2021/09/18 のログ
ご案内:「魔族の国 地下牢」にグァイ・シァさんが現れました。
■グァイ・シァ > じゃら、と静寂に音が響いて、石畳に倒れ伏していた女が瞼を開ける。
女は伏した姿のまま、翠の瞳の視線だけで辺りを伺う。
石畳と同じく石の壁、高い天井、鉄格子、頼りない松明、それの爆ぜる音と、燃える香り。
その間に他の音もない。
女は忌々しげな表情を作ると、ゆっくりと薄汚れた道着を纏った身を起こす。同時にじゃらり、また鳴ったほうへ視線をやれば、両手足は壁から繋げられた鎖の鉄輪を嵌められていた。
「―――――…」
それを確認してまた忌々しげに顔を顰める。
どうやらタナール砦での戦闘中、捕虜か何かとして囚われ、運ばれたらしい。本性は悪魔たる女はヒト側の傭兵と混じっていたため、慌て者の魔族が取り違えたか何かか。
(――――気付いたなら捨て置けば良いものを…)
ヒトでなし同士、女がヒトでないことは直ぐに解った筈だ。
現に他に囚われた筈であろうヒトの気配は辺りに無い。果たして他の場所に居るのか、既に何かに遣われているのか。
それにしても女が気に入らないのは、この地下牢の妙な小奇麗さだ。
黴臭くも、血の香りもしない。新築の地下牢だとでもいうのか、兎に角面白味の欠片もない。
(…時間が掛るな)
また鎖の音を響かせ、億劫そうに牢の中で壁に背を預ける。
戦闘で消耗し、復活のために力を使ったものかその回復が追い付いていない。死の匂いも血の香りも薄く、このままこの場所に留まる事になれば力を取り戻すには相当の時間が必要そうだ。
(―――獲物が近くに来ればいいが)
捕らえた慌て者の魔族か、その手下か。
現れたなら、葬る隙を伺うだけだ。
■グァイ・シァ > パチン、と時折松明が弾ける。
女はその音にも顔を上げることなく、壁に背を預けて項垂れている。
果たしてそれをしおらしい様子と見た不幸な者か、もしくは全てを弁えた者か
何れかの来訪があったのはいつの事か、その結末は如何なものであったか
何れにせよ地下深く、埋もれる出来事――――
ご案内:「魔族の国 地下牢」からグァイ・シァさんが去りました。