2019/03/26 のログ
ご案内:「魔族の国」にプレデランターさんが現れました。
■プレデランター > 魔族の国の郊外。都を離れてすぐの荒れた荒野。
此処にいつの間にか、普段は見かけない蕾がひょこりと生えていた。
花も咲かない荒れた野に、たった一輪。硬い岩と乾いた土だけのそんな殺風景な場所に似つかわしくない緑がひっそりと。
まるで、周囲の命を吸い上げて咲かんとするかのように。
もし、この捕食植物の習性と性格を知るならば、到底近づこうとは思わない不自然な緑。
この蠢く緑怪たる魔物にとって縄張りとは自身が根を下ろした場所に他ならない。
そしてその根を下ろす場所に関しては、餌を求めて定期的に移動をするこの動的植物にとって何も森や木々に囲まれている必要はない。大地と餌があれば何処にでも根付くのだ。
獲物を待ち、喰らい、或いは犯す対象は人間であろうと、獣であろうと、エルフであろうと、竜であろうと、そしてこの国を動かす魔族であろうと種族は問わない。
中には気づいて討伐を試みた魔族もいたが、此処に何事もなかったかのように獲物を待っている時点で結果は語るまでもない。
一度動き出せばその凶暴性と生物として高い能力故に養分に選ばれた命は等しく枯果て、苗床に選ばれた者は等しく孕ませられ繁殖の道具に利用されるばかりなのだ。
人間と魔族の抗争など一切関与しない。どちら側にとっても害悪でしかない植物は今宵もその悍ましい本性を隠して、ただただ静かに蕾に擬態した触手と目を風に揺らして。
■プレデランター > 弱肉強食。弱者が庇護され安穏と過ごすことが難しい世の中である。
何せ王族であろうとふとした拍子にその身を貶められ、穢されるような世界だ。
それは自然界であろうとも同じ。
魔族の国の人間牧場へと納品に来たのであろう、図体の大きい牛にも大型犬にも似た巨大な獣に、何処からか調達してきた人間の雌を載せた荷車を引かせている奴隷商がこの荒野に通りがかってきた。
いつも通っている道。
しかし今日は、いつもと違う者が潜んでいた。
生物を探知し、通りがかった直後に蕾は花ではなく目を見開き、硬い地面をものともせず掘り進んだ根元たる岩に擬態していた本体も覚醒。
地面を割り拓いて目玉付触手を持ち上げ、本体部分から無数の触手を鞭の如く鋭く空気を切って放てば異常に気付いた獣とまだ気づいていない奴隷商のうち、奴隷商の首にしゅるりと巻き付けば栄養が少なそうな痩せぎすな肉は後回しにし、一先ず保存食用に轡から万力の如く締め上げ吊り落としては頭頂部から真っ逆さまに硬い地面に衝突させて。
何度も、殻を割って実を喰らうように。
すぐに痙攣していた体が弛緩し、内容物をぶちまけて動かなくなってしまえば今度は逃げようと暴れる獣の抵抗をものともせず何本もの触手が巨獣に纏わりつけばそのまま引き摺り寄せ、本体の大口をがぱりと開き丸呑み。
すぐには死なない。ゆっくり溶解し、養分とする為最初のうちは暴れるが頑丈な体は生きながら消化されていきもがく獣が暴れて体が内から変形するものの柔軟性も強靭さもずば抜けた構造は特に気にすることなく。
そして、何事か分からず恐る恐る荷車から顔を出し、悍ましい捕食風景に腰を抜かしていた人間の雌を発見すれば目玉は喜悦に歪み――その後、いつまで経っても約束の人間が納品されず様子を見に来た魔族が来た時には既に奴隷商も、率いた獣も、商品であった人間の雌も大地の染みを残して何処にも見当たらず。此処に巣くっていた植物型魔物も次の狩場へと移動した後であり。
ご案内:「魔族の国」からプレデランターさんが去りました。