2017/08/13 のログ
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」にファントムさんが現れました。
■天姫 >
昂ぶり寝れぬ、などと言いつつも小休止してみれば、
やがては陽が沈み空が赤くなり、ややして闇がそれを侵食しはじめる
切り株から腰を降ろし、草伏せるベッドへと横になり天を仰いで
妖怪達の活動が活発になってくる時間
山の方は俄に騒がしくなりはじめ…
「ふむ、こうなると人も近寄らんわな」
こんな時間に山に立ち入ろうとするなど武人でもそうそうはいない
■ファントム > ガシャン、ガシャン、ガシャン…。
夜の静寂を邪魔する金属音。
暇を持て余していた鎧にギルドがくれた新たな依頼。
-北方の帝国領内で出没する鬼を倒せ。-
要は腕試し的な依頼である。
報酬額も決まっておらず、成功とみなす証拠も不明だ。
普通の神経ならば一蹴するレベルだが、食うに困ることのない死人にとって、腕試しになるのならなんでも良かった。
丁度日も陰り始めた頃、ようやく鬼の一人を発見する。
慣れない土地での捜索は思うよりも大変であった。
「…鬼か?」
一応は尋ねておこう。
鎧は腰の宝剣に手を当てつつ問いかける。
不意打ちせねばならぬ程、切羽詰っているわけでもない。
相手が戦う意思が無ければ抜くこともないだろう。
■天姫 >
「む」
無防備に寝転んでいたところ、金属音にその身を起こす
陽が沈んできた頃とはいえ、赤い空を照り返すそれに目をやって
「鬼か、と聞かれれば如何にも。
そう宣う貴様はなんじゃ…人、か?」
よっこらせと立ち上がり、相対する
……随分と大きな、というよりも此方が小さいのもあるが
まるで山のようだと内心思い
「そしてその出で立ち、八卦山の妖仙を征伐にでも参ったか」
■ファントム > 「鬼とはそのような恰好なのか。
…かつて人であったものだ。 死人と人は呼ぶ。」
互いに正面から向かい合う。
問われれば正直に答える。
この鎧の中は黒い霊体が漂っているのみ。
触れることは出来るが実態はほぼ動く鎧と言えるだろう。
「その辺のことは知らん。
この地域の鬼を倒してみろと言われただけだ。」
つまり、ただの腕試しである。
鎧は宝剣の柄を握り。
「どうだ、死人相手に一勝負する気はないか?
もっとも、勝っても負けても得る物はないぞ。」
■天姫 >
「死人?ほう、かつて人であった、か」
面白い、と
共に寝そべっていた大だんびらを隻腕が拾い上げる
「果たして死人から生きた剣筋が飛んでくるものか。興味が在る
力試し、好いぞ好いぞ。そなたのような相手を欲しておった。
くふふ、得られるものなど闘争の昂ぶりだけでコト足りる!」
待ちかねた、と言わんばかりに大だんびらを振り回し、鬼が嗤う
「妾は天鐘争城雨月之刀鬼と呼ばれし妖鬼!参るぞ!!」
小さな体躯が駆け出し、変化をするでもなく真っ直ぐに、垂直に大だんびらを振り下ろス!
■ファントム > ドデカイ刀を片手で持ち上げる膂力。
これは油断ならないと兜の中が蠢く。
「どうかな、俺も死んでから時間が経ち過ぎた。
既に生前の記憶は薄れつつある。
そちらが俺との戦いで楽しめるのならいいのだがな。」
鞘から宝剣を抜き取り、両手で構える。
「俺はファントムだ。 行くぞ。」
黒い鎧は見た目通り、足が遅い。
そして腕力も超常の種族に比肩する程ではない。
だが、長年培った経験はそれなりの物だ。
ギギギ…。
鎧は足に土を巻き込んで数歩下がった位置に居た。
振り下ろされたダンビラを勢いが載る直前でいなすように宝剣で受け止めた。
特殊な剣であり、どんな攻撃も受け止めることは出来る。
ただ、鬼の膂力からくる重さは全身にかかることになる。
「では、こちらの番だな。」
ダンビラを受け止めている宝剣に光が灯ると、超高温を剣の刃が放つ。
力で押し返すことが出来ないと踏んだ鎧は、相手の武器を熱で溶かしてしまおうと考えた。
とはいえ、向こうも特殊な武器であった場合ただの睨みあいになるだけだが。
■天姫 >
「ファントム、その名、覚えたぞ!
妾の刃の錆になろうとも我が傷の一つになろうとも忘れぬことを誓おう!」
振り下ろされた大だんびら
それは中途半端な位置で停止する
「!」
力が乗り切る手前で止められた感覚に、僅かに姿勢が崩れる
なるほどこれも相手の力を殺す技だ
そして───大だんびらが赤熱する
赤く染まり帳のように降りはじめた闇を照らすも…溶け出しはしない、が
「むあっ」
じゅう…という音を立てて大だんびらからその手を離す
「けったいな。道士どもの使う火炎の術のほうが些か温いぞ…!」
■ファントム > 「俺もお前のことは覚えたぞ。
この国は良い修行場になる。」
宝剣を両手で構えることでどうにか受け止めている。
並の武器であれば剣ごと両断されていたことであろう。
「俺はこの剣一本で大抵のことをまかなう。
術も本当は使えるのだぞ。
まあ、見てみろ。」
ダンビラから手が離れると、剣は主の手から離れた武器を投げ捨てる。
そして、何もない空間に対して縦に3度振り下ろす。
すると、鬼の周囲3方向より飛ぶ斬撃が襲い掛かる。
魔力を伴った斬撃である。
■天姫 >
「修行場とな。
鬼を相手に修行か、くふふ、面白い」
ぷらぷらと灼けた手を振り、向き直る
見れば…面妖なと三度その顔に笑みを浮かべて
「術か…ふふ、道士などいくらも喰ったぞ。
そら!」
言うが早いかその手足を振り翳し斬撃に叩きつける
衝突すればまるで金属が触れたような音が響き渡った
その手足、その爪は鋼鉄のように黒さを帯びて、魔力の斬撃を打ち払う
「武器を奪ったとて、鬼の五体はすべてが武器ぞ!」
駆け出し、その胴面に鋼の爪を振り上げる
……背丈が大分違う故、飛び上がらざるをえなかったが
■ファントム > 「格上と戦わねば会得はあるまい。」
兜の中は暗闇で、表情の変化は見えないだろう。
だが、隙間から見える瞳の様な光の球は強敵との戦いに喜びの色を灯していた。
「なるほど、その辺は鬼らしいな。
俺が勝ったならばその身体食ってやろうか。」
斬撃は全て打ち払われてしまった。
どうにも硬度が不足していたようだ。
素手で鋼の強度を出せるとは、想像以上に鬼は手ごわいようだ。
さもありなんと、鎧は次の動きに備え剣を構え直す。
「それは知らなかったな。」
胴をめがけて振り下ろされる爪に対し、こちらも宝剣を振りかぶって対応する。
先程の攻撃で硬度が必要と判断した鎧は、宝剣に金属の魔力を付与する。
これで鋼鉄ですら打ち砕ける硬度にはなっているが、果たして相手に通用するか。
正面切っての力比べだ。
ここで負ければ今宵はこちらの敗北であろう。
鎧が砕かれれば、憑代を亡くした霊体は酷く不安定になり、ひとっ所に留まることが難しくなる。
■天姫 >
「ふふ、鬼を喰らうと?
よくも抜け抜けと言い放つ!好いぞ、好き相手じゃ!」
鋼と鋼が打ち合う音が響き、火花が散る
文字通りこの鬼は生まれ持った力か、はたまた術か
手足を鋼鉄そのものに変えているらしい、が──
「クッ!」
弾かれるようにしてその小さな体躯が跳ね跳ぶ
軽やかに着地するものの、その左腕には一見亀裂のようにも見える切傷が出来、
赤い、人のものと同じ血が流れている
「鋼鉄すらも切り裂くとは、
剛力ではない、それも術か?死人」
■ファントム > 「気に入った女は犯す。
当然のことよ。」
鎧の下の霊体にも疲労が生じる。
武器の硬度では負けずとも、体力的な所では圧倒的に差があるのだ。
長く打ちあえばその分こちらが不利になる。
「…ふむ。」
どうやら、硬度はこちらが勝ったようだ。
相手はこちらとの距離を取り、腕は血まみれになっている。
速さも向こうの方が早い。
鎧を着こんでようやく土俵に立てているこちらは追撃が難しい。
チャンスと分かっていても実行には移せない。
「魔術と、俺の剣術と、この宝剣の合わせ技だ。
どれもがかけても出来ん。
ちなみに、今の技は城壁すら切裂くぞ。
…それより、まだやるか?
俺としては命まで奪うつもりはないのだがな。」
相手は隻腕、ならばこれ以上痛めつける必要もあるまい。
そう判断した鎧は剣を鞘に納めた。
■天姫 > 「犯す?
くふふ、貴様に妾を犯すような一物があるのか?」
だらりと下がった左腕から赤い雫を滴らせながら、その場にどかっと腰を降ろす
見た目通りの少女としての恥じらいなどは微塵もないのか中途半端に胡座をかいて
「そうじゃなあ。
闘争は何よりも甘美じゃがこれ以上カタワになっては満足にそれも楽しめなくなる」
やらんやらん、と肩を竦めて見せた
得物を飛ばされた以上、ここからは四肢のみを武器に戦うことになる
右腕は元より失われており、左腕も用をなさない
この上両脚をやられては今後の計画に支障が出てしまうというものだ
■ファントム > 「まあ、その気になればな。
身体の一部分を実体化させるのだ。
お前の様な小さな穴、潰すことも出来るのだぞ。」
胡坐をかいだ鬼の前に鎧も腰掛ける。
周囲に漂う霊体を椅子のように集めてその上に座ることになるが。
「ならば俺の勝ちだな。
とりあえず、お前の家に案内してもらおうか。
鬼とはいえ勝者を持て成す程度のことは出来るだろう?」
辛くも勝利を収めたが、鎧は全身に疲労感を覚えている。
食事は必要ないが、今は休憩が必要だ。
鬼が鎧を招けば歓待を受け、拒めばどこか身を隠せるところで野宿でもしたことだろう。
そして、鬼が治療を求めれば、宝剣に宿る魔力で裂傷の簡単な治癒位は行うだろう。
流石に欠損部分を治すことはできないが。
こうして、鎧にとって久々に心躍る一日が過ぎて行った。
■天姫 >
「言葉の節々に無礼を感じるのう。
まー良いわ、許す。──家に?」
家に案内しろと言われた鬼は僅かに悩む
顎に手をあて二度三度首を捻って
「丁度山を降りてきたところなのじゃ。
むしろお主どこか良い宿を教えよ。
人間の町ならば角は隠す必要があるか?」
ぺらぺらと饒舌に言葉を連ねてゆく鬼
我儘で何様だというような鬼の言動にファントムと名乗った死人は付き合ってくれたのだろうか
その日を機に、鬼はシェンヤンの至るところ
そしてマグメールへと出没してゆくことになるのだった
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」からファントムさんが去りました。
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」から天姫さんが去りました。