2016/02/13 のログ
ご案内:「 温泉旅籠「九頭龍の水浴び場」」にティネさんが現れました。
ティネ > 広々した露天風呂の水面を小さな生き物がばしゃばしゃと泳いでいた。
妖精もどきティネである。彼女の周囲に人の気配はない。

遊んでいるようにも見えるが、彼女は肉体の鍛錬のために
泳ぐ場所を求めてここに来たのだった。身体は資本である。
川や湖は彼女にとっての危険が多い。ならばと温泉を選び、人の少ないところを見計らって失礼したのだ。

ティネ > 「ふう……」

しばらく泳ぎまわったあと、浴槽の縁にたどり着いて身体を引き上げる。
さすがに疲れたようだ。
温泉で泳げば風邪をひく心配こそないが、のぼせるのも早い。
全身真っ赤である。

「……最初に思いついた時はいい案だと思ったんだけど~」

身体を鍛えるなら地道にランニングとかのほうがいいのだろうか。
そもそもこんないい加減な身体に肉体鍛錬がどれぐらい効くのかわからない。

「喉乾いた」

ご案内:「 温泉旅籠「九頭龍の水浴び場」」にロレンスさんが現れました。
ロレンス > 今日も暗がりから転移して人間の世界へ足を踏み入れれば、何気ない散策の時間を過ごしていた。
目に留まった温泉旅籠、ふと思い起こせば何度かこういった建物を見かけたことはあるものの、通り過ぎることが多い。
ならばいっそうに興味が湧くもので、早速浸かりに行こうと今に至る。
腰にタオルを巻いただけの姿で引き戸を開き、湯けむりの中に踏み込むと、ほぅと感嘆の吐息をこぼす。

「なかなか良いものだ…」

うっすらと口元だけが笑う。
ひたひたと足音を立てながら温泉の縁へと近づくと、不意に何かの気配に気づいた。
蒸気で視野が悪いのも有って、まだ小さな先客が見えていないらしい。
とはいえ、彼が足を止めたのは少女の直ぐ側なのだが。

「声…?」

水音の響いた小さく高い音、それの発生源は足元の方角。
訝しげに覗き込むと、ティネの姿にやっと気づいたようだ。
柔和な笑みを浮かべながら、ゆっくりと膝をおってかがむと視野を合わせるようにしゃがみ込む。

「こんばんわ、御嬢さん。ご一緒してもいいかな?」

丁寧なご挨拶と共に、そんなお願いを一つ重ねた。

ティネ > 足音と近づく気配に多少緊張したが、男の穏やかな気配にそれも薄れる。
この旅館の浴場では何度か人と遭遇したことはあったが、
いずれも危険な人物ではなかった。
むしろ気づけてもらえたのは僥倖かもしれない。

「こんばんはぁ、お兄さん。いいよいいよ好きにしちゃって……」

色気に乏しい裸体を隠す様子もなく見上げて応答して、浴槽の縁に横臥してしまう。
はしたないが少し身体を冷ます必要があるようだ。

「代わりというわけでもないけど、何かお水飲ませてくれない?
 喉乾いちゃってさ」

無防備な体勢のまま厚かましくもそんなお願いごとをする。
近くに洗い場があるかもしれない。ないかもしれない。

ロレンス > 起伏の少ない体を隠すことない少女に、内心すこしばかり驚いていたが、顔には出さないようにして微笑むばかり。
蝶の羽に小さな体、これが妖精というものだろうかと思いながらも、少々不躾ながらじろじろと見てしまう。

「ありがとう、おや…のぼせたかな?」

くてりと横たわる姿を見やりながら掛け湯の後、湯船に踏み込み、ゆっくりと身を沈める。
それから続いたおねだりに、小さく頷くとパチンと指を鳴らす。
すると宙に浮かび上がる柘榴色の魔法陣へと手を伸ばす。
そこから引っ張りだされたのは、表面に結露を起こした瓶。
中には冷えた水が詰まっており、コルクの栓を外すと少女の傍に下ろす。

「ちょうどいいグラスがあればよかったんだが…」

彼女より大きめの瓶の水を飲むとすれば、それこそ中に顔を突っ込んだりしないとならないだろう。
申し訳無さそうに苦笑いを浮かべて、ご要望が満たせたかなと彼女を見やった。