2018/09/29 のログ
ご案内:「魔族の国」にタマモさんが現れました。
タマモ > 「………よし、迷ったのじゃ」

右手に持った唐傘を軽く上に傾け、曇り空を見上げる。
空いた左手で額をぐいっと拭い、少女は言葉を口にした。
…いや、と言うか、よしじゃない。

確か、タナール砦に向かい歩いていたはずだ。
はずなのだが、場所が森林だったのが悪かったのかもしれない。
途中で方向の把握の感覚を途切れさせた、それが悪かったのかもしれない。
いつものように、進むのは適当にやってたのが悪かったのかもしれない。
…全部?気にするな。

何はともあれ、今の少女に場所の把握が出来てなかった。
人間の国に近付いていたのか。
はたまた、遠のいていたのか。
上手く横に流れて、距離は変わってないかもしれない。
何にしても、あれだ…そろそろ、少しは考えて行動しよう。

タマモ > 「それにしても…やはり魔族の国じゃな、なかなかに暇はないのぅ。
何もないのもつまらぬが、小物が寄ってくるのも面倒でいかん。
むむむ…難しい選択じゃ」

ぴくん、と耳が揺れる。
そして、とん、とん、と唐傘の柄で肩を叩き、呟く。
周囲を見渡す必要もない、草むらを掻き分け移動する、擦れる音が周囲からいくつか聞こえていた。
名前は覚える気もないが、魔物か何かなんだろう…と思う。
何かを追ってるのか、己を囲っているのか、そこまでは分からない。
このまま過ぎ去れば、面倒も何も無くてありがたい。
この付近で止まり、何かしてるなら覗いてみるのが良いか。
そして…こちらに突っ込んで来るのが、一番面倒である。

ともあれ、様子見である。
一旦足を止め、その場でのんびりと佇む事にした。

ご案内:「魔族の国」にジーヴァさんが現れました。
ジーヴァ > 魔族の国に住むギルドの同志から魔術書を購入し、王都に帰って休もうとした矢先のことだ。
おそらく野生の狼、それも魔力を長く浴びてひときわ強くなった個体たちに襲われ、
今、こうして草むらに紛れて隠れ潜むように早歩きでタナール砦へと向かう。

「くそったれ……転移紋が使えりゃこんな苦労もせずに済んだのによ!」

いかに強力な魔術を使えるとはいえ、群狼というものはそれだけで一つの大きな化物に等しい。
ましてや相手の縄張りの中では、逃げの一手が最善ということはまだ若いジーヴァにも理解できた。
そんなとき、この場に一人佇む少女を見た。着物と呼ばれる変わった服を着て、狐の耳と尻尾を生やし、
まるで散歩でもしているかのようにのんびりとしている。

「お、おいっ!狼の群れだぞ!お前もとっとと逃げろ!」

一瞬見捨てて囮になってもらおうかと考えたが、その次の瞬間には草木をかき分けて飛び出していた。
少女の目の前に立ち、ジーヴァは警告するように叫ぶと、辺りから聞こえる狼の雄叫びに身体をびくりと竦ませる。

タマモ > あ、これは拙いパターンだ。
それは、少年のものであろう声が耳に届き、その動きから理解出来た。
多分、こちらの見える範囲内に来たのだろう。
足音が明らかにこちらに向き、そして、己へと向けたものだろう叫び。

あぁ、なるほど、魔物じゃなくて狼の群だったのか…
そんな事を、緊張感の走る少年の声が聞こえる中、ふっと考えていた。

「………うん?魔物じゃなくて、狼なんじゃろう?
それならば…逃げる必要なんぞ、どこにある?」

言葉を返しながら、ゆらりと現れた少年の方へと向き直る。
平然とした言葉と態度を見せながら、そのまま、少年の横をすり抜けた。

「人間の国であろうと、魔物の国であろうと…動物は変わらんものじゃ。
そして、動物と言うものは、そこらのヒトよりも上下関係がはっきりとしておる。
………そうじゃろう?ん?」

くすりと笑うと、狼の群が居る方向へと視線を向ける。
言葉の終わりは、まるで狼達に聞かせるように呟き…
次の瞬間、少年には感じられぬだろうが、少女は確かに前方へと何かを向けた。
獣として最上位に位置する存在としての威圧感、そう言える何か。
その群が、何の混じり気もない狼達ならば、それを感じて静かに去っていく事だろう。
もしそうでなければ…まぁ、軽く相手をするまでだ。