2015/11/03 のログ
ご案内:「ローパーの巣」からローパーさんが去りました。
ご案内:「ローパーの巣」からリーシャさんが去りました。
ご案内:「王都の港」にクロウさんが現れました。
■クロウ > こんなヤクザな船でも、王都の港に停泊する方法はある。
海賊旗を降ろして、役人に金を握らせる。必要なら、女だの酒だのを回せばいい。
非常にシンプルなものである。
まぁ、それで調子に乗るのであれば、暫くは王都に補給の船も軍船もやって来ないだけの事。
海賊との付き合い方を知らずに、港で役人などできよう筈もない。
そんなこんなで、『獣王の誘い号』が王都付近の港に着工したのは夕方になる頃であった。
主だった荷のやり取りや、役人とのアレコレを済ませてしまうと、もう辺りは暗い。
乗組員たちは、先ほどそろって歓楽街に繰り出すべく王都中央へと向かった。
「さて……。」
やはり港湾都市に比べると、港の活気は弱い。
夜になれば、人通りもあまり多いとは言えない。
そんな中を、男はゆったりと歩いていた。
今回はあまり長期間の停船予定ではない。すぐにまた、海に出る事になる。
それまでのわずかな時間。さて陸で何をするか、と。
男が脚を向ける方向も、ひとまず王都だ。
■クロウ > 神聖都市や港湾都市からの定期便も、当然ながらこの時間にはもうない。
商船や軍艦の類とて同じこと。
静かに、波の音だけが響く港。
ところどころに灯りの灯る建物があるのは、管理施設や宿、酒場などだろう。何にしても、港湾都市程の賑わいはない。
まぁ、王都まで行ってしまえば、それは関係ないのだけれども。
ただ、以前停泊した際よりも停泊している軍艦の数が多いようにも思えた。
役人との交渉の際にも、少し常より手間取っている。
先日の港の襲撃や、海上であった何やらの影響なのかも知れない。
そんな港の様子を視界にとらえつつ、しかし男は悠々と歩く。
「……たまには狩りに出てもいいかも知れないな。」
ふと、思いついたように嘯く。灯りの灯る王都の方角ではなく、平原自然地帯の方角である。
もう長らく、平原や森、河川での狩りに興じていない。
表層に存在するヒトとしての興味が疼くのを感じた。
たまには、魚ではなく鹿だの猪だのの肉を持ち帰れば、乗組員たちも喜ぶ事だろう。
■クロウ > 「アザラシも悪くはないものだがな。」
嘯く。当然、このアザラシは一般的にアザラシと呼ばれる動物単体を指すのではなく、サメだのシャチだのクジラだのを指している。
『獣王の誘い号』は海賊船であり、その船長たる男は当然海賊なのだ。
何のかんのと言って、普段の男は正真正銘海賊として生きている。
それは別段、演じているというのでもなく、そういうものなのだ。
ただそれが、あくまでこの男、……この存在の本質とは異なるだけで。
歩く。
月光は弱い夜。光源は少ない。
うす曇りであるからか、星の光すらも殆どない夜。
影もできない夜である。
男は歩く。
王都に向けて。
灯りもない道を、灯りを灯す事もなく。
ゆらゆらと、影が揺れる。
影を作る光など、殆どないに等しいのに。
男の周囲りを影が揺れる。
ゆらゆら、ゆらゆら。
とてもヒトガタとは言えない影。
ゆらゆら、ゆらゆら。
男は歩く。
歩いて行く。
真っ黒な影が、王都へと脚を踏み入れた。
―――ひょうひょうと。どこか森の方で、虎鶫のなく声が聞こえた。
ご案内:「王都の港」からクロウさんが去りました。