2019/09/28 のログ
ご案内:「魔族の国 境の山」にジナイアさんが現れました。
ジナイア > 『魔族の国』と呼ばれる地域を他と隔てている険しい山脈。
ヒトの住まう地から見上げれば仄暗い灰色の岸壁が続くばかりで、目を凝らしても頼りない茨の繁みが時折見付けられるばかり。生命が息づく気配のない無味な光景は、『向こう』と『こちら』を分かつに相応しい佇まいを以て、見渡す限り横たわっている。
今、常に灰色の雲に隠れるその山頂に、人影がひとつ。
下界は秋晴れの光景だというのに、ほんの数10歩先さえ白く濁る霧に沈むそこは風もなく、ただ冬にも近い冷たい空気を漂わせている。

(――――面妖な…)

佇む人影、赤銅色の肌に長い黒髪の女は、その翠の双眸を煩わしげに細める。
これだけの濃い霧だというのに、先から身体を濡らすような気配が全くない。足元は山を登って行く時と変わらず無味な硬い岩の筈だが、靴裏から感じるそこも湿っているような感触はない。
最近できた知人に、ここ辺りにあるという特別な樹木に、印を結んできて欲しいと頼まれたのだが……その様な樹の影も未だ見付けられていない。

「物好きが過ぎたかな……」

呟く言葉は、しかし半分は面白がるような調子を孕む。
前に凝らしていた視線を足元に落とすと、うっかり崖に踏み出したりしない様、ざり、と岩を探る様に、慎重に爪先を踏み出して進んで行った。

ジナイア > 目的の樹は、果たして意外と近くにあったりするのか……
熟れた唇から零れる息が、不可思議な白い霧を小さく渦巻かせる。
翠の双眸を伏せ気味に足元に落とし、そうして白く濁る風景をそろりと泳ぎながら、ある筈の気配を探って行く

辺りは地鳴りのような低く響く音が満ち、時折、山肌の下の方から小さな崩落音が届く。
その合間、靴底が岩を噛む音はやけに響いて女の耳に届けられる。

特に大きな義理は無い。
躍起になって探索するつもりはないが…このまま、草臥れるまでは
何処かにある『端』までは辿り着いてみようと。

白色の風景を漂うようにして進む女の影は、程なくその白に飲み込まれて融け入る…

ご案内:「魔族の国 境の山」からジナイアさんが去りました。