2018/09/21 のログ
■ゼロ > 魔族の国の一地方、そこに、ボロボロのマントを羽織っている存在がいた。
銀の鎧に、仮面をかぶった存在は、今巷を騒がせている魔導機兵を連想させる者が居るかもしれないがそれはさに非ず。
それは生身の人間であり、意思を持つ存在である、その腕にはボロボロになっているものの第七の師団章が巻きつけられている。
魔族の国の領内を、グリーブが強く踏みしめ、進んでいく存在は、マグメールの第七騎士団の一員である。
名をゼロという調査兵で、三月前に任命され、その任務遂行のために魔族の国に入る。
一度タナール砦に戻った以外はずっとこの国の中を徘徊し、調査している。
第一目標が翼ある獣という魔族の軍に関しての調査。
第二目標として、二ヶ月前に遭遇した一団に関する調査。
それは、芳しく無く、ただただ魔族の国の地図が増えていくだけの状態。
しかし、それ以降、軍から命令変更連絡などはないから、少年は調査を続けているのだ。
何処に、行くべきか、少年は周囲の地形を書き写しながら考える。
■ゼロ > 来た方向を見る、今回は南の方からやって来た、なれば行くのは北か、東か、西か。
選択肢がたくさん有り、それに対する情報は全くない。
今来たところ、今まで行った所にのみ情報は残る、故にどれを選んでも基本的に変わりはない。
仮面の下少年は思考する、仮面の中からの視界に夜という闇故の曇りはなく、昼間のようにしっかりと見ることができる。
そして、仮面の感知能力の中に、魔力などのそれを今のところ見つけることができない。
「…………」
考えることは、今は意味がないようにも思える。
とりあえず、今はすぐに慌てて動く必要もないだろう、と息を吐く。
そう考えると、もう一度周囲を眺める。
東に山が見える、そうなれば、川が山の方から流れている可能性がある。
それなら、東、だなと少年は決める。
そろそろ水の補給などもしたいところだと、東に向き直り、山に向かい、歩き始めた。
■ゼロ > 東に向かい歩き始めて、そう時間が掛かることもなく川が見えてくる。
少年はその川に近づいていき、地図を書き記し、考えた。
川が近いということは、この付近に民家なり街なりが有るはずである、上流の方か、下流の方なのかは分からねど確実にあるということである。
なれば、後は川に沿って歩くことにしよう。
――――それよりも今はご飯にしたい、お腹が減った。
少年はバックパックを下ろして、その中から鍋と燃料のために拾っておいた薪を取り出し、火口箱から火種を取り出し、火打石で火種に火を付ける。
仮面をずらし息を優しく吹いて火種の火を強くしてから薪の下に。
火が付くまでの間、鍋に一杯水を組んできて、瓦から石を拾って簡易の竈を作る。
そして、薪に火が点いて明々としてきた所に鍋を置く。
鍋が温まり、水が沸騰するまで待ち、沸騰したら自分の水袋の中の水を捨てて、沸騰した水を入れていく。
水袋が満タンになったら、しっかりと口を締め、残ったお湯に、固形のスープと、乾燥させた肉を放り込んでいく。
固形スープが溶け、肉が水を吸い、柔らかくなっていくのを待っている間に、ほかに何かあるか確認する。
前の魔族の街でかっぱらったパンと魚の干物がある。
魚の干物は次でいいか、とパンを取り出す。
良い具合に煮えたら、少年は火から鍋を下ろして、木の器を取り出した。
そして、パンをスープにつけながら食べ始めることにする。
■ゼロ > 空に光る星空は、この場所も、マグメールも変わることはない、否―――、なぜが此方のほうが綺麗に見える。
何故だろう、マグメールが明るいから、という知識にはたどり着けずに首をかしげるも、思考は直ぐに逸れる。
この後はどうしたものか、というものである、今食事が終わったあと、この周囲で休むべきか、それとも少し無理して街を見つけるべきか、と。
一人旅故に、眠るときは最大限の注意が必要になる、寝ている間に襲われる……よくある話であるし、何度経験したことか。
魔族だけではない、野生の獣や魔獣、盗賊……枚挙に暇がない。
それに、雨が降ったりしたら川原だ、洪水に流されてしまう可能性もある。
空を見る限り天気の方は大丈夫には思えるがさてどうしたものだろう。
スープをすすり、熱いままのそれにあち、と舌を出し、パンを千切り、かじる。
■ゼロ > ずずず、もぐもぐ、ずずず。
少年の食事は静かに進んでいく、当然のごとく誰か喋る相手がいないのだから。
軽く息を吐き出し、食事が終われば、近くの河原で今食べた食器と鍋を水で洗い流していく。
綺麗になれば、焚き火の近くに置いて乾かしていこう。
「………。」
空を見れば雨の様子はなさそうで、少年は小さく息を吐き出す。
荷物――――特に食料と紙の確認をする。
食料は言わずもがな、紙は、マップの制作のために必要である。
マップの量と、紙の量を確認し、ほかのアイテム―――薬の量なども調べておく。
分量は問題ないことを確認して、少年はよし、とつぶやいた。
「今日は、休んでおくか。」
無理をしすぎてもいいことはない、この周囲は開けているし、誰かが来れば気配で分かろう。
そう考えて、毛布を取り出し、カバンを枕に。
薪を追加してすぐに燃え尽きないようにしてから、横になる――――。
ご案内:「魔族の国」からゼロさんが去りました。