2016/04/04 のログ
ご案内:「奴隷の仕入れ所」にリーユエさんが現れました。
■リーユエ > 山中を駆け抜け、襲撃の起こっている集落に近い場所で足を止める。
距離的に、気配の感じ取れるギリギリの距離。
それなりに長い距離を駆けてきた筈なのに、その吐息は殆ど乱れていない。
事の始まりは、お世話になっていた九頭龍山脈の麓の一部の方達が麓を一斉に離れた事だった。
前にお手伝いに行った時と同じ、戦いの場に赴くような集まりなのは直ぐに気付いた。
またミレー族の方達が襲撃されたのならば、自分も向かうと同じように声を掛けたのに、今回は断られた。
それはつまり、その相手が見付かって、襲撃に向かった。という事なのだろう。
「…やっぱり、今回は…!」
聞こえるのは怒声や絶叫、女性の悲痛の叫び声は聞こえない。
足を止めて、それからそれ以上は足を進めれない。
下手に近付いてしまえば、見付かってしまえば、変に思われるかもしれないからで。
なら、どうしてこんな場所に着てしまったのだろう?と考えてしまう。
こんな状況を止めれるなんて、思いもしないのに…
上空の気配だけは気付けない、注意しているのはこれ以上進んだ先に起こっている襲撃の場だけだった。
■リーゼロッテ > 「……あれ?」
下の様子を見ていると友人の姿が目に留まる。
彼女を怖がらせないためにと組合長がストップを掛けたと聞いていたから…少しだけ驚きが顔に浮かぶ。
しかし、彼女の存在は想定されていない分、激昂した他の少女達に見つかったら面倒なことになりそうだ。
そう思うと、隼にお願いをして一気に彼女の傍まで下降し、風を巻き起こしながら彼女の傍へと着地するだろう。
「ユエちゃん、危ないから…乗って? 他の娘、凄く怒ってるから…ユエちゃんと気付かないかもだから」
苦笑いのままに語りかけると、すっと手を伸ばす。
彼女にもある程度見えるかもしれない。
聞こえるのは殆ど男の断末魔ばかりで、拠点のところで見たことがあるミレーの娘達が魔法銃を手に戦っているのが。
■リーユエ > 上空を意識してなかったから、その上空から現れた友人である彼女に感付くのに僅かな遅れが出てしまう。
そして、こういう時に必要もない反射神経が、その急に現れた上空の相手に対して強い警戒を生んでしまった。
気配の感じるギリギリの距離、その時点で、うっかり構えを取ってしまう。
それが友人と直ぐに気付いて構えを即解くのだけど、果たして彼女には気付かれただろうか?と不安が過ぎる。
自分は只の医術師だと伝えてある、戦う為の構えを取るなんて普通は在り得ないのだから。
彼女が傍に着地した時には、普段の落ち着いた様子の少女が佇んでいただけだろう。
掛かる声に、申し訳無さそうな表情を浮かべて、その手をそっと取る。
「…はい。すいません…いけないとは思っていたのですが、皆さんが出てしまった事が気になって、つい」
そうすれば、ある程度は見えてしまうのだろう。
拠点とする位置、そこで起こっている出来事が。
それを見る表情は、彼女の横であるにも関わらず、何処か辛いのを堪えているかのようなもの。
抑えられない、例えどんな相手でも、こんな事をして良いなんて思いたくないから。
■リーゼロッテ > 降下していく中、構えをとった姿に一瞬だけ隼の方が攻撃の気配をにじませるのに気付く。
何故攻撃の気配を出したのかと驚きながら、首元をぺちぺちと叩いた。
「ザムくん、ユエちゃんだからねっ!?」
その声に攻撃の気配が消えるものの、少女自身は彼女が起こした行動には気づいていなかったらしい。
傍らに着地すると、その手を引いて隼の背へ乗せると命綱を腰に巻くように渡してから、隼は翼をはためかせた。
一気に空へと舞い上がれば、復讐の様子が一層顕に見える。
同時に、隼に触れていることでミレー族の娘達の声すら聞こえるだろう。
『お前達に私は母親を連れ去られた! 見つけてもらった時には既に廃人で何もわからなかった…!』
『地獄で死んだ妹達に詫てこい!』
怒りの声が幾らでも聞こえていく。
そばにいる彼女の様子を見やると、浮かべる表情に目を伏せながら肩を寄せる。
「許せないって…殺しちゃえって思ったけど、私も見てて何だか違う気がしてくる」
ぼそりと呟いた声は、隼が途中で思念の通話を閉じて周りの仲間には聞こえないようにしていく。
そう呟いたリーゼの顔には困ったような苦笑いが浮かぶ。
■リーユエ > 彼女は気付かなかった、だけど、彼女の乗る隼に気配の揺れが見えてしまう。
しまった、と思うけれどもう遅い。
気付かずにいてくれた彼女に依って、隼の気配の流れは元へと戻るけれど…
隼に乗る前に、彼女には見えないように隼に小さく頭を下げて謝罪をした。
序でに、今のは伝えないで欲しいと、内緒の意味を込めて唇に人差し指を一度だけ当てて。
渡された命綱を腰に巻き、上空へと舞い上がる。
空を舞う隼に乗るなんて慣れている訳が無く、身に受ける浮遊感に少しばかり不安気な表情が浮かぶ。
だけど、それを直ぐに感じさせなくなるような声が聞こえてしまう。
隼を通じ聞こえてくる、ミレー族の方達だろう声。
声の主は傍には居ない、どう見ても聞き取るには辛い距離に居るのが見える。
如何した事なのだろう?と、彼女へと顔を向けた。
「…リゼさん、それで良いのです。殺されたから、殺して良いなんて道理は在りません。
許せないのは私も同じ、ですが、だからといって殺してしまっては許せないと思った相手と同じになってしまう。
本当にすべき事は、相手の方に二度と同じ事をさせない事…それは、とても難しい事ですけれど」
彼女の言葉に、ちょっとだけホッとした。
他の方達と違い、この殺戮を良しとしていないで居てくれたから。
甘いというのは十分分かっている事、それでも、それを許してしまう事だけはしたくなかった。
自分の思いを伝えれば、多分、彼女なら気付くだろう。
前に彼女に伝えた言葉、その自分の考え方を。
暴力に暴力では無く、先ずは言葉を交わす事が自分のスタンスだ、と。
困った様な表情を浮かべる彼女の肩を優しく叩き、微笑を向ける。
■リーゼロッテ > 隼の方は彼女がただの医者ではないとは気付きつつあるようだが、特に問い詰める様子もない。
今のところは医者で仲間の客である、害をなさないならと内緒にして欲しいという仕草に言葉こそ返さないが、今のことを口にする様子はない。
ミレー族の娘達は中々に容赦がない、戦闘不能になって逃げ出そうとする兵士ですら始末し、虫の息の商人の頭を掴んで引きずり出し、それこそ火炎放射の魔法で焼き払ったりと残虐なぐらいだ。
リーゼとは違い、攻撃に特化した火の魔法弾を使っているのもあり、人肉が焼ける嫌な焦げ臭さが風にのって流れてくる。
「……でもね、組合長さんがいいよっていったの。ユエちゃんと同じ考えで、二度とさせないためにって。生半可な攻撃だと反撃しようってなるから…やるなら徹底的にやるんだって。あと…あの娘達が、自分達は虐げられる存在じゃないって、思えるようにって」
友人の言うこともよくわかるし、その方がいい思えたが…だからこそ、組合長が友人をこの現場に越させたくなかった理由を語る。
彼らがただ襲撃を受け、命を赦されたなら、きっと逆恨みして襲いかかってくるだろう。
もしくは別の集落を襲うはず、だからその考えを粉砕するほどの暴力で叩き潰す。
併せて、ミレーの少女達に根付いた弱者という刷り込みを消し去るためでもあった。
ただ、殺しているように見えて、冷たく計算された虐殺をリーゼは止める事ができないのは、計画を壊す訳にはいかないからだろう。
「…でも、ユエちゃんが来てくれてよかったかも。私だけだったら、ちょっと辛かったもん」
優しい手の感触に安らいだ笑みを浮かべながら、微笑みを見つめていた。
■リーユエ > 黙っていてくれている隼に感謝をし乍、眼下に映る襲撃を眺め続ける。
もう勝敗は決しているのに、尚も攻撃を行い、相手を殺す。
止めたい、そういった思いが、命綱を握る手に入る力に現れる。
意識して彼女に気付かれないように肩に触れる手には力を込めないようにしているのだけれど、ほんの僅かだけどそれを感じてしまうかもしれない。
「…そう…ですか。まだ、未熟者である私には理解出来ない処まで、考えておられるんでしょうね」
力で力を抑え付ける、それは自分達も妖怪等といった邪な存在に対して行っている事なのだから、全く分からない訳でもない。
でも、それは相手が話も理解しようとしない相手だと思っているから。
同じ人間為らば、それが出来ない訳が無いのだと思っている。
そう、そんな自分だからこそ、組合長であるあの方は、自分を止めさせたのだろう。
それが彼なりの思い遣りである事は痛い位に理解出来た。
そこまで気を使わせてしまう程に自分は未熟なのだと、痛感させられる。
「…すいません。ありがとう御座います。
一人でこれを見たら、私も今以上に辛かったと思いますから。
リゼさんが居てくれて、ちょっと救われた気がします…本当に助かりました」
微笑みながら、この麓では他にももっと教えられる事が在るのかもしれない、そう考えていた。
それには、この友人が必要なのかもしれない、とも。
いずれ彼女には本当の事を伝えよう。今はまだ、自分の事で一杯だから難しいけれど。
■リーゼロッテ > 見るに耐えないといった雰囲気が手から伝わる。
それこそ、何となくといったぐらいのことだが、何度も言葉をかわした友人のことだからこそ感じ取れた。
「…ザムくん、あとは他のお友達に任せて平気かな?」
ちょっと降りたいと隼に語りかけると、後は援護する必要もないだろうと返事が返り、近くの高台となった場所へ隼が向かっていく。
そこへ到着すると、隼の背から降りて、彼女を導く様に手を差し出すが、その手を握られればスッと引き寄せて下ろしながら、抱き寄せようとするだろう。
「未熟とかじゃなくて、優しいんだと思うよ? 組合長さんも好きで殺してこい~なんて言ってないと思うし」
殺さずに分かり合えるなら最良なのは分かる、けれど今回は殺す必要が生じたのが事実。
心のざわつきと、沈んでいく気持ちを包み込みたいからとその体を抱きしめようとしたのだろう。
「…私も辛かったからお互い様だね、ユエちゃんが来てくれて助かったよ」
微笑みながらに言葉を返せば、改めて彼女が来てくれて良かったと思う。
そんな中、隼が”終わったな”と小さく呟いた。
リーゼの体に触れていれば、隼の声も聞こえたことだろう。
村の様になっていた場所は焼け野原の様に荒れ果て、死体が無数に転がり、男たちの声は途絶えた。
仇が取れた、無念を張らせたと呟く少女達の声は喜びではなく、悲哀に満ちた静かな音だけである。
■リーユエ > まだ続いているだろう襲撃の中、彼女は離脱を隼に願い出る。
言葉はそれだけだったけど、それだけでも理解出来たのは、彼女をそれなりに理解してきていたからこそ。
自分の思いが伝わってしまい、彼女にも気を使わせてしまった。
それは、離れた高台に降り立ち、隼から手を取り下ろしてもらう時に抱き寄せられた事で感じられる。
然し、それは少しばかり考え違いだという事に気付かされた。
「ありがとう、御座います」
彼女の言葉を聞いた後、抱き締められたまま、その一言だけを返す。
いつものように、何かをまず考えての言葉ではない、間を置く事も無く自然に口にでた言葉。
自分でも不思議に感じる程に、すらりと伝える事が出来た。
「はい、お互い様に。リゼさんの助けにもなれて良かったです」
その次の言葉も、笑顔と共にはっきりと彼女に言う事が出来る。
ふと、そうしている中に隼の小さな呟きが聞こえた。
此処からはっきりと見える事も無いが、その姿は前に見たミレー族の村と同じような感じなのだろう。
襲撃は終わりを迎える、後はこの場所から離れるだけとなるか。
■リーゼロッテ > 「どういたしまして…。ユエちゃんも辛いよね、こんなの見てたら」
ぎゅっと抱きしめたままに緩やかに囁く。
最初は彼女が来たことで自分の心が落ち着いたから、今度は自分の番と、心の靄を落ち着かせようと優しく背中を撫でていく。
「うん、お互い様! ユエちゃんが笑ってくれてよかった…ふふっ、私も変な顔、しちゃってたからかもしれないけど」
クスッと安堵の笑みを浮かべれば、聞こえる隼の声に村の方を見やる。
ミレー族の村が襲われた時と同じか、それ以上の激しい虐殺と破壊の爪痕が見えるはず。
こうして終われば、心から破壊を楽しんでいるものは誰もいなかった。
必要だからした、弔う為に、怖れさせるために。
得てして組合長の想像したどおりの結果だったのかもしれないが。
「撤収するみたい…じゃあ、帰ろっか。…ぁのね、良かったら…一緒に寝てほしい、な。少し不安というか、怖いというか…辛い、みたいな…」
隼から聞こえた撤収の合図を彼女にも伝えると、改めて隼の背に乗り、彼女も背へと導く。
翼が空気を叩けば、あっという間に空へと上がり、離れたところにあった麓の集落まで飛んで行くのだろう。
願いが叶うなら…ぎゅっと彼女の手を握ったまま眠りに沈む夜となるはず。
■リーユエ > 「ええ…でも、もう大丈夫です。リゼさんのお陰です」
強く抱き締められる、こうして人の温もりを最後に感じたのは何時だろうか?
緊張と共に力は抜けていく、触れている彼女ならばそれを感じるだろう。
「リゼさんも、いつもの表情に戻っておりますから、心配なさらずに。
えっと…どの様なものが変な顔をというのかが、ちょっと分かりませんけれども」
言葉を交わし乍、少しばかり名残惜しそうに身を離す。
撤収するのだと言われ、再び彼女の手を取り隼に乗る事となる。
その時に掛けられる言葉に、今度はこちらがクスッと笑う。
まだ不安なのは、彼女もやっぱり同じだったから。
「私の方こそ、是非お願いしたかった処です。
リゼさんとなら、きっと安心して寝れると思いましたから」
命綱を手に、今度は彼女へともしっかりと捉まる。
隼にも聞こえてしまうだろうけれど、彼女だけに聞こえるように小さな声で、それに答えるのだった。
そして、麓へと皆戻って行く。
いつもは一人寝る前に色んな事を考えてしまうけれど、今日はきっとゆっくりと寝る事が出来るだろう。
ご案内:「奴隷の仕入れ所」からリーゼロッテさんが去りました。
ご案内:「奴隷の仕入れ所」からリーユエさんが去りました。