2016/04/17 のログ
リーゼロッテ > 「組合長さんは…何かがあったら大変だからって、皆に止められちゃうから、見つけたらヴィクくんが倒しに行くんじゃないかな。ヴィクくん凄いんだよ? 私なんかじゃ勝負にならないもん。ぁ、ヴィクくんってのは組合長さんの弟さん、お母さんが違うけど、お父さんは同じなんだって」

全く似てないのと楽しげに言葉を重ねていく。
腹違いの兄弟、その弟ならと語るものの、彼女が考えていると忙しいという存在でもないのも知っている。
今日も奥さんのところかなと呟きながらも、抱きついたまま擦りついていく。

「……あのね、ティルヒアの友達、見つかったの」

図星をついたのは偶然の結果で、視線をそらしてしまった彼女に組合長伝いに話された出来事の進展を語る。
ティルヒアから自分が誘って呼び出し、銃だけを痕跡にして行方知れずになった旧友の話。
ここまでリーユエを失うのを怖れた原因、すっと胸ポケットから折りたたまれた羊皮紙を取り出すと彼女へと差し出す。

「……リーゼ、ユエちゃんまで居なくなっちゃったら…嫌だよ、もう…」

羊皮紙には所謂薬物検査の結果が書き記されている。
無数の注射による薬物使用、強烈な麻薬を筆頭に色んな劇物が体内で入り混じり、理性と人格を粉砕して残ったのは、本能のままに薬を求める廃人であるという事実。
一番辛かったこと、それを今吐き出すと、ポタポタと瞳から涙があふれ始めた。

リーユエ > 「そうでしたか、それでは仕方在りませんね。
でも、それならば、安心してお任せが出来る事でしょう」

成る程、強いというのはその方々が兄弟だから、という事が分かる。
その方達がちゃんと事を進めてくれていると知れば、安堵する。
腹違いの母、そして同じ父、二方の両親の存在を聞けば、ふと思い出すのは自分の育った孤児院だった。
両親を知らぬ自分にとって、腹は違えど親を持つ方々の話はつい羨ましく思ってしまう。
それを楽しげに話す彼女を前にすれば、さすがにそれは表に出せない、笑顔で応えた。

彼女の、ティルヒアの友達。その単語に、ピクリと反応を見せる。
組合長の方に以前聞かされた事だ。
それで、その友達はどうなったのだろう?それを聞く前に、彼女から差し出される羊皮紙を受け取る。
見付かったのならば、安心出来る。その内容は、そんな考えを嘲笑うかのようなものだった。
だけど、それには僅かばかりではあったが希望も見受けられたのだが…それを教えるのは後にしよう。
自分が起こそうとした行動が、如何に彼女をより悲しみに沈めてしまかもしれないものだと、それを理解したから。

「すいません。何だか、私はリゼさんに謝ってばかりいますね?」

涙を零す彼女の顔を見詰め乍、困った様な表情を浮かべる。
それでも、いざその相手を目の前にしてしまったら、どうなってしまうのだろう?
消えぬ不安がある為に、それはしないのだと、はっきりと伝える事が出来なかった。

「只、このお友達がこうなった原因は薬物とありますね。
私も携わっている事ですが、治す手段は無いのでしょうか…?」

優しく撫で、その羊皮紙に書かれた事の疑問を聞いてみる。
自分もこの手の患者は相手をした事はあるし、治療をした事もある。
ならば、ここにもそういった方は居るのではないか、と思って。

リーゼロッテ > 「いいの…だから、ユエちゃんは傍にいて…危ないことしないで? リーゼも…もう、危ないところから全部離れるから…」

ふるふると頭を振って、代わりに求めるのは失わない事。
撫でられながら、彼女の胸元へと顔を埋めてヒクヒクとしゃくり上げるように涙をこぼし続けていた。
不意に問いかける言葉に…少しだけ思い当たる情報を調べた医者に言われていた。
それを伝えたら…彼女は絶対に手掛かりを求めて動いてしまうと思ったから、一間の静止の後、再度頭を振ってしまう。

「…ないの、何の薬かも…分かんないって」

王都で広がりつつある薬とよく似ていると聞かされていた。
それだけでなく、色んな薬の中毒症状が重なり、薬物が脳に著しくダメージを与えていると。
もし、最初の大ダメージを与えた薬についてなにか分かれば、多少マシには出来るだろうと言われていたが…心の中の天秤は彼女を失わないことを選ぶ。
また闇に足を踏み入れて、こんどは彼女まで失ってしまうと、悪いイメージばかりが浮かび続け、涙でぐしゃぐしゃになった瞳で友を見つめる。

「お願いだから…ユエちゃんは何もしないで…っ、もう、嫌…もう…リーゼは…何も望まないから、今…あるものだけで幸せだから…もう、失いたくないの…っ」

絶対の喪失が起きるとは言い切れないが、ゼロとは言い切れない。
ほんの僅かの可能性でも見えるならそれを拒むほどに怯える。

リーユエ > 彼女は必死だ、何かを失う事を止める為に。
でも、その言葉の末に、また表情が少しばかり動く。

胸元に顔を埋め、泣き続ける彼女をあやす様に撫でている。
そう簡単には分からないだろうと思う質問だったのだが、彼女の応えに僅かな間が生まれた。
彼女の答えは、手段が無い上に、薬種さえも分からない、という事。
関わらせない為の、彼女なりの心遣い。それはとてもよく分かった。
だけど、つまりそれは、この国の薬物ではないという答えとなってしまう。
ティルヒアの友達、という事でティルヒアの薬物も除外されるだろう。
ザワリ、と背筋が寒くなる。辿り着く答えは、自分の国であるシェンヤンの薬物を用いられた…となってしまったからだ。

その上で、彼女は自分が関わる事を拒む。
目の前の自分を失う事を恐れて、自分や彼女自身の可能性も否定して、そんな姿を前にすれば、思い悩む。

「リゼさん…それで良いのですか?
本当に、何もかもから離れて、それで良いと思ってしまっているのですか?」

浮かんだのは、いつも誰かの為に動き続けている彼女の姿。
些細な事でも、ちょっとくらい危険があっても、彼女は快く、時に少しばかりの愚痴を零し乍も受けていた筈だ。
誰かの為に動く彼女に共感を覚えたのも、彼女に惹かれた理由の一つだった。
だけど、そんな彼女からそれを拒絶する言葉が紡がれる。
どれだけ辛い思いをしたのかは、はっきりと分かるものではない。
自分が思っているよりも大きな傷跡を残しているのかもしれない。
そうであったとしても、どうしても、それを認めたくなかった。

リーゼロッテ > 問いかけられる言葉は、失うことを怖れ続ける自分へ問い正すもの。
何かのために動き続けていられたのも、何かを失うのが自分だけだったから。
そんな答えが脳裏にすっと浮かび上がるも言葉にせず、代わりに口を開いたのはそれを塗り替えるだけの傷の理由。

「……リーゼは、自分が傷つくだけならそれでいいって思えてたよ。でも、あの子は…私が呼んでここに来て、私が魔法銃に関わったから…あんな目にあう引き金になっちゃった。リーゼがどうなるかより、リーゼは…自分のせいで誰かが壊れちゃうのは嫌なの」

少しだけ笑みを浮かべるが、それは自嘲するような悲しい微笑み。
涙が少しの間だけ止まっていけば、更に胸の内を吐き出す。

「それに…ずっとここで危ない仕事をしてたのも、リーゼにお兄さんが本当に送りたかった魔法銃をあげるためだったんだって…知っちゃったから。だって、リーゼが魔法銃なんか使わなきゃ…あんなことにならなかったんだよ? 人も殺せない…ただ上手なだけの魔法銃なんか、覚えなかったら…」

すべての思考が真っ暗になってしまう。
俯き、まるで自分のすべてが引き金になってしまったと言わんばかり。
呆れられてしまうだろうか、嫌われてしまうだろうか。
逆にそれで彼女が離れるなら、結果として彼女が守れるならそれでもいいのかもしれないと、朦朧としてきた意識の中でいろんなことを考えながら、悲しみに満ちた瞳を伏せる。

リーユエ > 「…」

ジッと彼女の顔を、瞳を真っ直ぐに見詰め、静かに言葉に耳を傾ける。
自身の身を案じるよりも、他の方の身を案じる、彼女らしく思うし、それが悪いとは言わない。
その友達の事に関して考えたって、彼女がその友達の事を思ってした行為だ。
相手の友達にしたって、彼女の事を思いしていた事だっただろう。
きっと、お互いが逆の立場であったとしても同じ事をしていたに違いない。
だから、今、彼女の言っている事は間違っている。
友達という存在の居なかった自分に、それを確信とするものはなかったけれど、なんとなく分かる。

「そうですか…それはつまり、こうした私との出会いも、無かった方が良かったと、受け止めるべきでしょうか?
いえ、私だけではない、そのお友達も、お兄さんという方も、そうなのですか?
リゼさんとの魔法銃という通じるものがあったからこそ、よりその御二方は深く関われたのではないのかと、私は思ってます。
その結果、今の立場を手に入れ、色んな方達とも出会っている筈です。
リゼさんは、そんな方達とも出会わなかった方が良かったと言いたいんですか!?
貴女の今の言葉は、そんな皆さん全てを否定している、本当に良いと思うんですか!?」

彼女の過去を、いまだに詳しく分かっている訳じゃない。
勿論、彼女の全てを完全に理解していたりもしない。
今までどんな生活をして、どう生きてきたかまで、自分が分かっているのは一緒に居た時間だけだ。
そんな、今まで生きてきた時間と比べれば短い時間でも、自分は彼女と出会いを良かったものだと思えている。
そんな思いを、与えてくれた方が否定をする。それはとても辛く、悲しく思った。
自身に湧き上がる、初めての感情、とてもそんなものを抑えきれるものではない。
自然と声は大きくなり、彼女の背に触れる手に力が篭る。

「そうなのだと、リゼさん、貴方が答えるならば…それでも良いでしょう。
私は、リゼさんの望む通りに離れるしかありません、私の好きになった方が望むのですから。
…でも、そうなれば、私は私の望むままに動くでしょう。
お友達に使われた薬、シェンヤンのものですよね?」

そこまで伝えてから、触れていた手を、触れた時の様にゆっくりと離す。
考えていた事は彼女と同じ、勝手な言葉を彼女に浴びせ、嫌われても仕方の無いという考えで。
いっそ本当に嫌われてしまったならば、逆に動き易いのかもしれない。
彼女にも、きっとそれは伝わっているだろう。
彼女の仇も然る事乍、彼女の友人を陥れた原因も、なんとなく理解した事を教えたのだから。
考えれば、とても自分は卑怯だとおもってしまう。
失う事を嫌う彼女に、失う事を仄めかしている。
…ここまで自分で自分を嫌えるものなのだろうかと、ふと考えてしまった。

リーゼロッテ > そうじゃない、ただ、自分が中途半端な力を得たから歯車が狂った。
ザクザクと心に突き刺さる言葉、最初の一言目から青ざめていき、違うと何度も頭を振った。
語気が荒くなれば成る程、身を縮こませて振るえていき、涙はもっともっと溢れて頬を濡らす。

「…ごめんなさい、違うの、そうじゃなくて…そうじゃなくて…」

ふるふると子供のように何度も頭を振ると、更に続く言葉に濡れた瞳をいっそう大きく見開いて、血の気が引いていく。
一番選んでほしくなかった答え、そこへと近づいていく。
離れて行く手に、こちらから手を伸ばして掴まえようとするのは、望んだ通り失う事を仄めかされて縋り付いていく心そのもの。
何度も小さくごめんなさいを繰り返し、同じぐらいに離れないでと言葉を繰り返すほど、突き放す言葉の破壊力は凄まじく、ずっと震えが止まらない。

「リーゼが…いけなかったから…許して…っ、ごめんなさい…ごめんなさい…っ」

子供が許しを請うような上目遣いでじっと見つめて、握った掌に力が篭ってしまう。
最後に残った自嘲の殻を砕かれて残っていたのは、とても怖がりで寂しがりで、不安定な子供のような心。
行かないでといわんばかりにじっと見つめ続ける。

「…分からないの、お医者さんは…見たことがない薬だって…ちゃんと、全部言うから…ね? だから…だから…」

北方から来たものかまでは分かっていなかったが、彼女の消去法を裏付けるような言葉をこぼしてしまう。
隠していた事をすんなりと白状すれば、もう追いかけていかないよね?といいたげにじっと見つめる。
只管に怖かった、今リーユエまで自分の中で失ったらという不安。
思わず零れた弱音で嫌われてしまったかもという不安。
不安が折り重なって子供のように怯え続ける。

リーユエ > (私こそ、ごめんなさい…リゼさん)

分かっていた、彼女を怖がらせるものであるのは。だから、言葉にしなくとも謝らずにはいられない。
涙を溢れさせていく彼女に、心が痛む。
でも、彼女をこのまま殻の中に閉じ込めるなんて出来なかった。
離れかけた手が、彼女から手が伸ばされるのならば、その手を取って再び胸の中に抱くだろう。

「私の方こそ、ごめんなさい、リゼさん。
貴方には魔法銃から離れて欲しくはなかったんです。
リゼさんがどう思っていても、これは皆さんを繋げたものだと思うんです。
そして、将来、色んな人を助ける力にきっとなるのだと、そう信じていますから。
だから、ご自身の力を否定するのだけは止めて下さい」

何度も謝る彼女の姿、上目使いに見上げる瞳を見詰め返した。
繋ぐ手、その指を絡めるようにして握り直す。

「本当は…私だってリゼさんと離れたくはないのですよ?
だから、私にそんな悲しくなる様な事を言わせないで欲しい、それが今の私の望みです」

何とか安心させるように笑顔を作る、つもりだが、彼女にはどう映るだろうか?
きっとあの組合長の方だったら、もっと彼女を怯えさせず、悲しませず、事を収められたのかもしれない。
自分を情けなく思えてしまったか、少しだけ瞳に涙を滲ませる。

「でしたら、矢張り、私が見れば何か分かるのかもしれませんね。
その、大丈夫です、私に覚えが在る薬物かを見るだけです。
それがシェンヤンからの物だと分かっただけでも、十分な進展になるでしょう?
分かっても、本当に必要で無ければ動きません。
必要となっても、リゼさんと一緒ですから…ね?」

取り敢えず、何も知らない分からないでは、如何し様も無いのも事実ではある。
自分に僅かでも進展の可能性が在るのならば、調べてみる価値はある。
それに、リゼさんの友人なのだ、助ける手助けとなるならと考えるのは、きっと理解してくれると思う。
付け足す様に、動くとしても彼女ときっと共にする、それを約束して。
まだ彼女の怯え、不安が解消されないならば、顔を寄せてその頬に触れるだけのキスを落としてあげよう。

リーゼロッテ > 彼女の胸元へと導かれる掌。
指同士を絡めるような握り方に、不安で荒れていく心が落ち着きを取り戻し始める。
魔法銃から離れないで欲しい、その願いには肯定も否定も紡げないが、彼女の願いを受け止めるように何度も頷き返す。

「いいの…リーゼが悪かったから…。うん、ごめんね…もう、言わせないようにするから…ごめんね?」

作られた笑顔でも、素直に安堵して安らいだ笑みで頷いていく。
確かに想像の通り組合長なら波を立てずに対処できたかもしれないが、これだけ深く心に食い込んでいたからこそ乱れたというのもある。
泣かせてしまったと、瞳に滲む涙に反省の色が浮かぶ表情で謝罪するかのように体を寄せて見つめる。

「うん…。ホント? うん…動く時は、一緒…」

もし何か動くのであれば一緒にと言われれば、緊張した不安が溶けていく。
それでも体に染み付いた不安という毒素が抜け落ちるには時間がかかった。
頬に触れるだけのキスを受け止めると、ビクリと体を震わせていく。
不安でかき乱された心の中では、そのキスにそれ以上の感情を覚えていけば頬を赤らめながらも、こちらからも顔を近づけていく。
頬にされたのとは異なり、唇へと重ねようとする動き。
友達としての仕草でも嬉しいばかりだが、キスにそれ以上のものを求められていたとしても…友人とは別になっても、嬉しく思ってしまえる自分に気づく。
もっとくっつきたいと温もりを求めて更に抱きついて、少し勘違い気味の激しめの感情表現で応えるだろう。

ご案内:「九頭龍山脈麓の集落 居住エリア」からリーゼロッテさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈麓の集落 居住エリア」からリーユエさんが去りました。