2018/08/01 のログ
■紅月 > 交戦の気配を察し、そちらの方へと向かってみる。
…が、しかし、辿り着いた時には丁度終わったところだったらしい。
「……『再生するからいいよ』だってさ。
その子が言ってる…わりと臆病な子みたい」
男の右斜め後方、ごく普通の魔界の木のうしろからヒョッコリと出て…そのまま木に寄り掛かる。
「や、魔族領で会うのは初めてだね。
お仕事?」
しゃらりと腕輪を鳴らしながら、ヒラヒラ手を振る…その女の紅の髪と紫の瞳は覚えがあるだろうが、耳は人間の其れであるし角も無い。
…そう、今の紅月は人里の中に居るときの其れであった。
■エズラ > さて、どうしたものか――怪物の士気は既に低下しているらしいが、その言葉までが分かるわけではない――
こちらが剣を納め、この場を去ろうと背を向けた瞬間、再度襲ってくるかも――そんなことを考えていたら。
「んおっ!?」
唐突に背後から響いた声。その拍子に、口元ばかりを露出させていた複雑なデザインの仮面が、ズルリと半分ほど脱げ落ちた。
「……なんだ、おどかすなよな――新手かと思ったぜ」
幸い(?)そこに居たのは知り合いである。
いつも通りの飄々とした調子で、ごく当たり前にそこに居る。
そう、彼女は本来――「こちら側」の者。
「言葉が分かるのか――なら、起こしてすまねぇ、とも伝えてくれ」
通訳をしてくれて、これで本当に剣を納めることができた。
何か、いつもと少しばかり雰囲気の異なる彼女の様子を、今度はしげしげと眺めつつ。
「アー……まぁ、仕事、だな。つまりこういうわけだ――」
事の次第を簡単に説明――正規軍に属していれば、死んでも口を割れないところなのだが――自分はそうではない。
人間側の先行偵察部隊(ただし一名)ということを、素直に告げ。
■紅月 > 「…んー?
ふんふん……あー、ずいぶんと人間臭い魔物だねぇあんさん。
あちらさん『自分も攻撃しちゃったからゴメンね』だって」
何だか脱力したような顔で通訳し、やっぱりクスクスと笑ってしまう。
さて、先行部隊の方だと聞けば…徐々にポカーンとした顔になっていく。
え、一人?
別行動じゃなくて一人?
「……、…えぇと、それは。
上層部が阿呆なのか、舐められてるのか…判断に困るわねぇ」
視線を逸らして頬をポリポリ掻きつつ、微妙な表情を。
…とりあえず。
「…で、どこまで見てこいって?
私個人としては、あんまし戦争してほしくないんだけども」
■エズラ > 説得を受け入れた巨木の怪物は、みしみしとその巨体を軋ませ何か感情を表現した後、自分が遠くを見渡すためによいしょと登った時同様、再び「木」へと戻った。
戻ってしまえばその擬態が本当に見事なものだと改めて知らされる――
「まぁ、正直オレも困ったよ、ちと幸運が重なって、砦の奪取に貢献しちまったもんだから。だがまぁ、魔族の国は一度見てみたいと思っていたのさ――」
その話については、適度にぼかす。
自分自身、あの出来事は正しく奇跡的な偶然が重なって得られた戦果だと理解しているのである。
それに、タナールの砦は奪い奪われを繰り返しているのだから――その一勝すら、考えようによっては路傍の一石に過ぎない。
「偵察範囲の命令は受けてねぇ――生きて戻れる場所まで、だな。ま、今夜のところはこれまで、だがよ」
そして、少し神妙な表情になる相手に、こちらも同じように微妙な笑みを返す。
「――そればっかりは、どうなることやら――だがまぁ、ここまで潜入してきた感想からすりゃ、いきなり大軍勢を送り込むのは到底無理だろうよ――それに、つい最近にも侵攻に失敗してるからな、王国は」
すぐにどうのこうのとなりはしない――これは、高い可能性であろう。
そんな、少ししんみりした空気を壊すように、じりり、と男が女ににじり寄り。
何やら声色を変え、至極まっとうな顔で――
「……それより紅月、もっと深刻な問題があんだよ――聞いてくれるか」
■紅月 > 「あーらら、そりゃ御愁傷!
……まぁ、そんだけちゃんと変装できるなら…今度ちょっとだけ、上から魔族領見せたげるよ」
何だか自身の功績についてぼかしつつ微妙な表情になっている男の話しに、笑いながら合いの手を入れて。
彼の服装と仮面を上から下まで2往復くらいじっくり眺めつつ「ちょこっとだけね」と念を押しながら…彼の腕なら万が一があっても自衛は出来るし、上空から眺めるだけなら問題なかろうと遠回しに誘ってみる。
何だかんだ気に入ってしまったが故の、サービス…みたいなものである。
「……、…紅にはわかりませぬ。
人でなけれは純粋な魔でもない紅には、わかりかねまする。
人は餓えてる訳でも無さそうだし、魔も遊びたいなら手合わせでもすればいいのに…互いに奴隷だの侵攻だのと。
ずっと膠着してればいいんだ、こんなの」
相手を見ながらしっかり話を聞くものの…プイッと顔を逸らし唇を尖らせ、拗ねたように言う。
しかし、男の声色が変われば近寄る相手に視線を戻す。
その表情が至極真剣であると見てとれば、此方も神妙に問い首を傾げる。
「…何か、あった?
とりあえず怪我はしてなさそうにみえるけど」
■エズラ > 「ま、人間のオレから言えるのは、人間の欲望にゃ果てがないってことだ――これに関しちゃ、魔族よりも遙かにすげぇと思ってる」
肉体的な強さ、永劫に近い寿命、強大な魔力、精神的境地――
そのいずれも持たない人間は、だからこそ欲しい。欲しい。欲しい――そういうことであろう。
そして――それらを持つ者が、憎い。憎い。憎い――しかし。
「って、そんなことじゃねぇ。アア、怪我じゃねぇ、もっと深刻なことなんだ――」
男にとっては、異種族とは競うものでも争うものでもない――
じりり、とさらに距離を詰め、相手の耳元へと囁く――
「――もう、一週間以上も、女を抱いてねぇんだよ!」
――異種族とは、愛でる者。
にゅ、と伸ばした下心に満ちた腕が、女の細く括れた腰へ伸び。
それに合わせて、無遠慮に己の身もすり寄せる――
「つうわけで――ひとつ頼む」
何を、などということはワザワザ言うことすらしない――真っ向からの誘いであった。
■紅月 > 「あぁ、確かに…欲と可能性の大きさなら、間違いなく他種の追随を許さんなぁ。
結構好きなんだけどなー、そういうトコ」
持たないから、何にでもなれる。
まだ何物でもないモノ…未知とは、崇高なるモノである。
人間族は少々卑屈に過ぎるのだ…否、その他種族が傲慢不遜すぎるのかもしれない。
「……っ…怪我より、深刻…?」
何だどうした、何があった…と、問おうとは思えど。
どんどんと間合いを詰める男に対して困惑の表情で首を傾げる、が…木に寄りかかったまま逃げるでもなく男を見詰めていれば。
「……、…ふむ、患部は頭であったか」
なかなか辛辣な言葉を吐きつつも、腰を撫でられ木との間に挟まれてしまえば…恥ずかしさで、目を合わせられない。
今は人間のそれと同じ形をした耳まで真っ赤に染めて、必死にそっぽを向いている。
「た、頼むって…わかってんの?
私には人喰いの鬼神の血が入ってる、し、血に餓える満月からまだそう経ってない…人間から見たらバケモノよ?
…そ、それでも、そのぅ……紅と、したい、訳…?」
言いながら頭に手を当てて角やら耳やらを元の姿に戻す。
爪も黒く、牙も鋭く…初めて会った、あの日と同じように。
ちらりと視線を向ければ、やはり真剣な、瞳…困った、心臓が煩い。
■エズラ > 「ヒデェなおい、ここまで無傷で潜入したオレを、少しゃほめてくれたっていいだろう――」
冗談を飛ばしながら、じりり、と木に手をついて、その間に囲ってしまう。
真正面に向き合って、その顔と顔が自然と近づき――
「人喰いの鬼神――血に飢えるバケモノ――いいねぇ、オレの好きなタイプだ」
そう言ってのける男の表情は――からかう風でもなく、さりとて神妙でもない――ごく普通に、下心を隠そうともしない笑み。
そこに異種族への偏見や差別といったものは微塵もなく――彼女のことを、ただ純粋に、女とのみ認識している、素直で無垢な目。
「ああ、すげぇしたい――つうか分かるだろ?ほら――」
彼女の下腹に押し当てられた男の下腹部――存在を主張する熱く固いそれが、布越しに。
そうして、二つの影が交錯していくのである――
ご案内:「魔族の国」からエズラさんが去りました。
ご案内:「魔族の国」から紅月さんが去りました。