2020/09/28 のログ
フルーア > 「ん?――……ふふは、そうだね?ごめんね?
といっても、大した事は名乗れないかも。…フルーア。これで良い?」

(ヒトデナシの代表格のように言われていた魔族から、人の礼儀について指摘されるのだから。よもや、なのかもしれないが。
少女にとっては、言われてみれば確かに、という按配。
ぱちくりと瞬きこそしたものの。素直に名乗る事とした。
…もっとも、当人も言う通り。名乗りは本当に、それだけ。立場を示す職種やら、身分に繋がる家の名やら。そんな物は一切無く。

そのまま。伸ばされた掌が、髪を頭を撫で始めれば。
何処か安堵するかのような、柔らかな吐息を零し…その事実に、息を吐いた当人が首を傾げたものの)

「で。…そうなんだ?魔族の国っていうから。遭ってみたかったんだけど――

…ぁ。あぁ、……あぁ、それはつまり――」

(彼女の何処に。安堵のような、郷愁のような情を抱いたか。直ぐにそれを理解する事になった。

――瞳が、似ていた。
――――似たモノが近くに居た。

まるで応えるかのように。少女の体が形作る…足元の影。髪の陰、直接視界に入らない背面等。其処彼処から、小さな音色達が響く筈。
或いはそれは――深淵の水底を這いずるナニカが、泡を吐く音色。
人跡未踏の樹海で、無数の甲殻宿すモノ達が、押し合いへし合い軋む音色。
次元の隙間で膿爛れたケダモノが、餓えと甘えを混ぜこぜに呻く音色――など。

だから少女は恐れる事なく。矢張り、ナニカと呼ぶべきなのだろう目の前の存在へと微笑むのだ)

「アムネジア。…アムネジア。よろしくね?
…君みたいな誰かに遭えたなら。それはそれで…うん。来て良かった」

アムネジア > 「名前は大切だよ。フルーア。
 だって、わからなければ呼ぶときに不便だから、ね。」

ただの呼び名、それで構わない。
アムネジアとフルーア。互いが互いであると認識できればそれでいい。
けれど、それはとてもとても重要なことだ。
緩やかに穏やかに指先は銀の髪の毛を梳る。
名前がわからなければ、そうしていてもどこか面白くないから。
―――そして、生まれ出る気配、名前のない怪物達。

“向こう側”か“こちら側”か。
美しく、悍ましい音色を奏でるナニカ。その群れ。
奏でる音楽を愛でるように、一度目を閉じて、開く。
そうすれば、映るのは微笑む白い貌。
髪の毛を撫でる手指はゆっくりと――滑り落ちれば、そのままその頬に触れる。
生気を感じさせない程に白い白い頬を、透けるような白い指先が愛でる。

「ああ、よろしく。可愛いフルーア。」

深い深い場所から、響いてくるように感じるか。
その微笑が、少女の名前を奏でて、紡ぎ出して、そっと、近付いていく。
唇同士が触れるか、触れないかの微細な距離にまで近付いて。

「――君は、とても美味しそうだね」

そう、まろやかに囁き声を紡ぎ出した。

フルーア > 「まあ確かに――言葉で解り合いたいのなら。…ニンゲンみたいにそうやりたいなら。きっと大切。だね…?」

(自覚は薄いが少女は一応ニンゲンで。
彼女は…違うモノではあるのだが、ニンゲンを形作っている。
だとすれば、郷に入れば何とやらという奴だろうか。解り易い相互理解の手段は。矢張り言語なのだろう。

但し。同じ程に、互いを理解し得る手段。それが並行して行われていた。
すなわち、接触。触れて、感じて。存在を確かめるかのような手付き。
気が付けば少女の方からも。髪の合間を梳き落ちていく彼女の手。その甲へと触れてみたり。触れる事を望みつつ。

…さてどうやら。ニンゲンよりもずっと優秀な知覚を持ったモノ達は。
存在する次元や世界こそ違えど、此方へ依って現れる為のルールは破ろうとしない…らしく。
少女の命令や意志がない以上。挨拶には挨拶を返した、だけ。有る意味余程礼儀正しく。

やがて重なり合ったままの手は。彼女の掌を、少女の体温低めな頬へまで滑らせて。
唇に程近い位置で感じる、触れた掌からの体温に。
等しく触れる間際まで近付いた唇からの。吐息と、言葉。
きゅ、と餓えから重ねた手に力を籠め、頬との合間に挟み込んで、彼女の手を捕らえつつ。
何処か困ったように瞳を細め、唇を緩めて微笑みつつも。見返してみせる、少女の瞳は…)

「……ねぇアムネジア。それは――お誘い?
僕に、もっとたくさん…君の事を教えてくれる、そういうつもりだと思っていいの…?」

(未知への期待。何よりもそれを湛えて、凝々と煌めいていた)

アムネジア > 仮令、それ以上の知覚で触れ合うことができるとしても。
言葉など本来不要であっても、それでも名を教え合い言葉を交わすことを好むのだ。
だって、その方がずっと楽しいから。

「そうだとも。フルーア。」

だから、彼女の言葉を短く肯定する。
言葉ではもどかしいというのならば、こうして手で触れればいい。
少女の中に潜む異形や、彼女が従える百鬼夜行を用いれば
もっと深く、もっと淫らに、もっともっと解り合うことができるかも知れないけれど。
髪の毛に触れるもどかしい感触や、その手の甲に触れる感触。
そういう触れ合いを感じさせていく。少し低めの少女の体温に馴染む少し高めの彼女の熱。
頬を撫でる細い指先が、きめ細やかな白を愛でていく。
唇同士が近付けば、その体温は吐息に混じって蕩け合う程になって――。

「どうだろうね?フルーア。可愛いフルーア。
 ただ、犯されて弄ばれて、喰われるだけかも知れないね――。」

煌めく金色に、蒼色が返す言葉。
「は――」と仄かな笑みを唇に乗せる。
例えば、抵抗する少女をその内側の異形もろとも蹂躙するのも楽しいだろう。
身を預けてくる少女と蕩け合うまで情を交わすのも愉しいかも知れない。
だから、いずれになるとも答えを向けない侭、問いに答えを返さぬ侭――唇が近付いて、触れようとして。

フルーア > (手段は多ければ多い程良いのかもしれない。
多角的な判断、複合された計算、より精密な理解へと繋げる為には。
…もっとも、そんなに小難しい考え方をする必要はないだろう。ニンゲンらしいなら当たり前。
そう思っておく方が。ずっと自分自身にとって明確だし、何より…愉しい。その筈だ)

「そっちもそっちで。…らしいと、思うよ?
相手を知りたい。…そこから、相手が欲しい、という考えに繋がっていくのは。良く有るんだって。
…ねぇ、アムネジア。僕も確かに。君の事を知りたいな――――」

(彼女の仕草を止めない代わりに。こちらもこちらで、勝手に動く。
するすると触れた手の甲を撫で。確かに彼女が存在する、ナニモノか達の依り代などではない、それを確認し。
同時に、人のそれに近しい体温の温もりや。心地の良い柔らかささや滑らかさに。
いついつまでも触れていたい、そんな風にすら思えてしまえそうで。
少しだけ傾けられていく頭は。頬の、首から上の重みを。彼女の掌へと預けるように)

「……あ、は?それはそれで、気持ち良ければ良いと思うよ?
…君が僕に…僕のようなモノに、何を望むのか。興味も有るし――」

(ぞくりとした。犯される、喰われる、そういった物言いに。
だが背筋を震わせた感覚の源は。少女にとっては、これまた…人で有る無しに関係の無い、快楽への予感。
バケモノ。マモノ。それ等とはまた違うモノ。…彼等が何を与えてくれる、何を教えてくれるのか。
ようやく世界に目を向け始めた少女にとっては。何もかもが未知で、新鮮なのだから――)

「――だからね。アムネジア……ねぇ、アムネジア…
考え過ぎる事はないよ、思う通り――時には心の赴く侭に。…愉しい事、して?」

(最後の距離は、少女の方から詰められた。
顎を上げ、寄せられる唇へと、こちらから口付けて――
離れるのを許さない。彼女の手を捕らえ続けて居るのと、反対の掌が。彼女の頬へと伸ばされて)

アムネジア > 掌と、頬に挟まれる彼女の手指の感触。
少女に感じられるそれは、限りなく純度を高めて人に似せた様な感触。
流れる血潮も、細胞のひとつひとつまで丹念にデザインされたような触感。
それが、白い少女を愛でていく。触れる侭に、触れられる侭に。

「その通りだよ。フルーア。
 言葉を交わして、身体を交わして、知り合っていく。
 ――そういうのが、面白いだろう。」

その結果までは口にしない。
知った結果、憎むことも憎まれることもある。
あるいは飽きて、喰われてしまうこともあるだろう――けれど。
それでも求めてしまうのは、どちらの仕草だっただろうか。

頬に触れる手を、近付く唇を受け容れる。
そして、空いた手が少女の腰に触れ、引き寄せる。
触れ合う唇を食むように、啄むように女の唇が開けば、少女の唇の袷を舌先がなぞる。

「んっ――ぅん――ああ、そうしてあげる。」

その狭間で零れる言葉と共に、夜が、深まった気配がするだろう。
どちらの何が作用したものか。口付け交わし合う少女と女を闇が、包んで――。

フルーア > 「…割と、何でも良いと思うよ?何か一つに区切っちゃうなんて。勿体ないし物足りない。
君の言う通り、言葉でも解り合えるし――…僕は、体でも。君の事を知れると思うし、ね?」

(それもまた決して。交わり合う、犯したり犯されたり――という事に限った話ではない。
実際にこうやって、掌で感じている物だけですら。精巧で精密で、彼女がどれだけヒトめいているかを。
…間違い無く生きて此処に存在しているという事を、知覚している。
撫でて。撫でられて。それで満足出来無いなら。それ以上を求めるだけだ。

だから自然と。唇は、唇によって応えられ。一つに融けて)

「ふ、っぁ。…――っ…ん……」

(腰を抱き寄せられるのと合わせ。頬を求めた掌は、彼女の項から後頭部へと滑り。
そう易々とは離してやらないと言わんばかり。頭を引き付け、口付けを長引かせた。
甘く啄むだけでは終わらせず、唇を食み合い、舌先でその唇を擽り…そこまでしてやっと。
次第に熱っぽさを帯びつつある吐息と共に。ようやくそれを離したのなら)

「…どうなるか。……ふふ、愉しみだね?
――けれど、良いのか悪いのかなんて。実際に知ってみないと、分からないんだから――」

(だから。求める事を止めないのだ。ヒトになって生きる事を求める少女は。
抱き寄せられた体を、ひたりと貼り付くかのように、彼女の胸元へと預けきれば。
…これが、彼女が力を使う際の形なのか。黒々とした闇の中へと飲み込まれていく。

後には何も残らない。
いや、ナニカが存在していた事だけを現すように。
極々仄かな獣の臭いが、暫くは燻っていたのかもしれず――)

ご案内:「魔族の国」からフルーアさんが去りました。
ご案内:「魔族の国」からアムネジアさんが去りました。