2023/06/02 のログ
ご案内:「タナール砦」に影時さんが現れました。
■影時 > この土地はいつだって、訪れる時は決まって二つの様相である。
そう思う。そう思わざるを得ない。一つはいっときの平穏、もう一つは血で血を争う戦争。
おおよそ決まってその二つだ。
ほんの短時間でその様相が切り替わることもあれば、一時の決着がつくまで数日かかることもある。
――つまり何を言いたいかと言いたいのかと言えば、“いつもどおりである”ということを言いたいわけである。
鬨の声が夜天を焼き焦がす炎と共に響く此処は、タナール砦。
夕刻から夜を徹してもなお、戦いは止まず続く。
魔族側が占領した砦を奪還すべく、騎士や徴集された傭兵、冒険者たちが組織を成し、徒党を組んで砦にとりつく。
或いは慣れた者たちの一部は、防護を縫うようにして侵入を果たし、破壊工作を行ってゆく。
口元を隠した異邦風の男は、そのうちの一人であった。
外部への緊急脱出経路を逆流するように数人がかりで潜入し、砦の入口を開門させる役。
「――……ははぁ、今回はなかなかどうして、歯応えがあるじゃァねぇか。なぁ?」
誰かに語るでもなく嘯き、血濡れた刃を打ち振って周囲を見やる。
敵は多く、味方は少ない。同時に潜入した騎士や冒険者数人は健在だが、敵は思ったよりも巧みであった。
魔物を組織だって操るセンスに長けているらしい。
けしかける魔物、または現場指揮官の魔族をうまく使い、潜入者たちを外部へ通じる門扉を擁した広場へと導いたのである。
射かけられる矢や魔法で傷つき、または即死した味方も出始める中、内心で思う。どんな敵の手管であろうか、と。