2021/04/13 のログ
ご案内:「魔族の国」にソーニャさんが現れました。
ソーニャ > ただ一夜にして何もかもが業火に焼かれ、灰燼に帰した其の地に、
かつて其処で生まれ、其処を故郷としていた娘の姿が在った。

ひとり、佇んでいる辺りは確か、父の居城の入り口付近だと思ったが、
文字通り、何もかもが焼き尽くされた後では、記憶に照らしても定かではない。
一歩、踏み出した足が何か、白茶けた塊を砕け散らせたようだが―――――

「何かしら……あの女の骨、だったら、良い気味だわね」

うつ向いて足許の残骸を眺め呟く声音に感情の色は無く、
眼差しも、表情も、良くも悪くもフラットなツクリモノめいて。
己が何の為に此処を訪れたのか、其れすら、既に見失いかけていた。
統治すべき者の不在は、即ち、此処が己にとって、もう、
身分や生命を保障される、安寧の地ではなくなった、ということだが。
其れすらも―――――来るならば来い、と、其の程度の感覚で。
迎え撃つ心算も、逃げ出す気概も―――――今は、まるで無かった。

ソーニャ > ふ、―――――――ぅ、と、細い肩を揺らす溜息が、僅かに白い。


首輪を着けなくなった白い喉許へ、伸ばした指先で軽く触れて。
真っ直ぐに顔を上げ、そっと瞼を伏せて、暫し。


「………行こ」


呟き落として踵を返す、其の小さな足の向かう先は。
誰も知らず、娘自身も決めておらず。
ただ、ひとつわかるのは。


もう、此処には二度と、来ないであろう、ということだけだった。

ご案内:「魔族の国」からソーニャさんが去りました。