2018/06/28 のログ
■ゼロ > がさがさ、がさがさ、少年は足元の草を踏みしめながら移動し。
街道沿いの木々の間をくぐり抜けていく。やはりというかなんというか、誰かがいる気配はない。
人も魔族も、いるような気配はないし、歩いている様子もない。
これ幸いと少年はどんどん進んでいく。
何もなければそのまま魔族の国へとはいっていくのだろう。
偵察任務はこれから始まるようなものである。
夜闇の中を進む白銀の鎧と白い仮面、それはそのまま、魔族の国の方へと進んでいくのだ――――
ご案内:「魔族の国付近」からゼロさんが去りました。
ご案内:「魔族の国 キルフリート領の村」にオーギュストさんが現れました。
■オーギュスト > 「閣下、村はもぬけの空です」
「そうか、ならいい」
オーギュストは頷き、情報将校は離れていく。
第七師団は順調に魔族の国を進撃している。
途中で何度か魔族の妨害にあい被害を出したが、歩兵隊にわずかな損害が出ただけだ。
吸血鬼ロザリアは近隣の村に避難命令を出していたらしく、村は食料も水もなく民の一人も残ってはいなかった。
補給が出来ないのが残念だが、抵抗され援軍を呼ばれるよりかはマシというものだろう。
ご案内:「魔族の国 キルフリート領の村」にルーシェさんが現れました。
■オーギュスト > オーギュストは村内に残った資料のみを押収するよう命じた。
特に地図や公文書は大事だ。魔族の国の情報は、何にも増して重要なのだ。
第七師団が所持している、作りかけの魔族の国の地図と照らし合わせ、さらにこの国の地理を把握せねば。
「竜騎兵隊より定時連絡、異常無しです」
「よし、小休止の後出発するぞ」
竜騎兵隊の損害が少ない事も僥倖の一つだ。
なにやら魔族の国に入った途端、竜騎兵隊を邪魔しない形での砂嵐が起こり、空を飛ぶ魔族に把握されずに近辺を偵察できている。
情報の為にある程度の竜騎兵の損害は覚悟していたのだが、嬉しい誤算だ。
「予定通り、放火や打ちこわしなどは行いませんので?」
「あぁ、少なくとも行きはな」
普段ならば内政にダメージを与える為に村は焼き払う所だが、今回は慎重を期してそのような事は行わない。
煙や音で魔族が寄って来ては厄介だ。
■ルーシェ > 空を飛び回る竜騎兵の姿には見覚えがあり、そして魔の国には見ることが少ないそれは夢の訪れが近いことを示していた。
最早目と鼻の先といった現状となれば、城の傍でウロウロとしてたものの、留まる事などできない。
行動に移れば、彼らの回りにも大きな変化がすぐに訪れる事になる。
海水の柱が地面から噴出し、まるで取り囲むように水柱を空高く伸ばして水飛沫を零す。
飛沫が触れた地面からはスパイクの様に尖った魔海の珊瑚が生えていき、到るところから針が飛び出している状態になるだろう。
ただそれも、本来の目的ではなく、水柱を上げること自体に意味があったが。
「……」
そして、村にある小高い丘の上に水の魔法陣が浮かび上がると、霧を散らせながらその姿を現す。
村の中にいるであろう彼を目を細めて探しながらも、周囲には無数の水の玉が浮かんでいた。
あの夜と違い、無邪気な雰囲気は鳴りを潜め、嵐の前の海のように不気味な静けさをまといながら。
■オーギュスト > さて、本命ではないがお出ましか。
この水の大魔術。間違いないだろう。
かつてタナールで出会った、あの魔王。
空に浮かぶその姿を認めると、オーギュストはそちらへ向かう
「よぉ、心優しい魔王。会いたかったぜ、お前には」
なれなれしい口調と砕けた態度。
まるで親しい友人に話しかける、そう――小馬鹿にした様子で。
かつて相対した魔王へと言葉を投げかける。
「お前のおかげでここまで来れたんだ。感謝してもし足りねぇよ」
第七師団は裏腹に戦闘陣形へと移行する。
魔王相手とて怯みなどしない。彼らこそは王国が誇る退魔師団なのだから。
■ルーシェ > 「……」
馴れ馴れしい言葉と、嘲笑う様な態度。
それを見ても何も言わず、ただじっとその姿を見下ろしていた。
ただ、次の一言で彼の中を察することを止めていけば、小さく溜息を零す。
「…ロザちゃんはね、それを平和なことに使う方法もあったって言ったよ。私だけじゃなくて、ロザちゃんの気持ちも踏みにじったんだよ」
もし、言葉通りに使われていたなら、彼女の人間嫌いも少し変わったかも知れない。
けれど、それはもう叶わないのだろうかと思いながらも、小さく指先を右から左へと薙いでいく。
それだけで、先程の水柱から水圧の光線が解き放たれる。
超圧縮と加速を掛けられたそれは、建物ごと一瞬で切り裂けるだけの破壊力を持つ。
取り囲んだ水柱から横薙ぎにするだけで、彼らを切り裂くことも容易なはず。
挙げ句、低い位置、高めの位置と避ける事を困難にする配置で放つのだから。
■オーギュスト > 「――ハァッハッハッハッハッハ!!!」
オーギュストは笑った。
爆笑した。
あの吸血姫が、平和? 結界の平和利用?
「この国に来た甲斐があったぜ。王国開闢以来の出来の冗談だぞそりゃぁ!」
臨戦態勢で魔王に臨む兵達を尻目に、オーギュストは一人笑い続ける。
「あの奴隷666番――吸血姫はな、王国北方の街ひとつを全てアンデッドの巣窟に変え、タナールで俺の師団の半分を皆殺しにした奴だぞ?
そいつが、なんだ、結界を平和に使う? 魔族と人間が共存? そんな事本気で思ってるわけねぇだろ」
師団は水圧の光線を反らすべく盾を構える。
相手の属性さえ分かっていれば、すぐさま魔法防御を発動し威力を受け流す。強力な魔族に対し、飛び道具の対処は必須である。
オーギュストはといえば、平然として水圧を避け、避けきれないものは大剣で反らす。
第七師団の強さ。それはひとえに魔族に対する戦闘経験の豊富さにあった。
ご案内:「魔族の国 キルフリート領の村」に騎士アルダーさんが現れました。
■騎士アルダー > 皆の配置の関係か、思ったよりも此方の移動に手間取ってしまったか。
彼等が到着しただろう村に付く寸前、白の少女から声が掛かる。
『………一人、増えた…その…此方側…』
「分かった、有り難う。…では此処で」
先に行くつもりが、先を越されたらしい。
仕方なく村へは近付くも、目視出来る位置で足を止める
後ろを歩く胴着姿の男は不満そうな表情を浮かべるも大人しく従う。
向こうが此方に気付くも気付かないも、今は関係ない。
現状を把握する事を優先した。
■ルーシェ > 高笑いする様子にも気にかける様子はない、以前のように相手を知ろうとも触れようともおもわないのだから。
ただ、淡々と言葉に傾けていたが……奴隷と言った瞬間に、自身の魔力が深海の火口の様に心を泡立たせ、憤怒を冷たく押し込めていく。
「お互いに殺し合ったよね、もう。それでも止まる気がないなら……もう知らないよ」
その恨みがどんどん膨らんで、取り返しのつかないところまで行くのも知っていた。
穏便に返す方が良いのかも知れないが、相手はそのつもりもはないだろう。
そして、自身の夢を覆すなら一切の容赦はできない。
水が弾かれても、水に触れただけで問題なのは気づかなかったらしい。
海の魔王が、水だけを使うはずがない。
そして、海水から放たれたカッターが盾に触れたなら、そこからフジツボの様な物が張り付きながら生まれようとするだろう。
その穴からは人を一瞬にして意識を朦朧とさせ、毒素で死に至らしめる胞子が溢れるのだ。
そして、自身の姿も水となって弾け飛んで消えてしまえば、周囲には霧が立ち込めていく。
気配は消えておらず、寧ろそこら中に気配が広がったように存在感だけは強くなっていく。
■オーギュスト > 「――状況、『煙』と類似!」
「対毒煙防御! 例の装備を出せ、はやく!」
何人かが倒れながらも、師団は対「煙の魔神」用にオーギュストが考案した装備を急いで引っ張り出し、装着する。
キルフリート攻略には「煙の魔神」を何とかする事が必須条件である。
オーギュストはあの島……「常世島」で、煙の魔神の正体が「毒ガス」という未来の武器に酷似している事を知った。
そして常世島の資料からこの世界でも毒ガスを防御するものが作れないかと研究した結果、出来上がったのがこの師団装備――「ガスマスク」であった。
「ちっ、『煙の魔神』まで取っておくつもりだったんだがな」
皮と透明な魔導ガラスで出来た「マスク」、そして中の空気を維持する為に水を溜めた樽と水中呼吸の呪文の護符を合わせた「タンク」。
これらを装着した師団は、毒素の中でも問題なく動ける。
しかし、盾の方はフジツボだらけで使えた物ではない。戦闘後に整備しなければ使い物にならないだろう。
「閣下!」
「この霧は奴のテリトリーだ! 魔術師ども、火炎魔法詠唱開始! 霧を蒸発させろ!!!」
師団はすぐさま高温の魔法を唱えあたりの気温を上昇、霧を晴らす事を試みる
■ルーシェ > フジツボは更に領地を広げる、地面や建物、そこらから群生していき、大きくなりながら地面を這う。
勿論人に触れようものなら、それを苗床に生命を吸い尽くして枯らす、まさしく海の魔物とも言えようか。
ここに留まるだけで、既に海の亡者たちに囲まれているとも言える。
(「何だろあれ、でも逃げないってことは効果がないってことだね」)
姿を消したまま、淡々と水柱を通して周囲の状況を感じ取っていく。
水柱から溢れる海水は留まることを知らず、土は大分ぬかるんでも来るだろう。
時折、地面を突き上げるように揺らしながらも、気配はどんどん濃くなっていく。
広がる霧が磯臭くなると、今度は嵐のように風をうねらせて霧を掻き混ぜてしまう。
霧を晴らそうとしても霧自体は薄くなるが、炎も風に煽られて絶やさず燃やすのも難しくなるだろうか。
だが、霧自体は前段階であり、うねる風の中で次の準備が進む。
その中へ冷気をこさえていくと、待機中の小さな水粒が針のように鋭くなっていく。
鎧を貫通できるほどではないが、それらが吹き荒れれば肌にかすめるだけでも傷をつけるだろう。
壊死を加速させる毒素を含んだ風と氷の棘が暴れまわれば、村はあっという間に魔海の地獄絵図が広がりつつあった。
■騎士アルダー > 「私達が手を下す必要も無くなるかもしれないな」
村の状況を目視で確認し青年は呟いた。
だが然し、彼等も何らかの準備はしていたらしい動きを見せている。
横に居る白の少女、背後に立つ胴着の男、次の指示を求める視線が向けられた。
「コリン、彼等の魔法だけ如何にか出来るか?
後の為に彼等の対策手段をなるべく引き出させるんだ。
残念だがドゥエルは待機していてくれ」
青年の指示に舌打ちするも素直に静観の姿勢を取る男。
小さく頷いて、手にした棍棒を胸元に抱える様にして詠唱を始める少女。
『ガンバンテイン…御願い…』
そして少女が棍棒を天に捧げる様に掲げる。
途端に村全体を覆う様な不思議な力が包み込んだ。
霧の対策をしようと魔法を使おうとする魔術師達。
だが、彼等が使おうとする魔法だけが発動の瞬間に掻き消えてしまった。
■オーギュスト > 天候操作呪文に風と氷。
まったく、師団が冬営などで苦労している天のご機嫌を、魔王たちは自分で思うがままにしてしまうのだからタチが悪い。
おまけに。
「――魔法発動できず! 閣下、魔術師隊、行動不能です!」
「強力な魔法ジャミングが周辺にかかっています!」
さて、いよいよもってピンチだ。
まったく、魔王や魔族の国の理不尽さというものには呆れかえる他ない。
だが、第七師団は慌てない。
こんな理不尽など、常に第七師団は、そして人間達は受け続けているのだから!
「よぉし、お上品に戦うのはここまでだ! 野郎ども、第七師団の恐ろしさを、平和主義者に見せてやれ!」
どのみち戦闘が長引けば周辺の魔族に気付かれるのは必至。
ならば、もう師団の居場所を隠す為などと言って派手な事を避ける意味もない。
オーギュストは村落の家々に「マンゴネル」を撒き、そして放火する事を命じる。
「マンゴネル」は水でも消えない粘性の火薬であり、魔法を一切使わない、「科学」で作られた高温の炎だ。風に煽られれば、村落全体が炎上するだろう。
「マンゴネル」は常世島では「ギリシャ火」、あるいは「ナパーム」と言ったか。
「ついでだ、あの魔王は霧と自分を同質化させてるぞ! 土毒を撒け! 水を制するには土属性だ!」
■ルーシェ > (「……準備できた」)
暴風雨もフジツボも霧も、これを発動させるまでの時間稼ぎとも言えた。
先ほど地面を震わせたのも、その準備の前触れだったのには気づかれなかったのは幸いか。
彼らが油をばら撒こうとし始めたところで、地面が大きく突き上げられて、大地震の様な震えを思わせるかも知れない。
同時に、地面の一部が盛り上がれば、土岩を撒き散らしながら爆ぜ、水柱が溢れ出す。
それが幾つも幾つも、上空からではなく、地下からの空爆の如く幾つも地面を突き破る。
同化した先も、近いが外れてもいた。
霧ではなく、村の地下。
そこに流れる水脈に同化し、土を押し広げて真水を海水へと変えていたのだから。
ぬかるんだ地面も、これ以上は水を吸い込まない証拠だ。
あとは溢れる水が徐々にカサを増す。
砕けて鋭くなった岩、家屋の破片、産後の欠片が流動し、肌を少しでも傷つければ壊死が始まる地獄の海へ放り込んでいた。
「~♪」
外周を覆う水柱の一つから姿を現すと、普段とは全く違う姿へと変貌していた。
紫の瞳は海のように真っ青に染まり、両足は失われているが、代わりにウミヘビの様な魔物がうねうねと踊っていく。
纏う魔力の総量も、少女のような姿とは明らかに増えた本来の姿。
そして澄まし顔のまま口遊むのは、呪歌。
人魚のような歌声に込められた力は、彼らに強い眠気を誘う音色となって鼓膜へ届かせようとする。
■騎士アルダー > 村から離れた位置に留まる三人は動かない。
青年は冷静に彼等の動きに目を向け、何を如何対処しているか見続ける。
少女は力場の維持に集中しており、男はつまらなさそうに青年と同じく村を眺めていた。
「彼等と戦いたいのは分かるが、此の状況ではな。
此方に気付き、態々突っ込んで来る者も居ないだろう」
苦笑を浮かべ乍、不貞腐れている男を宥める。
そうしている間にも、村では刻々と状況が変化していた。
彼等の戦い方、魔王の戦い方、影響も受けない自分達からすれば中々の見物である。
■オーギュスト > なるほど、地下水脈そのものを武器とするやり方か。
大味だが、確かに軍団相手には効くだろう――
「戦闘中止! 師団は地下水脈を避け撤収、竜騎兵は溺れた奴の救助を優先しろ!」
急いで村から離れ、運悪く溺れた奴は竜騎兵が救護する。
多少の損害は出たが、壊滅するほどではない。何せ水脈は追撃も、能動的な攻撃もしてこないのだ。
しかし、師団が戦闘を続ける事もこれまた不可能。このままでは損害の貰い損である、が。
「――なら、俺が直々に相手をしてやるよ」
騎竜の一騎に跨ったオーギュストは直々に水蛇と化した魔王へ向かう。
呪歌は既に対策済みだ。タナールで一度見た技能である。一度見たものは二度とはくらわない、人の知恵だ。
その方法とは――なんとも簡単なものだが、相殺である。
オーギュストは魔術師達に、とにかくやかましい、けたたましい魔力の篭った音を上げるよう命じた。
魔力が魔法として収束しないからこそ出来る芸当である。魔法のなりそこないの音は、あたりに騒音を撒き散らす。
そしてオーギュストは一人、あの時と同じように魔王と対峙し大剣を構える。
■ルーシェ > 撤退を始める彼の部下達、竜騎兵が近づき、それを手助けするのを見やりながら次の手が決まっていく。
そんな中、竜にまたがった彼が近づいてくるのが見える。
一騎打ちで手傷を負わすなり、撤退の時間を稼ぐといったところだろうか。
「私は相手しないけどね……」
周囲に浮かび上がる無数の水の玉が展開されると、彼を一瞥しただけで、視野に収めながら水の玉に術を付与する。
水圧カッターほどではないが、強力な勢いで飛び散る水飛沫の散弾を、ランダムに撃ち出しながら、彼の迎撃に当たらせる。
フジツボの胞子が混じった水は、先程同様人体にも群生しようとする魔物。
彼は守れども、身体の大きな龍はどれだけ、水の弾幕をかいぐれるだろうか。
迎撃を任せつつ、自身は片手の掌を空へと突き上げた。
溢れ続けてきた水が一気に水の壁のように盛り上がっていけば、大量の破片を飲み込んだそれが、手のひらを前へ翳すだけで崩れていくのだ。
初めて出会った時に浴びせた津波とは異なり、破片という散弾をたっぷり交えた大津波は水圧に耐えようとする彼らを物理的にも打ちのめす事になるはず。
それどころか、手助けに来ていた竜騎兵も波に飲み込まれようものなら大変なことになるだろう。
彼が出た時に、彼が失いたくないものが見えたのなら、容赦なくそこを狙う。
海蛇となった下半身と蒼の瞳は、魔王の禍々しさの象徴というように厄災を引き起こそうとする。
■オーギュスト > やはり、この少女は分かっていなかった。
こちらに牽制、そして師団に集中攻撃。
オーギュストが「師団を守る為に」自分に向かってきた、と考えているのだろうか。
師団は、家族だ。戦友であり、仲間であり、生死をともにする間柄だ。
だが、それ以上に――道具だ。
「平時は赤子が如く慈しみ、戦時は塵芥の如く使い捨てよ」
この程度の状況で生き残れないならそれまでだ。オーギュストは師団の援護をする気など欠片もなかった。
そして、魔王相手だろうが意地汚く、生き汚く、泥を啜り這いつくばっても戦い続ける師団の兵士達を信じていた。
さぁ、戦争の残酷さを知らぬ少女に教えてやろう――
「――加速するぞ、おらぁ、歯ぁ食いしばれ!」
自らと翼竜には加速をかけ、高速で魔王へと突っ込む。
相手が「こちらを嬲り殺そう」としている今こそがチャンスだ。騎竜も使い捨てるつもりで突っ込ませる。相手まで到達すればそれでいい。
オーギュスト自身が高速の弾丸となり大剣を振りかぶり、多少のダメージ覚悟で一騎に懐へと突っ込み、その速度を活かし大剣を突き刺そうとして
■騎士アルダー > 「被害は一割も満たずか、メフィストフェレス様もさぞ喜ぶ事だろう。
あれ等が例の別の場所から持ち込んだ知識に依る副産物か…成る程。
其れに噂に違わぬ機転の利き様、流石は第七師団と云った処か」
白の少女の力が流用されども、其れを気にした様子は見せない。
此の程度で終わる様では逆に期待外れなのだ。
『くっそ、いっそどっちもぶっ飛ばしてやりてぇもんだ。
……なぁ、団長様よ。
お前だったらどうなんだ?』
パンッ、と左手に右手を打ち込み悔しそうにしている男。
そしてふと気が付いた様に、前に立つ青年へと聞いてみる。
其の言葉に少女もチラリと目を向けた。
「あの魔王様なら兎も角、彼等には負ける気はしない」
男の質問に迷いもなく青年は答えた。
其の手を腰に差した剣に添えて。
「取り敢えず、勝敗の結果と状況だけ確認して合流しよう。
向かう先も道も分かっているんだ、今回の鬱憤は其の時に晴らせばいいだろう?」
まだ此の戦いの先を見てみたいのもある。
彼等からまだ何が引き出されるのかも見てみたい。
引き際ではないのだから彼らの戦いをもう少し眺めさせて貰おう。
■ルーシェ > 牽制の合間に津波は彼の部下を襲っていく、これだけでも再建するのも、その後の進軍の追い風を受ける率も減るはず。
しかし、彼が突撃してくるのは少々想定外だった。
前回戦った時も、こちらとの力の差はハッキリとしている。
それが分かっていて、やけっぱちに突っ込むタイプにも見えない。
それなら、何か切り札があると考えるべき。
自分が教えてしまった力をここで使うなら、彼の突撃にも頷けるというもの。
「っ……!」
水の盾も水への移動も間に合いそうにない。
散弾を今更止めることもできず、突撃する彼の身体や竜に水が付着するなら、そこからフジツボが生えだし、体力を吸い上げようとするだろう。
だが、組み付かれるだけでも厄介だと思えば、僅かに身体を傾けながら体液をまとう。
身体を包み込むローション状の液体は刃をスリップさせるだけでなく、その手に掴まれないための対策。
刃は身体を傾けたことで脇腹を抉らせるも、突き刺さらないようにしてダメージをコントロールしていった。
痛みに顔を顰めながらも、距離を取ろうと後ろへ下がろうと試みる。
ご案内:「魔族の国 キルフリート領の村」にゼロさんが現れました。
■オーギュスト > 例の切り札はあの吸血姫の為のもの、ここで切るわけにはいかない。
という事で、こいつは通常の手段で倒さなくてはいけないのだが……
津波に飲まれた師団兵たち。それなりに損害も出ているが、戦闘不能になりながらも後退して行く兵達の方が多い。それでこそ第七師団である。
代わって前に出るのは最精鋭の直衛隊。手に持つのは、最新式の魔導ライフル。
「おら、的はでかいぞ、外すなよ!」
オーギュストは自らがいるにも関わらず、師団に発砲を命じる。
身体にフジツボがつき、体力が吸われはじめた。はやめにケリをつけなくてはいけない。
その海蛇のような身体に、魔力を帯びた無数の弾丸が向かう。そちらが破片による散弾ならこちらは銃弾による弾幕だ。
ライフリングという異世界の技術を応用した銃弾は、恐ろしいほど正確にその体へと向かっていく
■ゼロ > 任務を受けてから、少年はタナールに戻らず只管情報収集のために歩いていた。
目的の師団に遭遇することがなく、情報を求めて魔族の国をあちらに、こちらにと歩いて進んでいた。
一人で動いていたために、軍への連絡は定期的に伝書鳩で送ってはいたものの軍からの連絡はなかった。
これは、たまたまと言うものなのだろう……近くに村があると聞いてたどり着けば、そこは戦場であり、目の前には第七師団と、その将軍、それに相対する女性。
戦闘状態を確認した瞬間少年の行動は決まる。
今、偶然にでも何者かは知らないが背後を取っている。
それならば、と腰の一対のナイフを引き抜き走り始める。
一歩、二歩、三歩目には全速力で。
味方からの魔導銃の攻撃など、まるっきりり無視をし、ダメージを意識することもなく。
銀色の砲弾となってルーシェの背中に向かおう、そしてその首に向かい、一対の漆黒のナイフで、ルーシェの首を刈り取るために振るおう。
■騎士アルダー > 「コリン、ガンバンテインを解いて魔王様に」
戦場へと向けていた目に留まる動きと、少女への急な指示。
其の意図を察した少女は直ぐに妨害魔法を解いた。
続けての詠唱と…魔法の発動。
自分達の立つ位置と村は其れなりに距離は在る。
然し、其れを物ともしない力が集中砲火を受ける魔王の周囲へと張り巡らされた。
中からも、外からも、あらゆる攻撃を吸収する防護魔法だ。
尤も、タイミング的な遅れて防ぎ切れない攻撃も在るだろうが。
■ルーシェ > (「使わない……? 使えないのかな、それとも、一回こっきり? それとも…温存?」)
刃のダメージをローションが包んでいくと、じわじわと傷を塞ごうとしていく。
その合間も思考を巡らせて、彼が力を使わなかった理由を考えていた。
使えないなんて不安定なものでくるはずはない、すると一回だけか、手の内を隠すための温存。
どちらにしても、一度見られるとマズイのだろうと判断しながらも、彼の合図に飛び道具へ意識が向かうも、背後から迫る気配も感づいていく。
一旦、全力回避を選べば、その身体は水となって弾け飛んで消えてしまう。
そしてすぐに、ほど近い水柱から改めて姿を現すと、新たに現れた銀甲冑と師団長、そして残存勢力を一瞥していく。
(「ロザちゃんの為にもう少し戦って手の内を……」)
だが、それで死ぬかも知れない。
予知夢がそれだとすれば、嫌な感じを覚え始める今はまさに逃げ時なのだろうと判断する。
彼女も自分を人にやるには惜しいと告げていたのもあるが、自分だけでは対処しきれなくなっているのも事実。
「っ……」
障壁の魔法、それが自分以外が唱えているのに気づくと今以上の逃げ時はないだろう。
置き土産に派手に水飛沫を撒き散らしながらその姿が、改めて消えてしまう。
水の魔法陣は何処か遠くに浮かび上がるのだろう、自身が滅ぶ夢を避けるために、今はぐっとこらえて逃げを選ぶのだった。
■オーギュスト > 撤退するのならば追いはしない。
こちらも師団を建て直し進軍を再開しなければならない。
なにせ、本来の目標はあの城なのだから。
「ちっ、それなりに被害が出たな」
歩兵隊の1割弱といった所か。
しかしまぁ、まだ予定の範囲内だ。
「進軍を再開するぞ!」
後始末が終わった所で行軍を再開する。
目的地まではもう少しだ。
ご案内:「魔族の国 キルフリート領の村」からルーシェさんが去りました。
■ゼロ > 魔王が消える、すると魔王の背後にいた自分に銃弾の雨霰。
鎧で弾くものの衝撃が少年の体を揺らし、そのあとに飛んでくる魔王の魔力。
足を踏ん張り防御姿勢、魔力のダメージに吹き飛ばされて転がる。仮面の、鎧の回復機構が少年を癒し始め、少年はすぐに立ち上がる。
「―――!」
仮面に魔力の反応、今目の前の水柱の物ではなくて、新たなものである。
視線は、その方角へ、ジャミングがなくなったので魔力の視界がクリアになり、魔力の来た方角を見やる。
すぐに声が聞こえて、少年は将軍の方へ視線を向ける。
「将軍、報告します!
あちらの方から魔力の反応!
確認に行きますか」
進軍をするというオーギュスト将軍に、声をかける。
自分の任務は今は偵察である、今は戦闘状態だから参加したが、戦闘が終わったので、最初にもらっている任務に戻るつもりだ。
■オーギュスト > ちらりとゼロの言った方を見る。
なるほど、視線を感じたし、あの魔力障壁やジャミングは……
放ってはおけない、か。
「ゼロ、お前に任せる。奴らを追え。覗き見してた不埒もんだ、正体暴いて俺に報告しろ!」
少年ならばやり遂げるだろう。その確信をもって命じる。
どの道、それ以上の戦力は裂けないのだ。
■騎士アルダー > 「無事に転移をしたな。
コリン、色々と働かせてすまないが後始末を頼む。
後にキルフリート城付近に待機している皆と合流だ。
予定が一部変わったが許容範囲内だろう」
少し疲れは見えるも、少女は頷き再び詠唱に移る。
村に散らばる魔王の攻撃に因って死に至らしめられた者達。
薄っすらと其の者達の身体が純白の淡い輝きに包まれ…其の輝きは直ぐに消えた。
確認をすれば、後の戦線に加わる事は出来ないが確かな生命の鼓動は感じられるだろう。
主の命は殺めぬ事、其れに従ったまでだ。
其れを終えれば、早々に立ち去ろうとはするのだが…
■ゼロ > 「了解しました!
では、偵察兵ゼロ、任務に戻ります。
失礼します!」
少年は、将軍の言葉をいただけば直ぐに走り始める。
鎧の重さを感じさせない速度は、ぐんぐんと速度を上げる。
目標の地点は、ジャミングを行っていた場所、魔法の防御を行った所今、魔法で誰かが転移した所。
戦場から少し離れた所に数人だろう、存在がいる方角へ。
魔力の痕跡を追い、一直線に走るのだがさて、去ろうとするその騎士へと、到着はできるのだろうか。
分からねども、それは猟犬のように、狂犬のように、まっすぐと速度を重ねていく。
■オーギュスト > 「――進軍再開!」
号令とともにオーギュストは進軍を再開する。
目指すは宵闇の城・キルフリートだ
ご案内:「魔族の国 キルフリート領の村」からオーギュストさんが去りました。
■騎士アルダー > 「一人か……然し今はコリンの消耗も在る、撤収だ」
『あ?おいおい、折角なんだ俺が相手を…』
「戦えば又治癒が必要に為る、分かったな?」
『あー…くっそう!わーったよ!
だが次は無しにしてくれよ?団長様よ』
近付いてくる気配は中々の速度だ、此の侭居れば直ぐに到達するだろう。
そうした中で青年が下した判断は此の場からの撤収。
早々に進軍を始めた彼等の先回りをしておかねばならない。
自分達の位置を察しやってきた者が到達した頃には、既に誰も居なくなっているだろう。
ご案内:「魔族の国 キルフリート領の村」から騎士アルダーさんが去りました。
■ゼロ > 大地を駆け抜け……そして、ふと見ると、倒れている仲間を見る。
―――生きている。真逆。という思いがあるものの、少年は任務を優先し、駆けていく。
走り、飛び、間もなく目的の場所に到着する。
「――――いない。」
そこは、先程まで誰かが居たような形跡がある。
しかし、撤収をしたといっても魔法的なものではなさそうだ。
ふむ、と少年は考える。
しゅう、しゅうという音は、己の体が高速で再生されていく音、銃弾と魔法のダメージを高速で回復しているのだ。
少年は少し思案する。
「とりあえず。」
今直ぐに追いかけるにしても手負いのままであり、先程の魔力がここから飛んで来たと自分の最初の場所から見て考えれば、手負いのままおっても返り討ちであろう。
最低でも、今のダメージが抜けるまで待ったほうがいい。
後、一時間もあれば治るであろうことがわかるけれども、それならば、と。
少年は一度先ほどの戦場に戻り、倒れている仲間に駆け寄る。
自分の回復の間、少しの人数に応急処置を施し、気付けさせる。
生きてるなら、帰れるなら、そのまま戻って治療してもらえばいいだろう。
この村の情報を探るとも考えたが、流石にあれだけ荒らされていればもう、残ってはいないだろうし。