2020/11/09 のログ
ご案内:「魔族の国」にソーニャさんが現れました。
■ソーニャ > ふぅわり、ふわり、辛うじて使役可能な身軽さでもって、密かに訪れた森の奥。
黒々と聳え立つ城館を前に、ほんの少し、気圧されたように立ち竦むも、
次の瞬間には眦を吊り上げ、唇を引き結び、地を蹴って跳躍を果たしていた。
父の支配する領域ではない、けれども同じ魔族の治める地であれば、
たとえば王都にある時よりも、四肢の動きはずっと軽やかに。
恐らくは二階部分か、張り出した無人のテラスへ降り立つと、
閉ざされたガラス窓越しに、中の様子を窺い見る。
―――――父がすすめる婚約者とやらは、聞けば、この城の主だという。
父親本人から聞いた訳ではない、使用人たちの噂であるから、
真偽のほどは不明だけれど―――もしも、本当ならば。
こっそり顔を拝んでやろう、あるいは、先制パンチを食らわせてやろう。
そんな好戦的な気分を糧に、少女は無謀な一歩を踏み出そうとしていた。
■ソーニャ > 中が暗い所為か、何らかの術でも施されているのか。
外からは内部を窺い見ること叶わず、思案すること暫し。
これ以上踏み込めば、見つかった時には不法侵入の誹りは免れないけれど、
ここまで来て何もせず引き返すのも口惜しい。
「……今更、躊躇ってどうするのよ、馬鹿」
己を叱咤する呟きと共に、えい、とばかり窓に手を掛けた。
微かな軋み音が上がり、思わず肩を竦ませたものの――――
施錠の類はされていなかったらしく、両開きの窓は容易く動き、
小娘の身体ひとつぐらい、するりと潜り込める程度の隙間が出来る。
窓枠を跨ぎ越し、ふわ、と降り立った先は、誰かの居室か。
ぼんやりと寝台のようなものや、ライティングデスクのような影が見える、も――――
「………暗過ぎ、…これじゃ、何がなんだか……」
分からないじゃないの、と、身勝手な不満が口をついた。
■ソーニャ > 苛立ち紛れに何某か、嫌がらせのひとつもしてやろうかと思ったが、
如何せん、この部屋は暗過ぎて―――――
ひんやりと、背筋を伝うものを感じる。
それが本能の発した警鐘であるのなら、恐らく従うのが賢い筈。
果たして、己が選ぶのは―――――。
ご案内:「魔族の国」からソーニャさんが去りました。