな手枷が填められており、
正面にはたいそう強面の壮年の男が、苦虫を噛み潰したような顔で座っている。
涙目ではあるものの、負けじとその男を睨み返しながら、
己はもう何度目か知れない台詞をぶつけることに。

「だから、……さっきのあの子、…あの子は、奴隷なんかじゃないんです!
 あれは、私の…私が彼女に、供を頼んだから、だから……!」

お願いです、返して下さい。
あの子は、売り物なんかじゃないんです―――。

先刻、表の市場で己の侍女が売られそうになっていたものだから、
思わず何も考えずに乱入してしまった。
結果、己はこうして捕らわれの身、彼女の行方は知れず。
それでもまだ、どうにかなる、と考えている己は、初めの主張を繰り返すのみ。

ご案内:「バフート 奴隷市場の裏」にベアトリスさんが現れました。
ベアトリス > 「ふむ、話は聞かせてもらったぞ」

天幕を開けると黒いローブを着た女性が首輪を嵌められた侍女を連れてやってくる。

「つまりこの娘は奴隷ではなく、その辺をうろついていた女をさらって売ろうとしたというわけじゃな?」
問い詰めているが決して怒っているわけではない。
にこりと微笑んで

「まあそれ自体は問題無い、こんな所を無防備にうろついている方が悪い、それを知らずに買ったのもワシの責任じゃ」

男の方をポンと叩いて幾ばくかの金を渡して。

「この娘に話がある、席を外せ」
ぎろりと睨むと金を受け取ったこともあってか男はずごずごと退散した。
残ったのは自分と買い取った侍女とこのお姫様の3人だけだ

「さて、この娘はワシが買い取ったのじゃが…どうしてくれようかのう」

ジョセフィーヌ > 重い天幕が開かれる音に、弾かれたようにそちらを振り仰ぐ。
現れたのは黒いローブを纏った若い女性、しかし、己の視線はまっすぐに、
己が連れてきた侍女の姿へと向かう。

「クロエ、―――無事で、……」

立ち上がろうとするのは、己の背後に立っていた男に押し留められてしまったが。
首輪こそついているものの、ほかには傷ついた様子もない侍女の姿に、
安堵の涙が頬を滑り落ちる。

――――が、しかし。

買い手となった女性と、今しがたまで己の相手をしていた男と。
立場は明らかに、新たに現れた女性の方が上、であるように見えた。
金のやりとりがあったとはいえ、ひと睨みで男を黙らせた女性に、
侍女はといえば、すっかり委縮して震えているようである。
戒められた両手を膝上でぎゅっと握り締め、決然と、ローブの女性を見据えて。

「いくら、で、落札、されたんですか。
 あいにく、今は持ち合わせがありませんけれど、
 …クロエを返してくださるなら、すぐにでも、……」

お金で買われたのなら、お金で買い戻せば良いのでは、という、単純な思考から。

ベアトリス > 「そんな問題ではないわ!」

大声で怒鳴る。
姿格好を見れば相当な地位のお姫様、と言ったところだろう。
それを抜きにしてもあまりにも甘すぎる。

「ここは奴隷都市バフートじゃ!そんな場所で何の力もない女を独りにするなど金貨の詰まった袋同然じゃ!こんな場所で人の良心を期待するお主は甘すぎる!」

ジョゼフィーヌの頬をゆっくりと撫でて

「従者を危険にさらすなど主として失格じゃ、金で納得できぬ、返してほしければそうじゃなあ…」

しばし考えた後に

「持っておればじゃがお主の処女…これで納得してやろう」

ジョセフィーヌ > 怒鳴りつけられて、びくん、と分かりやすく肩が震えてしまう。
傍らに引き連れられている侍女など、今にもその場に昏倒してしまいそうなありさま。

―――震える頬へ伸ばされる手指に怯えながらも、振り払うことだけは耐えた。
けれど、しばしの沈黙ののち。
提示された条件を聞けば、一拍、二拍、―――大きく見開いた瞳は、
瞬きも忘れたように、買い手、の女性を見つめるまま。
見る間に蒼ざめて、くちびるを開いては閉じ、また開いては閉じ、を繰り返し。

「―――、……それ、は、」

躊躇うこと、それ自体が、己がその『対価』を保持している、何よりの証拠となるだろう。
小さな頭のなかでは、さまざまな事柄がせめぎ合っている。
王族の娘として、父のただひとりの後継者として、―――いつか、
相応しい婿を得て家名を継ぐであろう、未来について。
今、ここで純潔を差し出してしまったら―――でも、拒んだなら。

怯え、惑う青い瞳が、傍らに立つ侍女の顔を窺い見た。

ベアトリス > ここまであからさまに戸惑っているということは処女なのだろう。
この国でこの年まで処女と言うことはよほど親がまともだったか。

その様子を眺めていると侍女がローブの橋を掴んで泣いて懇願する
『私の処女を差し上げます!奴隷でも何でもなりますからジョセフィーヌ様には手を出さないで!』
その言葉を聞くとジョセフィーヌと言う名前に覚えがある
確か王族の一人にそんな前の女がいた気がする
ここは一つカマをかけて見よう

「ジョセフィーヌ・ドゥ・ラ・ベリテ…確かラ・ベリテ家の娘じゃな…身なりでまさかとは思っていたが」
一つため息をついて

「流石にワシも王族に手を出したら無事じゃ済まぬ、なら処女など要求できぬのう、仕方ない、この侍女で我慢するか、本人も納得しておるし」

侍女の首輪の鎖を引っ張って侍女の頬を舐めて。

「もっとも、お主が自発的に身代わりになるなら先ほどの約定、守ってもいいぞ、お主が自発的に処女を捧げるならわしが文句を言われる筋合いはない」

ジョセフィーヌ > 目の前の女性に、純潔を捧げる、ということの意味すら、
世間知らずの小娘にはろくに理解できていない。
このひとの選んだ誰かに、身を任せろ、ということか、などと。

しかし侍女の方は、もう少し世の中のことを理解している様子。
そして、己よりも確かに、この事態を把握していた。

『ラ・ベリテの娘』

――――はからずも明らかになってしまった家名、己の本名。
じぶんこそ、今にも倒れそうなほど蒼ざめているのに、
必死の形相で己を守ろうとする侍女の姿を見つめる。
そうして、まるでモノのようにそんな侍女を引き寄せる女性を、
―――――ドレスの生地を、きつく握り締め直して。
一度、震えながら深呼吸をして、から。

「……クロエは、解放、してください。
 私、…私の、純潔を……あなたの、好きに、してくださって構いません、から、」

――――選んだのは少女としての保身よりも、王族としての矜持。
ここで侍女を見捨てれば、きっと己は父の後継者として、何か大切なものを失う。
そう、決めて言葉を繋ぐ声は、情けなく掠れてしまっていたけれども。

ベアトリス > その発言に侍女は泣き崩れる
主人を守ることができなかった後悔の涙だろう。
そんな侍女を魔法で眠らせて。

「よかろう、交渉成立じゃ…こんな場所ではちと風情がないのう、ワシの屋敷に行くとしよう」

ジョセフィーヌの枷を外し、手を取って

「そうじゃ、処女を捧げ相手の名前ぐらいっておいた方が良かろう、ベアトリス、ベアトリス・エーフェンベルトじゃ」

そして近くに待たせていた場所に連れ込んで自分の屋敷へと向かう。

ジョセフィーヌ > 泣き崩れる侍女を見下ろす己もまた、眦には涙を溜めているけれど。
女性がなにかの術を用いたのか、侍女の身体はすぐに、その場へ崩れ落ちる。

歩み寄って来た女性の手で枷を外され、手を取られて立ち上がる瞬間、
ほんの少しふらついたのは緊張からか、恐怖からか。

いずれにしても、―――彼女を仰ぎ見る面から、今は惑う色も薄れて。

「ベアトリス、…ベアトリス、さま…。」

彼女の名前に『さま』をつけたのは、無意識のこと。
今の己は、彼女の慈悲を乞う身なのだから、と―――考えたか、どうか。
空色のドレスを翻して、小娘は何処かへ、連れ去られていくことに―――。

ご案内:「バフート 奴隷市場の裏」からベアトリスさんが去りました。
ご案内:「バフート 奴隷市場の裏」からジョセフィーヌさんが去りました。