2022/11/03 のログ
ご案内:「タナール砦」にパンナさんが現れました。
■パンナ > 王国と魔族の争いが未だに止まぬ、人魔両軍において要衝となるタナール砦。
優れた人材を揃えた王国の精鋭でも、日々新たな手を駆使して陥れて来る魔族相手となればそれでも万全には至らない。
本来なら精鋭が集うはずの死地も、それなりの時が経てば王国の人材だけでは足りなくなり、とりあえずは戦える者―――
冒険者が急遽、ギルドに緊急依頼の名目で高い報酬に釣られて駆り出される。
「……ったく、こんな事だろうとは思ったぜ。いい加減ケリつかねぇのか?」
戦斧、それ以外は本当に申し訳程度の防具しか身に着けぬ軽装の兎人は、あちこち煤や返り血、自らの傷口から流れた血で汚れながら軽い足取りで森の中を進む。
大きな耳をぴこぴこさせながら、周囲の気配を探り―――
「……魔族じゃなけりゃいいけど」
戦斧を両手で構え、頼りの聴覚を頼りにそっと歩みを進める先には友軍か、魔族か。
なおも監視に精を出す貴方もまた、距離が縮まるにつれて何者かの接近を察知するのは決して難しくはないだろう。
「……タイマンならやるだけやる、無理そうならいったん拠点に撤収。…取られてるかもしれねーけど」
■ブリジット > 「……」
ブリジットは望遠鏡をしまうと、肩にかけていたロングボウを手に取る。
こちらに近寄ってくる何者かの気配。監視に出していたこの土地の妖精が知らせてくれる。
前方の砦ではなく、後方からこちらに来るらしい。
「……んー、一人か…」
妖精によれば王国軍ではなく、そもそも人間でもないらしい。
しかしながら、あからさまに魔族でもないようだ。
一応何者か確かめておく必要はあるだろうか。
ブリジットは静かに、枝伝いに森を移動する。
そして、その兎耳の生えたやけに薄着の人物を目にすると、矢をつがえ静かに放った。
「止まれ!何者か?」
その矢が彼女の足元に突き刺さると同時に、そう声をかける。
見上げても木々の葉が邪魔で、こちらの姿はよく見えないだろう。
■パンナ > 大きな黒い耳はぴこぴこ動き続け、明確に何者かの気配を察知してか全身の産毛が気のせいかちょっと逆立ち、ごくりと嫌な汗が伝い落ちる。
「……飛び道具ならまだしも、魔法使いならキツイな」
いつでも飛び退くつもりで、周囲を睨みながらも地面につく両足に力を込めたまま、静かに。静かに……
「ッ!!!」
ヒュン 軽やかに空を切りながら、眼前に放たれる矢が目の前に刺さる。
明確に自身を狙っている可能性もあった故、戦斧を握りしめたまま軽快にステップを踏んで後退。矢が飛んできた方向を睨んだ。
「王国軍だっ!雇われのな!!」
最低限の事実だけを即答。一呼吸置いて、第ニの矢が飛んでこなければ続けて兎人の(パッと見は)女が息を荒げ
「ギルドから緊急の依頼来て駆けつけてみたら、東の制圧に向かってた軍は指揮官がバックレて戦どころじゃなかったんだよ。大外れだぜクソッ……」
一目散に奇襲してこない辺りは、分別のついた王国軍か。
または魔族でも物好きな「正々堂々」が好きな手合いか……。
相手の姿は依然としてハッキリしない。
戦闘も覚悟で、そのまま戦斧を構え続けて木々を睨みつけ。
■ブリジット > 王国軍を名乗る声に、ブリジットは彼女の額を狙っていた矢を下げ、ほっと一息つく。
矢筒に矢を戻すと、彼女の目の前に軽やかに着地する。
「あぁ、良かった。雇われか…。
今度からはもっと所属が分かりやすい恰好してきてほしいね」
そう言うブリジットの恰好は少々古いが一目で王国騎士の物と分かる鎧である。
緑のブリガンダインには、王国の紋章が鮮やかに刺繍してある。
「で、敗残兵か。運がいいね?
丁度私も帰るところだったんだ。連れ帰ってあげるよ」
ブリジットは軽やかな歩みで砦と真逆の方向に歩き出す。
王国軍の拠点がそちらの方向にあるのだ。
「私はブリジット、王国騎士。お姉さんはミレー?」
近くで見れば己より数段背が高い女にブリジットは訊ねる。
彼女が何の種族だろうが普通はエルフであるブリジットの方が年上になるだろうが…。
■パンナ > 臨戦態勢でいた兎人の冒険者は、再び耳をピクンと動かせば木々の陰から何者かが目の前に着地するのを目の当たりにする。
現れたのは……とっても分かりやすい、王国騎士の鎧を身に着けた者。
体格は自身が勝るものの、その軽やかな身のこなしを見れば流石は騎士だなー なんて感心し。
「王国の騎士もどう見たって魔族みたいなのもいるからお互い様だろ?」
垂れ目を細めながら、素人同然だったり偏見で襲ってきた者を思い出すと耳は前に垂れ下がり、深いため息をついた。
「お、ラッキー!!ここに残ってっとマズいぜ。東の魔族ども、多分ありゃ食い止められねぇわ。あのケツみたいな顎と陰毛みたいな髭生やしたジジイ……」
戦斧をしまい、駆け付けた当時の状況を語る兎耳の女はくたびれた表情で雇い主らしき者に悪態をついた。
「アタシはパンナって言うんだぜ。ミレー族 ってやつとはちょい違うんだよな。なんか奴隷にされたり大変な奴らだろ?」
奇異な目で見られる事こそあったが、冒険者と言う身分ゆえにそこまで迫害を受ける事は無かった。女は警戒態勢から解かれたのか、リラックスした声調で返す。
■ブリジット > 「名前教えてくれたら今度から見た目に気を付けろって言ってあげるよ?
お姉さんがそう言ってたって」
パンナの言葉にケラケラと笑いながらそう返す。
敵地の目と鼻の先だというのに、その様子には余裕が見えるだろう。
「東で攻勢ね…とりあえずうちの団長にも連絡しておくかな?
ありがとお姉さん!帰ったらもうちょっと詳しく報告してね?」
寄ってきた妖精に二言三言伝えると、妖精は一目散にどこかに飛んでいく。
その後を追うように、ブリジットはパンナを連れ歩みを進める。
「ふーん、違うの?よく分かんないや。
ま、私はエルフ以外みんな平等だと思ってるから安心していいよ」
軽い調子で笑いながら、冗談なのか素なのか、さらりとエルフらしい高慢発言を混ぜるブリジット。
パンナとおしゃべりを続けつつも、よく見れば視線は常に周囲を警戒していた。
■パンナ > 「ハハッ。名前聞いとくんだったな~」
下品もいいところな形容にも、あっけからんとした反応を寄越す貴方には思わず笑ってしまう。
この女、なかなか危険な場所だというのにこの肝の据わり様である。
流石は騎士だ。豪胆なつもりの自分でも思わず感心する。
「うぃ、りょーかいな。元の仕事の報酬がもうダメっぽいから流石になんか手当くれ。宿代尽きてヤベェんだよ」
あわよくば情報提供にかまけて報酬をいただこうと。さらっと持ち合わせがピンチな事をカミングアウトし、「頼んだぜ~」と念押し。
「アタシもわかんね……って、オイオイ。人間が聞いたらアイツ等面倒くせーぞ」
しれっと、エルフ以外を全て見下す発言には優劣をさほど意識しない性分ながらも、苦笑いしながら返す。
「ブリジットはエルフ…だよな?騎士団で風当たり強くねーの?人間以外は全部魔族だ!!って奴とかたまにいるだろ、マジかよって感じ」
■ブリジット > 「残念だけど私は下っ端騎士だから、お金はもっと上じゃないと出せないよ。
ここの指揮官と交渉、頑張って!」
にこやかな顔でさらりと無慈悲にかわす。
ブリジット自身、助っ人のような形でこの戦場に駆り出されている。
本隊を指揮する将軍でなければ、傭兵の給料は出せないだろう。
「そう?みんな笑って聞いてるけど」
ブリジットは昔から王国に仕える騎士を度々輩出していた森の出身である。
特に生まれやエルフであることをとやかく言われた経験は無かった。
立場上平民とされてはいるが、立派な騎士として扱われている。
「うちはアットホームで自由な職場なんで」
他は知らないが、彼女が所属する騎士団は精鋭ながら緩い雰囲気の場所である。
ブリジットもすっかり馴染んでいた。
■パンナ > 騎士 と聞いて確かな稼ぎや地位を期待していた野良冒険者の淡い希望は砕け散った。
「嘘……だろ……」
やべぇ、完全に目論見が崩れた。視線が泳ぎまくり、「どーしよどーしよ」と小さく繰り返す。
「へ??そーなの?イイ奴らだなぁ」
冒険者にはない、使命感や誇りが高い一体感を生み出して彼女を受け入れたのだろうか。
まさか彼女が、エルフはエルフでも由緒正しき生まれ故に受け入れられているなどとは思いもせず。
「マジかそれ!?騎士って、酒の席でもエライ奴に酒注ぎまわってメシの注文から取り分けまで全部やって雑用の為にずーっと命令聞いてなきゃダメなんじゃねーのか……自由なのか……」
互いを認め合って縛りを設けていない彼女の組織が特別なのか、知人のボヤキを真に受け過ぎたのか。
冒険者の女は衝撃を隠せなかった。
■ブリジット > 「むしろ何で私に期待したの……。
ちゃんと雇い主か、雇い主の上から貰わないと」
敵前に一人で偵察に来ている騎士がそんな高位な者のわけないだろうと。
呆れた様子でパンナを見る。
別にポケットマネーが無いわけではないが、
どこの誰とも知れない雇い主の代わりに彼女に出すのも何か違うだろう。
「実力主義だから、出自や信条にとやかく言う事も無いんだよね」
有能で、王国の為に働いてくれるならどんな騎士でも歓迎するような、
彼女が所属しているのはそんな騎士団だ。
王国軍の正規の師団に比べ規模は小さいが、その分柔軟性は高い。
「……逆にどんな騎士団なのそれは。お姉さんそんなとこに所属してたりするの?」
貴族が集まる騎士団なら雑用なんて従者の仕事だろうし、
平民も入れてる騎士団ならそこまで上下関係を徹底しないだろう。
はたしてそんなおかしな騎士団があるのか、ブリジットには皆目見当も付かなかった。
■パンナ > 「騎士って権力もあるし羽振りいいんじゃねーのか……」
少なくとも冒険者などと言う何でも屋よりは よほど確かな身分なのは間違いない。だが、騎士 と言ってもピンキリなのはもちろん知る由もなかった。
「あー、その辺はアタシら冒険者と似てる……ん?待て?似てねーかも??」
実力主義 はもちろんそうなのだが、彼女の誇らしげにも聞こえる口ぶりから、まるで本当に家族のような温かみや信頼とはどこか遠いような…皆が自分の為だけに生きる冒険者のどこかまとまりのなさを振り返り。
「アタシは騎士じゃねーけど、何度か王国の騎士の穴埋めに入った事はあったんだよなぁ~」
貴方を見る赤い瞳には、羨望のような感情がどこか見え隠れしているかもしれない。
冒険者を急遽穴埋めとして用立てなければならなかった騎士団。
その殆どは組織があんまり故、機能していなかったものばかり。
「若いのばっかり死地に向かわされたり雑用押し付けられて死んだ目してる奴ばっかなとこもあれば、強い奴が団長や司令官ガン無視してやりたいようにやる…まー、問題あるとこばっかだな!」
はっはっは と笑い飛ばす。「お前んとこは雰囲気も金払いも良かったりして」なんて冗談交じりに問いを投げかけながら
「ちゃんとしたとこは、組織の人間を大事にしてんのよーくわかるぜ」
■ブリジット > 「私の給料の問題じゃなくて手続きの問題だよ、どちらかと言うと」
傭兵が、そこら辺の騎士や兵士に無秩序に給料を求めてはたまらない。
それゆえ然るべき窓口とルートというものが存在するのだ。
まぁどの道、生きて帰ってからの話になるだろうが。
「冒険者は…何というか自由と言うより無秩序なんじゃないかな……」
それこそ、どう見たって魔族みたいな見た目の冒険者も、
依頼を受け、報酬を受け取ることはできる。
だが、その冒険者に酒場でつるむ相手がいるかは別問題だ。
「まぁ…組織が苦手な人にはいいと思うよ冒険者、うん」
とはいえ、冒険者にだって尊敬すべき人格者はいるのだ。
ブリジットは苦笑いしながらそうパンナに言う。
「あぁ…そういう所はねぇ……」
別に全ての騎士団が騎士らしい理想に則って運営されているわけではない。
中には、そんな機能不全を起こしている騎士団もある。
ブリジットもそういう騎士団を知らないわけではないのだ。
「うん…お姉さんも、まともな冒険者パーティーとか傭兵団とかに入れるといいね…」
何か哀れむような視線で、パンナを見た。
■パンナ > 「下手すりゃ雇い主が生きてんのかも分かんねーしさぁ~~」
自身が雇い主を置いて逃げたのではなく雇い主が持ち場を置いて逃げたのだ。
全く非が無い彼女に尻拭いを求めるのは筋違いだけど と自覚はしているのか、観念した様子で「はぁ~~」と特大のため息。
「無秩序!あー、それだそれだ」
すげーの居るもんな~ と笑いながら頭上を見上げ。
騎士の腐敗も大概だが、冒険者はそれ以上に出自とか思想とか、あらゆる部分でフィルターなんてものが殆ど存在しない。
下手をすれば討伐対象ではなく同業者の方が潰すべき存在であることも…
「アタシも規則がどうのこうの とか上下関係は面倒臭ぇから、冒険者の方が合ってるかもしれねーけど、寝床くらい毎日確保してぇな~」
騎士は一定の期間ごとに給金が発生する上、多少なり国から補助が降りたりするが、冒険者にそんなものはない。
毎日がその日暮らし…なのだが、彼女は悪癖さえなければきっと日々の暮らしぐらいは維持できるだけの実力とキャリアは存在した。
「せっかく入れても、その仕事限り とかなのが寂しいもんだぜ。アタシも自分の傭兵団とか作ればお気に入り固められそうだけど、払える給料ねーわ、ハハッ」
騎士団との大きな違いは、人間関係が物凄く不安定なところだ。
その場限りの関係が大半、運よく気が合う者も互いにいつまで生きて居るかも分からない。
それでも暗い顔は見せず「まぁ頑張ってりゃどうにでもなるさ!」と気丈に笑うも、不意に前方を指差し
「なぁ、お前んとこの騎士団の拠点、アレじゃね??」
まだ遠いが、天幕や軍旗、武装した兵がちら と見え始める向こう側を示し「泊めてくんねぇかなー」とチラチラ貴方の顔を期待半ばに見つめた。
■ブリジット > 「そういう時は雇い主の上を訊ねるもんだよ」
彼女の雇い主とて、ここ全体ではなく小部隊の指揮官だろう。
となれば上司がいるはずで、まずはその人間に直訴するのが筋ではなかろうか。
「こんな最前線まで出てくる冒険者がそんなに金稼ぎ悪いとは思えないけど…。
王都でも貧民地区なら安い家もあるんじゃない?」
パンナの普段の暮らしぶりを知らない騎士は、至極真面目なアドバイスをする。
数回大きな依頼をこなせば貧民地区ぐらいには家が持てるはずだろう。
ブリジットは冒険者ではないが、大体の相場は知っていた。
「そういうところの設立資金なんて大体どこかから借りて稼ぎでコツコツ返してくもんだよ。
それか貴族の知り合いでも作るか」
傭兵団の団長は、意外と貴族の次男坊や三男坊だったりすることが多い。
家を継げない分、外で暮らしていくにはそれが一番手っ取り早いのだろう。
彼女は見るからに貴族ではないが、そういう貴族と知り合えばあるいは…。
「うちじゃないけど、確かに王国軍だねあそこは。
とりあえずお姉さんはあそこに届けようか?」
元からそこに向かっていたのであり、パンナをそこに届けてから自分の部隊に戻るつもりだ。
チラチラとこちらを見る彼女の視線には気付いていないようだが。
■パンナ > 「あのバックレたジジイの上か……。軍の組織体系なんてアタシが知るワケねーだろハハハッ。……あぁ~~~タダ働きどころか仕事がパーになったアレじゃねーかよ!チクショー!」
正論ゆえに物凄く耳が痛い。百歩譲って、ギルドに事情を説明すれば事実確認の後、気持ち程度の保険が降りるかもしれないが…。
冒険者は頭を抱えた。
「そりゃお前、稼ぐはいいけど何かと冒険者ってのは金がかかるもんなんだよ。装備のメンテナンスだろ?旅費に宿代、それから付き合いにも金ってもんが……」
特に付き合い……と言う名の酒席。彼女は当たり前のように語るが、冒険者ギルドの間ではせっかく腕が利くのに酒へほぼ全部溶かすどうしようもない人として評判。……悪い意味で
「借金からのスタートかよー、それはそれでなんつーか…。…貴族…後援者欲しいとこだよな」
腕を組んで、真剣に後援者になりうる存在を検討するが、いざ自分が組織を率いる立場となれば、それはそれでしがらみが増えそう。
どこか間延びした声で「ん~」と悩むも、現状そこまで強い願望はなさそうだ。
「おう、ぐっすり休ませてもらうぜ!!!」
満面の笑みで、世話になると告げようとした矢先。
”うちじゃないけど”と言う言葉に気が付くと急に焦る。
「お前んとこじゃねーのかよ!アタシがいきなり泊めてくれって頼んでも大丈夫なのかそれ!」
果たして彼女の協力は得られるのか。協力の甲斐あって寝床を確保できるのか―――
だけど全ては、稼ぎの大半を酒に溶かす自身の日頃の行いがいけないのである―――
冷や汗を浮かべながら、せめて王国の騎士として一言頼む~ と貴方にしがみついて懇願する長身の女冒険者が、どこで寝泊まりをしたのかは定かではない。
ご案内:「タナール砦」からパンナさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からブリジットさんが去りました。