2019/01/19 のログ
ご案内:「魔族の国」に格闘家ドゥエルさんが現れました。
格闘家ドゥエル > 此処は魔族の国、タナール砦が目視出来ぬ程度には距離を置いた場所だ。
其処に現れたのは巨大な雲の渦巻く乱気流。
まるで魔族の国深く向かう侵入者を阻む様に現れた其れ。
然し不思議なのは、魔族の国の存在には其の影響を受けない事だろう。

唯一の陸路でさえ大嵐が如くの状況、其の中に三人の人影。
一人は異国風の胴着を着込んだ大柄な男。
少し離れた場所に同じ様な背格好をした法衣姿の二人の少女が佇んでいた。

「なぁ、よぉ?やっぱ俺一人で良いんじゃねぇの?
こんな雑魚集団大したこたぁねぇよ」

既に奥へと進んだ人間達とは別に動いていたのだろう。
何人もの兵士らしき人間が地面に倒れている。
其の誰もが武器は折られ鎧は砕かれてはいるも、まだ息は在る。

『ドゥエル一人にしたら、誰が倒した連中戻すの?』

二人居る内の一人、黒いカチューシャを身に付けた少女が呆れた様に言葉を向ける。
其の言葉に男は軽く肩を竦ませる仕草。

「んなもん、ほっぽっとけよ。死にやしねぇ」

サラリと言葉を返すも、もう一人の白のカチューシャを身に付けた少女の視線に苦笑を浮かべる。
大きな溜息をわざとらしく吐く男を横目に黒の少女が手にした杖を翳す。
倒れた人間達の周囲に粒子の様な光が漂い、其の人間達の姿は消えていった。

ご案内:「魔族の国」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > ――全く。正直に言うまでも全く、だ。

伝え聞く話によると第七師団の現在の師団長が単騎、否、少数の兵を伴って魔族の国に進入したという。
その動向を少なからず探るために、第十師団に任が下った。
兵の運用としては適切だろう。何せ、一騎当たりの能力に優れた兵を擁するとなれば、斯様な不測の事態に対処できる。
問題は誰が行くかだった。副団長と協議の上、出した結論とは――。

「……良い空模様じゃないわね。好きじゃないわ、こういうのは」

暗雲横たわる空を切り裂くように――、白き竜と白銀の装甲を纏った騎士が往く。
鎧の肩と襟元に設えられた徽章は二つ。師団のエンブレムとその長のみが付ける事を認められるものだ。
安直な話だ。師団の中で単騎の能力に一番秀で、生存率が高いと思われるものが行くというのは。
時折、団内でも魔族の国の浅い領域まで竜騎士隊を偵察に向かわせることがあるが、それらとは今回の状況は違う。
特に、前方に見える雲が渦巻く乱気流というのは如何に強壮たる竜を駆っていても困る。

「風除けの結界を張って突っ込めば乗り切れるかしら。それとも……」
 『……のう、主よ。眼下を見よ。何者かが居るぞ?』

思案気に兜を被った顔を傾げれば、竜が念話を飛ばして告げる。遠く見える光景に訝しげに眉を顰め、念を送る。
言葉にするまでもない。それを受けて白い鱗を纏う竜は頭部に頂く角で風を切り裂き、降下に移る。

大気を打つ風音も何も隠しはしない。その光景をその先に見える者たちには見えうるだろうか。

格闘家ドゥエル > 『……ドゥエル様、その…上から、御客様』

不意に白の少女が其の口を開いた。
其れは偶然に次の行動を決める為に少女が能力を発動したからだ。
【空の目】空から見下ろした光景広範囲の存在を確認し得るもの。
其の言葉に残りの二人が其の存在へと視線を向ける。

「あー…? 騎士に竜だな、こんなタイミングに御苦労なこった」
『メフィスト様が教えてくれた騎士団の一人じゃない?
確か……第十師団の人、あんな感じだったと思う』

遠くを眺める様に額に手を翳して事も無げに云う男に対し、黒の少女が思い出す様な仕草をし乍男へと伝える。

「ま、あの中であれじゃ通れやしねぇ、仕方ねぇわな」

あれは只の乱気流ではない、自分達騎士団が任された空浮かぶ超巨大研究施設を覆う結界だ。
其の侵入となる可能性が在る空路は完全遮断に等しい。
そう為れば今自分達の居る陸路へと降りてくるのは当然とも云えよう。
此方が見える為らば、其方の行動を伺っている存在として見える様に為ってくる事だろう。

アマーリエ > 「――……気持ち悪いわね。」

ぼそ、と零すのは、何か――見られているような。そうと形容のしようがない違和感故だ。
論理に基づくものではない。個の存在として卓抜した何かに由来する直感の産物である。
だが、見られていると本当に仮定した場合、如何ともし難いのも現状だ。
どの道、迷彩術式も何も展開していない以上、遠くから視認されるのはどうしても避けられない。
元来、竜とは何もはばかることなく空を征くものである。

「先に降りるわ」

程良い高度まで至れば、腰と背に付けた装備を確かめて竜の背に付けた鞍より立ち上がって虚空に踏み出す。
短く呪文を唱え、片手を振ればその身を囲うのは青白い魔法紋様の円環だ。
「落下制御」の術式を行使し、ふわりと羽が舞い落ちるように落下速度を減じつつ、見える姿の近くへと飛び降りる。

「――ごきげんよう。尋ね事があるのだけど、良いかしら?」

背に担いだ盾を左手に持ちつつ、一礼と共に問おう。
上空には翼をはためかせ、降下することなく周囲を警戒するように滞空する竜の咆哮が響く。

格闘家ドゥエル > 竜から駆りて降り立つ騎士。
地面へと其の足が着く迄手出しを行わない。
男としては今手を出すのは勿体無いとの考えを持つから。
白の少女に関しては手を出す事自体をしない。
黒の少女に関しては男に任せる姿勢を取っているからだ。

「尋ね事ねぇ…まぁ、良いんじゃねぇの?
聞くだけ聞いてやるよ」

降り立てば動こうとする男だったのだが、白の少女の視線が向けられ動きを止める。
又も大きな溜息を零せばぶっきらぼうに相手へと言葉を返す。
幾度も会話を交わす事も無く、男は礼儀に欠けているのを理解出来るか。

其の背後に位置する二人の少女は様子を眺めているだけだ。
只、白の少女は黒の少女の影に隠れる様にしているのだが。

アマーリエ > ふむ、と。見える姿に観察の目を向け遣る。
思うべくもない。こんな場所に居るのは果たして、尋常の者であろうか? 考えるまでもないだろう。
見遣る彼らの装いは見慣れないもの。
魔族であろうか? 魔族といっても人間と全く見分けがつかないものから、異形までピンキリだ。

「そう。なら、答える気があればで良いわ。正直駄目モトだもの。
 ……ここ最近、この辺りを向こうの方から遣ってきた騎士、兵士の集団が通らなかった?

 足跡を探してみたけど、正直芳しくないの」

変える言葉に秀麗な顔に浮かべるのは、この手の人間の取り扱いに慣れた風情の複雑な面持ちだ。
言いつつ、肩越しに右手の親指で指し示すのはタナール砦の方角。其処から来た何者かの有無を問う。
向こうが何者であるかは知れない。
親切に応えてくれる可能性もあれば、全く見当違いの言葉が来ることもある。
しかし、いずれにしても先ずは尋ねてみなければ想起する可能性の悉くを集約することはできない。

どの道、竜に積み込んだ食料などの物資は長期間の滞在を前提にした物ではない。
吹き抜ける風の強さに、首に巻いた長いマフラーを掻き寄せながら向こうの答えを待つ。

格闘家ドゥエル > 男と黒の少女に関しては今現在は魔族、白の少女だけが人間。
だが見た目は三人共人間で在るのだから如何に考えるかは相手次第だろう。

「……あの連中じゃねぇ?」

騎士の言葉に、後ろの少女達を振り向いて男は聞く。
そんな男の発言に今度は黒の少女が溜息を吐いていた。

『あのさ、ドゥエル?
此の場合は知らぬ存せぬを通すべきじゃないのかなってあたしは思うんだけど?
もう遅いけどね』

男へとそう伝えた後、今度は騎士へと視線を向ける黒の少女。

『今頃は王都の入り口辺りで救助されてるんじゃないかな?
此の単細胞が手加減無しでぶっ飛ばしちゃったから、あたしが送っておいたよ』

手にした杖を自慢気に振り乍、黒の少女が相手へと説明する。
付近の暴風とも云える天候状態に在るにも関わらず、相手と違い不思議と三人には其の影響が感じられない。
其の説明を終えれば、で、如何するの?と云った感じの視線を向けていた。

アマーリエ > 事、この状況に於いての判断基準はシンプルでいい。
敵かそれ以外か、だ。ここは人間の住まう土地ではない以上、異物たるは己である。
高位魔族、果ては対魔王戦を想定した装備、能力を携えていても、万事使い果たして帰還できぬというのは本末転倒だ。

「――あら、知っているのなら良いわ。教えて頂戴な」

ぴく、と。眉を動かして問い質せば、向こうの男に帯同する少女が口を開く。
魔族らしい気配を感じる一人だ。
ドゥエルなる男と言葉を交わす様とその内容に、鎧の肩にかかる髪の端を払って、そう、と頷こう。

「嘘か真か判断し難いけど、この辺りをよく検分すれば答えは出るかもしれないわねー。面倒だけど。
 本当に送ってくれたなら一応感謝はしておくわね。謝礼の持ち合わせは無いけど。

 でも、幾つか解せないのよね。
 この土地に踏み入る以上は少なからず能力も思慮も弁えた者たちであるはずよ?

 そんな彼らを吹っ飛ばしたあなた、――否、あなた達は何者かしら? この土地の番人?」

風が、強い。思念でそう告げる竜が持ち前の魔法能力を行使し、対抗結界を形成して態勢を保つ程に。
言いつつ、その場に片膝を突いて地面に武具や装備類の破片がないかどうか試しに見定めようとしつつ、問いを重ねる。
肩を竦めつつ放つ言葉は軽いが、心中には少なからず緊張の二文字が宿る。

この場に突入する者であれば、性格は兎も角として能力は少なからずあろう。危機察知、回避も含めて、だ。
であれば、そんな彼らを阻む、あるいは排除した彼らは何者か。
その驚異にして興味を把握、見定める必要がある。
己が師団は斯様な地への遠征に向く編成ではないが、国を守る騎士を束ねるものの一人として。