2018/06/10 のログ
ご案内:「北方帝国シェンヤン「帝都シェンヤン」 酒場「崑崙」」にオーギュストさんが現れました。
オーギュスト > 「御苦労だったな」

目の前の無愛想なミレーが呟き、酒を頼む。
こちらも酒、ついでに美味かった餃子を注文しながら肩を鳴らす。

「なーにが双頭竜だ。それ以上の大物だらけじゃねぇか」

まったく、酷い目にあった。
双頭竜ははやめに片付いたのだが、ついでだからと郊外の妖怪を一掃するまで付き合わされた。
しかもこちらの実力を読んだのか、かなりの無茶まで強要された。割りに合わない事この上ない。

「お前の実力を見込んでの事だ」

虎燕はふっと軽く笑って言う。
この男の笑った顔は、初めて見た。

オーギュスト > 「それで報酬の事だが」

虎燕が酒に軽く口をつけながら言う。
さて、何処で例の件を切り出すものか……

「生憎と、追加分まで含めた報酬を払うだけの蓄えが我が家にはない」
「あん?」

なかなかの人物とは見たが、この吝嗇ぶりだけはどうにかならないものか。
行き帰りの保存食やら野営の為の消耗品の費用までこちら持ちだったのだ。
その上報酬を値切るのだから……

「代わりに、君が帝国で望む情報を一つ教えよう。それでいかがかな、オーギュスト・ゴダン卿?」

オーギュスト > 「――何時から気付いてた?」
「これでも都尉でね。マグメール王国軍の高名な将軍の名前と顔くらいは頭に叩き込んである」

なるほど、最初からお見通しというわけだ。
まったく、喰えない男である。

「俺が機密情報を求めたら、それを話してくれるのか?」
「対妖仙――いや、君達の国では対魔族か。その最前線に居る君が、帝国の機密などほしいのかね?」

もっとも私のような下っ端が機密など、と虎燕は笑った。
前言撤回だ。こいつは煮ても焼いても喰えない類の男だ。

「こんな割に合わない依頼を受けてくれたのだ。君自身が、私個人に用があるのではないか?」
「――流石としか言えねぇな。あぁ、そうだ。お前さんに、ミレーの古老……二百年以上前の伝承の語り部の居場所を聞きに来た」

素直に降参のポーズをとり、オーギュストは語る。
おそらくだが、この方が手っ取り早い

オーギュスト > 「――八卦山の麓に、神獣族の古老達の居住地がある。君がある条件を呑んでくれるなら、紹介状を書こう」
「条件?」

オーギュストが尋ねると、虎燕は神妙に頷く。
酒を過ごしたわけでもないのに、心なしか目つきが真剣なようだ。

「王国で迫害されている神獣族――ミレー達に出会ったら伝えて欲しい。帝国内に、君達を保護する集落を用意している。もし王国内に居場所が無くなったら、いつでも帝国の、私を頼ってきて欲しいと」

オーギュストは目を見開き、虎燕を見る。
つまり――

「――お前さん、その集落の金の出所は、まさか」
「私が一人で用意した。この国の神獣族のモットーは、自らを助くべし、だからな」

驚いた。度を越した吝嗇の理由が、まさか個人で避難村を経営する為だったとは

オーギュスト > 「――感謝するぜ、虎燕」
「私こそ、随分と助けてもらった。縁があればまた会おう」

互いに敵国の将軍であり、明日は戦場で切り結ぶかもしれない。
だが、その日その場所に、確かに縁はあった。

オーギュストは立ち上がり、虎燕の分まで代金を支払うと、東への乗合馬車を探す。
目的は八卦山の麓、神獣族の古老の居住地だ。

ご案内:「北方帝国シェンヤン「帝都シェンヤン」 酒場「崑崙」」からオーギュストさんが去りました。