2020/11/02 のログ
ご案内:「魔族の国」にソーニャさんが現れました。
■ソーニャ > ふざけるな、と叫んだ勢いの侭、父の居城を飛び出したのは、恐らく半時ほど前のこと。
父の治める領地を離れれば、己など人間の小娘と変わらぬ小さきモノだと知りながら、
どうしても今は戻る気になれず、煤けたように黒々とした立ち枯れの木々の間を、
只管に歩き続けていた。
紅潮した頬にも、深く寄せた眉根にも、未だ強い憤りの名残がある。
だって許せないではないか、こともあろうに父は、この己に―――
「嫁に行け、だなんて、冗談じゃないわ……!
あんな阿婆擦れの胎の中の子が、そんなに大事なの、
……お城も領地も、あんな女の子供になんか渡さないわ!」
―――――まさか、父は己を、厄介払いしようとしているのか。
そうはいくものか、と奥歯をきりりと鳴らしながら、苛立ちも露わな金色の一対をぎゅっと瞑る。
ドレスの裾を握り締めた両手の指は、力を籠め過ぎて、とうに色を失いつつあった。