2023/04/09 のログ
ご案内:「タナール砦」にホアジャオさんが現れました。
ホアジャオ > 今日の戦が引けて間もないタナール砦。
砦の中はあちこちに煌々と篝火が焚かれ、砦内に戻った兵士たちの興奮さめやらぬ様子が現れている様に思える。
正規の兵や伝令が駆け、傭兵たちが互いの無事を喜びあってわめき、将や指揮官たちは会議に赴く廊下で侃々諤々やりあっている。

総じて騒々しい砦の外、焦げ臭さが強い外壁のすぐ傍を、月明かりと篝火を受けて駆けている女がひとり。
頭の天辺に結った三つ編みを揺らしながら、砦の外周を走ってこれが5週目だ。

「ンぁ――――っ… は っはー …」

5回目になる門の前を駆け抜けて、勢いを緩めた脚が止まるまでしばらく。 焦げた枯草をざくざくと踏み、肩で息をしながらシャツの裾で額の辺りを拭く。
陽が沈んで吹く風は戦場の熱気を未だ孕んで生ぬるい。

装備を着けて行動することからとんとご無沙汰で、今日の戦の最中も違和感がしばしばあった。
とはいえ戦場となれば装備なしに行動するのは命取りでしかない。
慣れる為には着けたまま行動するしかないし、なるべく重さにも耐えられるようになっておかなければ―――

ということで、門番に奇異な目でみられながら、戻ったばかりの砦からひとり戦場へ逆戻り。
胸当てと鉄鋼を付けたまま5週走って、今こうして肩で息しているわけである。
本来ならば、夜陰に紛れた敵の人質になる可能性があるとかで止められるのだろうが、使い捨て同然の傭兵にはそんな気遣いはない。

息の落ち着いてきた女は結構結構、とばかりに
何が楽しいのか笑顔で紅潮した頬を片手で扇いで、さて次はどうしようかしらん、と砦のほうを見上げた。
気付けば月は中天で、砦の天辺に降り立とうとするように白く光を放っている。