2015/11/09 のログ
ルーキフェル(光) > 「必要な資料はこちらで勝手に集めさせていただきますわ」
集めるのは、主に従者です。

「その通りも何も、そんな事は既に知っていますわよ。
 この前も、わたくしが資料を探している時にお会いしたではありませんの」
資料室の管理人と化しているツバキの正体を怪しんでいる様子すらない。
ルーキフェルは、ただここに来た目的である資料集めを遂行しているのみだ。
最も、ルーキフェルもまた魔族側で城に入り浸っている身なので、現状で言えばある意味ツバキの同業者と言えなくもない。

そんな時、従者の一人が今まさに気絶した本物の管理人が隠されている書架に向かっていた。
これだけ従者がいれば、何かの弾みで見つかる可能性はあるかもしれない。

ツバキ > 「そうですか…分かりました、それでは貴方様方にお任せすると致しましょう」

笑顔を浮かべたまま、もう1度頭を下げる。
次の言葉に、首を傾げてなにやら思い出すかのような仕草を見せる。

「それは失礼致しました。なにぶん、私も歳でして…
そろそろ新しい方との交代をする時期なのやもしれませんな?」

おっといけない、そう考えれば適当に理由をでっち上げ誤魔化す。
ほっほっほっ、と笑いながら対応をしているも、ちらりと視線の端に本物の管理人の側に近付く従者の姿が映る。
だが、その従者が隠されている書架の裏へと入る事があれば…そこに見えるのは本物の管理人ではなく、薄暗い影だけになる。
どこへ行ったのか…人の目には映らぬ幻影、何も無いように見せるそれが従者の視覚からその姿を奪うのだ。

と、さっきから妙に感じる違和感、それがはっきりとしてくる。
目の前の女性だ…どうやらこの相手、人外だ。
とはいえ、この国には人外である存在は普通に居るらしい。
気付きはすれど、相手が同じ立場である者だと、そこまでには考えが到らなかった。

ルーキフェル(光) > 従者は、書架の影に隠れている本物の管理人に気付く事はなく通り過ぎる。
違和感すらも抱いていない様子。
そしてルーキフェルの言われた通り、資料探しの続きに勤しむのだった。

「まさか……。
 この高貴で美しい、パーフェクトビューティーなわたくしを忘れていましたの!?
 老いぼれの愚民風情が、このわたくしを忘れていたなど、万死に値しますわよ!」
物凄く自惚れた方向でキレ出すルーキフェル。
ツバキの正体には気付いていないが、鞘に収めたレイピアの柄に手を伸ばす。

「何か言う事はありませんの?」
そして、鋭い視線でツバキを睨んだ。

ツバキ > 視線の端に映る従者、書架の裏の異変には気付かぬままに通り過ぎれば、そちらからの注意は離す。
さて、問題は…

「も、申し訳御座いません、ルーキフェル様…!
どうか御慈悲を…もう二度と貴女様を忘れる事は致しませんから…」

目の前で怒りの表情を露にし、武器に手をかける女性。
慌てた様子で深々と頭を下げ、怯えた様子を相手に見せる。
…なんだか面倒臭い女の人だなぁ…内心はこんなものであるのだが。

睨み付け、今にも斬り付けん如きの勢いに、ただ頭を下げて震え続ける男性…を演じる。
申し訳御座いません、と何度も震える声で呟いてみる。

探し物はいいのだけど、あれだけ人数が居てなんでさっさと見付けられないのか。
私はこの女の人の相手をどれだけしてればいいのか。
そう気の長い方でもない少女だ、頭の中では罵詈雑言が渦巻いていた。

ルーキフェル(光) > ツバキは深々と謝罪しているが、アホな程傲慢であるルーキフェルは、自分の尊厳を傷つけられた事を良しとしない。
「王族、それもカルネテル王家のこのルーキフェル様に無礼を働いて、許されると思っていますの?
 おーほっほっほっほ!
 罪状は“王族を汚した”という事で構わないですわね」
ルーキフェルは、そう無慈悲に告げる。

そうは言っても、この場で斬りつけるのはさすがにまずい。
ルーキフェルは一度冷静になり、柄から手を離す。
「あなた達、このボケた老人を捕えてしまいなさい。
 わたくしに無礼を働いた者がどうなるか、思い知らせてあげますわ」
ルーキフェルの命令により、五人の従者がツバキを捕えようとしていた。
全員メイドであり、鞘を腰にかけていた。

まさしく横暴であり、暴君の所業だ。

ツバキ > 王族?…ここは確か人間が支配している国のはず、なのにこの女性は人外であるのに王族を名乗った。
なるほど、もしかしたらここにある歴史は表向き、裏に何か隠されているのかもしれない、そう感じた。
もちろん、単に血筋に人外が居たのかもしれないが、これは勘だ。
面白い…カルネテル王家、確かに記憶した。

「真に申し訳御座いません…貴女様に行った無礼、そして…今もなお、貴女に無礼を行う事をお許し下さい…」

捕らえ様と集まってくる従者達、そんな中、男性は恐怖に怯えたかのように蹲り…そう呟く。

「だって、貴女達は私を捕らえられないんだもの」

と、不意にその声が少女のものに変わる。
ぼんっ!とその姿がいきなり爆発音と共に煙を発し、その煙は一気に部屋中を視界の全く利かない空間へと変化させた。

ルーキフェル(光) > 突然、管理人の声が少女のものに変わった。
どういう事だ?
そして、管理人の身体から突然、煙を発する。
煙は一気に、部屋に充満した。
『きゃああああっ!?』
メイド達は慌てふためく。
今は、考えている場合ではないだろう。

魔族の自分ではなく、王族の自分としてやるべき事をやろう。

「妙な術を使いますわね……」
アホな程傲慢なだけで、決して頭が悪いわけではないルーキフェルは、突然の事態にも冷静だった。
咄嗟の判断で、素早く入り口に移動して塞ぐ。
視界だけで捉えるのではない……。相手の“精神”や“心”がある場所を感知していればいい。
幸い、この資料を厳重に保管してあるこの部屋には窓といったものがない。
入口さえ塞いでいれば、後は壁を壊すしか脱出方法はない。

「斥力フィールド……展開!」
入口に、斥力フィールドが展開される。
つまり入口から出ようとしたものは、斥力により弾きだされてしまうという事だ。

この部屋にある“精神”や“心”の数は今、従者と自分、そして管理人。
本来はこれだけのはず。
だがルーキフェルは、いるはずのない“最後の一人”を今まさに感知しようとしていた。
本物の管理人だ。

ツバキ > 部屋を覆う煙、ここは密室だ、当分は視界なんて利かないだろう。
そんな中であるにも関わらず、1人、また1人…床へと倒れこむ音が聞こえる。
時間にしてほんの1・2秒だ、寄ってきていた5つの影は地面に転がっていた。
転がっているのはメイド達、各々単に気を失っているだけだ。
殺さなかったのか?と問われれば、可愛かったから、と少女は答える事だろう。

「ルーキフェル様?そんな、言葉で何か分かるような術やらなにかの名前を言っちゃうのは控えるべきよ?」

くすくすっと馬鹿にするかのような笑い声と言葉。
同時に、入り口であった扉から少し横の壁にこん、こつんっと何かがいくつか当たって落ちる。
ぼぼんっ!と再び爆発音、一つではないのか続けて響くのと…今度の爆発音には辺りを揺らす衝撃も加わっていた。
ゆらゆらと辺りを漂っていた煙が音のした方向に吸い込まれるように移動を始める…つまり、そこに空気が流れ込んでいる、穴が開けられたのだ。

「あははっ、それじゃあまた会いましょうね?」

流れて行く煙の方向から少女の声が再び聞こえる。
煙に紛れ、その姿を見せないまま探ろうとした気配は消えていくのであった。

ちなみに、本物の管理人は書架の裏に縛られ転がっているのが探せばすぐ見つけ出せるだろう。

ルーキフェル(光) > なるほど。あれは管理人本人ではなく、おそらく何かしらのスパイ。
少女の声に変わったのは、そのためなのだろう。
自分の立場からして魔族のスパイであるならば見逃すのが妥当だが、そうではないらしい。
ならば、王族として捕えるべきという事にもなるが……。

入口を塞いだだけでは、いくらでも逃げ道はある。
つまり、入口以外の壁から、偽管理人は逃げ出したのだ。
「ええ。またお会いしましょう」
斥力フィールドは静かに解除され、ルーキフェルは息を漏らす。
結局のところ、ツバキの姿は見る事ができなかった。

ルーキフェルは王城ではなくて魔王軍の味方なので、他国のスパイを逃してもまあ構わない。
深追いはせず、後始末の方を優先させる。
「ここで起きた事の報告は、別にしなくても構いませんわね」
管理人や従者達の手当てをしたり、あと壁の修理は面倒だ……。

ご案内:「王城の一角」からルーキフェル(光)さんが去りました。
ご案内:「王城の一角」からツバキさんが去りました。