2022/10/17 のログ
ご案内:「タナール砦」にゼロさんが現れました。
ゼロ > タナール砦、という場所に関しては其れこそ、一分一秒で、状況が変わるものだ。
引継ぎを終えて、駐屯地に帰り、一息を吐いた。そう思った矢先に、駐屯地に走ってくる早馬。
伝令の兵士によると、魔族の軍が襲い掛かってきて、タナール砦が占領された、との事だ。
それならば、第七の役割、という所だと、ゼロの所属している、部隊の隊長は判断したのだろう。
伝令に、タナールに向かうと言う事を伝えるように、そして、他の部隊に、将軍に伝えるように話をして準備をする。
ゼロは、そもそも準備など必要がない。
普段から、鎧を着こみ、槍を持ち、腰にはナイフ、背嚢を背負う位か。
機動力で言えば、他の隊員よりも早いからこそ、先行する旨を隊長に伝え、一人走る。
少年の足は馬よりも早く、山を滑るように走り抜く。
崖さえも、全身鎧のままに、速度を落とさずに駆け上る。
之より早いと言うなら、飛竜など、空を飛ぶ騎獣ぐらいなものだ、身体能力を存分に発揮し、到着するタナール。

其処は、地獄と言って良い、状況だった。
其処此処に転がる死体の山、争った跡の壁のシミに崩れている様子。
熾火のように残る、黒い煙は、まだ燃えているのだろう、何か。

魔族は去ったのか、それとも、まだいるのか。
少年は、鉄の槍を握り、仮面の下の目を細め、進む。
仮面は、夜闇を見通す魔道具故に、この闇の中、煙の中、問題なく進むことができる。
奇襲に警戒しつつ、タナールの入り口に立ち、一歩、砦の中に足を踏み込んだ。

ゼロ > 砦の中には、死臭が充満している、物音ひとつ聞こえない、静かな、とても静かな空間で、妖魔などはいないと思われる。
その理由としては簡単で、妖魔は潜んだり隠れたりするのが苦手だ、静かにしたり一つ所に居続ける事が出来ない。
知能が低く、本能に任せたりする存在が多いのだ。
逆を言えば、知能の高い物、奇襲をしたりするような、そんな魔族が居ても可笑しくはないだろう。
救援に来たのだけれども、救援に来た、と声をあげたとして、味方に信じてもらえるか。
魔族を初めとした敵対者に居場所を教えるだけにならないだろうか。
それを考えてしまえば、ゼロは音を消し、隠形を行い始める。
全身鎧での隠形は、慣れた物、魔族の国で、散々この鎧のままに、潜んで生活していたのだ。
今更、全身鎧の音を一切立てずに進むなど、簡単な事と言える。
徹のグリーブのはずなのに、石畳のはずなのに、歩行の音はせず。
唯々、闇の中の静寂をかき消すことなく進んでいく兵士、ウィズ槍。
赤々と燃えている松明の、ぱちぱちと、言う燃えている音を聞きながら、少年は砦の中を、通路を進む。

人の気配も、魔族の気配も、その他の気配も、今は、何も、認められぬ。
唯々、静かな砦の中を、進むのみ。

ゼロ > 人の気配はなく、静まり返っている砦の中。
不安はなく、不穏はなく、唯々、警戒のみゼロはする。
誰何もせず、声をあげる事もなく、粛々と、静々と、通路を進む。
こんなにも静かなのは、解せぬ。

目的は、何なのだろう、襲撃の為だけの、襲撃だったのか。
占領ではなく闘争だったのだろうか。
ゼロは魔族ではないし、魔族だって千差万別だ。
詰まるところ、判らないと言う事しか、判らない。

唯々、警戒を胸に、槍を手に、砦の中を進むのみだ。
暫しして、ぐるり、と一周、砦の中を回り切って。
終ぞ襲撃も、遭遇も無かった。

だから、ゼロは訝しみながらも、警戒しながらも、砦の入り口へと戻る。
すると、後から来ていた第一強襲部隊の面々が来る。
報告と、引継ぎとそれらを行ったのちに。

再度、部隊で誰もいない砦の制圧と、維持を。
また、新しい駐屯部隊が来るまで、待機となるのだろう―――

ご案内:「タナール砦」からゼロさんが去りました。