2019/04/27 のログ
ご案内:「魔族の国 麓の荒野」にジナイアさんが現れました。
■ジナイア > 人里では花が咲き新緑溢れる春爛漫の季節。
寒風が吹きすさぶでもなく淀んだ空気に、それでも等しく漆黒の空に星が瞬く夜。
魔族との国境に聳える山脈では未だその温みも届き切らないのか、岩肌
にしがみつくように、それでも逞しく育った木々の枝に未だ新芽は数えるほどしか見られない。
その山肌の麓、ヒトならざる者の住処の側に広がる荒野。
耳の奥に響くような微かな地鳴りが聞こえる空間に、ざり、と靴底で砂を噛む音をさせて、山とは逆方向――より、ヒトならざる領域へと、慎重に進む灰色の人影が一つ。
「―――……ここ位が、限界じゃないか……」
堺となる山脈の、その麓が未だ容易に視認できる場所にぽつんと一株ある寂しい灌木のそばで、人影は足を止める。
乾いた大地に如何にも頼りなく、それでも強い香りを放つ白い花を付けたそれにすこし身を屈めれば、深く被ったフードの奥から熟れた唇が笑みこぼれた。
「…此処にも、等しく春は来るものだな………」
■ジナイア > 溜息のようなものを漏らしながら、屈めた身を起こす。
灰色のフードを目深に被った人物――赤銅色の肌に翠の肌を持った女は、荒野の向こう、地と夜空が混じり合う場所へ視線を投げると、しばし目を眇める様にしてから、その長い指に嵌めた指輪のひとつを撫でる。
「―――向こう、だと言っていたな?」
独り言のように、呟きを指輪へ――指輪の魔神へと、囁きかける。
そうして、ごく僅か、撫でる指先に何かを捉えた様子の女は、また満足げな笑みをフードの奥から覗かせた。
「―――…いいぞ、行ってこい。
但し、夜明けには戻るようにな……」
撫でる指先を離すと、指輪を嵌めた指を其方、宙へ掲げた。
――――何かしら、夜闇にも解る陽炎のようなものが女の指輪からふわりと揺らぎ出て…躊躇うように天へ登り―――霧散した。
その揺らぎが消えた夜空を見届けると、女は一種満足げに微笑って、山脈の方へと踵を返す。
■ジナイア > 麓へ辿り着き、夜闇に聳える山脈の天を見上げる―――
「さて……成るものかな?」
先に撫でていた指輪とは別のものへ指を密かに這わせ、くすりと笑みこぼした。
それからゆら、と闇に沈む山中へ足を踏み入れ――
やがて、重たい遠くの地響きだけが残る………
ご案内:「魔族の国 麓の荒野」からジナイアさんが去りました。