2016/04/16 のログ
ご案内:「九頭龍山脈麓の集落 居住エリア」にリーユエさんが現れました。
リーユエ > 使わせて貰っている、この部屋の主である友人が数日間に渡り部屋を空けていた。
理由を聞いても何故か肝心な部分は教えられる事が無くて、それでも仕事の都合でと言われれば納得するしかなかった。

それを知ったのは、貧民地区へと偶に行っている健康診断をしにいった時。
診断をしていた方の一人が、この地区の一部で起こった事を聞かせてくれたから。
そこで起こったある人物達の争いの様子。
それだけならば、何時ものように困った笑顔を向けて、これ以上の事は何も起こらぬよう祈るだけ、と伝えただろう。
だけど、その争いを起こしていた人物がどんな方達だったのか、それを聞いた途端にその表情は凍り付いた。
自分から争いを始める方ではない、それをよく知っている。
その経過は分からないけれど、その結果を聞いた時、抑え切れない感情にその日は早々に切り上げてしまった。
まだ部屋に戻って来ない、その原因はそこにあるのだろうと、知ってしまったから。

そして、今に至る。
部屋のテーブルへと置いてある鞄、二重底の上部に詰められた医療道具を取り出していく。
代わりに詰め込むのは、偶々とはいえ偶然作り上げた大量の札、そして、使う事は無いと思っていた黒装束と黒い仮面。
詳細は分からない、でも、きっと此処では教えて貰えない。
それならば、自分の手でどうにかするしかないのだ。

ご案内:「九頭龍山脈麓の集落 居住エリア」にリーゼロッテさんが現れました。
リーユエ > 自分で動くにしても、その理由を伝えてしまえば間違いなく止められる。
だからこそ、誰にも伝えずに行こうと思う。
今日は…月もはっきりと見えるよく晴れた夜、運の良し悪しはともあれ、出会ってしまっても条件は揃っている日だ。

そっと音も無く、鞄を閉じる。
大丈夫、きっと上手くいける。
目を閉じ、少しばかり息を整え、鞄を手に取った。

リーゼロッテ > 命懸けの戦いを終え、暫く酷い虚脱感で動けなくなってしまい、隼に助けられたのはいいものの、このままの状態で部屋に戻るには心配をかけるからと動けるようになるまで一日。
翌日、心配になっていたことの情報を得て動き出し、結果を目のあたりにする。
そして三日目、現実の非情さに誤魔化すように微笑みを見せてすべてが終わった。
そうして重い足取りで居住区の前へと戻ってくると、こそこそと静かにドアの前へと歩いて行くと、そろりとドアを開くも…丁度今にも飛び出して行きそうな彼女を見つめてしまい、ビクッとしてからアワアワと視線を右往左往させて、誤魔化すように苦笑いを作った。

「た、ただいま…ユエちゃん」

さも何もなかったかのように帰還の挨拶をすると、静かに部屋の中へと入り、後手でドアを閉じる。

リーユエ > 鞄を手にし、向かおうとドアへと目が行く。
音を立てずにやってきていたのだろう、普段の自分なら気付けた筈なのに、気付けなかった。
よっぽど気を張り過ぎていたんだと思えば、それは反省するしかない。
戸惑い、苦笑いを浮かべる友人を前にすると、同じ戸惑いを見せるこちらの表情も見える事だろう。

「あ、はい…お帰りなさい、リゼさん。
数日空ける程のお仕事です、大変だったのでしょう?
今日はゆっくりとお休みしますか?」

いつもの自分だったら、きっとお話し好きの彼女に色々と聞いたりして、すぐに休むようには勧めなかっただろう。
だけど、何が起こっていたのか細かくなくとも知ってしまった。
この発言に彼女が感良く気付けてしまうならば、如何とも答え難いもの。
気付かぬならば、出るのを遅らせて彼女を休ませようとするだろう。

リーゼロッテ > 多分、何日も出回って何してたのかとか、心配したとかとお叱りを受けるだろうと思っていた。
ぎゅっと一瞬目を閉じるものの…掛けられたのは労うような言葉。
そろりと瞳を開いて瞬かせるも、明らかに肩透かしを食らったというのはありありと浮かんでいるかもしれない。

「う、うん…そう、だね…えっと…何も聞かない、の?」

敢えて聞かず、心配と労いの言葉をかけられてしまうと、おもわずそんな本音が溢れてしまう。
コツコツとクローゼットの方へと歩いて行くと、蛇腹状に畳まれていく扉を開き、ケープとライフル、そして腰に巻いていた装備品が連なったベルトを駆けていくが、マスケット拳銃がボロボロになっているのが見えるかもしれない。扉を閉じるとそのまま近くのベッドへぽすっと腰を下ろし、改めて友の方へ視線を向けていく。

(「でも…話すなら早いほうがいい…よね」)

友の様子を見守りながらそんな風に心の中でつぶやくも、まずは彼女の出方次第かなと様子を見ることにした。

リーユエ > 掛ける言葉に、目の前の彼女が一瞬だけ目を閉じた。
その理由は直ぐに気付けた、何も言わずに数日空けていた事を、自分が何か言うと思っていたからだ、と。
しまった、と思うも、既に紡いでしまった言葉を取り消す方法が在る訳でもない。
目を開き、何も聞かない自分へと疑問を抱くような言葉に、慌てた様に両手を前にパタパタと振る。

「あ、その、何日も掛かるようなお仕事で、疲れているのではと思いまして…
リゼさんは色々と、皆さんにお願いを任されておられる身、ですしね?
お仕事の先でも、そんな事があったのでは、と」

ちょっと苦しいか、言葉を返してはいるのだけれど、そんな考えが頭を過ぎった。
コトン、と鞄を足元に置いて、彼女の動きを追うように見てしまう。
そこでふと見えたのが破損の跡が見える拳銃で、それが争っていた事の激しさを物語っていると思った。
そして、勝敗を決した後の出来事。つい目を逸らしてしまう。

「…そうですね、リゼさんがまだ元気でいらっしゃるなら、色々とお伺いしたい処です」

改めて顔を向け、何時もの笑顔を向ける。
見慣れた彼女なら気付けるかもしれないが、僅かばかり表情が硬いかもしれない。
ベッドに腰を下ろす、そんな彼女の隣へと歩み寄ると、同じように腰を下ろした。
お先にどうぞ?といった感じに、小首を傾げてみせる。

リーゼロッテ > 気遣う言葉は素直に嬉しく思えて微笑みを浮かべるものの、内心には、仕事だけではない事実があるためにチクリと胸が痛む。
大切な友人だからこそ隠すのが辛くなる、拳銃から目をそらすのが少しだけ見えると、やっぱり…色々気づいてるのかもしれないと思いつつ、腰を下ろす。

「…元気じゃないけど、しゃべりたいな」

少し硬い表情の友へ苦笑いを浮かべつつも、隣に座る彼女へと両手を伸ばす。
そのまま届けば、唐突にベッドへ押し倒すようにしながらその体へ抱きつこうとするだろう。

「…この間の里の事件の犯人、偶然だけど合っちゃったの。沢山頑張ったけど…仇、取れなかった」

必死の攻防の末、ライフルは機関を損傷し、譲り受けたマスケット拳銃は握りつぶされ、魔法銃という最大の強みを全てへし折られてしまった。
殺そうとしてた高い、何の傲りもなく、何の迷いもなく戦ったのに負けてしまった。
その現実が強くのしかかり、その日にこそ涙は流れたのに…今は全く流れない。
奥底に残る乱暴の痛みがよみがえると、ホンの少しだけ顔を顰めてから誤魔化すように笑みを見せた。

リーユエ > 「あんまり無理を為さるのは、感心しませんが…
分かりました、では、お聞かせ願います…っ?」

先の言葉は、今回の事を知ろうと知るまいと、彼女を気遣い出る言葉。
それでも喋りたいのだと言う彼女の言葉を汲み、頷くも、両手を伸ばし抱き付いてくるならば、その体を優しく抱き留める。
…つもりだったのだが、その勢いに、お互いにベッドへと倒れ込む形になった。
揺れる青味を帯びた黒髪が、ベッドの上に広がる。

語りだす彼女の言葉を、眼前に見える彼女の顔を見詰め乍、静かに耳を傾ける。
心の痛みか、体の痛みか、その両方か。
顔を顰めるのが見えるも、必死に笑顔を浮かべる彼女。
言葉と笑顔で、本当に彼女は悔しい思いを、辛い思いをしたのだと思い知らされる。

「そうですか、それは残念でしたね?
でも、相手が分かったのならば、後は捕まるのも時間の問題でしょう?
それなら、もう無理をする必要は在りません、近い内にその罪を罰せられる事でしょう。
それに…リゼさんが、こうして無事に戻って来られたのですから、それは本当に良かった事だと思います。
もし、リゼさんに何かあったら、そう考えると…私は如何したら良いのか分からなくなってしまいますから」

彼女の頭にゆっくりと手を伸ばし、指先を髪に絡める。
梳くように優しく撫で乍、彼女へと掛ける言葉は…半分は本音、半分は偽り。
彼女を心配する気持ちが本音。
捕まり、只罰せられるだろう彼女を傷つけた相手。それを大人しく待とうなんて、思っていない、それが偽り。

リーゼロッテ > ベッドへと沈みながら友の顔を覗き込む。
黒髪が白いシーツの上へと広がっていくのをみやり、自分とは違うお淑やかさの様なものを感じつつ、心がほんのりと癒される。
あやすように撫でる掌と言葉に最初こそ安心したものの…途中では一度頭を振ってしまう。

「…多分、捕まえられないと思うの。ザムくんも大怪我しちゃったし、ライフルも使い過ぎて壊れちゃったのに…倒せなかったから。本当に捕まえるなら…ヴィクくんか、組合長さん…どっちかじゃないと無理かなって思うの」

同じ組合の戦闘要員のエキスパート、そのリーダー格の青年か、その兄になる組合長。
あの二人は桁違いに強いのを戦争の時に聞かされ、目のあたりにすることもあった。
その記憶から、あの二人の何方か以外は…挑んではならないと身を持って思い知らされたからか、少し青い表情で頭を振っていく。

「…うん、ありがとう。 私も、ユエちゃんに何かあったら…嫌だから、変な事考えないでね?」

ぎゅっと抱きしめながらに浮かんだ最悪の結末は、彼女が壊されてしまうこと。
普段ならそんなイメージは浮かばないが…今は浮かべてしまう出来事があった。
抱きしめる体が小刻みに震えるほど、彼女を失うことを恐れる。
それこそ、あの命懸けの戦闘なんて、その後の現実に比べたら自身の身の事だけだったから、まだよかった。
まるで縋り付くように腕に力が篭ってしまい、鼓動を早めながら呼吸は怯えるように早く小刻みに変わっていく。

リーユエ > 捕まえられない、その言葉に、一瞬だけ撫でる手が止まる。
あの隼まで傷付けられていた、彼女の仲の良さそうな、自分も世話になった事のある、その姿を思い出す。

「そうですか…その、ヴィクさんと仰られる方と、組合長さんは、どういったお考えなのでしょう?
お二人が動かないと捕らえられないとなりますと、また被害が出る可能性が在りそうなのですが…」

組合長の方は実際に見た事はあるも、それは会話の場だけで、戦いの場で見た事はない。
もう片方の方に関しては、名前自体も初めて聞くもので。
実力は分からないが、彼女がそう言うのならばきっと強いのだろうと、そう思う。
只、それ程の実力者なのだから、その忙しさも、と考える。
そうなれば、犯人はその間も自由に誰かを襲い続けるかもしれないのだ。
大人しくしてくれるのが一番だが、そんな都合良くはいかないだろう。
だからこそ、こう聞かずにはいられなかった。

「…っ…わ、私は別に、その様な事は…」

彼女の言葉は図星をつく、だから、返している言葉に引っ掛かりを感じさせてしまう。
自分でもそれに気付いてしまったから、言葉の後に、視線を逸らしてしまった。
こんな自分と同じ小さな彼女が、これだけ頑張ってたのに、こんな目にあって、どうして大人しく出来るだろう。
だけど、彼女は自分のそんな考えを分かっているのだろう、釘を刺してくる。
きっと、自分の事を考えて言ってくれている。
分かるからこそ、辛い。彼女も辛い思いをしてきたのに、何も出来ない事も。
怯えるように震える彼女に、残った左手を背中に添えて、抱き締める。