2019/03/16 のログ
ご案内:「魔族の国 荒野」にジナイアさんが現れました。
ジナイア > 生暖かい風の吹く曇天の日。
空に流れる灰色の雲間から透ける太陽は、薄絹を纏ったようにぼんやりとした灯りを地上に投げる。ひび割れた硬い地面に、草木一つ見当たらない荒野には動くものは見えず、遠く、地鳴りのような雷鳴のような音だけが空気を伝ってその場を満たしていた。

「………思ったより、変わらないな…」

振り返れば、天を突くほどの険しい岩山が連なる場所で、フードを目深に被った灰色の姿。ぽつりとそう零して、己の足跡を探すように振り返った。
足跡などは当然ない…帰り道を心配しているというよりは、山脈の向こう側を透かすようにじっと翠の双眸を見据えて、やがてまた荒野へと向き直る。

(さて…人外の領域というが…)

人気のない所を探して深入りしすぎた感もある、が…ともあれ今変事は見られない。視線だけをするり巡らせてから、荒野へと足を踏み出した。

ジナイア > 歩きながら女は、両の指を組み合わせるようにして嵌められた指輪を撫でる。

その指輪に宿った魔神達――彼らは定期的に暴れさせてやる必要があった。さもなくば、本当に必要な時に上手く扱えない――ともすれば女自身をも損なう――そう、女は学習していた。
彼らの力を一度開放すれば、どのくらいの範囲で影響が出るのか、まだ女には制御がし切れない。下手をすれば村ひとつ、街ひとつ巻込む惧れは十二分にある。
故に、絶対的に人里から離れる必要があった。

(……此処ぐらいが限界、だろうな)

振り返れば山脈の麓が辛うじて見える場所まで来て、女は足を止めた。色々と曰くのある地だ。迂闊に深入りして戻れなくなるのは御免だ…そう心中で呟いて、ひとつ密かな溜息を漏らす。

ジナイア > 荒野に向き直る。指先だけを軽く絡め合わせる様に目の前に持ち上げ、翠の双眸を少し伏せるようにして視線を鋭くした。

「……良いぞ」

低く、囁く……瞬間、それぞれの指輪が仄かな光を纏って、直ぐに消える。

ぼん!!

びりびりと震える空気。身体に伝わる程の轟音とともに、熱風とちりちりとしたものが頭上から降りかかって、女は思わず腕を翳す――――矢張り、火だ――殺傷能力が高いが故に女自身が持て余し、力を使わせてやれていなかった、火。
最初の大爆発の後、そのまま中空で炎が渦巻いて、低い唸りのような音を立てながら中空を這いまわる―――さながら、宙を漂う巨大な蛇のように

ジナイア > 炎の蛇は女を中心に、うねりながら弧を描いて中空を這いまわる―――と、それから渦を巻くように風がゆるく一度、巻いて、次には突風となって炎を撒き散らしながら嵐が起こった。

「!…おい……」

熱気と気圧に巻かれて息が詰まる…!思わず喉を抑えて女が叫びを零した、次の瞬間

「!!」

ごん、地響きと共に地割れが起こった。足元が無くなって、翠の双方が軽く開かれてその暗闇を捉えるが早いか――その姿は地中へと吸い込まれる。
その後を追うように、中空を這っていた炎の嵐が錐揉み渦を巻きながら吸い込まれて―――……


薄明りに照らされている荒野。遠くの地鳴りが聞こえるだけの場所に亀裂を残して、女は姿を消した……

ご案内:「魔族の国 荒野」からジナイアさんが去りました。