2021/05/04 のログ
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」にアマツキさんが現れました。
■アマツキ >
霧烟る八卦山の渓谷
切り立った崖の中腹に昏く深い洞窟があった
「──やれやれ」
鋭い爪を持つ手が洞窟の入り口にかかり、ぬっと小柄な鬼女が姿を現す
■アマツキ >
「久々の深手を被ったが漸く、と言ったところじゃな」
薄く霞んだ朝日に照らされ、ゴキリと首を鳴らす
傷の回復のため霊力の強いこの山に戻ってきていたが、
漸く退屈な時は終わりを告げた
さて下山し酒でも飲みくらうかと、大欠伸を一つ
■アマツキ >
愛用、という程でもないが身の丈をゆうに超える大鉈を隻腕に担ぎ
その体躯にあるまじき重量を感じさせぬ軽やかさで跳び、山肌に迫り出した岩の上へと着地する
大鉈を突き立て辺りを眺める
──しばらく眠っていたせいか腹が減っていた
適当に狩りでもして喰ってもいいが、やはり飯は人里に降りて喰ったほうが美味い
「また角隠しを調達せねばならんのう」
目立つ角のおかげで"向こう"では事ある毎に魔族とやらと勘違いされる
人も喰らう鬼であることを考えれば大差ないのかもしれないが、
弱い人間を捕らえて喰うくらいならば空腹で良い
そんなものより強者との闘争のほうが余程満足を得られる
この気質もあってか、この鬼は人を好んで喰うことはあまりなかった
よほど趣味趣向を凝らした人間の作る飯のほうが味が良いのは間違いないのである
■アマツキ >
日が昇り始めたばかりの山は霧が濃く視界が悪い
夜ならば爛々と輝く鬼の紅い眼は悠々と見通すことができるが、霧はそうもいかない
山を降りるにも霧が晴れてからか、と
雲海に沈むような岩肌にどっかと腰を降ろし、腰元に括り付けられた徳利に手を伸ばす
時間を潰すならば酒が丁度よい、が……
「…む」
軽い手応えにちゃぷっとした水音
「かー、籠もる前に調達しとくべきじゃった…」
ほんの一口分程度残っていた酒をあーんっと口を空けて飲み干してしまえば、やれやれと肩を落とした
■アマツキ >
「──いかんいかん。待つに酒もないとは話にならん!」
岩に突き立てた大鉈の柄を掴んで立ち上がる
適当に走り下りれば下山できるじゃろ、と
かなりアバウトな様子で霧の中に飛び込んでいった鬼姫が無事麓についたのは
日が傾きかけた夕方のことであった
霧がなくても普通に道に迷っていたのかもしれない
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」からアマツキさんが去りました。